あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第09部 魔王たちの産声 歪

第016話 水

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「蒐集家…万能薬と麻酔薬…水棙鬼は水とその2種を程好い濃度に混ぜ合わせてくれ…」
「どうぞ」
『なるほどねぇ~』
蒐集家が収納から薬草ダンジョンから万能薬と麻酔薬を出し混ぜ合わせる、コォンは水を生成し魔力を操作し千眼と共に調整を掛けていく、チグリスに薬草ダンジョンでドロップ品の補充とキーラソー達への食料を頼み薬草ダンジョンへと転移した。
「ああ…これにキーラソーの母親を入れて…蒐集家はそのままこの水の中で腹を切開し…水棙鬼は血を逃すな…」
「これなら痛みも即時に回復も可能ですね、良いですよ。面白い」
『それ位ならするのね~』
千眼がキーラソーの母親を蝶で水の球体の中に入れて口や鼻周りを蝶が呼吸出来るように結界を張る、蒐集家が蔦を球体の中に入れ手もそっと入れる。
「ああ、これならすぐ終わりますね」
『こっち問題ないのねぇ~』
「始める…」
蒐集家の蔦の葉が鋭くなり母体の腹を割く、大河と千歳と崇幸は目を逸らしそうになるが見届けると決め母体の無事を祈る、ゴーシュは…動画を撮っていた(?)
「血の流れが速い…」
『戻すのね~血も増やしておくのね~』
「5匹か…1匹目出ます」
「あ、崇幸さんタオルを」
「あ、ああそうだな!」
「こちらで赤ちゃんの状態を看るよ…」
「ああ…」
蒐集家は集中している為千眼が蝶でキーラソーの赤ん坊を運びだし千歳がタオル越しに受け止め、状態を確認しる、良好の様ですぐに産声を上げほっとしているのもつかの間次々赤ん坊が取り上げられ、崇幸も大河もゴーシュも身体を拭いて産声と状態の確認を行い身体は皆小さいが良好なのを確認しモギのミルクを指に付けて舐めさせるようにゴーシュに教えて貰いミルクを舐めさせれば身体を震わせながらも一生懸命ミルクを吸う姿に笑みが零れる。
『………』
一方蒐集家と千眼ろコォンは無言で最後の1匹を取り上げようとしているが…手古摺っている、生きてはいる…が…。
「万能薬の濃度を上げろ」
『やっても良いけどね~』
「いけるでしょう」
コォンが魔力を制御し、蒐集家が蔦を腹の奥にいれ子供を出し小さい黒い蝶が赤ん坊の身体を運び崇幸のタオルの上に乗せた。
「呼吸が……」
「腹を塞いで終わりです」
「ゆき…身体を擦ってやれ」
「あ、ああ…頑張れ!生きろ!兄ちゃん達と母ちゃんがまっているぞ!」
崇幸が懸命に体を擦る、回復薬や万能薬ではなく生きる意思が必要とされる。母親の腹も塞ぎ眠っているのでテーブルのタオルの上に蔦で寝かせ、コォンが水を消して後は…。
「鳴いた!良かった!ほらミルクだ!」
ぴくぴくと小さい、本当に小さい生命が小さなか細い産声を上げて崇幸が安堵を浮かべてミルクを吸わせた。
「お疲れ様、コォン君、蒐集家さん、千眼さん」
『魔王だから難しくなのね~』
「中々楽しめましたよ」
「2人に対価を支払う…」
「魔王からの支払いですか?特に興味は……ああ、魔王の血だったら欲しいですね」
チリン…チリン…蒐集家の髪飾りの鈴が鳴る、千眼が出した報酬に興味が無さそうな蒐集家だったが1つ欲しい物を提示し、コォンと千歳の顔が無表情と化した。
「……そんな物よりもっと良い物をやる…」
「魔王の血よりも…ねぇ」
チリン…蒐集家の口元が大きく歪み嗤いを零す、千眼は無表情に収納から腕輪を2つコォンの目の前に蝶で運ばせた。
『これは…なるほどねぇ~もらうのね~』
自分の収納にしまい、ゴーシュの側に向かう。
「……先に言っておく…千歳、大河、崇幸…今から出す物を鑑定するのは勧めない」
「勧めないという事は絶対に駄目ではないという事かな?千眼さん?」
「……鑑定するのならば耐えうるのは千歳だけだ…」
「そう…大河君、崇幸さん。僕が鑑定させて貰うよ」
「ああ…」
「分かった、けど危険だと思ったら止めるんだ。良い物ではなさそうだ」
「はい」
『私は興味ないのね~母体と子供を連れてゴーシュいくのね~』
「分かった分かった」
いつも千眼らしからぬ言葉、大河も崇幸も初めて千眼から名を呼ばれたがそれは本当に命令…もしくは忠告なのだろう、産まれたばかりの子供達と母親はコォンが関わり合いになりたくないと言わんばかりにゴーシュも連れて《島船》へと転移して行った。
千眼が収納から小さなコルクで栓をした歪な瓶を出現させ蒐集家に放る、それを受け取った蒐集家の表情が変わった…チリン…チリン…ヂリンっ……鈴が濁った音を立てた。
「これは…またとんでもない物を…これの対は?」
「……」
千歳が蒐集家の手に渡った歪な瓶を鑑定に掛ける……ミぃなァイホぅがイィ…しィらァなぁイホぉガいぃぃいぃ……みぃチャだぁアめェえぇぇ……。
「うっぐ……」
「千歳君!?」
「あーあせっかく忠告して貰ったのにぃ視ちゃうからですよ?」
「神々から電話…………千眼その瓶はなんだ?神々が怒っている…のか?何かを言っているが分からない」
眼を抑え膝が崩れる千歳、自動で状態異常無効で精神を回復していくがそれを上回る気持ち悪さと不快さが千歳の身体を這う。
蒐集家が歪に大きく口元を歪め嗤う…ヂリン…千眼は無表情にその瓶を眺めている、濁り切った嫌な不快な液体に満たされた瓶、神々の抗議が大河のスマホから支離滅裂に聞こえて来る。
「片割れはそちらに渡す…永遠の別離だ…」
千眼が同じものを大河のスマホに向かって投げればすぐさま瓶が消える、千歳が乱れた呼吸を直し立ち上がった。
「確かにこれは魔王の血よりも価値のあるものですね、しかも2対で1つ…《神の庭》に片割れが行ってしまえば永遠に揃わない」
「千眼それは何だ?」
「双子の邪神…かつてとある大国の王と英雄を犠牲にして封じた邪神だ…それを封じる為に国が1つ沈んだ」
「じゃしん?神々からの知識にも無いぞ?」
「邪神は《アタラクシア》の邪神…という種…すみません説明が上手く出来ない、魔王と同等の…人の……うっくぅ」
「千歳さん喋るな」
「ああ、無理するな」
「ごめん…千眼さん…忠告を聞かなかった僕の判断ミスだ。魔王というスペックを驕っていたよ」
「千歳…《アタラクシア》には容易くこちらの思考を超える存在がいる…この件で私が話す事はない…気に入ったか?」
「ええ、素晴らしい。私の手帳にあったので最高ですね。まあ、1体ならばせいぜい魔王の下程度ですから」
「ああ…その程度だ」
大河の問いに千眼が答えるが大河と崇幸がこの世界に来る前に神々から与えられた知識の中には邪神という存在は無い、千歳が説明しようにも回復しきっていないので無理をさせるつもりもない。
「《島船》に行こう…ゆき…主は?」
「母親と赤ん坊とヒビカに会わないとな、千歳君肩を貸そう…向こうで休もう」
「え、ええ…」
「俺は…浄化が終わるまで、コイツといる」
「ご勝手に」
千眼たちが《島船》に転移し、残ったのはゴーレム達と蒐集家と大河だけだった…薄気味悪い静けさが広がった…。
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