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第010部 魔人達に捧げる禍つ謳
第01話 友
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魔人には最上位、上位、中位、下位が存在し、その位はステータスに表示され絶対的な上下関係の元に成り立つとされ…いた…つい最近…下位の魔人が魔神に昇り詰め、魔王の魔力を吸収し全ての魔人の長、若い魔人の父たる存在として立つ者が現れる迄…身分は覆る事はないと魔人の誰もがそう思って…いた…いや、とある最上位の魔人達以外は…。
『なあ、カイム俺はね。いつか現れると思う、この絶対的身分差を覆えす存在が…強く…何処までも強く…真っ直ぐな魔人が…それはとても素敵な事だよ』
『そんなイカれた事言うのはアンタだけだイヴ…最上位の魔人のクセに…』
『はは、まだ魔神がいない今、可能性はあるさ。なあ、カイム……俺はさこんな身分差別無くなれば良いと思う』
『よせ…止めとけよもう…』
『ああ…』
だからそんな事言うからお前は……『さま……カイム…様…』魔人カイムは過去を夢見ていた…起こす声、風早の声に目を開ければ住み慣れぬ部屋、カジノタワーにあてがわれたカイムの部屋だった。
「ああ…少し寝ていたな。仕事の時間か」
『いえ、魘されていたので…』
「……気が利くスキルだな、茶が飲みたい」
『承知しました』
こんこんと直ぐ様扉がノックされゴーレム2体が茶を運び、テーブルに並べついでにカイム好みの辛めに味付けされた腸詰めソテーも置いてくれたのでそれを食べながら今日の予定を思い返した。
「あー風呂へでも行くか」
『それが宜しいかと…』
「お前らも茶ありがとな、うまかった」
ゴーレム達の頭をカイムが撫でて仕事前に《ホウラク》のスーパー銭湯へ向かう、仕事前の風呂は良いと思いながら転移を行った。
『坊っちゃん、大丈夫ですかい?』
「はい…大丈夫です」
『もう、7日はまともに寝てないじゃないですかい?あっしが見張りますから少し休むと良いですぜ、食べてもないですし』
「でも……はい…お願いします」
《ドーバン》という北部の貧しい国、獣人と人が暮らす場所…いや獣人差別の酷い国々で1人の少年と小さい本当に小さい夜空色のネズミが懸命に手を取り合いなんとか奴隷として過酷な生活を強いられていた獣人の子供達を率いて生き延びていた。
「ネズミさん…少し休みます」
『それが良いです良いですよ、坊っちゃん』
「はい」
「キートお兄ちゃん…」
「少し休むよ…」
『大丈夫です、あっしがいますから。みんなも少し休みましょ』
ネズミがコクリと頷く、街から離れた隠れた洞穴での生活は幼い子供達を疲弊させ続ける、キートと呼ばれた少年は洞穴のゴツゴツした壁に背を預け目を閉じる…会いたい……父親に…そう思いながらキートは束の間の休息に身を投じた…。
「くや……しい…ここ……で終わりたく……」
「ああ………」
震える身、涙する目………最期の力でそれを言い事切れた。
薄く開いたままの目を指先で閉ざして魔法で遺体を焼いていく、遺せない…だから燃やす他ない……こんなにも空は青いのに空しさが青年の心を締める。
《ドンドース》という砂漠地帯の国、過酷な環境…疲弊した僅かな兵士と人々…それも徐々に減っていた。
「疲れるな………魔人のクセに…疲れんなよ…俺…」
青年が苦笑いを浮かべる、辛い…ああ辛いな、乾きすぎた砂漠…舞う砂塵…見棄ててしまう事は簡単だ。
『君は関わり過ぎだ…私達は魔人だいつか来る役目の為に今を進んでいる』
かつての友の言葉が常に耳元をチラつかせる、理性的で合理的……友……そう思うのも本来なら赦されない存在…。
『私と君は違う…だが君と歩み寄りたい…共にあるべき姿でなくても…』
そう言ってくれた存在は遠い…逢いたい訳ではない、だが謝りたい……ダメだこんな感情は…ダメだ…まだ目の前の問題は何も片付いていない。
「ヤハネさん…もう何十日もまともに休んでいないじゃないですか」
「俺は魔人だ、休みも睡眠も食事もいらない」
それは嘘だ、ヤハネと呼ばれた青年…魔人は差程休息は必要ないそれはあくまで人々と比べればの話しに過ぎない、ヤハネは口元に笑みを浮かべ廃墟のような砦の階段を登り砂漠を見据えた。
「もう少し…待っていてくれ…ごめん、エピシュ…」
砂漠の奥…常人には見えない先の国、まだ…まだ…この敗れた戦の要の無事を確認しヤハネは本の少し目を閉じた…。
「この2ヶ所…気になります…」
「確かに上手く視えませんね」
「確かに何か引っ掛かります」
「そんな部分幾らでもあるだろう?」
《神の庭》で廻る《アタラクシア》を見つめる4名の神々、北部と砂漠を指し何かが引っ掛かると告げる。
「翔ばして視ましょう…」
後から神がやって来て白い鳥を2羽飛ばす、こういう予感は捨て置かない…そう話し合いで決めたので確認を行う。
些細な事でも、大きな事でも始まりが肝心なのだと神々は彼らから教わった。
「大した事かそうではないのかは本質を決めるのは神々たる我々ではなく、当事者達なのでしょう…何事もなければという事はないでしょう」
「ああ、問題は常に起き続けている。《アタラクシア》が治癒した所で…こうして問題は産まれ続ける」
「また…依頼を出す事にならなければいいのですが…」
神々は大きく頷く、だが予感は当たる物だ…。
『なあ、カイム俺はね。いつか現れると思う、この絶対的身分差を覆えす存在が…強く…何処までも強く…真っ直ぐな魔人が…それはとても素敵な事だよ』
『そんなイカれた事言うのはアンタだけだイヴ…最上位の魔人のクセに…』
『はは、まだ魔神がいない今、可能性はあるさ。なあ、カイム……俺はさこんな身分差別無くなれば良いと思う』
『よせ…止めとけよもう…』
『ああ…』
だからそんな事言うからお前は……『さま……カイム…様…』魔人カイムは過去を夢見ていた…起こす声、風早の声に目を開ければ住み慣れぬ部屋、カジノタワーにあてがわれたカイムの部屋だった。
「ああ…少し寝ていたな。仕事の時間か」
『いえ、魘されていたので…』
「……気が利くスキルだな、茶が飲みたい」
『承知しました』
こんこんと直ぐ様扉がノックされゴーレム2体が茶を運び、テーブルに並べついでにカイム好みの辛めに味付けされた腸詰めソテーも置いてくれたのでそれを食べながら今日の予定を思い返した。
「あー風呂へでも行くか」
『それが宜しいかと…』
「お前らも茶ありがとな、うまかった」
ゴーレム達の頭をカイムが撫でて仕事前に《ホウラク》のスーパー銭湯へ向かう、仕事前の風呂は良いと思いながら転移を行った。
『坊っちゃん、大丈夫ですかい?』
「はい…大丈夫です」
『もう、7日はまともに寝てないじゃないですかい?あっしが見張りますから少し休むと良いですぜ、食べてもないですし』
「でも……はい…お願いします」
《ドーバン》という北部の貧しい国、獣人と人が暮らす場所…いや獣人差別の酷い国々で1人の少年と小さい本当に小さい夜空色のネズミが懸命に手を取り合いなんとか奴隷として過酷な生活を強いられていた獣人の子供達を率いて生き延びていた。
「ネズミさん…少し休みます」
『それが良いです良いですよ、坊っちゃん』
「はい」
「キートお兄ちゃん…」
「少し休むよ…」
『大丈夫です、あっしがいますから。みんなも少し休みましょ』
ネズミがコクリと頷く、街から離れた隠れた洞穴での生活は幼い子供達を疲弊させ続ける、キートと呼ばれた少年は洞穴のゴツゴツした壁に背を預け目を閉じる…会いたい……父親に…そう思いながらキートは束の間の休息に身を投じた…。
「くや……しい…ここ……で終わりたく……」
「ああ………」
震える身、涙する目………最期の力でそれを言い事切れた。
薄く開いたままの目を指先で閉ざして魔法で遺体を焼いていく、遺せない…だから燃やす他ない……こんなにも空は青いのに空しさが青年の心を締める。
《ドンドース》という砂漠地帯の国、過酷な環境…疲弊した僅かな兵士と人々…それも徐々に減っていた。
「疲れるな………魔人のクセに…疲れんなよ…俺…」
青年が苦笑いを浮かべる、辛い…ああ辛いな、乾きすぎた砂漠…舞う砂塵…見棄ててしまう事は簡単だ。
『君は関わり過ぎだ…私達は魔人だいつか来る役目の為に今を進んでいる』
かつての友の言葉が常に耳元をチラつかせる、理性的で合理的……友……そう思うのも本来なら赦されない存在…。
『私と君は違う…だが君と歩み寄りたい…共にあるべき姿でなくても…』
そう言ってくれた存在は遠い…逢いたい訳ではない、だが謝りたい……ダメだこんな感情は…ダメだ…まだ目の前の問題は何も片付いていない。
「ヤハネさん…もう何十日もまともに休んでいないじゃないですか」
「俺は魔人だ、休みも睡眠も食事もいらない」
それは嘘だ、ヤハネと呼ばれた青年…魔人は差程休息は必要ないそれはあくまで人々と比べればの話しに過ぎない、ヤハネは口元に笑みを浮かべ廃墟のような砦の階段を登り砂漠を見据えた。
「もう少し…待っていてくれ…ごめん、エピシュ…」
砂漠の奥…常人には見えない先の国、まだ…まだ…この敗れた戦の要の無事を確認しヤハネは本の少し目を閉じた…。
「この2ヶ所…気になります…」
「確かに上手く視えませんね」
「確かに何か引っ掛かります」
「そんな部分幾らでもあるだろう?」
《神の庭》で廻る《アタラクシア》を見つめる4名の神々、北部と砂漠を指し何かが引っ掛かると告げる。
「翔ばして視ましょう…」
後から神がやって来て白い鳥を2羽飛ばす、こういう予感は捨て置かない…そう話し合いで決めたので確認を行う。
些細な事でも、大きな事でも始まりが肝心なのだと神々は彼らから教わった。
「大した事かそうではないのかは本質を決めるのは神々たる我々ではなく、当事者達なのでしょう…何事もなければという事はないでしょう」
「ああ、問題は常に起き続けている。《アタラクシア》が治癒した所で…こうして問題は産まれ続ける」
「また…依頼を出す事にならなければいいのですが…」
神々は大きく頷く、だが予感は当たる物だ…。
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