あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第09部 魔王たちの産声 歪

STAGE.4-2 少年とゴーレム

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「リーダーおかえり」
「お、おかえり」
「…あいつは?」
「薬草取りに行かせてますよ」
「良いお金になったのよ」
ボロ屋の住処に戻った錆色の髪と瞳の男は、広くもない部屋を見渡し奴隷の少年の居場所を高圧的に尋ねた。
「そうか」
大した興味もなくボロいイスに座りテーブルに足を乗せ昨夜のカジノの遊戯は良かったと思い出す、中々置いてある景品も良かった。
「中々旨味のある仕事だったな、得をした」
「へへ、そうですか」
「よ、良かった」
「本当に」
「す、すごいわ」
冒険者達4人は怯えながら、男に媚を必死に売る。
「お前達との仕事も終わりだ、失せろ」
錆色の男は冒険者達の顔を見もせず革袋のコインを投げ捨て、冒険者達は慌てて広いペコペコ頭を逃げるように走り去った。
男は目を閉じて束の間の惰眠を貪る、次の仕事が待つ束の間の休息だった。

「あ、ありがとう今日も来てくれて…」
朝も早く追い出され薬草を探して森に入ると、昨夜と同様にゴーレムとヒヨコが待っていて朝食を準備してくれた。
「お、おいしかった」
今朝は大河が持たせてくれた(懐記が作った)ミルクスープと柔らかなパンに挟んだチーズとハムのサンドイッチと果物と燻製した木の実、よく冷えたモギのミルクとカノリジュースを食べた。
少年の顔色もよく表情も明るい、元気に薬草を摘んでゴーレム達と分かれた。

「戻ったか…」
「は、はい。あ、あの商業エリアに薬草売りに行っても良いですか」
「好きにしろ」
「は、はい」
ボロ屋に戻ると錆色の男がゆっくり眼を開け少年にちらと少年に視線を送り、再び眼を閉じた。
少年は頭を下げてカードに魔力を込めて商業エリアに転移する、男は気だるげに目を閉じようとしたがドアの隙間から1枚の葉がヒラリと男が足を乗せたテーブルに舞い落ちる。
「仕事か…」
男はそう呟いて葉を浮かせて魔力を注ぐ、葉に刻まれた文字が浮かび上がり面倒な仕事に舌打ちし今度こそ目を閉じた…。

「やっぱり、山とか森なら4WDでSUVだよな!」
「良いと思います、車高高い方が憧れますよね」
「まあ、エンジンとかは考えずに外見だけらしく造るとして」
崇幸、綴、千眼が大河から借りた車の雑誌を見ながら、神鋼と魔鉄、聖魔鉄や鉱物を用意し形を形成していく。
「とにかく頑丈、丈夫なやつだな」
「はい、安全に皆さんを運ぶ車を」
「ああ…」
あーでもないこーでもないと話し合いながら細部も拘りつつ、造り上げていった。

「あの…今日も薬草…買い取ってくれますか?」
「はい、いらっしゃいませ」
蒐集家の店でまだ正式に開店している訳でもないのに、客は途絶える事なく訪れた。
2日後の出発の準備は問題無い、蒐集家は薬作りを行いながら淡々と仕事をこなす。
大河も蒐集家の仕事を手伝い様子を伺う、ゴーレムの修復も行ったので崇幸が傀儡魔法を使い働くゴーレムが増えた。
少年はカウンターに薬草を奥とキョロキョロ周囲を見渡せば、頭にヒヨコを乗せたゴーレムを見つけ嬉しそうにしている。
「どうでした?ゴーレムは?」
「あ、あの何でゴーレムを俺の所に?飯もありがとうございます!で、でもお金無いですよ?」
「いりませんよ?払っているのはこちらですし」
「あ…でもなんで?」
「さあ?嫌ならゴーレム達を行かせませんが?」
「それって…深く聞くなって事ですか?」
「お好きなようにとって下さい」
奴隷という割に栄養不足で骨と皮だけだが、賢く聡い印象を大河は受ける、少年はそれ以上何も言わす10万ログコインを受け取った。
「そうそう、お願いがあります。私は明後日から少し店を休みます、その間というよりかは今日から彼らを預かってくれませんか?」
「え、む、むりです。俺どれ…」
「問題ありませんよ」
蒐集家がゴーレムとヒヨコを呼び寄せ収納から首飾りを取り出しゴーレムの首に下げた。
「この首掛けたのは《拡縮の意思》という魔法具です、魔力を込めたら大きさを自由に変えられます」
ゴーレムがコクコクと頷いて《拡縮の意思》に魔力を込めれば小さく、ヒヨコと同じ大きさに変わった。
「ま、魔法!?」
「そうですね、これも上げます。収納袋です、食料とお金が入ってます」
ゴーレムとヒヨコは少年の身体によじ登り肩に座って落ち着く、少年は戸惑いながらも嬉しそうだった。
「彼らをよろしくお願いします、戻って仕事等もするでしょうからいつも一緒ではなく、その収納袋に彼等を入れる事も出来ます、他の空間と繋がっているので他のゴーレムや生物が出てくる場合もあると思いますが、賢い彼等なので貴方しかいない時に出て来ますから」
「本当に良いんですか?」
「はい」
「あ、ありがとうございます」
「いえ…ただの興味本位です」
大河はどうにも蒐集家と少年の遣り取りに違和感が覚えるが、誰かの奴隷である限りは持ち主から承諾を得なければ自由には出来ない。
「薬草集めてまた来て下さい、彼等が扱い方分かってますから」
「はい!えと、ありがとうございます!」
「いえ、お茶を準備しますから飲んでいって下さい、おやつもありますよ」
「おやつ!あ…でも…」
「無理に引き留めるのはよくないですね、おやつを包みますから持って行くと良いですね」
蒐集家が葉で干した果物と木の実を包んで少年に渡す、少年は何度も頭を下げてゴーレムとヒヨコを連れて住処へ戻った。

「2日後の毒ダンジョン無理しないようにして下さい2人とも、グローリーさんもですよ」
ライガルとの授業が終わり、皇城の庭園でニジェルガも交え茶会が行われていた。
周囲にはヒヨコと馬とリスが戯れ、おやつのジャムクッキーと干した果物と食べていた。
「うん…」
「はい」
「使える魔法も増えたし」
「みんなすごいよー」
授業に参加していた晴海もはしゃぐ、札を沢山用意して魔法を込めた物を晴海も準備した。
「何があるのか、起こるのか不明な場所だ。2人ともグローリーから離れないように、常に冷静に周囲を視る事が大切だ」
『はい』
ニジェルガから用心するよう言われ声を揃える、あくまでも自殺を図っている魔人の救出だ、攻略を目標とはせず全員が無事帰還する事を目的としている。
「皆さんが帰って来たらバーベキューしましょう」
「そうだな、準備しておこう」
「やり!」
「楽しみ」
「俺も手伝うよ!」
ライガルの提案に全員喜ぶ、帰る楽しみが増えるのは嬉しい事だった…。
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