上 下
325 / 807
第8部 晴れた空の下手を繋いで…

第21話 古代種様の収納

しおりを挟む
「賑わいと活気がある」
「ええ、下にはカジノ上は泊まる所とラウンジと今度ダンジョンが出来ますよ」
「ラウンジは昨日ジラに連れて行って貰ったな、酒が旨い」
「おう、今日はカジノに行くか?」
「カジノ?」
「遊ぶとこーチグリスは来るか?」
「寝る…」
「千歳は?」
「そうだね、遊ぼうかな」
「いいね」
「チグリスは来ないのか?」
「ん…楽しんで父上…次はいく」
「ああ」
商業エリアに転移しイシュターが興味深く辺りを見渡せば千歳が説明をしてくれる、チグリスに来ないか尋ねるイシュターの顔は微かにぎこちない。
「じゃ、砂糖とトウモロコシとかついでに散策しようか。毎日店が増えるし奥の情報ギルドで軽く食べようか?」
「行く…」
「じゃ、ミルク屋に行くか」
「そうだね」
馴染みの《トイタナ》の露店でトウモロコシモドキを在庫分全て購入、香辛料屋を周り在庫を全て購入していく。
「お、トイ君の酒屋は今日もこんでいるね」
「カノリとカウンの酒か…」
「お、ボトル追加しよ。ちょっと買ってくるから先行ってくれ」
「馳走になったのだから、私が…」
「ん?別にいい、おごったもんだ」
「なら、私も買うとしよう」
「金あんの?じゃ、懐記達先行っといて」
「後で」
「ん…」
「収納にある、千年前のコインだが使えるようだ」
「へぇ、古代種の収納か面白そう」
「見るか?」
「お、いいの?」
列にジラとイシュターが加わり懐記とチグリスと分かれる、傭兵王と龍が酒を買う為に並ぶとは目立つちはするが馴染んでいる、ジラの顔馴染みもいるようで周囲と挨拶を交わした。
「大した物はない」
「なんか、面白そうなもんあったら買い取るぞ~。カジノの景品にもいいかもな」
「鱗なら沢山ある」
「アンタの?」
「ああ、他のドラゴンの物もある。骸も」
「骸はいいけど、鱗は後で見せて」
「わかった」
会話は尽きない、列に並ぶ時間もあっという間に過ぎていった。

「千歳…おやつ」 
「はい、これを食べて」
情報ギルドに向かう途中にチグリスからおやつを最速され、千歳が指に棒付きの琥珀色の飴の中に果物を閉じ込めた飴を手品のように出してチグリスに渡す。
「……これは?」
「クローダーさん達が作った蜂蜜飴、子ども達と舵君に大人気で明日のお祭りで売る物だよ」
「………足りない」
「噛み砕いたら駄目、舐めて食べてみるといいよ」
「……」
今まで何が出ても黙って食べていたチグリス、出された飴は見た目面白いが腹の足しにはならないが言われた通りに舐めてみる、美味しいは美味しい…まるで子どもになった気分だ。
父である古代種が復活し、すぐ側にいるのが不思議で仕方ない、驚きもした嬉しさもあるだが、もう子どもの時は過ぎ去ってしまった。
千歳や詠斗達な側にいても友人としていたいが、何故だか崇幸の側にいると無性に子どもに還りたくなる、一緒に遊んでくれおやつをくれ、手を繋いでくれる存在が潜在的に欲しかったのかとチグリスは気づく。
「もう、食べ終わった?」
「ん…」
「おかわりするかい?」
「ギルドに着いたら食べる…」
「まだ沢山あるから食べたかったら言って」
千歳が笑う、また今度貰うかと残った棒を燃やした。

「う、初めまして古代種様あー私はトラング・ハーベンダー・カゥドゥと申します、カジノの支配人を勤めております、永きの眠りからの復活お喜び申し上げます、本日は当カジノを存分にお楽しみ下さい」
「同じく、現在龍皇国預かりの身であり支配人の補佐を勤めさせて頂いております、ガーランバラーダのカトゥーシュカと申し上ます」
「固くなる必要はない、ガーランバラーダか……ここは皇国ではないのだ」
「は、はい」
「じゃ、古代種様はジラと遊んでく感じ~?」
「お、おいトラング!」
「そうさせて貰う」
酒を買い商業ギルドで軽く食べ、せっかくだからとジラとゴーレムとヒヨコとおりがみの子達が世話して風呂に入りオープン前のカジノのスタッフルームで食事していた、トラングとカトゥーシュカに顔を見せに来た。
「まだオープン前だけど遊ぶ?」
燻製肉とチーズサンドにかぶり付きながら聞けば、ジラもニヤリと笑う。
「気前いいじゃんー」
「そりゃー支配人特権使っちゃいますよ~」
「ど、どうぞお掛け下さい。召し上がりますか?」
「貰おう」
「お待ち下さい…嫌いな物はありますか?」
「いや」
トラングが椅子を引きイシュターに座って貰う、キノコソテーとベーコンサンドに燻製肉とチーズサンド、フルーツサラダをイシュターの前に素早く並べた。
「どうぞ、飲み物はどうしますか?」
「俺はカノリジュース~」
「俺はミルクー」
「ミルクを貰おう」
「はい」
グラスにイシュター、ジラ、トラングの順番で飲み物を用意し、ゴーレムとヒヨコとおりがみの子達にも食事を出してやる。
「そういや、あんたの収納見せてよ。景品にしようぜ」
「ああ」
『え?』
「ごふぅ!ジ、ジラ殿!」
食事が終わりトラングとカトゥーシュカの声が重なりカトゥーシュカが盛大に噎せる、イシュターの前の空間が開きゴーレム達がテーブル周辺を片付ける。
「私の鱗と滅んだ国《オーム》のみで使われていたコイン…定期的に宝石の涙を流す彫刻、オーガンダの瞳、主人達の血を吸い呪物に転じた剣、所有者達が次々変死する呪物の宝石…捨てても戻ってくる杖…」
『待った!』
「おーい、鱗とコインはいいけどなんで呪物ばかり?」
「呪物はちょっと~」
「景品には希少過ぎます」
「そうか?私の収納は封印も可能だからこういった類いの物が多い…」
まだまだ出て来そうな物を一旦3名で止め、もう少し穏やかな物はないのかと言うと足元でゴーレム達が手を伸ばす、どうやら欲しいらしいのでイシュターが鱗とコインを贈り残りはしまった。
「なら、こちらは?黄金の果実が成る木だあまり美味くないがな」
「あ、これはトイにやるわ。売って」
「贈ろう」
「ども」
イシュターが少し大きめな鉢にジラの腰程の高さの木に成る、黄金のリンゴモドキをジラに渡す。
「これは魔力で音を奏でる、失敗作だと渡された気紛れらしい」
「気紛れ…良ければ私に孤児院に置いて遊び道具に」
「ならば寄贈する」
次に収納から不格好な壺を出す、説明を聞いたカトゥーシュカがイシュターから受け取った。
「ありがとうございます」
「癖つよ~」
「トラング!」
「いや、こういう物ばかりだ。集まってくる」
砕けた口調のトラングに流石にカトゥーシュカが嗜めるが、イシュターは気にしていない。
「なんか景品は生活お役立ちアイテムが人気、後は酒とか?」
「酒はないが、確か…聖剣はどうだ?役立つのでは?」
「いちいち出て来るのが桁ちがいよな~でも聖剣はいいかも?売って下さいよ~」
「前の持ち主は剣聖ギャスパーだが」
『しまって下さい』
「そいつ、ソードブレイカーだったんでー」
「それが世に出ると不味いです」
「そうか…ああ、これは?食器類だ毒物を浄化する魔法が組み込まれている」
「お!いいじゃないですか!王族も客にいるしー」
「すげーいんじゃない?」
「ラジカ殿に鑑定して貰い、買い取らせて貰いますね」
「そうか…」
揃いの毒無効化の食器を本当は贈り物にしても良かったが、仕事ならば金銭を受け取るのが妥当かと頷いた。
「じゃ、カジノいきますかー」
トラングが立ち上がり、開店前のカジノを楽しむ事にした。

「かわいいのができたー、ナイル様また次回も来ますね」
「家でも作ろう」
「後で兄さんの所に持っていこう」
「私はカタン達に」
「ナイル殿、良ければテトラにこれを」
「テルド殿、これから渡しにいきませんか?テトラの所に、同居人が増えたんですよー是非」
テルドが躊躇いがちにクッキーをナイルに渡す、ナイルがにこりと微笑んでカクラやカナンめ頷いたのですこし考えた後一緒にテトラの所へ向かう事に決めた。
「ナイル先生…ありがとう。懐記達の手伝いしてくる」
「はい、私が作ったのも皆さんで食べて下さい。私はテルド殿と戻りますから」
「わかった」
「うん!おとたん!」
「ぱぱー」
「クッキー美味しかった?」
「うん!」
「んー」
魔人の子供達も昼寝から起きて、クッキーを沢山食べて満足しているようだった、ナイルからクッキーを受け取り収納にしまった。
「ナイル殿!燻製器売って下さい!型も!」
「こちらも!」
「こっちにも!」
「はい、並んで下さいね」
「売るのを手伝おう」
燻製器と型の即売会が始まり、カクラとカナンとテルドが手伝っているので、グローリー達は懐記達の元へ戻った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

はずれスキル『本日一粒万倍日』で金も魔法も作物もなんでも一万倍 ~はぐれサラリーマンのスキル頼みな異世界満喫日記~

緋色優希
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて異世界へやってきたサラリーマン麦野一穂(むぎのかずほ)。得たスキルは屑(ランクレス)スキルの『本日一粒万倍日』。あまりの内容に爆笑され、同じように召喚に巻き込まれてきた連中にも馬鹿にされ、一人だけ何一つ持たされず荒城にそのまま置き去りにされた。ある物と言えば、水の樽といくらかの焼き締めパン。どうする事もできずに途方に暮れたが、スキルを唱えたら水樽が一万個に増えてしまった。また城で見つけた、たった一枚の銀貨も、なんと銀貨一万枚になった。どうやら、あれこれと一万倍にしてくれる不思議なスキルらしい。こんな世界で王様の助けもなく、たった一人どうやって生きたらいいのか。だが開き直った彼は『住めば都』とばかりに、スキル頼みでこの異世界での生活を思いっきり楽しむ事に決めたのだった。

転生したおばあちゃんはチートが欲しい ~この世界が乙女ゲームなのは誰も知らない~

ピエール
ファンタジー
おばあちゃん。 異世界転生しちゃいました。 そういえば、孫が「転生するとチートが貰えるんだよ!」と言ってたけど チート無いみたいだけど? おばあちゃんよく分かんないわぁ。 頭は老人 体は子供 乙女ゲームの世界に紛れ込んだ おばあちゃん。 当然、おばあちゃんはここが乙女ゲームの世界だなんて知りません。 訳が分からないながら、一生懸命歩んで行きます。 おばあちゃん奮闘記です。 果たして、おばあちゃんは断罪イベントを回避できるか? [第1章おばあちゃん編]は文章が拙い為読みづらいかもしれません。 第二章 学園編 始まりました。 いよいよゲームスタートです! [1章]はおばあちゃんの語りと生い立ちが多く、あまり話に動きがありません。 話が動き出す[2章]から読んでも意味が分かると思います。 おばあちゃんの転生後の生活に興味が出てきたら一章を読んでみて下さい。(伏線がありますので) 初投稿です 不慣れですが宜しくお願いします。 最初の頃、不慣れで長文が書けませんでした。 申し訳ございません。 少しづつ修正して纏めていこうと思います。

処理中です...