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第012部 空の旅は安心安全にみんなで会いにいこう

第6幕 第5話開始×Stage.6-5 到着

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第6幕 第5話開始
「お久しぶりです、《名もなき島》の支配人殿。身体は良くなられたようで何よりですね、蒐集家殿も」
「ええ…」
朝、千歳達は再びアガニータが待つ屋敷に向かえば、コーカスがタナトスを見てガラス玉のような瞳を細めた。
「今回は私も薬を造り出した物に興味があり来てみました」
「今回は…ですか何か貴方の興味を惹く物がありましたか?」
「はい」
タナトス不機嫌、蒐集家はご機嫌と明暗分かれる態度、千歳達はテーブルに着き茶が運ばれ蒐集家は楽しげに収納空間から試験管を幾つか出してくる。
「薬としては睡眠薬、麻酔、滋養、精神安定の効能を持つ薬草を混ぜ合わせています。これらは比較的森などに生えている物や薬草ダンジョンの浅い階層で手に入ります。問題はこの赤い薬…」
「おい、これ鑑定出来ないぞ?隠蔽されている」
「僕の鑑定にも出ないね」
「ええ、私の方でも調べましたがこの赤い粒だけは分かりませんでした」
蒐集家が試験管に入れられた赤い小さな顆粒、ヤハネと千歳の鑑定では鑑定不可とされコーカスも肩を竦めてお手上げだと伝える。
「これは…妖精の血ですよ」
「なるほど、それは厄介ですね」
アガニータが薄く笑う、ラジカ、ヤハネは目を見開き、ウォルゾガとトラングは眉をしかめ、カイム、タナトスとハインとワグナーは無表情、千歳はそれの危険性を考える。
「妖精の血…依存性があるのかい?」
「組み合わせで依存性がある物になるというのが分かりましたね、この薬を作った者は……」
「それを調べるのが俺達だな、こんなイカれたもん作りやがって。行くぞ、ヤハネ。お前が片端から鑑定しろ」
「あーまあ、それしかないかー」
「怪しい場所は幾つか挙げています」
コーカスから書類を受け取りさっさと、カイム、ヤハネ、ハインとワグナーが動き出した。
「私は患者が診たいですね」
「俺も行く」
「案内しましょう」
蒐集家と大河はアガニータに案内されて患者がいる場所へ向かう、タナトス、ウォルゾガ、千歳、ラジカ、トラングはコーカスがタナトスに用があるのでその場に残る事にした。

Stage.6-5 到着
「ここが《ガーデン王国》なんだ」
「いま、門番と話しをする。バスでこのまま城に向かおう」
「分かりました」
《ガーデン王国》の城壁、入り口の前でホスィソ達が門番に話しをしに行く、気配遮断と隠蔽を使いバスを認識しづらくしている為警戒もされていない。
だが、環境は晴海の目から見て良くない光景が広がっていた。
「貧しい土地なんだね…崇幸さんや詠斗さんと綴さんや皆が来てくれるからきっとよくなるから」
「う?」
空が人形で遊びながら隣の籠の中にいる、ホスィソ達が馬で先頭を行きその後ろを進む、痩せた民、元気がない。
道端で寝転ぶ人々、露店に並ぶ食物は痩せている、土地も乾きこの場所が戦争に巻き込まれたら一溜りもないだろう…。

「父上…陛下」
「ホスィソ…戻ったか…だが…」
「状況は把握しています、詳しい話しをワークス」
「お、おかえりなさいませ!ホスィソ様、皆様。もう間も無く《イグン王国》が《ブリキノ国》開戦します。情報によれば《ブリキノ国》の軍がこちらの国境付近で待機しているとの事です。開戦の合図があれば侵攻してきます!時間の問題です」
「国境には兵を……いるがすぐに落とされるだろう」
城内の謁見の間にて老いた王と対峙するホスィソ達と外神、兵力も無い乏しい国…ホスィソの兄弟達も項垂れている、ぴくりと外神が動き崇幸達が到着した旨を伝え外に出る様に促す。
「この国を…救ってくれると…この国は…見ての通りだ…」
「……この国次第です…」
老いた王、痩せた王族、決して民を虐げて富をく荒らしている訳ではないのが伺える、生きていく希望も戦に巻き込まれるかもしれないという絶望で気力も失せていた。
「外に行きましょう、諦めるには早すぎる…」
外神が口にする、らしくもないと思うが…希望が来たのだ…この国は運が良いと他人事のように思った…。

第6幕 第5話開始
「ぐああ」
「おい、この辺で薬を売っているやつを見てないか?」
「よ、よくわかんねぇ」
「俺はみたぞ、男か女かもわかんねぇんだよ」
「嘘は言ってないな、いつ売りに来るんだ?」
「よ、夜だよ!路地裏だ!場所は決まってねぇんだ、薬使うと気持ち良いって楽しくなるって…でもそんな買う金もなねえ」
「カイムさん、ヤハネさん。客として接してみましょう」
「俺と鑑定が出来るヤハネさんで今夜彼らに案内して貰って薬を買うというのは?」
ワグナーが提案しヤハネも頷く、カイムとハインは少し離れた場所で様子を伺うという流れにした。
薄暗い路地裏で適当にカイムが薄汚い浮浪者達をぼこし情報を聞き出していく、薬を買う金もない物乞いをしている連中だ、適当に金を撒いて小突けば吐く、ちょうど良い店番にとこの2名を連れて店に戻る事にした。
「丁度いい、ゴミども。仕事と金をくれてやる」
「まあ、薬よりかはいいよな」
「そうですね」
「いい考えです、無駄に時間をすり減らすより良い」
「ええ!」
「俺は計算も字も書けませんぜ」
「だから?仕事出来ないって?アホか」
カイムが2人の首根っこを掴み引き摺って行く、計算も字も書けないという2人をカイムは鼻で笑う、ヤハネの鑑定でも罪人等ではないと出ているので店番程度に良いだろうとハインとワグナーも笑って頷いた。

「タナトスさんどうぞ、以前依頼された品です」
「確かに」
「中を確認しないのか?」
「鑑定で分かります」
椅子に座り厳重に鎖が巻かれた木箱、丁寧に緻密な細工を施された木箱を碌に見もせずタナトスが収納空間に入れれば、ウォルゾガが尋ね淡々と返しコーカスも頷く。
「代金は以前頂いていますから、これで依頼は完了ですね」
「はい」
「優秀な貴方が…惜しいですね、どうです?此方で働きませんか?貴方が望む場所で店を用意しますよ?私の元へ来ませんか?アガ二ータ様に頼めば後見人として就いてくれますよ」
「雇い主の1人である僕の前で…挑発ですか?」
「まさか、貴方方は彼がどれほど優秀か理解していません、タナトスさんなら大陸1つを支配出来る商人として活躍出来ますよ」
「…魅力的なお誘いですね」
「ええ、自由にして頂いても、龍皇国から許可を貰う為に頭を下げる程度厭いませんよ」
「貴方が?」
「ええ、貴方にはそれ程の、それ以上の価値があります」
「おいおい、うちの家族を引き抜くなよ」
「家族になった覚えはありません」
コーカスがニヤリと手を組み顎を乗せタナトスを舐めるように見る、タナトスは目の前の男が皇国に頭を下げてでもタナトスを欲しがるという事に驚くが、ウォルゾガが間に入り家族という言葉を出すがタナトスが無表情に否定した。
「家族?貴方が?ふ…ゲーターダイルラフテスをどう誑し込んだんです?」
「好みではありません」
「では貴方が望む好みの者を用意しましょう、優秀かつ見目も良い者を」
「そそりはしますが、お断りします」
「残念です、気が変わったら何時でも言って下さい」
「話しは終わったな、帰るぞタナトス。千歳連れて帰るからな」
「頼んだよ」
ウォルゾガがタナトスの腕を引き立たせて千歳に後を任せ、転移札で《空船》へと戻っていった。
「困りますよ?」
「ふ…もっと他者の価値を見極めた方が良い、まあ今回は諦めますよ」
「渡す気はないですよ」
「魔王と争うのは少々骨が折れそうですね」
「争う気はあるという事ですか?」
「さあ」
「千歳、埒が明きません。店にいきますよ」
「そうだね…熱くなってしまったよ。ではまた」
「ええ、店が始まったら寄らせて頂きますし、薬の件はこちらも協力を惜しみませんよ?」
「それは心強い、失礼します」
ラジカが宥め千歳と共に退室する、コーカスは目を細め口角を広げそれを見送った。


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