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第09部 魔王たちの産声 歪
第012話 欠ける記憶
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カウン酒で酔いに酔った面々、テーブルには酒瓶やつまみの食い残しが散乱しゴーシュと大河がテーブルに突っ伏して寝てしまっていた。
コォンがゴーシュを風魔法でベッドに運び、ついでに大河や酔って寝ているゴーレムやヒヨコやおりがみの子達もベッドにまとめて寝かせて魔人の眠る個室へと静かに入れば、ベッドの淵で魔人の手を握り眠るグローリーと壁に背を預けコォンを待っていた蒐集家がいた。
「お優しい事で」
『私は優しい番外個体なのね~ん』
「よく言う」
蒐集家が嘯くコォンに呆れ返るが、暫し会話に付き合って貰う。
「それで、魔人の夢に行くつもりか?」
『まあ、久しぶりにお話しするのね~』
「ふぅん、ああ、そうだ第11大陸はどうなっている?」
『どうもこうも…この世界に存在しない《てんし》を造っているのね~』
「てんし?一君がてんしね…魔人の対か…」
『さあ、あの魔王の考えている事など理解できないのね~ん』
「そうか?私は分かるが」
『それは貴方が同類なのね~』
「誉め言葉だな、それと魔人の血を調べた結果核の損傷が酷過ぎる。解毒は明日には終わるが、損傷は現状どうにもならない」
『分かったのね~私はこの2人の中に入るのね~長かったら起こすのね~』
「それ位はしてやる」
『じゃいくのよ~』
コォンが眼を閉じ蒐集家がその様を眺め、静かに夜が進んでいく…。
「僕は寂しかったんだ…」
「うん…」
2人の夢の中グローリーと魔人はイザラとイデア位の姿でジラの花に囲まれた土の上に座り、グローリーは魔人の話しを聞いていた。
魔人が見上げる空の色は灰色…ここは彼の夢の中にグローリーが入り込んだ形なので、魔人の心象風景が強い、自分の夢の中ならどんな風景だったのだろうかとグローリーは思ったがよく分からなかった。
「今ね空…青い…《アタラクシア》が回復した」
「そう…そうなんだ…」
だから一緒に空を見ない?とグローリーは聞くつもりだったがなんとなく言葉を呑み込んだ、彼は灰色の空も好きだとそんな目をして空を見上げているからだ。
「家族いる…逢いたい…大切な人もいる…ともだちもいる…今嬉しい…だから一緒に…」
「………」
『それは厳しいのね~核の損傷が酷いのね~」
「かわいい魔王さん…」
『おひさしぶりなのね~』
「ひさしぶりなのかな?」
『300年ぶりなのね~』
「そう…なんだ。やっぱり魔人は死ねないんだ…」
『死ぬ手前まではいっているのね~』
「そう…なら…」
このままで…という魔人の言葉をグローリーは手を握り阻止する、寂しいと死にたいと願う彼の心を引き留めたい。
「待って…俺に貴方を下さい…俺に貴方を託して…もう二度と寂しい思いをさせないから…会って欲しい家族やともだちがいる…どうかお願い…今の《アタラクシア》を見て…一緒に…みんなで青い空をみよう…」
「ぁ…」
『その後で選んでも良いと思うのね~』
「魔王さん…」
グローリーの手の上に自身の手を重ねる、何処までも互いに冷えた手と手、魔人は俯いてそして孤独過ぎた過去を振り切り、未来を魔神皇と進む決意をした。
「生きる…生きます…」
「うん…もう独りにしないから…」
『でも核の損傷が酷いのね~時間が必要なのね~核が癒える迄記憶が欠けた状態になるのね~ん』
「あ…」
「大丈夫…記憶なくてもみんないるから…」
『核が癒えれば戻ってくるのね~』
「魔王さん…」
魔人がコォンを抱き寄せ頭に頬を寄せる、かつてこうして共に過ごした時間があった、懐かしい重みに魔人は笑う。
「待っててくれていた…」
「ありがとうごめんね…僕の可愛い魔王さん…」
『恩人だから~』
「うん…あの1つ魔神様にお願いがあります」
「グローリー…グリと呼ばれている…」
「グローリー…グリ…僕に名前を下さい…僕は毒ダンジョンで生まれ変わったつもりでもう一度この世界を貴方と歩いていこうと思います。だから…だから…名前を下さい…」
「…分かった少し待っていて」
「うん」
『道筋は決まったのねえ~もうじき目覚めるのね~』
『うん』
グローリーと魔人は手を繋ぎしっかりと力を入れて頷く、コォンはそんな2人を見て嬉しそうだった。
ゆっくりと2人の意識が深く沈んでいく、もう間も無く目覚める時間が訪れる…。
『もうすぐ起きるのね~』
「早かったな」
『魔神皇が説得したのね~』
「ふぅん、こちらはそこそこ愉しめたからな」
『貴方の悠久の刻の束の間の退屈しのぎになったのなら良いのかもしれないのね~』
「それは彼らも似たような物だ」
先にコォンが目覚め蒐集家が先ほどと同じ体制でいた、30分程しか経っていないがコォンには少し長く感じられた。
「生き続ける事を選択したようだな」
『視ていたのね~ん』
「魔人には多少興味がある」
『解毒してくれた事には感謝するのね~』
「貸し1つか悪くはないな」
『それでいいのね~ん』
蒐集家が大きく口元を歪め笑う…チリン…コォンは大して気にもせずゴーシュが寝るベッドに行き傍らに座って眼を閉じる、蒐集家は2人を残し自分の個室へと戻ろうとした所で大河と会う。
「ああ、起きましたか?水か何か飲みます?」
「ああ…」
コップに水魔法で水を注ぎ大河に手渡し、大河はそれを一気に飲み干した。
「もう一杯飲みます?」
「いや」
「そうですか、ではおやすみなさい」
「……お前は何故《アタラクシア》にいる?」
「……教えませんよ」
大河の問いに蒐集家が振り返りもせず自室へと向かう、大河は目が覚めてしまったとベッドに行き本を読みながら浅い眠りに就いた…。
コォンがゴーシュを風魔法でベッドに運び、ついでに大河や酔って寝ているゴーレムやヒヨコやおりがみの子達もベッドにまとめて寝かせて魔人の眠る個室へと静かに入れば、ベッドの淵で魔人の手を握り眠るグローリーと壁に背を預けコォンを待っていた蒐集家がいた。
「お優しい事で」
『私は優しい番外個体なのね~ん』
「よく言う」
蒐集家が嘯くコォンに呆れ返るが、暫し会話に付き合って貰う。
「それで、魔人の夢に行くつもりか?」
『まあ、久しぶりにお話しするのね~』
「ふぅん、ああ、そうだ第11大陸はどうなっている?」
『どうもこうも…この世界に存在しない《てんし》を造っているのね~』
「てんし?一君がてんしね…魔人の対か…」
『さあ、あの魔王の考えている事など理解できないのね~ん』
「そうか?私は分かるが」
『それは貴方が同類なのね~』
「誉め言葉だな、それと魔人の血を調べた結果核の損傷が酷過ぎる。解毒は明日には終わるが、損傷は現状どうにもならない」
『分かったのね~私はこの2人の中に入るのね~長かったら起こすのね~』
「それ位はしてやる」
『じゃいくのよ~』
コォンが眼を閉じ蒐集家がその様を眺め、静かに夜が進んでいく…。
「僕は寂しかったんだ…」
「うん…」
2人の夢の中グローリーと魔人はイザラとイデア位の姿でジラの花に囲まれた土の上に座り、グローリーは魔人の話しを聞いていた。
魔人が見上げる空の色は灰色…ここは彼の夢の中にグローリーが入り込んだ形なので、魔人の心象風景が強い、自分の夢の中ならどんな風景だったのだろうかとグローリーは思ったがよく分からなかった。
「今ね空…青い…《アタラクシア》が回復した」
「そう…そうなんだ…」
だから一緒に空を見ない?とグローリーは聞くつもりだったがなんとなく言葉を呑み込んだ、彼は灰色の空も好きだとそんな目をして空を見上げているからだ。
「家族いる…逢いたい…大切な人もいる…ともだちもいる…今嬉しい…だから一緒に…」
「………」
『それは厳しいのね~核の損傷が酷いのね~」
「かわいい魔王さん…」
『おひさしぶりなのね~』
「ひさしぶりなのかな?」
『300年ぶりなのね~』
「そう…なんだ。やっぱり魔人は死ねないんだ…」
『死ぬ手前まではいっているのね~』
「そう…なら…」
このままで…という魔人の言葉をグローリーは手を握り阻止する、寂しいと死にたいと願う彼の心を引き留めたい。
「待って…俺に貴方を下さい…俺に貴方を託して…もう二度と寂しい思いをさせないから…会って欲しい家族やともだちがいる…どうかお願い…今の《アタラクシア》を見て…一緒に…みんなで青い空をみよう…」
「ぁ…」
『その後で選んでも良いと思うのね~』
「魔王さん…」
グローリーの手の上に自身の手を重ねる、何処までも互いに冷えた手と手、魔人は俯いてそして孤独過ぎた過去を振り切り、未来を魔神皇と進む決意をした。
「生きる…生きます…」
「うん…もう独りにしないから…」
『でも核の損傷が酷いのね~時間が必要なのね~核が癒える迄記憶が欠けた状態になるのね~ん』
「あ…」
「大丈夫…記憶なくてもみんないるから…」
『核が癒えれば戻ってくるのね~』
「魔王さん…」
魔人がコォンを抱き寄せ頭に頬を寄せる、かつてこうして共に過ごした時間があった、懐かしい重みに魔人は笑う。
「待っててくれていた…」
「ありがとうごめんね…僕の可愛い魔王さん…」
『恩人だから~』
「うん…あの1つ魔神様にお願いがあります」
「グローリー…グリと呼ばれている…」
「グローリー…グリ…僕に名前を下さい…僕は毒ダンジョンで生まれ変わったつもりでもう一度この世界を貴方と歩いていこうと思います。だから…だから…名前を下さい…」
「…分かった少し待っていて」
「うん」
『道筋は決まったのねえ~もうじき目覚めるのね~』
『うん』
グローリーと魔人は手を繋ぎしっかりと力を入れて頷く、コォンはそんな2人を見て嬉しそうだった。
ゆっくりと2人の意識が深く沈んでいく、もう間も無く目覚める時間が訪れる…。
『もうすぐ起きるのね~』
「早かったな」
『魔神皇が説得したのね~』
「ふぅん、こちらはそこそこ愉しめたからな」
『貴方の悠久の刻の束の間の退屈しのぎになったのなら良いのかもしれないのね~』
「それは彼らも似たような物だ」
先にコォンが目覚め蒐集家が先ほどと同じ体制でいた、30分程しか経っていないがコォンには少し長く感じられた。
「生き続ける事を選択したようだな」
『視ていたのね~ん』
「魔人には多少興味がある」
『解毒してくれた事には感謝するのね~』
「貸し1つか悪くはないな」
『それでいいのね~ん』
蒐集家が大きく口元を歪め笑う…チリン…コォンは大して気にもせずゴーシュが寝るベッドに行き傍らに座って眼を閉じる、蒐集家は2人を残し自分の個室へと戻ろうとした所で大河と会う。
「ああ、起きましたか?水か何か飲みます?」
「ああ…」
コップに水魔法で水を注ぎ大河に手渡し、大河はそれを一気に飲み干した。
「もう一杯飲みます?」
「いや」
「そうですか、ではおやすみなさい」
「……お前は何故《アタラクシア》にいる?」
「……教えませんよ」
大河の問いに蒐集家が振り返りもせず自室へと向かう、大河は目が覚めてしまったとベッドに行き本を読みながら浅い眠りに就いた…。
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