あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第012部 空の旅は安心安全にみんなで会いにいこう

第6幕 開幕×Stage.6 始動

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「ライガル様…残念です、貴方だけ私の試験不合格ですね。これから貴方の兄上の補佐、片腕、そして皇国の宰相そして未熟なまま就くのは私も心残があります」
穏やかな常に毒を孕む声、言葉、他者を蝕む思考、まだ兄ニジェルガが皇帝に就く前、ニジェルガ、トラング、ライガルの教師だったアガ二ータからの失望の眼差し…。
「そこで貴方が宰相の座に就いた後も私が定期的に試験を行いましょう、いつかは合格するでしょう。期待していますよ」
「分かりました、先生…」
歴代の宰相の中でも優秀と謳われ、勤勉、実直、民を想い、兄を慕うそんなライガルを持ってしてもアガ二ータの期待には応えられなかった、自分が優秀で秀でている事は分かっている、理解しているだけであり目の前の狂人手前の男からは認められなかった…。

「ライガル様、ティス様はお元気ですか?」
「……はい、元気です」
「おい、ティスの事は俺に聞け」
「おや、失礼しました。夫婦なのですから夫であるライガル様に聞くのが良いかと」
揺れもしない馬車の中向かいに座るアガ二ータがライガルに伴侶であるティスの事を尋ねれば、ゴーシュが珍しく怒りを孕んだ言葉で返し、アガ二ータが素直に謝罪する。
「そういえばライガル様の領地に派遣された水の魔法使い達が横領していたと」
「アガ二ータ様…私を試したんですね」
「悪趣味な事して叔父上を虐めるなよ、腹黒」
「トラング、私も君の伯父じゃないのか?試験は終わっていませんからね」
「…身元がしっかりし優秀な魔法使い達でした…見抜けなかったのは私の落ち度です」
「ふん」
何処か演技掛かったアガ二ータの仕草に以前領地で水が不足し、優秀な魔法使いを呼び多額の報酬を支払い水をした際に民からも金銭を巻き上げていたのを知らせてくれたのは詠斗達だった。
それを裏で手を引いていたにはアガ二ータかもしれないとライガルも考えたが証拠は出てこない、身元ははっきりとしていた。
「ああ、以前は腕は良いが金に困っている水の魔法使い達を派遣して欲しいという依頼ですか?」
「そうだ、ライガル様の試験の続きにと君に選りすぐって貰った者だよ」
「そうでしたか、問題を起こしたとの事で全員罪人になってしまいましたね」
「………既に罪を償い解放しています」
コーカスがせっかく腕の良い魔法使いを出したのにと大げさに肩を竦める、それも織り込み済みだろう、この会話を聞いていた千歳の頭は精神的頭痛を感じる、親族とは厄介だと、千歳も認めるライガルの冷静さ判断力と思考、ニジェルガの統率力民を思う思慮の深さと同時にそれ以外への思考の切り替え方、トラングの回転力、応用力、カジノで日々起こる大小なつまらないトラブルの事前回避……その全ての根幹が目の前にある気がする。
「着きました、あそこが《アウトランダーズ商会》の皆様にお渡しする土地です。確認が済みましたら患者を収容している場所へ案内します」
「分かりました」
ゴーレムから御者に変えた馬車が街の中心部で止まる、街は人の多さに比べ不気味な程静かだった…。

「はあ…はあ…」
「走って!」
「うわわん」
「泣くな!泣いても助からない!」
「うえん」
「う…」
森の中でぼろ布1枚を身に纏って首元には首輪を付けられた子供達5人と年長の少年に抱えられ泣く幼児、森の奥からは牙と涎むき出しの3体の肉食獣、奴隷として買われた子供達は囮と捨て駒として奴隷商人に見捨てられたのだ。
子供たちは獣人の本能として駆ける、命を繋ぐために泣き叫びながら走る早く…早く…命を…死にたくない一心で…。

「……この周辺の動物の怒りを買った…原因は…これか」
『ぢぃ』『ぢぃい』『ぢん…』
外神がバスから離れて転移した先には、こと切れた身なりの良いふくよかな男が馬車あら放り出されどうやら全身を打ち付けられて死んでいた。
倒れた馬車を除けばひしゃげた籠の中には小さな丸い毛玉の生物3体…精霊の僕と言われている生物…実際には魔物一種だが大人しい性質故にこの大陸以外で貴族の愛玩物として…恐らく運ばれて来たのだ…迷惑な話しだがこのままにしておけばこの周辺の動物達が荒ぶるだろう。
『ぢぃ』『ぢぃい』『ぢん…』
「ああ、子供たちがいるんですね分かりました。運びます…」
魔物達が獣人の子供たちが奴隷商人に捨てられたと、助けてくれと必死で訴えてくる、魔物が人を助けろというがこの魔物はかつて祖先が精霊王の怒りを買って魔物堕ちした生物だ根は優しいのだろう、外神が了承し籠を破壊し彼らを自由にしてやる、自由になり外神の周辺を嬉しそうに飛び、指を加えて笛を吹けば馬2頭が茂みから駆け寄る、死んだ奴隷商人はそのままに外神は子供達の元へ転移した。

「あう!」
「しっかりしろ!」
「ううん…いい、行って…」
「バカ…ほら行こう」
「肩貸す」
死に物狂いで走る獣人達1人が木に躓いて転んでしまう、他の子供たちが転んだ子供を担ぎ先へ進もうとするがとうに皆限界を超えていた。
足は靴も無く傷だらけ、まともに食べさせても貰えなかった分、人より頑丈だがやはり疲労は酷い…。
『グルルルル』
「ひぃ」
3頭が涎を零し子供達に迫りくる皆恐怖で身体が竦むもう駄目だと思ったその瞬間、視界を遮る影肉食獣3頭に手を翳し大人しくさせた。
「すみません、お邪魔しました。彼らは回収します……そうですか食べる物が…人に危害を与えないと約束するならば提供します」
『グルルルル…』
『ぢぃ…』
涎を垂らす肉食獣達、灰色のよく見れば肋が出てやせ細り貧相な顔をしていた。
外神は平等に獣人にも魔物にも腹を空かせた肉食獣達にも尋ねる、奴隷商人は子供達を捨て駒にし逃げている最中に事故で命を失った感情は何も浮かばない。
「食事等の提供、傷の手当等をしましょう…来ますか」
子供達は心身共に限界で外神…見知らぬ男の手を取る、今迄も地獄だった変わらないかもしれないが…暗い瞳をした男の手を取った…。

 第6幕 愚者は賽を振る 開幕
           × 
  Stage.6 贄たる羊は眠りの数を数えない 始動
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