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深楽朱夜

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第09部 魔王たちの産声 歪

STAGE.4-4 焼き肉

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「よし、車完成したな!」
「バトルしやすいように屋根の開閉、結界強化と魔石により駆ける要塞として毒ダンジョンに挑めるようにしました」
「……明日のテストプレイが楽しみだ…」
黒く輝く4WDのSUV車、沼地でも走行可能耐久性に優れた車を満足気に3人が眺めた。
「わ!すごいの出来たね!」
「カッコいいですね!」
「今度運転させて」
詠斗達も戻り完成した車にはしゃぐ、イシュターやチグリスナイルとジラも戻って車に興奮していた。
「おーこれ明日使えんの?すごいじゃん」
「すさまじい魔力量だな」
「…乗りたい」
「崇幸さん達すごいですね、お疲れ様です。少し休憩しませんか?おやつありますよ、蜂蜜シャーベットです」
「お、いいな!」
ジラが子供ように目を輝かせ車を隅々まで見て回り、チグリスとイシュターは内部を見せて貰う。
ナイルが収納ショルダーから蜂蜜シャーベットをテーブルに並べて、全員が椅子に座った。
「焼き肉屋の器材が出来たから今日は焼き肉ね、飯炊いとくから。皇国のグリっち達にも今日は鍋をキャンセルしてこっち来るようにいっとくわ」
「嬉しいですね」
「お、楽しみだな!舵達も呼ぶか」
「いいですね」
「大河さんと蒐集家さんにも声掛けときましょう」
「肉ダンジョン…行く」
「チグリス…私も行こう」
「うん…」
シャーベットをお代わりしたチグリスが焼き肉と聞きいそいそと立ち上がればイシュターも続く、親子2人で肉ダンジョンへ向かった。
「そうそう、さっき崇幸さんと話してたんですが、フードコートにハンバーガー屋はどうです?」
「最高!俺、ハンバーガー好きなんだ!」
「へぇ、いんじゃない?」
綴がシャーベットを食べ終わりお茶を千眼から貰う、詠斗が身体を乗り上げ喜び懐記が熱い緑茶を呑みながら頷いた。
「安定した材料の供給が出来てきているけど、今難しいのは小麦かな」
「結構時間かかりますしね、育つのは早いですけど小麦粉にするのは…」
「落ち着いたら製粉出来る機会も造ろう」
「そうですね!」
『こちらでも設備を整えます』
「風早…仕事しすぎじゃないのか?」
『問題ありません、ゴーレム達が運用してくれるので私は提供しているだけです。雇用にも繋がりますから、私に疲労という概念はありません』
「それなら、いいけど。程々にーすごく助かってるんだから」
『ありがとうございます、詠斗様』
「本当に風早は働き者ですね」
『マスターに似たんですよ』
この世界は小麦粉を使った物を主食としているので、小麦の栽培は盛んだが安定した量の供給となれば難しくもなる、崇幸が道具を用意しようと言うと風早が引き受けてくれる、綴が褒めれば応えてくれる。
「お願いしますね」
『はい、承知しました』
ナイルとジラは野菜や肉を切る手伝いに残り各々また作業に戻っていく、崇幸達はキッチンカーの制作の続きに戻った。

「おい、今夜は焼き肉だ」
「そうですか、ではそれまで薬草の乾燥と磨り潰しをお願いしますね」
「ああ」
ラインのメッセージを確認した大河が蒐集家に告げる、特に嫌だとも言わずに淡々と薬を準備している、暫くして蒐集家が顔を上げて大河に尋ねた。
「ここの商業エリアの野菜やキノコを買いに行きますが来ますか?」
「差し入れか?」
「まあ、そうです」
「行こう」
お前も行くぞとは大河も言ってないがわざわざ蒐集家に告げる位だ連れて行くつもりだろうと括り、カウンターから出て大河と共に買い物に出た。

「この酒とこの酒を3本ずつ下さい」
「はーいどうもー」
露店の酒屋で陶器の器に入った酒を2種類3本ずつ購入する、続いて隣の香辛料屋で調味料を幾つか購入し、野菜や果物を売っている露店で焼いたら美味しそうな物を適当に囲み、最近開店したキノコ専門店でキノコを…。
「いらっしゃい!」
「焼いたら美味しいキノコが…」
「うちのキノコは何でも美味い!」
体格の良い日に焼けた男が白い歯をニカっと見せ両手を広げて胸を張る、大河もマジマジとキノコを見て肉厚で瑞々しく新鮮でどれも美味しそうに見えた。
「全部くれ、良いか?」
「お、おう!嬉しいじゃねぇか!時間を掛けて焼くと香りも良くて…そうだこれはオマケだ!」
店主がコインを大河から受け取り収納にしまっている間、店主が《アウトランダーズ商会》から貸し出している収納袋から白い豆を入れた草で編み込んだ袋を大河に渡す。
「これは?」
「うちの村周辺で沢山生えているんだ、スープに入れると美味いぞ!軽く炒って塩掛けると良いつまみになるからな」
「大豆のような物ですね」
「店主、これの苗があれば売って欲しい」
「おう、家の裏に沢山生えているから持って来るよ」
大豆に似た植物なら使い道は沢山ある、男が頷いて商品が無くなり早々に店仕舞いをして村に戻って行った。
「買い物は?」
「これでいいです」
「なら、行くぞ」
「はい」
蒐集家を連れホテルの焼き肉屋に転移する、商業エリアの空は夕焼けに染まりつつあった…。

「本格的な焼き肉屋だな」
「あ、大河さん!もうじき焼き肉始めますよ」
「ああ、皆は何をしているんだ?」
「グラスやコップ造りです」
「網とかも作ってます、見て下さい!これすごくないですか炭風魔石です!お肉も素早く美味しく焼けますよ!」
「便利だな」
「懐記さん、焼き肉招待ありがとうございます。キノコと酒と香辛料です、どうぞ」
「へぇ、お気遣いどうも。キノコ好きなの?」
「……まあ」
「そ、まだ時間あるから座って待っとく?」
「ええ、皿やコップ造りでもします」
「よろー」
厨房に蒐集家が向かい懐記に声を掛け購入したキノコと酒と調味料を渡す、キノコが好きなのかと尋ねられ少し間が開いて蒐集家が笑う、特に何も言わない懐記がそれらを受け取り厨房の奥へと戻った。

「じゃ、準備出来たので各テーブルに座ってー」
詠斗の声で備品造りや器材造りを行っていた面々が各テーブルに着いて、ゴーレム達やヒヨコ達、おりがみの子達がまずは皿やカトラリー類に調味料を運んでくれる、率達と舵達が可愛いと写真を撮っていた。
「メニューは無いから運んできた物を焼いて食べて、その七輪…テーブルの真ん中に置かれている器魔力を注ぐと火が入るから必ず網の上に肉や野菜を乗せてしっかり焼いてー。後はゴーレム達にお代わりや追加を頼んで」
「じゃ、皆飲み物はある?」
『はーい』
「カンパーイ」
『カンパーイ』
グローリー達もゴーシュとティスとティータ、ライガルやニジェルガと共に掘りごたつの座敷で肉や野菜を焼いき始める。
その隣りの座敷でも舵やベルン達が肉や野菜を子供達の子守をしながら食べ始めている、子供用の食器の用意して貰い動き回る子供達の面倒をゴーレム達が見てくれ隅には玩具なども用意され飽きないように工夫されていた。
「晴海達の世界はすごいなー」
「そうだね!焼き肉はご馳走だよ!」
「もう、いい?」
「まだダメだよ、肉赤いからちゃんと両面ひっくり返してしっかり焼いてね」
「ご飯ありがとう…」
晴海が肉の焼き方を教え、グローリーがゴーレム達が運んできたご飯を貰い皆に配り、ウォルゾガとカーテスが野菜や焼いた肉をエクトとセレネに食べさせていく。
「うーんおとたん」
「うーぱぱー」
「美味いか?」
「美味しい?舵ちゃんとベルンちゃん達も食べてる?」
「はーい、すぐ肉焼けるから良いね」
「ほら、みんな焼けたからな。沢山食べるんだぞ!」
「こちらも焼けたから食べなさい」
『はーい』
本日はカタンの父親とカラクと祖父のカクラも席を共にしせっせと肉を焼いて、子供達に渡していった。
「きゃはは!」
カタン達が面倒を見ている赤ん坊は食事よりも遊びたいらしく、ゴーレムとヒヨコとクラークラック達に遊んで貰いご機嫌だった。

「ほい、キノコの礼ね」
「これは?」
「キノコのホイル焼き、味噌と醤油とかニンニクチューブと胡椒もあるから好きに食べて」
「ありがとうございます」
大河、蒐集家、率と綴と懐記卓で懐記がアルミホイルに包んだ物を蒐集家の前に置く、収集家が内容を聞き礼を言って網の上に置いて待つ。
「七輪も網も大きいし早く焼けるし、煙も出ないから良いですね」
「そうですね、肉も美味しいですし。野菜も美味しいですからね」
率も綴もご満悦と言った感じで食べている、ゴーレム達も楽しそうに働いているし何時の間にかニアが修復した黒いゴーレムや、カラフルなゴーレムも肉を運んでいる。

「あーう」
「はい、ベルちゃんあーん」
「あーう」
舵がベルに肉を食べさせ、野菜を食べさせようとすると顔を背けてしまう。
「野菜も食べてね」
「うーう」
「じゃ、これ試す?」
「あ、肉巻き?ありがとう懐記ちゃん」
懐記が更に小さめに切った野菜を肉で巻いた物を舵に渡す、受け取って網の上に乗せて焼いていく。
トイに抱かれているカルンはニトからおじやを貰い食べている、エルダーは色々なテーブルに行ってお肉を焼いて貰い食べていてちゃっかりしていた。

「千歳ここが始まったら皇国と繋げてくれないか?」
「構わないよ、気に入った?」
「ああ、好きに肉が焼けるのがな」
「でも、すごい人気出そうだね」
「日本でも人気の焼き肉屋は予約しないと入れないからな」
二ジャルガが同じテーブルの千歳に頼み快諾するが、詠斗と崇幸が頷いている。
「確かに毎日食べたい位だ」
ラージュも呼ばれテーブルを囲む、視線は七輪から離れない。
「なら、皇国のドラゴンの料理人達を呼んで修行して貰い。皇国でも焼き肉屋を始めますか?」
「成程、良いのか?」
「なら、私の所も良いか?」
「店長に聞いてみますよ」
『てんちょう?』
「店の責任者ですね、この店を始めたいと言ったゴーレムがいますから確認します」
「ああ、頼む」
「こちらも」
焼いた肉を葉で包み食べるラジカが頷く、ニジェルガもラージュも嬉しそうに肉を焼いて食べていく。

「じゃ、満腹した順にデザートね。モギのアイスとカノリのシャーベットは子供と酒が飲めない人様にで、こっちは見て楽しんで」
皆の腹が満ちた頃ゴーレム達がテーブルへデザートを運びこんでいく、酒がいける大人たちにはモギのミルクアイスにカウン酒を掛けた物にゴーレム達が火魔法で火を付けてくれると…。
『おお!』
周囲から歓声が溢れ自然と拍手が起こる、アイスが燃えカウン酒の香りとアイスの香りが鼻腔を擽り締めのデザートで大いに盛り上がった…。
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