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第09部 魔王たちの産声 歪

第4幕 第13蒐 2つの毒ダンジョンと…

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「新しい魔人の子供か!俺はウォルゾガだ!よろしくな」
「僕はカーテスだよーよろしくね」
「おとたん!」
「ばぱー」
時は遡りグローリーとイザラと魔人の少年で《島船》に転移し、ヒヨコがパタパタ何処かへ行ってしまい入れ替わりにウォルゾガとカーテスと子供達が出迎えてくれた。
「ただいま…」
「ただいま」
「ん」
周囲は先に舵や千歳とジラ、ラジカが連れて来た怪我人達の治療を行い騒然としていた。
レグやアゲイルにラヴィトリやイシュター、チグリスやヒュールやクラークラックとクーランターク達が手伝い、懐記やらラウラスに《島船》の住人達が炊き出しの準備をしていた。
「話しは聞いた、戦場にいたんだろ?とりあえず風呂と飯だな」
「子供達もいれようね」
「先入って…大河達を待つ…」
「そうか、よし、いくぞ!ここの風呂は面白いからな」
子供達を連れてウォルゾガが風呂へと連れていく、グローリーは気になる事があり2人を、懐記達の手伝いをしながら待つ事にした。

「君が新しい魔人?俺は詠斗」
「俺は晴海!よろしく」
「僕は率です」
「僕は綴ですよろしくお願いします」
「俺は崇幸だ!」
「ん、よろしく…」
詠斗、晴海、率、綴が祭りから戻り、崇幸と千眼はホテルからこちらに向かい風呂とから上がったイザラ達と挨拶を交わした。
「飯出来たわ、食って」
『はーい』
懐記から声を掛けられ、野菜と肉の具沢山スープに平たいパンの中にはミートソースとチーズ、魚ダンジョンのソテーと果物のサラダ、カノリのジュースとモギのミルクが並んだ。
『いただきます』
「?」
「食べる時の挨拶…」
「ん、いたただきます?…うま!こんなうまいの初めてくった!」
いただきますという言葉に首を傾げる少年、イザラが意味を教えてスープを1口食べ目を輝かせがっついた。
「たくさんあるから」
「ただいま」
「戻りましたよ」
懐記が少年の前にパンを沢山出して、怪我した兵士達の治療も済み戦場でまともな食事も出来ていなかっただろう彼らに消化に良いスープとミルクを渡していると、大河と蒐集家が戻って来た。
「おかえりなさい…蒐集家さん…聞きたい事があります…」
「はい、かまいませんよ?食事が終わった後に移動して……2人でします?」
『却下』
その場にいたグローリーと蒐集家以外全員から言われ、肩を竦めつつ食卓に並んだ。

「それで話しと言うのは?」
大部屋に集まり各々の自由な姿で寛ぎ、蒐集家は薄ら笑いを浮かべて訪ねた。
「…採集…行く?」
「いえ、もう暗いですし止めておきます」
「そう…毒ダンジョンは?」
「行くなら僕も行こうか」
どうやら採集と毒ダンジョンに行けなかった事に大して罪悪感があるグローリーが尋ねる、ダンジョンならばと千歳ら軽く手を挙げた。
「今日でなくても構いません、気にしないで下さい」
「………」
「興味があるなら行きます?」
「うん…」
「今から行きます?」
「うん……2つある毒ダンジョン…」
「ああ、行くなら南の毒ダンジョンです。北には行きません」
「………北の毒ダンジョン…気になる」
「何故?」
「………何かある…」
「何かとは?」
「………行きたい」
「無理だ」
「?」
「コスパが悪い」
「こすぱ……?」
「割に合わないので、北の毒ダンジョンはあれは最早ダンジョンではありません、魔人…魔神にもあのダンジョンの毒は有効です」
「……」
「グリ、どうして行きたいんだ?」
「わからない…」
「お前、北の毒ダンジョンに何があるのか知っているのか?」
「神々に聞いてみて下さい」
大河とグローリーに対しての挑発と嘲笑、真面目に答えるつもり等ないとの答えに大河がスマホを取り出した。
「俺だ北の毒ダンジョンには何がある?グリが気にしているが………………おい…ああ、分かった。神々は《アタラクシア》に毒ダンジョンは南の1つのみだと言っているが」
「へぇ、なら1つなのでは?」
「ふざけるな、何をしっている?」
「………」
「お願い…します…教えて」
「断る」
グローリーの懇願に切り捨て大河が眉間に皺を寄せ、皆3人の会話を黙って聞いていた。
「千眼、ラジカ、ジラ、イシュター、この世界に毒ダンジョンはいくつある?」
「毒ダンジョンは南だけ…」
「俺も1つしか知らないな、グローリー場所わかるなら行くか?」
「毒ダンジョンは私も南しか知りません、そもそも唯一の後略者もそこの方だけですから未知なるダンジョンです。蒐集家が避ける場所ならば行かない方がいいと思います」
「毒ダンジョンが北にあるというのは聞いた事はないが、北のとある森が《腐食の森》とされ嘗て精霊モッカが封印した場所がある、毒ダンジョンがあるとすればそこかもしれないが…あの場所は不味い」
唯一大河の問いに毒ダンジョンがあるかもしれないと答えたのはイシュターだった、だがイシュターの表情は暗い。
「……どうか教えて下さい、《××××××××××》」
「…………口を慎め魔神皇」
「貴方は美しい…夜明けの髪色…始まりの色…」
「魔神が一丁前に口説きますか、悪くない。頑張れば私の口が滑るかもしれませんね」
誰にも聞き取れない言葉で蒐集家の名を口にする、一蒐集家から瞬怒りのような湧き出したがすぐに収まり大きく口を歪めて嗤えば髪飾りの鈴が鳴る。 
「聞く者を翻弄し導く声…」
「悪くない」
「他者を奈落へと誘う指先…」
「それで?」
グローリーが蒐集家の右手を取り口づける、そして腰に腕を回し強く強く抱き寄せ吐息が触れ合う距離でグローリーのいや、キリングの瞳が蒐集家の瞳を覗き込む。
「凍える夜空から降り注ぐ雪の瞳…どうか教えて下さい」
「魔王に助けて貰ったか…余程執心のようですね。良いでしょう、気に入りました。答えてあげます」
蒐集家が薄く笑いグローリーの黄金の瞳の側に指を這わせ、その瞳の奥に黄金の焔が揺らめいたのを見た。
「あの場所にはね、自殺を図っている魔人がいるんです」
囁く声は正しく聞く者を翻弄し導く声だった…グローリーの眼が大きく見開き、今にでも泣き出しそうな哀しみの色を両目に浮かべた…。
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