あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第010部 魔人達に捧げる禍つ謳

第5幕×STAGE.5 始動 0章

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《神の庭》…最近集まりが悪い…理由は明白、神々が勝手に自分達で部屋を造り各自ハマった物に更にのめり込んでいるだけの事だ。
今《神の庭》にいるのは大河から本を借りて読んでいる1名と、《アタラクシア》の見守り担当(シフト制)の2名だけ、今夜も3名がカジノで遊んでいるしラウンジのバーやら焼き肉屋を楽しんでいる、他はゲームやらお茶やらダンジョンの生成等で趣味を謳歌していた。
「視え辛い箇所が思ったより多いですね」
「何かしら問題が起こっている所でしょう」
「ええ……気になる場所が…《水没都市クリクトゥ》を始めとし…」
「あの場所は水の精霊王の直轄…邪神の犠牲になった………止めましょう…」
「喪い過ぎましたね…片割れがここにある限りは…」
「そうですね…ん?これは?」
「どうかしま……不味いですね、少し前から気になっていた場所…やはり…」
神が椅子から立ち上がり本を読んでいた神も立ち上がり緊急招集を掛ける、廻る《アタラクシア》の不気味に蠢く点が2つ…鈍く輝きを放っていた……。

「えぇーん」
「いいこ…いいこ…」
「えぇーん」
『小さい坊っちゃんとチナス殿…』
「ネズミさん…」
『すまないねぇ、こんな狭い結界しか張れなくてな…あっしはどうにもこういう作業が不得手でして…』
「いえ…充分です…本当に…貴方の結界が無ければとうに私は朽ち果てていました…」
「えぇーん」
街から離れた隠れた洞穴の最奥、夜空色のネズミが心配そうに張った結界の中にいる少年チナスとその腕に抱かれた赤ん坊を心配そうに見ている。
「チナスさん、ネズミさん、戻ったよ。花はまだ枯れてないね、良かった。獣も狩って来たから皆でご飯にしよ」
「キートさん…また無茶を」
『坊っちゃん…明日はあっしがやりますから』
「大丈夫です、もう少ししたらみんなで移動しましょう。ここもいつまで見つからないか分からないですし」
土埃にまみれたキートの手には花、結界の中にも花が置かれ…チナスが申し訳なさそうにしていた。
「けほけほ…」 
「ぇえーん」
か細い咳をし赤ん坊を片手で持ち空いた手で口元を押さえる、その少年は異相…背に黒と黄金の模様の蝶の羽を持ち左眼は翡翠色、右目には蝙蝠が住む共生眼を持つこの世界に2つとない姿をしていた。
「花…少なくてごめんなさい」
「いえ…ありがとう…」
「キート兄さん!肉解体出来たよ!」
「うん、皆こっちへ…焼いて食べよう」
『はーい』
子供たちが何人も出てくる、皆キートより小さく獣の耳と尻尾を持つ…所謂獣人の子供達だ。
「さ、食べよう」
キートが肉を焼き、ネズミが収納から皿を出して皆で並べる、今夜はネズミが獲物を狩りに行こう、結界の維持があるので遠くへは行けないからまた鳥等を捕まえて来よう…疲弊した子供達の…けれど肉を食べて喜ぶ表情を眺めネズミは木の実をカシカシと齧った……。

「あー不味い。うまい肉…パン…腹一杯食いたい」
廃墟のような砦の最上階…見張りをしながら干からびた干し肉を齧る、夜に狩りをしに行かなければ…仕掛けた罠の確認はまだ動ける面々が行っているが希望は薄い…何せ砂漠地帯…獲物は少ない、犯罪者にも平気商売する商人が数日に一度来てはぼったくりの値段で物を売りに来る、それが生命線だがそれもいつまで保てるか…。
「ツケも溜まっちまって……早くなんとかしないとなー」
頭をカシカシ掻きながら考えを巡らせる、やらなければならない事ばかりだ見張りをしながらもヤハネは友の無事を確認した。
「もっと力のある魔人だったら…あー止め止め!まずは、連絡と食事と怪我人の手当てに物質の調達に救出だ!」
ヤハネは気合いを入れて切り替える、明日は間も無く来る、日々をなんとか一歩一歩進んでいる綱渡りだ。
「エピシュ…耐えてろよ」

「敗戦国の最後の王族がこの大陸唯一の聖者で司祭とは…まだ神殿は落ちぬか!」
一際目立つテントの中、腹がどよんと出た偉そうな男、両脇には目が虚ろな女達を抱えて汚い唾を撒き散らしていた。
「強固な結界……ですが彼処までの魔力放置していても…」
「ならば!何故!あの国を落としてから30日以上、我々の侵入を阻む!あの神殿には我が王が求めて止まぬ秘宝があるのだぞ!?手に入れられねばこちらの首が飛ぶ!」
「ひぃ、オグノス将軍ど、どうか…」
綺麗返り血1つない黄金よ鎧に身を包む、腹の出た将軍オグノスが女達や目の前の豪勢な食事を蹴散らし剣を握るが背後で音もなく暗い眼をした男が止めた。
「うぐ」
「見苦しい」
「かはっ」
オグノスの捕まれた腕に走る痛み、暗い眼をした男が手を離しオグノスを見下ろした。
「時は満ちる…間も無く結界は綻ぶ待て…」
『………』
暗い眼をした男の厳かな声に周囲は沈黙する、暗い眼をした男は先に見える神殿と呼ぶべきか朽ちた遺跡と呼ぶべきか迷うような場所を見据えた…。

「かはっ…ヤハネ…私は…まだ生きている…此処で…」
神殿と呼ぶべきか朽ちた遺跡と呼ぶべきか…砂に埋もれた場所の地下の最奥…の祭壇の間にて、青年…エピシュ・ハーミヤス・カトナントは床に蹲り耐えていた。
目の前の白い岩で固められ水…の底に輝く2つの輝き…その2つで彼は命と此処を繋いでいた。
『諦めるのは最後の最後まで足掻いてからにしようぜ、エピシュ!国は消えても俺の友達は消えないなら俺はいい』
「ヤハネ…もう少しだけ頑張るよだから…」
エピシュは少しだけを眼を閉じる、つかの間の休息に深く深く息を吐いた…。

チリン…チリン…カジノタワーの最上階の私室…鈴が鳴る、真夜中…カジノも終わり人の気配も薄いそんな時間に蒐集家は口を大きく歪め嗤う。
「神々が動いたか」
『何が始まるのです?』
「夜が開ければ分かる」
『………』
『風早お兄様ーこの腹黒に聞いても答えないわよ~』
風早が質問し識もスマホから話しに加わる、蒐集家は愉快そうだが風早は警戒していた。
「自分達のマスターの心配でもしていれば良い」
『そうするわ~』
『勿論そうですが、貴方の事も気にしますよ』
「……失せろ」
『まあ!風早お兄様が心配しているのに!いきましょ』
『…………』
風早の言葉に機嫌を損ねた蒐集家の言葉に識が憤り、2人共去る気配を感じた。
「動き出した歯車は噛み合わず回り転がり…ぶつかる…」

第5幕:奴隷解放戦線×STAGE.5:聖者は墓標にて狂い歌を捧ぐ 始動
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