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第09部 魔王たちの産声 歪

第4幕 第10蒐 合成ゴーレム

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「大丈夫…?」
「おーちっさいのによく耐えたな」
「幾つもの生物が混じったゴーレムですね」
「で、どうするんですか?」
グローリーが魔力の砲弾を魔聖剣で防ぎ、ジラの魔剣がその砲弾を吸収した。
『倒す』
グローリー、イザラ、ジラが蒐集家の問いに同時に答える、蒐集家は肩を竦めて魔人の子供の危機は救ったから採集にでも戻るかと思っていれば、大河や千歳と舵が逃げ遅れた兵士達を助け起こしている、何を考えているのやら戦場では味方以外全て敵だ、死ぬのは戦場にいれば当たり前の事、グローリーに対して運び賃は支払ってないが面倒事も御免だ。
「おい、おっさん達そいつ倒すなら俺にもやらせろ、武器もなきゃ魔法も効かないんだ。武器よこせ」
「なんだー可愛くない魔人の子供だな」
「えーでも綺麗な顔立ちしてるよ!」
「ん、これを使え。おっさんじゃない父さんだ」
ジラがおっさん呼ばわりされたので口を尖らせ舵が少年の綺麗な顔に喜び、イザラが収納ショルダーバッグから鉱物ダンジョンの時にもらったハンマーを渡した。
「はん、俺ら魔人に親父もクソもあるかよ。借りるぞ」
「では、私は採集と毒ダンジョンに戻ります。お気をつけて」
「へえ、あーここで手伝えば崇幸に言って店を用意した分の借りを返せると思うなー」
「カジノタワーの宿泊費等の借りも返せると思います」
「……タダでしょう」
蒐集家が阿保らしいとさっさと戦場から出ようとし、ジラとラジカから言われてもそっちが一方的に押し付けた物だと毒づきながら従う事にした。
「そうだな、ここで手伝いをするなら助かるな」
「そうだねーゴーレムも渡したしねー」
「お願い…します?」
「蒐集家ちゃん!力を貸して!」
「舵は危ない、千歳の収納にいて」
「はーい」
「……分かりました」
イザラが舵の肩を押して千歳の収納に入るよう促し、ゴーレムとヒヨコ達を抱えて千歳の収納空間に入った。
「んで、潰すか?」
「只のゴーレムならそれで良いですが…」
「このゴーレム核があの変な頭にそれぞれあんだよ、頭燃やしてやろうかと思って業火魔法やったけど燃えねーし」
「炎が効かない…」
グローリーとイザラ、少年とジラが巨大ゴーレムを撹乱し、蒐集家とラジカがゴーレムを観察し大河と千歳が逃げ遅れた兵士や傭兵冒険者達を助け起こす。
「あ、あいつに仲間たちが喰われたんだ!」
「なんでこんな目に!」
「なんなんだ!あれはいきなり現れたんだ!」
「喰われた…?」
千歳と大河が巨大ゴーレムを睨みつける、鑑定合成ゴーレム:4体の生物を掛け合わせた物 1つの核を5つに分けている 同時に破壊しなければ再生し続ける 喰われた人々は…冥福を祈ります 神々も憤慨しています…大河が髪を搔き上げる、千歳は深い溜息を吐く、こんな死に方はないだろう。
「核は5つに分かれている!同時に砕かなければ再生するぞ!」
「あーグリ核分かるか?」
「うん……右の顔の喉…左の顔の口…背中の右目…後ろの左目…後1つ分からない」
「ゴーレムの額の中央」
大河の声にジラがグローリーに聞く、その間もゴーレムの四肢は4人を捉えようと四肢を振る、最期の1つは蒐集家がつまらなさそうな顔で答えた。
「じゃ、俺は後ろな」
「俺は左を貰う」
「親父はどこやんだよ?」
「額…右をお願い…ラジカさん背中を」
「はい、任せて下さい」
「あー頑張ってくださいー」
ジラが後ろの左目、イザラが左の顔の口、少年が右の顔の喉、グローリーが額を背中の右目はラジカに頼み収集家は欠伸をしながら心にもない声援を送った。
「じゃ、私は採集に行きますから。勝手に戻ります」
「待て」
「なんですか?」
「ケガ人もいる」
「あーそうですね、ここの戦場は質が悪いからでしょう。気の毒ですね、弱いから致命的なケガを負う」
ブレスレットに魔力を込めようすれば大河はそれを止め、蒐集家が大河の方を向きズボンのポケットに手を突っ込みわざと態度を悪く見せた。
「戦場に入るからには生きて帰れる事の方が死ぬより遥かに難しいでしょう、ケガも同じイレギュラーも同じ、死に方は戦場では選べない。まさか助けるつもりですか?そうなら、あっははうける」
「手伝え」
「いやだ、勝手に産まれて勝手に死ねばいい。私もそうだ他者に助けを求めない勝手に生きている。戦場で人を助ける事ほど無価値な事はない」
「もうこれは戦争じゃない」
「戦争だよ、ここは変わらず戦場だ。敵が変わっただけだ」
大河と蒐集家の視線が混じる、蒐集家の口調が砕けている、そのやりとりを見ていた千歳が間に入る。
「手伝ってくれるのなら報酬を渡すよ?どうかな」
「随分人臭い魔王ですよね、貴方。本当に治す価値や救う価値があると思いますか?どうせここで治した所でまた戦に駆り出されますよ?」
「人歴が長い新米魔王だから。なら、ここで治した人々は戦争に行かせない」
「勝手にやって下さい、治癒出来るネズミを連れてくれば良い、それだけの話しですよ」
千歳との会話でまた口調が敬語へと戻る、蒐集家は無意味な事をしたくない訳ではい本当に心底無駄な事に自分の時間を割きたくないからだ、店の準備に採集に仕入れもしなければならい、それよりも戦場での人の救助の方が優先順位が高いなどと有り得ない話しだからだ。
「もういいですか?失礼します」
「おおっと手が滑ったー悪いなーもう一回行くぞー」
「外さないで下さい」
踵を返そうとした所でジラの魔剣が蒐集家の頬を翳めて飛んでくる、ラジカが外すなというがそれは核への攻撃かまたは蒐集家への嫌がらさせをかどちらにせよそんな事で腹を立てたりはしない。「危ないので気を付けて下さいね、傭兵王ともあろう方が手元を狂わせるとは貴方でも負けそうな相手ですか?」
「俺1人じゃ敗けるが、こいつ等がいるし」
「はいはい、勝手にやって下さい」
「行くぞ」
「手伝え、本当に価値が無いかは助けてから決めろ」
「…だる」
ジラが笑って再度5人で同時に核破壊に挑む、大河が蒐集家の腕を掴み引き摺るように兵士達が固まっている方に向かった。

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