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第010部 魔人達に捧げる禍つ謳

第5幕 第11話蠱毒蝶2×STAGE.5ー11バジリスク

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STAGE.5ー11バジリスク
「アドバイス料は蠱毒蝶の羽で良いですよ、今から空間を断絶する異界の剣と収納袋を渡すので腐蝕凍結魔法発動した瞬間に即座にその袋に羽を入れて下さい。グローリーさんに剣を渡して下さい、彼なら使えます」
「羽を切り落としても大丈夫なのかい?」
「その為の剣です、蠱毒蝶は羽に毒がありますから腐蝕させ分離させれば、上手くいけば無毒化した蠱毒蝶になるかもしれません。やるのはグローリーさんですし、あまり呼吸をしないようにと。それと解毒薬です、全員に飲ませて下さい。今から剣を出します、皆さん少し離れて下さい。神々、これをグローリーさんの所に運べるなら戦況が変わります」
『……分かりました』
蒐集家が提案し千歳が懸念を伝えるが、蒐集家は特に問題無さそうにし全員と距離を空け収納から禍々しい歪な黒い瘴気を放つ剣を出した。
「う…」
「なんだその剣、泣いてるぞ!」
『ウォォーン』
血を吐くような呻く声にラジカが口元を抑え、ジラが顔をしかめた。
「ええ、この剣の本来の持ち主は私が殺しましたから恨んでいるんですよねぇ。バジリスクという銘の剣です」
「呪剣…」
「ええ…己の主人を守れなかった結果己自信を呪った剣です…神々これをグローリーさんの元へ」
『……こんな恐ろしい物を…』
千眼が言えば神々も呆れつつ剣を宇宙空間に取り込む、走行中の車の食堂とドアから慌てるカトゥーシュカとヴィッセと馬の様子を見ていたトゥナー達が慌てた様子でやって来る。
「なんだ!今の禍々しい気配は!?」
「皆さん大丈夫ですか!?」
「どうしました!?」
「…今夜は長くなりそうだね」
「そうだな、コーヒー入れるか…」
「私は明日の食事の準備をする…」
「私もお手伝いしますよ」
どのみち、《ドーバン》の結果が分かるまで寝られない崇幸がコーヒーをもう一度淹れ、事情を説明する為座るようにラジカが伝えた…。

第11話蠱毒蝶2
「そこの洞窟の1番奥にキート兄さん達がいるよ!その前に俺の仲間がいる!」
「わかった!突っ込む!」
イデアがユーストから位置を教えられ、そのまま洞窟に入り教えられた場所の手前で止まり、イザラのバイクも止まりユーストが走り3人がついて行く。
「連れてきたよ!」
『キート坊っちゃん!小さい坊っちゃん!親父さんですよ!』
「お父さん!」
「待たせてごめんなさい、迎えに来た…」
「うぇー」
「魔人の赤ん坊…」
「お前が蠱毒蝶か?」
「はい…お願いします…早く…早く…僕を…殺して下さい」
『魔法は完成しやした、魔神の旦那達折角逢えましたが…』
「お父さん…お兄さん達…此処にいる子達と赤ちゃんをお願いします」
結界の中にいる蠱毒蝶…の腕の中にいる魔人の赤子を、ベルンと同じ位の年齢の小さい少年が受け取りグローリーに渡した。
「名前…教えて…みんなで帰ろう」
「………キートです、こちらのネズミさんはネズミさんです。赤ちゃんの名前はまだないです、蝶々さんはチナスさんです……」
「ごめんなさい……ごめんなさい…」
『旦那達…もう時間がありません、詳しい話しは出来ませんが兎に角此処から子供ら連れて行って下さい』
「ダメ…みんなで帰る」
「うん、教えてなにをすればいい?」
「全員で帰るからな」
「キート兄さん…」
ネズミとキートが互いに顔を見合せ首を振る、詠斗達が遅れてやって来る。
「グリ!その子達死ぬ気だ!」
「魔人と魔王でもタダですまないと神々から聞きました!」
「グリ!手はあるわ!」
「これが蠱毒蝶…」
「きれー」
「これは不味いんじゃなーい」
「神々から剣と収納袋預かりました!話しは手短かに!彼らは腐蝕凍結魔法を完成させています!それを発動させその子の背中の羽を腐蝕させ凍結させた瞬間に羽を切り落として収納袋に入れて下さい!」
『ごめんなさい!運ぶのに大分魔力を使っちゃったわ!でもこの剣ならいけるわよ!』
「わかった…」
走りながら詠斗、綴、懐記が情報を伝え、タナトスと目隠し男が蠱毒蝶の美しさに一瞬見惚れ、トラングが現状の悪さにもペースを乱さずテスカが走りながら解決方を伝え、識が力強く言い、グローリーが頷いた。
「キート、チナス、ネズミさん…大丈夫魔法発動させて…」
「お父さん…」
『旦那』
「イザラ、赤ちゃんお願いね…イザラは子供達連れて来て…テスカは剣と収納袋を…」
『はい!』
『旦那良いんですかい?』
「必ず全員で帰る」
「グローリー様!神々からタイミングは本の一瞬だと…剣はこれ…うっ」
「うん、ありがとう。始めて…みんなは…」
『残る』
「はい…でも下がっていて…」
テスカから受け取った収納袋から出現した蒐集家の剣バジリスクの放つ瘴気にテスカの顔が歪むが、グローリーは涼しげな表情で柄を握り、皆に下がる様に伝えた。
「お父さん…あの…本当にチナスさんを助けてくれる?」
「助けるのはみんな…始めよう…」
「うん!チナスさん、ネズミさん始めます!」
『はいよ!チナス殿ちぃーと痛いが我慢してくだせぇ、旦那が救ってくれます』
「けほっ…はい…」
キートとネズミが両手を翳す、それぞれの左手の小指の指が1本どろりと崩れ魔方陣が産まれていく、チナスの背に蝶の美しい羽が2枚増え計6枚となる。
『な!?』
「静かに、腐蝕凍結魔法は本来なら命を代償に発動させる魔法です、非常に複雑かつ繊細な魔法です」
「わあ、すごーい。あれをなんどもやるんだよー」
タナトスが驚愕する詠斗達に黙る様に言い、目隠し男がパチパチと手を叩く、イザラとイデアはなんとか耐えて見守る。
「21で行く…耐えて」
グローリーと黄金の瞳と暗い瞳で魔方陣の発動タイミングを伺い、計算後…21工程目が良しと判断し泣く剣を構えた。

STAGE.5ー11バジリスク
「こうして待っていても落ち着かないから、頑張った子供達にご褒美をあげたいから皆手伝ってくれないか?簡単だからな」
「いいですよ」
「何を作るかによります」
「俺は寝るわ」
「俺もな」
「俺も、明日な」
「おやすみ」
崇幸がコーヒーをもう1度淹れた後、落ち着かない面子に提案し、カイム、デュスノア、フォンは先にベッドに入る。
「コンビニスキルにゼラチンが出たからマシュマロはどうだ?」
「マシュマロって作れるんですか?」
「あの柔らかやつだろう?」
「へぇ、わかんないけど旨いのか?」
千歳と大河が顔を見合せる、作れる物というイメージは全く無い。
「面白そうですね、参加しますよ」
蒐集家も食い付いたので、崇幸がゼラチン、砂糖、卵、片栗粉を出し作り方の説明を行った。

「じゃ、とにかく沢山作るからゼラチン溶かすやつと卵白作るやつと、形作るやつに分かれてやるぞー」
「意外にシンプルなんだねー」
「確かに……すごいな」
作り方を聞いた千歳と大河がシンプルさに驚きつつ、早速皆で取り掛かる。
カトゥーシュカとジラとヴィッセ達が卵白を泡立てる係(ハンドミキサー有り)、ラジカと大河と千歳がゼラチンを溶かす係で崇幸が黄身と砂糖と片栗粉でボーロを作り、千眼と千華は引き続き朝食の準備を行った…。

第11話蠱毒蝶2
「今!」
腐蝕凍結魔法…キートとネズミの指が全て溶ける、ゆっくり再生していく、2名共痛いと声1つ上げずに集中し20の魔方陣がチナスの背を回りチナスが苦しむ。
グローリーが21個再生し再び溶けたキートの指の先、羽が腐っていき、徐々に凍っていくタイミングでチナスの背に回り込み羽にバジリスクを振り下ろした。
「うぐぅ」
1枚切り落とすのにもグローリーの身体を灼くような痛みが走る、が、耐え凌ぎもう1枚も削ぎ落とした。
『ウォォーン』
「ご…ごめんなさい…耐えて…」
泣くバジリスクにも痛みに耐え凌ぐチナスにも謝り、3枚目を切り落とした。
「あああ!?」
「痛いよね…ごめんなさい」
「へ…平気…」
「最後の1枚ーヤバいヤバいー」
そんな光景を見ていた目隠し男がピクリと動き詠斗の服の裾を引く、瞬く間に4枚目を切り落としたグローリーもピクリと切り落とす手を止めた。
「これ……腐蝕されてない?」
「違う!5枚目を切り落として距離を置いて腐蝕凍結魔法をもう一度展開しろ!」
目隠し男の言葉に即座に反応し瞬く間に5枚目を切り落として収納袋に入れて、距離を空けた。
「もう1回」
「はい!」
『はいよ!』
最後の1枚の羽…宝石で作られた様な妖しい輝きを放ち、不気味に存在していた。
キートとネズミが再度指を犠牲にし腐蝕凍結魔法を展開するが、最後の羽には何の変化も見られない。
「効かないのか?」
「不味い~毒も出てきてるー」
「一か八か、グローリー君!千歳さんの破壊魔法を羽に!」
「やってみる価値あり!」
「綴っち破壊魔法の入った石グリっちに!」
「分かりました!グローリーさん羽に破壊魔法使ってすぐに剣で切り離して下さい!」
「わかった」
千歳が投げた石を受け取り、腐蝕凍結魔法の発動を止め再度グローリーが背中に向かう。
「はぁはぁ…」
「破壊魔法発動…いける」
羽がぼろぼろと崩れたその瞬間にバジリスクを使い、そして羽が全て無くなった。
『やったー!!!』
タナトス以外がはしゃぎ、キート達に駆けよった。
『お疲れさまぁ~って言いたいけどテスカちゃ~ん、皆に解毒薬飲ませて~』
「はい!みなさん飲んで下さい!」
自分の収納ショルダーバッグから解毒薬の瓶をいくつも取り出し皆に配り、全員で飲む。
『まっず』
「うぇーん」
口を揃えて不味いと口に出し、赤ん坊はいやいやと泣いて嫌がるので綴が水あめと一緒になんとか飲ませた。
「さあ、出よう」
イザラが気を失っているチナスを抱えて、全員でオーケス達の元へと転移した…。
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