あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

文字の大きさ
上 下
379 / 866
第09部 魔王たちの産声 歪

STAGE.4-FINAL おかえりとただいまと逢いたかった 

しおりを挟む
「毒ダンジョンにいた魔人…大分毒に侵食されていますね、解毒薬は飲ませてみますが」
蒐集家と大河が個室に入り寝かせている魔人を調べる、蒐集家を見張るようにラジカに頼まれ大河が魔人を調べる蒐集家を少し離れた場所で見ていた。
収納空間から薬草ダンジョンのドロップ品の解毒薬の瓶を開け口に含み、口移しで魔人に飲ませる、ひんやりとした体温の通っていないような身体、口腔内も冷たく舌で歯列を少しこじ開け解毒薬を流し込む反射的な嚥下はするので生きてはいるが毒に侵食され過ぎていて血液までにも毒が廻っている…面白い、解毒薬全てを口移しで飲ませ部屋を出る。
「これで目覚めなければ血液を調べたいですね、目覚めるまで私が預かります」
「グリに確認する、お前に渡すのは不安だ。俺がつく」
「どうぞ、ご勝手に」
「そうさせて貰う」
蒐集家が大河の決定に不満を言う事も無い、皆がいる食堂に行き状態を話した。

「分かった…よろしくお願いします、おれもイザラ達と家に戻ってカーテスパパたちに頼んだら此処に来ます」
「ご勝手に血は少し貰いますね」
「はい…お願いします」
『私もそっちに行くのね~ん』
「ただの興味本位の延長です、浄化が終わりこの森を出ればカジノタワーで彼の状態を看ていくつもりですが」
『かまわないのね~』
「良いでしょう、番外個体魔王にも興味があります」
『私も貴方に興味あるのね~』
「それは光栄です」
『……ふうんなのね』
「おいそこの腹が真っ黒コンビそろそろ転移可能区域だと、大河も1度は戻るぞ顔は出せ…あーいや皆にこっち来てもらうか」
「……そうして貰う」
「大河…ありがとうすぐ来るから…」
「来るなら明日にしろ、家族と過ごせ」
「……うん」
ジラが視線を交わし互いに思考を読み取ろうとするピンク子ゾウと蒐集家に呆れ、大河にも1度戻るようには言うが…不穏を感じて考え直し、グローリーは大河に頭を下げて転移可能区域へと踏み入れた。
「では、戻りましょう。話しをしてきますね」
「ああ、頼む」
「じゃ、後でな」
「ああ」
挨拶を交わしグローリー達とチキろ動物達は1度皇国へ、デュスノアはカジノタワーの自室へ、ラジカとジラはきゅうとふー達は詠斗達の元へと転移で戻り残ったのは大河、収集家と大河とピンクの子ゾウと眠っている魔人のゴーレムとヒヨコとおりがみの子達だけとなった。
「静かだな…本でも読むか…」
「私は部屋で作業します」
『私は魔人の所にいるのね~』
「ああ…読むか…」
ゴーレム達がいそいそとお茶の支度をし、大河は収納からランダムに出した本を手に取るザラザラと質の悪い紙、雑にまとめられたのは《アタラクシア》の本、大河は静かにページを捲り始めた…。

「おかえりなさい!みんな…」
「よく…かえ…」
皇国のグローりー宅、ゴーシュもティスも居間で出迎えてくれたがカーテスとウォルゾガの表情も明るく…一転してグローリーに詰め寄った。
「ケガをしたの?」
「おい、お前がか?」
「うん…少し無茶した…」
「おとたん!」
「ぱぱー」
「ただいま…ありがとう…」
グローリーが微かに笑うので2人共祖以上は言うのは止め、トタトタ歩いてくるエクトとセレネが足に抱き着いてきたのでしゃがんで2人を抱き締めた。
「話し聞かせてくれよ、グリ。その赤ん坊も…魔王の事にそっちのヤバい魔物達の事も」
「うん、話したい事沢山ある」
「そうだな、茶でも淹れるか…お前らも入れよ」
玄関口でこっちを伺うベータードート達、ウォルゾガとカーテスの気配に怯えているようだがちょいちょいとウォルゾガが手招きすればカーテスがタオルを渡し足等を拭いて上がって行く。
『おやつ!おやつ!』
「なんだこの魔王」
「チキ…おやつさっき食べた、ダメ」
『っチ』
「じゃ、夜まで我慢我慢。ほら座って話し聞かせてくれ。魔人は救出出来たのか?」
「出来たぞ!親父が頑張った!」
「良かったじゃんグリ」
「うん…話し沢山する」
ほんの少し離れただけでも恋しかった家族、帰るべき場所、大事で大切な場所だった…。

「風早、今からこれを妖精国へ送る。結界を弱めてくれ」
『承知しました、お食事は?』
「肉と飯で、後は任せる。後は酒だ」
『承知しました、何を用意しますか?』
「なんでもいい」
『承知しました』
カジノタワーのデュスノアの自室、ソファーに座りテーブルにドロップ品の転移鏡を置き風早に頼めば目の前から転移鏡が消え、代わりにカノリ酒のボトルとグラス、更に燻製チーズと燻製肉が盛られたものが現れる、気が利く事だと感心し酒を呑む。
「ああ、そういえば《追放の妖精王》が此方にいる事を伝えてないな。まあいいだろう」
優雅に足を組み薄く微笑を浮かべ酒に映る自分の姿を目にし、暫くは退屈しないだろうと酒を口にした…。

「えーそれじゃグリさんが救出した魔人はまだ目が覚めてないんだ」
「早く回復するといいですね」
「大河君が残るとはね…番外個体魔王…明日僕も会いにいこうか、話によると大河君達と今いる方が危険だね」
「俺、グローリーさんの家に行ってみてもいいかな?赤ちゃんやチキに会いたい」
「僕も行きたいです」
「じゃ、俺も行くわ」
「俺は明日千歳ちゃんと大河ちゃんの所に行くよ、崇幸兄と千ちゃんと華ちゃんも行こう」
「ああ…」
「ええ、是非会いたいですね」
「じゃ、俺は明日イザラとイデアにご褒美を渡しに行くか」
ラジカとジラときゅうとふーが戻り事の顛末を詠斗達に話して、大河に明日会いに行く面子とグローリーの家に行く面子で分かれる事にしラジカとジラを労った。
「今日は久しぶりに畑ご飯!ナイルさん達が準備しているよ!」
「お風呂に行って、行きましょう。イシュターさんやラウラスさんも今お肉焼いてくれてますよ」
「そりゃあ、楽しみだな。今夜はイシュターとラウンジにでも行くか」
「久しぶりで良いですね」
ジラもラジカも帰って来た感じがして心地良い、今日はゆっくり千歳と話しをしながら過ごそうかとラジカは思った…。
「逢いたかったよ、ラジカ」
「ええ、私もです。千歳」
千歳が隣に並いラジカが千歳を横目で見てニコリと笑う、今夜は会話を楽しみながら酒でも飲もうかと思いながら畑へと皆で転移した…。

STAGE.4 END

オマケ
『ゴーシュ様が来ます』
「ゴーシュが?どうしたんだ」
『げ…なのね~』
「ん?知り合いか?」
『私…ちょっと出るのね~ん』
車内で緑茶を飲みながら本を読んでいると風早からの放送に大河が顔を上げ、食堂の片隅にいたピンク子ゾウが嫌そうな声を出し立ち上がって外に出ようとすると…時すでに遅し、ゴーシュが転移で車内に現れピンク子ゾウの前に塞がる。
「お前は本当に薄情」
『ゴーシュ…』
「久しぶりだなコォン」
「知り合いか?ゴーシュ」
「ああ…俺の大事な存在…逢いたかった」
ゴーシュがピンクの子ゾウ…コォンを見下ろし行く手を阻む、コォンは気まずそうに眼を逸らした。
「……なら、良かったな会えて…俺は部屋にいるから落ち着いたら飯でも食うか」
「助かる、大河」
「ああ」
大河はゴーシュの徒ならぬ雰囲気に巻き込まれるの面倒だと早々に自室に引き上げ、ゴーレム達もついて行った。
「……何があった?」
『何もないのね~ん』
「グリから魔人の事は聞いた」
『ならそれが全てなのね~』
「お前は俺に逢いたくなかったのか?あれからお前が忘れられずずっとお前にまた逢える日を…旅もした…でもお前は何処にもいなかった…約束覚えているよな?」
『忘れてないのね~ん』
ゴーシュが今にでも泣き出しそうな顔をしてコォンの前足の脇に手を入れ抱えて抱き締める、コォンは何も言わずされるがまま大人しくしていた。
「もう、俺から離れないでくれ…側にしてくれ永久に…」
『それが…ゴーシュの願いなのね~』
「ああ…片時もお前を忘れた事はない…愛している…」
『…………』
「…ふ…お前は本当に薄情なやつだよ…」
ゴーシュがコォンの身体に顔を埋めるゴーシュは幸せそうに微笑む、コォンはゴーシュの心臓の音を聞きながら何も言わず目を閉じた……。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界無知な私が転生~目指すはスローライフ~

丹葉 菟ニ
ファンタジー
倉山美穂 39歳10ヶ月 働けるうちにあったか猫をタップリ着込んで、働いて稼いで老後は ゆっくりスローライフだと夢見るおばさん。 いつもと変わらない日常、隣のブリっ子後輩を適当にあしらいながらも仕事しろと注意してたら突然地震! 悲鳴と逃げ惑う人達の中で咄嗟に 机の下で丸くなる。 対処としては間違って無かった筈なのにぜか飛ばされる感覚に襲われたら静かになってた。 ・・・顔は綺麗だけど。なんかやだ、面倒臭い奴 出てきた。 もう少しマシな奴いませんかね? あっ、出てきた。 男前ですね・・・落ち着いてください。 あっ、やっぱり神様なのね。 転生に当たって便利能力くれるならそれでお願いします。 ノベラを知らないおばさんが 異世界に行くお話です。 不定期更新 誤字脱字 理解不能 読みにくい 等あるかと思いますが、お付き合いして下さる方大歓迎です。

レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~

裏影P
ファンタジー
【2022/9/1 一章二章大幅改稿しました。三章作成中です】 宝くじで一等十億円に当選した運河京太郎は、突然異世界に召喚されてしまう。 異世界に召喚された京太郎だったが、京太郎は既に百人以上召喚されているテイマーというクラスだったため、不要と判断されてかえされることになる。 元の世界に帰してくれると思っていた京太郎だったが、その先は死の危険が蔓延る異世界の森だった。 そこで出会った瀕死の蜘蛛の魔物と遭遇し、運よくテイムすることに成功する。 大精霊のウンディーネなど、個性溢れすぎる尖った魔物たちをテイムしていく京太郎だが、自分が元の世界に帰るときにテイムした魔物たちのことや、突然降って湧いた様な強大な力や、伝説級のスキルの存在に葛藤していく。 持っている力に振り回されぬよう、京太郎自身も力に負けない精神力を鍛えようと決意していき、絶対に元の世界に帰ることを胸に、テイマーとして異世界を生き延びていく。 ※カクヨム・小説家になろうにて同時掲載中です。

家族で突然異世界転移!?パパは家族を守るのに必死です。

3匹の子猫
ファンタジー
社智也とその家族はある日気がつけば家ごと見知らぬ場所に転移されていた。 そこは俺の持ちうる知識からおそらく異世界だ!確かに若い頃は異世界転移や転生を願ったことはあったけど、それは守るべき家族を持った今ではない!! こんな世界でまだ幼い子供たちを守りながら生き残るのは酷だろ…だが、俺は家族を必ず守り抜いてみせる!! 感想やご意見楽しみにしております! 尚、作中の登場人物、国名はあくまでもフィクションです。実在する国とは一切関係ありません。

処理中です...