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第011部 イレギュラー過ぎる召喚は神々も知らない内に/500年の孤独と独夜と独りと到達に至る導 回顧録

第019話 収納袋の中身

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転移し先に黒づくめの集団の本拠地の扉前に到着し、中の気配を探れば中に10名程子供たちをつれて戻ってくる連中を待っているようだ。
もうあの土地からはなれるのだからどうでも良いが、村が襲われない為にも黒幕は突き止めておこうと扉を蹴破った。
「すみません、貴方達は誰の依頼で子供たちを連れ去ったんですか?」
答えは返ってこないのは明白だが、目的ははっきり伝えておこうと聞いてみただけなので相手は直ぐ様矢を放ち、攻撃魔法を飛ばしてくるが飛ぶ銃に阻まれ消えてしまう。
「なっ」
「…………《クダイ国》……」
「………」
黒づくめの集団の恐らくリーダーが外神の呟きに戦き後ずさる、思考を読まれた事を顔には出さないが恐怖していた。
「………子供達は全員取り戻しました…取引きを…」
「ひ、ひぃ!!!」
収納から自害した黒づくめの男達を落とす、リーダーの男は死体に驚いた訳でも仲間の死体に驚いた訳でもない、常日常死とは隣り合わせだ、仲間の死も自分の死も大した事はないだが、そんな男が何に驚いたのか…目の前の得体の知れない存在が淡々と死体を出して来た事に驚いたのだ。
「馬で逃げた貴方の仲間の到着には少し時間が掛かります…取引をこの件から手を引いて下さい」
「うぁ…化け物…」
「この収納袋に50億ログと転移石、魔力を込めれば《カットン》という町まで何人でも転移出来ます…これで姿を消して貰えませんか?」
「な、何故だ」
「理由は分かると思います…乗らない場合は《クダイ国》を滅ぼします」
「………」
「任務に貴方達は失敗しました、その先は死ぬだけ…50億と遠い地、それとこれを…」
「これは…」
「薬ですよ、万能薬。病が治ります、如何ですか?」
「……分かった、この件から手を引こう」
「鑑定に掛けてもいいですよ、馬も返します」
外神が革袋を投げその後液体が入った瓶も渡す、収納から馬も出して彼らに返えす、周囲の黒づくめの男達は呆然とそのやり取りを見ていた。
「いや、本物なのは分かる」
「そうですか、引いてくれてありがとうございます」
外神が銃を空間に撃ち宇宙の様な空間に入ってそぢた姿を消す、黒づくめのリーダーはその場に座り込み自分の命が繋がった事に深く息を吐く…。
万能の回復薬を見つめる…確かにこれが必要だ…男は立ち上がり、部下たちに指示を出して馬で戻ってくる手下達を待った…。

『ようこそお客様、私はこの図書館の司書を勤めています。ユピカともうします』
「精霊ですね」
『はい、外神様の厚意でこちらの管理をさせて頂いております』
収納袋から次に出したのは巨木を丸々使った家、幹に扉があり中に入ればユピカという淡い緑の光を放つ4枚の羽を生やした丸い球体に出迎えられた。
「これはすごいですね」
「禁書や呪本までありますね、1冊でも相当な価値ですね」
「これは…失われた都市の歴史書か」
「此方はかつて滅んだ国の書庫のようですね」
中は螺旋の本棚がまず目に入り周囲全てが本棚として在り、ユピカがいるカウンターと机と椅子それ以外は全て本であり奥行きも長い。
ラジカが感嘆しちらりと周囲を見渡した蒐集家が面白がる、ニジェルガが背表紙のタイトルを確認しライガルが側の棚を見て驚いた。
「此処の空間はすさまじ魔力で圧縮されているね…膨大な本が保有されている…彼は一体どれほど魔法を使いこなせているのか…」
千歳が空間の緻密さに苦笑いを浮かべる、ユピカが空間にマップを出しておく。
「大河君はもう本を読んでいるね」
『自由に読んで下さい、おススメの本や気になる物、ジャンル等案内出来ますよ。食事は出せませんがお茶もご用意出来ます』
「《水没都市クリクトゥ》についての本はありますか?」
「貸し出しは出来るのか?」
「ヴィッセとテーデを呼ぼうか」
『はい、《クリクトゥ》の関連の本は11冊ございす、貸出も出来ますが此方の所有権は《アウトランダーズ商会》の方々に移行されたのでお好きにお持ちください』
「いいんですか?」
「貴重な代物ばかりですよ、保存魔法迄ご丁寧に掛けて」
『外神様は本は沢山の人に読んで貰うべきと言っています、皆様が有用に活用して頂ければ満足です、居場所のなかった我々に居場所をくれた方ですから…』
蒐集家が《クリクトゥ》についての本を訪ね、ユピカが全ての本は《アウトランダーズ商会》の物だといい、ラジカも蒐集家も流石に驚くが大河は気持ちは分かる、本は読みたいと思う人の手に渡るべきだと。
「俺がニスム君達を連れてくるから、皆は此処で本を読むといい。な、千眼さん」
「ああ…ゆっくりするといい…」
崇幸が言えば胸元にいた千眼が実体化し共にニスム達の元へと戻る、大河達は言葉に甘えて暫し読書タイムにし周辺をふよふよ飛ぶユピカの仲間たちがユピカと一緒に茶を用意してくれた…。

「ふうん、で、その外神っちはまだ戻らないわけ?」
「ナビ、ゲーテアイツはまだか?」
グローリー達の元へと懐記と率が訪れ、懐記がメシュレラに聞けばナビとゲーテに確認を取る。
【今戻ります】
【来ますよ】
「崇幸の案を向こうは呑む感じ?」
「拒否はしないな、会えば分かる」
「そ」
「来たな」
空間がパリパリと裂け表情の薄い男外神が現れる、ニスムの懐からユークスが飛び出しコロコロと外神の足元に転がって行く。
『にゅみゅにゅみゅ』
「ユークスさん…聞きました。皆を守ろうとしたと」
『にゅみゅにゅみゅ』
「貴方は臆病者ではありません、勇敢です。逃げなかったのだから」
『にゅみゅにゅみゅ』
片膝を付いた外神にポロポロと涙を流す黒い毛玉のユークス、諭すように感情の薄い声で伝える、漸くユークスの涙が止まり外神が掬い上げた。
「これからも、彼らといてくれますか?」
『にゅみゅにゅみゅ!』
「ありがとうござまいます、ニスムさんお願いします」
「はい」
ユークスをニスムに渡しメシュレラと向き合う、無感動無表情の位瞳。
「あんたが、外神っち?俺は東川懐記ーよろー」
「はい」
「今夜はメシュっち達の飯ここで用意するけど、食べたい物ある?和食とか用意出来るけど」
「カレーやラーメンも出来ますよ!懐記さん料理すごく上手なんです。始めまして僕は成澤率です」
「僕は外神といいます、食べたい物は特にないので」
「へぇ、そうなんだ。500年も異世界にいて日本での食ってた物とかも恋しくない感じ?」
「はい」
懐記が眼を細める、500年…長い年月は人を茫洋とさせてしまうのか。
「じゃ、適当にやるから仕事終わったばっかなんでしょ、休んだら?」
「……いえ、僕は商会とギルドに戻ります…。こちらにはメシュレラさんが残りますから後は…」
「外神君、その件だが。《ゼロ商会》と裏ギルドは先ほどメシュレラさんとの話し合いで俺達《アウトランダーズ商会》に吸収合併されたから今日から君は平社員だ」
メシュレラに後を頼んで立ち去ろうとすれば、転移して来た崇幸からそう告げられ。
「はい分かりました」
と彼は、答えましたとさ…。


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