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第011部 イレギュラー過ぎる召喚は神々も知らない内に/500年の孤独と独夜と独りと到達に至る導 回顧録

絡めとるは12脚の蜘蛛なりや 第壱章

「君達は真実を話していない…」
『すみません…今私達は私達が言える事を話していまいます…』
「千歳…今は退け…蜘蛛が先だ……」
「千眼さんが言うのならば退くよ…」
千歳が突き付けた言葉への神々からの返答に嘘も偽りも感じられない、千眼も分かってはいるが此処は引くように伝え、千歳も素直に従った。
「外神支配人！」
「す、すみません」
「おかえりなさいハインさんとワグナーさん、お疲れ様です…」
「ご苦労だったな、ハイン、ワグナー部屋と食事は用意してある。ゆっくり休むといい」
そのタイミングで外神がポイントを支払い戻し2、ハインとワグナーが外神に謝罪を入れ乍ら転移してくる。
外神とメシュレラが労いながら2名を出迎える、申し訳無さそうな顔と何処か具合の優れない顔にゴーレム姿のナビとゲーテ、ギーギスと綴が2人を《島船》に連れて行った。
「やはり近づいた様ですね毒を僅かですが受けています」
「思慮深い2人だ、行くなと言っても行く。連れ戻して正解だ」
「はーい、俺来たよん」
綴たちと入れ替わりでシヴァとステフスがニコニコしているが目の下の隈が酷い青年を連れてくる、席に着いて貰いメディエスカと挨拶を交わす。
「メディエスカさん戻ったばかりで申し訳ないですが、蜘蛛に活性魔法を使い赤子の状態で出現させ討伐します。活性魔法には今回繭の中で眠る子供を起こす唄が必要です…唄を作って下さい、唄の完成と僕の武器の調整完了次第向かいます」
「しょーち！2日以内には完成させる」
「お願いします、唄は…アムドキアさん、ソスォサチさん、ヴァンユモゼナさんの3名…異界人を使います」
「すぐに準備させよう」
「はい」
その流れを黙って見ている詠斗達、この件は以前討伐をした外神側に一任する流れとなっているが、外神の一言に晴海が声を上げた。
「ね、ねぇ！待ってよ、子供…赤ちゃんを討伐って…殺すの！？」
「…はい、子供の姿ですが中身は蟲……人ではありません」
晴海の問いに淡々と外神が答える、率と千歳が晴海の肩に手を置き首を振る、諦めてくれと…率も千歳も分かってはいる…子供を…赤子を殺すという行為は非道な事だが、討たなければ多くの命が失われてしまう。
「神様達！どうして！？殺さない方法は無いの？」
『……外神の出した案が最も犠牲が少ない方法です、蟲人は…莫大な魔力を纏うが肉体は酷く脆い』
『寿命は7日程…その命尽きるまで生物を喰い散らかす運命』
「そんな…チナス君はあんなに優しくて…人を傷つけることなんて絶対しないよ？」
『彼は…奇跡と偶然と数外個体魔王と魔人が羽化を察知し30日以上準備を行った結果です』
『《アタラクシア》で唯一寿命を越えて生存している存在です……』
「アリス…退いてくれ…不可能なのだ…万が一にも…」
「数外個体魔王に進化してしまえば討伐は不可能です、そして蟲人が数外個体魔王になれば…何が起こるかわかりません」
千眼と千華も神々の意見を持つ、どうか退いて諦めて欲しいという思いを込めて伝える。
「そんな…せっかく産まれてくるのに…」
『……………』
晴海の哀し気な声に皆何も言えない、そう産まれてくる存在に罪はない…だが多くの命が失われていくのだ、取るべき選択肢すら無い、討伐…それだけだ…。
「晴海さん…今から200年以上前に僕の商会で2人の優しい人達が自爆魔法を発動させ6本脚の数外個体に成り掛けの蜘蛛を葬ってくれました…その時その蜘蛛の姿は2，3歳程のあどけない姿をした幼児でした…無邪気に可愛らしい笑みで人を喰い散らかし毒の糸を持って生物を屠り、国を幾つも壊していきました…油断はしていません…ですが…僕たち全員が総力を持って挑みました…ですが犠牲になった2人は還って来ません…」
「晴海…2000年前もそうだった…ドラゴン、妖精、精霊、人…友だった獣皇を失い消耗戦を強いられ寿命が尽きる迄耐えた…蟲人はそういう存在なのだ…チナスは正しく奇跡だ…今回は時間が無い」
「……………」
外神とイシュターの話しを受け言い掛けた晴海の口がゆっくり閉じていく、それと同時に外神の無表情な顔が僅かに動く。
「神々……この依頼を撤回して下さい…晴海さんどうしてですか？この依頼は応えられない…」
「え？」
【マスターこの依頼は拒否出来ません、神々も出した本人も取り下げ不可能です」
「それが可能なのは…聖者……ああ…そうか晴海さんは聖者以上…」
『なっ！莫迦な』
『何故？依頼を出す事が出来るのか？』
『ふむ……これは外神のスキル…偶然の産物だ…』
神々も外神の目の前に表示された画面に神々も驚愕する、晴海が生み出した外神への依頼だった…。
『蟲人蜘蛛現時点を以って疵渦級へと昇格を生かせ：有守 晴海からの依頼 蜘蛛を無力化せよ 達成ポイント1万pt付与 ※この依頼は拒否出来ません』
「お、俺してないよ！」
「そうですね…願いが具現化したんです…受ける他ないです…」
「お、俺……」
「晴海さん…今から僕は貴方に酷な…酷い事を言います…ごめんなさい…貴方は蟲人…蜘蛛の親…父親になりますか？」
「え？と…うさ…ん？」
外神の問いそれは父親から虐待されて育って、父親を殺そうとした有守 晴海にとって酷過ぎる物だった…外神の表情は無い、瞳は何処までも暗く濃く深く…何かが横切った…。