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第8部 晴れた空の下手を繋いで…
STAGE.3-15 墓標と千年の剣
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「みんなふかふかだー」
「可愛いですねー」
「この船に小さい島あるからそこでのびのび暮らしてもいいし、俺たちのパーカーのフードが色々な空間に繋がっているからその中で好きに移動していいし」
「《不毛の地》の畑周辺でも良いよ、フードからそこにも行けるよーそれとも俺たちと過ごす?」
お風呂でラヴィトリ達に洗われふかふかな動物達、《島船》のヒュールとクラークラック達がどうやらこちらをオススメして三毛柄と長毛なモルモットに見た目が近いメルポーラ達は《島船》に残りそれ以外は次々パーカーのフードに入っていく。
「お前たち行く所決まってよかったな、俺はここでコイツの様子を見るよ」
フォーレフィッツを柔らかい布の上に置いて笑みを溢す、飯にしようかと懐記がこちらの大食堂で温かい夕食を出してくれる。
「おいしそうだな、ラウラスも作ったのか?」
「そうすよー懐記さんのお陰で料理の腕が上がったすよ」
「そうか、頂くよ」
出されたのはミルクシチューと少し固めのパン、燻製された木の実とチーズとベーコンのサラダ、魚ダンジョンの魚のソテーとカノリとリンゴもどきのデザートにカウン酒が出され
、パンをシチューに付けてラヴィトリが食べると目を輝かせた。
「おいしいな!」
「懐記とラウラスとナイルのお陰で龍皇国の食事がうまくなった」
「そうか…」
ティスがシチューを食べながら教える、何処か懐かしむ表情を浮かべた。
ラヴィトリから色々話を聞きながら、ゆっくりと夕食の時間が過ぎていった。
「部屋まで借りて悪いなー」
「お父さん俺達は明日墓参りなのでこれから龍皇国に行くす」
「ああ。チグリス様やアゲイルとナイデル達に宜しく伝えておいてくれ」
ラヴィトリが案内された部屋の前でラウラスに言付けを頼み、ラウラスとティス、ゴーシュとティータも皇国へと転移札を使い戻って行く。
「おやすみなさい、ラヴィトリさん」
「ああ、おやすみー」
「あ、もし暇だったらゴーレム直す?」
「へぇ、じゃやろうかな」
「はい、道具と土と鉱物と直して欲しいゴーレムね。土と鉱物混ぜて魔力で形伸ばしてヒビとか割れている所を埋めて整えてあげて」
「分かった、預かるよ」
詠斗の収納からゴーレムと道具を取り出し渡しておく、おりがみの子とゴーレムとヒヨコが一緒に部屋に入っていくどうやら教えるつもりらしい、明日は詠斗達は全員同じ時間に起きようと少し早めに寝る事にした。
「おはよう…」
「おはよう…」
「あ、グローリーさん、イザラ君おはようございます。服すごく似合っていますね!」
「率も可愛い」
「かわいいよ、晴海も」
「ありがとうござます!」
「イザラ君ありがと!」
支度を整えたグローリーとイザラが転移で《アタラクシア号》の大部屋を訪れ先に支度を整えた率と晴海を褒める、詠斗と綴も礼装に着替え髪も整えている。
「ジラさんとラジカさんの礼装も素敵ですね!」
「ありがとうございます」
「あー身体重…」
ラジカは紺色の上着に丁寧に蔦の刺繍を施し左胸には黒い宝石のブローチを付け、装いこそシンプルだが一目で上質な物と分かる装いだった。
ジラは率が髪型をセットし左サイドを編み込み鉱物で造った黒い髪飾りで髪を束ね、黒いシャツに金糸で死者を弔う異国の古代文字を刺繍を施した物を着用し、黒いズボンにブーツという出で立ちだった。
千眼は崇幸の左胸に蝶の姿で止まり、千華は率のハーフアップした髪飾りの白い花としてそっと可憐に添えられている。
「さすがはテトラさん完璧だね」
「ええ、ネクタイも再現されてますね」
「久しぶりだな、この首を締める感じは…」
「俺もまさか異世界でスーツとはね、久しぶりだな」
「着心地抜群!刺繍も細かいね」
「ん、いいわ」
「出来たね!行こうか龍皇国」
別室で身支度を整えていた千歳、綴、大河、崇幸、舵、懐記も集まり龍皇国へ転移した。
『おおー!』
龍皇国の応接間で集まる、ニジェルガ、ライガル、チグリス、ナイル、ラウラス、ティス、ゴーシュ、アルケール、ナイデル、アゲイル、レグも頭の先からつま先まで龍皇国の礼装を纏い詠斗達を出迎えてくれた。
「来てくれて感謝する、みんな。その装いも良く似合っている」
「俺達がいた世界での葬式の正装にテトラさんが手加えてくれたんだ」
「皆さんよく似合ってますね」
「ナイルさんも似合うね、二ジャルがさんこんな時だけど…写真撮ってもいいかな?」
「もちろん」
「写真てなあに?あ、僕はラファル、この城の責任者でニジェルガ様の補佐官の内の1人です。よろしくー」
もう1人こちらは龍皇国の皇城で勤める補佐官の服装をしているラファラルと名乗った、緑色の髪に黄色の瞳の率位の外見年齢の青年がほほ笑んだ。
「よろしく!」
「ラファラル、写真を撮ってくれやり方教えるから」
「はいはーい」
ニジェルガが自分のスマホを取り出し操作方法を教えラファラルが写真を撮ってくれる、それぞれの何枚か撮ってグループラインに送った。
「写真ども、もうじき産まれる感じ?」
「そう、よくわかったね!もうじき会えるの」
腹周りがゆったりした服を着ているラファラルからスマホを受け取り懐記が聞いてみると、ラファラルがお腹をさすりながら嬉しそうに笑う。
「わー楽しみだね」
「うん、産まれたら会いに来てよ」
「いいの!?」
「いいよ、だって君たちはこの世界の救世主なんだからいつでも歓迎するよ。ヒヨコ達やおりがみの子昨日きたゴーレム達も楽しみにしてくれているよ」
晴海が喜び懐記がカノリとカノリのジュースを渡す、ラファラルが嬉しそうに受け取った。
「僕、果物好きだから嬉しいーありがとう」
「では、行こうか。転移札で地下の入り口まで行くしよう」
ニジェルガが転移札を使い、皇城の地下最奥へと転移した。
「ん、このカノリの飲み物美味いな…今頃は地下の千年剣を抜くところか…」
《島船》診療所でカノリのジュースを飲みながらゴーレムの修復を行う、妊娠中のフォーレフィッツはすやすやとゴーレムとおりがみの子が用意した籠にクッションタイプのふかふかした布(ネスが作ってくれた物)の上で眠っていた。
ラヴィトリが千年前…チグリスが産まれた時の事を思い出しながら、ゴーレムのヒビを埋めていく。
千年前…古代種の墓標で何かが起き異変を察知し、ゴーシュとラヴィトリが墓標へと急いだ。
『おい、ゴーシュ』
『ああ…産まれたのか…』
偉大なる古代種…龍皇イシュターレジェイドチラーグケイオスの骨となった死骸から卵が出現し、たった今それが割れて幼い竜が誕生した。
ゴーシュが産まれたばかりの深紅の鱗に鮮やかなオレンジの瞳…後にチグリスと名付けられるドラゴンをそっと抱きかかえた、チグリスは首を傾げ骨となって存在する父親を不思議そうな目で見つめていた。
『貴方の御父上です…』
『偉大な方ですよ』
ラヴィトリとゴーシュが産まれたばかりのチグリスを見つめ、彼のこれからの波乱の生が少しでも穏やかになるように誓い願った。
そうして現在に引き戻される、いつも思い出すあの時の光景…。
「イシュター様申し訳ありません…俺はチグリス様を守れなかった…」
いつも思い出はその言葉で締めくくられる、過去はどうあれチグリスは引き摺った様子もなく日々を送っている、彼らと出逢いそうやら楽しく暮らしているとラウラスから教えられホッとしていた。
「元気な姿を見れれば…」
そう消え入りそうな声でブルーベリーの様な瞳を瞬かせ呟く、もう少し時間が経てば気持ちは少し上がる、それまでラヴィトリは静かに目を閉じた…。
「ここが剣が封印されている場所の入り口…なんか冷たい?」
「そう、ですね…寒いのかな?」
「ああ、ここはかなり冷えている。封印の影響だが俺達は気にならないがグローリー達はどうだ?」
「平気…」
「うん」
扉の隙間から冷気の様な物が流れてくる、詠斗と綴が首を傾げるが特に気にならない程度でグローリーとイザラも気にしないようなので、ラファラルが魔力を注ぎ扉を開ければ暗かった室内が一気に明るくなり、封印された剣の全貌が見えた。
「なんかカタカタしているね?」
「封印が解け掛けているんだよ、妖精王と木の精霊と古代種様の封印結界なんだけどね。もし君が主に選ばれなければ再度結界の強化を行うかなー」
ラファラルがイザラの方を見る、イザラは宙に浮かぶカタカタと今にでも暴れ出しそうな剣に釘付けだった。
「イザラ…封印を解く事は出来ない、このまま剣を鞘から抜くことが出来れば君の物だ」
「分かった…」
「イザラ…無理はしちゃダメ」
「うん…行く」
イザラが壁を蹴り天井まで一気に飛んで封印の赤い紐に片足で着地し剣に触れられそうな距離まで近づく、鮮やかな神々しい深紅に橙を混ぜた鞘、炎のような色の柄、柄頭には緋色のドラゴンの翼の意匠…見惚れ溜息が付くほどに美しいが狂暴性の強い剣だという事が分かる。
「抜く…」
お前の様な小物に扱えるか…剣が挑発する、千年以上昔に打たれ1度も主を持った事のない剣。
「抜く…お前は俺の剣だ…」
今のお前に相応しくない…剣がイザラを愚弄する、イザラは少し笑う、何故現在だけで判断するのかと、未来の俺は今の俺よりももっと強い…。
「俺にお前を賭けろ」
その言葉思い…気に入った…剣が未来を見据えるイザラの思考を気に入り、柄に指を添えたイザラがするりと剣を鞘から抜いた。
『おお…』
全員その場にいた者達から安堵の声が漏れる、剣で鞘を縛る封印を切り落とし鞘に剣を戻し地面に着地した。
「おめでとう…イザラ」
「うん…」
グローリーから祝われイザラが嬉しそうにする、剣がイザラの左手首に緋色の腕輪として収まった。
「イザラ…その剣…俺の父上の鱗で出来ている…炎に強い剣…」
「ありがとう…大事にする」
「しなくてもいい…剣は使う物だ」
「でも大事にするから…一緒に未来に進む」
「そうか…ありがとう」
チグリスがイザラに礼を言う、ようやく剣が主を選んだのだ若き魔人を…。
何頭ものドラゴンが挑み相手にされなかった剣だ、気難しいだろうがきっとこの少年なら上手く付き合っていけるとチグリスは思った。
「さ、外に出よう」
「このまま、墓参りに行こうぜ」
「なら、場所は俺が分かるから。俺が転移札を使おう」
ゴーシュが転移札を使い、そのまま古代龍の墓標へと向かった…。
「可愛いですねー」
「この船に小さい島あるからそこでのびのび暮らしてもいいし、俺たちのパーカーのフードが色々な空間に繋がっているからその中で好きに移動していいし」
「《不毛の地》の畑周辺でも良いよ、フードからそこにも行けるよーそれとも俺たちと過ごす?」
お風呂でラヴィトリ達に洗われふかふかな動物達、《島船》のヒュールとクラークラック達がどうやらこちらをオススメして三毛柄と長毛なモルモットに見た目が近いメルポーラ達は《島船》に残りそれ以外は次々パーカーのフードに入っていく。
「お前たち行く所決まってよかったな、俺はここでコイツの様子を見るよ」
フォーレフィッツを柔らかい布の上に置いて笑みを溢す、飯にしようかと懐記がこちらの大食堂で温かい夕食を出してくれる。
「おいしそうだな、ラウラスも作ったのか?」
「そうすよー懐記さんのお陰で料理の腕が上がったすよ」
「そうか、頂くよ」
出されたのはミルクシチューと少し固めのパン、燻製された木の実とチーズとベーコンのサラダ、魚ダンジョンの魚のソテーとカノリとリンゴもどきのデザートにカウン酒が出され
、パンをシチューに付けてラヴィトリが食べると目を輝かせた。
「おいしいな!」
「懐記とラウラスとナイルのお陰で龍皇国の食事がうまくなった」
「そうか…」
ティスがシチューを食べながら教える、何処か懐かしむ表情を浮かべた。
ラヴィトリから色々話を聞きながら、ゆっくりと夕食の時間が過ぎていった。
「部屋まで借りて悪いなー」
「お父さん俺達は明日墓参りなのでこれから龍皇国に行くす」
「ああ。チグリス様やアゲイルとナイデル達に宜しく伝えておいてくれ」
ラヴィトリが案内された部屋の前でラウラスに言付けを頼み、ラウラスとティス、ゴーシュとティータも皇国へと転移札を使い戻って行く。
「おやすみなさい、ラヴィトリさん」
「ああ、おやすみー」
「あ、もし暇だったらゴーレム直す?」
「へぇ、じゃやろうかな」
「はい、道具と土と鉱物と直して欲しいゴーレムね。土と鉱物混ぜて魔力で形伸ばしてヒビとか割れている所を埋めて整えてあげて」
「分かった、預かるよ」
詠斗の収納からゴーレムと道具を取り出し渡しておく、おりがみの子とゴーレムとヒヨコが一緒に部屋に入っていくどうやら教えるつもりらしい、明日は詠斗達は全員同じ時間に起きようと少し早めに寝る事にした。
「おはよう…」
「おはよう…」
「あ、グローリーさん、イザラ君おはようございます。服すごく似合っていますね!」
「率も可愛い」
「かわいいよ、晴海も」
「ありがとうござます!」
「イザラ君ありがと!」
支度を整えたグローリーとイザラが転移で《アタラクシア号》の大部屋を訪れ先に支度を整えた率と晴海を褒める、詠斗と綴も礼装に着替え髪も整えている。
「ジラさんとラジカさんの礼装も素敵ですね!」
「ありがとうございます」
「あー身体重…」
ラジカは紺色の上着に丁寧に蔦の刺繍を施し左胸には黒い宝石のブローチを付け、装いこそシンプルだが一目で上質な物と分かる装いだった。
ジラは率が髪型をセットし左サイドを編み込み鉱物で造った黒い髪飾りで髪を束ね、黒いシャツに金糸で死者を弔う異国の古代文字を刺繍を施した物を着用し、黒いズボンにブーツという出で立ちだった。
千眼は崇幸の左胸に蝶の姿で止まり、千華は率のハーフアップした髪飾りの白い花としてそっと可憐に添えられている。
「さすがはテトラさん完璧だね」
「ええ、ネクタイも再現されてますね」
「久しぶりだな、この首を締める感じは…」
「俺もまさか異世界でスーツとはね、久しぶりだな」
「着心地抜群!刺繍も細かいね」
「ん、いいわ」
「出来たね!行こうか龍皇国」
別室で身支度を整えていた千歳、綴、大河、崇幸、舵、懐記も集まり龍皇国へ転移した。
『おおー!』
龍皇国の応接間で集まる、ニジェルガ、ライガル、チグリス、ナイル、ラウラス、ティス、ゴーシュ、アルケール、ナイデル、アゲイル、レグも頭の先からつま先まで龍皇国の礼装を纏い詠斗達を出迎えてくれた。
「来てくれて感謝する、みんな。その装いも良く似合っている」
「俺達がいた世界での葬式の正装にテトラさんが手加えてくれたんだ」
「皆さんよく似合ってますね」
「ナイルさんも似合うね、二ジャルがさんこんな時だけど…写真撮ってもいいかな?」
「もちろん」
「写真てなあに?あ、僕はラファル、この城の責任者でニジェルガ様の補佐官の内の1人です。よろしくー」
もう1人こちらは龍皇国の皇城で勤める補佐官の服装をしているラファラルと名乗った、緑色の髪に黄色の瞳の率位の外見年齢の青年がほほ笑んだ。
「よろしく!」
「ラファラル、写真を撮ってくれやり方教えるから」
「はいはーい」
ニジェルガが自分のスマホを取り出し操作方法を教えラファラルが写真を撮ってくれる、それぞれの何枚か撮ってグループラインに送った。
「写真ども、もうじき産まれる感じ?」
「そう、よくわかったね!もうじき会えるの」
腹周りがゆったりした服を着ているラファラルからスマホを受け取り懐記が聞いてみると、ラファラルがお腹をさすりながら嬉しそうに笑う。
「わー楽しみだね」
「うん、産まれたら会いに来てよ」
「いいの!?」
「いいよ、だって君たちはこの世界の救世主なんだからいつでも歓迎するよ。ヒヨコ達やおりがみの子昨日きたゴーレム達も楽しみにしてくれているよ」
晴海が喜び懐記がカノリとカノリのジュースを渡す、ラファラルが嬉しそうに受け取った。
「僕、果物好きだから嬉しいーありがとう」
「では、行こうか。転移札で地下の入り口まで行くしよう」
ニジェルガが転移札を使い、皇城の地下最奥へと転移した。
「ん、このカノリの飲み物美味いな…今頃は地下の千年剣を抜くところか…」
《島船》診療所でカノリのジュースを飲みながらゴーレムの修復を行う、妊娠中のフォーレフィッツはすやすやとゴーレムとおりがみの子が用意した籠にクッションタイプのふかふかした布(ネスが作ってくれた物)の上で眠っていた。
ラヴィトリが千年前…チグリスが産まれた時の事を思い出しながら、ゴーレムのヒビを埋めていく。
千年前…古代種の墓標で何かが起き異変を察知し、ゴーシュとラヴィトリが墓標へと急いだ。
『おい、ゴーシュ』
『ああ…産まれたのか…』
偉大なる古代種…龍皇イシュターレジェイドチラーグケイオスの骨となった死骸から卵が出現し、たった今それが割れて幼い竜が誕生した。
ゴーシュが産まれたばかりの深紅の鱗に鮮やかなオレンジの瞳…後にチグリスと名付けられるドラゴンをそっと抱きかかえた、チグリスは首を傾げ骨となって存在する父親を不思議そうな目で見つめていた。
『貴方の御父上です…』
『偉大な方ですよ』
ラヴィトリとゴーシュが産まれたばかりのチグリスを見つめ、彼のこれからの波乱の生が少しでも穏やかになるように誓い願った。
そうして現在に引き戻される、いつも思い出すあの時の光景…。
「イシュター様申し訳ありません…俺はチグリス様を守れなかった…」
いつも思い出はその言葉で締めくくられる、過去はどうあれチグリスは引き摺った様子もなく日々を送っている、彼らと出逢いそうやら楽しく暮らしているとラウラスから教えられホッとしていた。
「元気な姿を見れれば…」
そう消え入りそうな声でブルーベリーの様な瞳を瞬かせ呟く、もう少し時間が経てば気持ちは少し上がる、それまでラヴィトリは静かに目を閉じた…。
「ここが剣が封印されている場所の入り口…なんか冷たい?」
「そう、ですね…寒いのかな?」
「ああ、ここはかなり冷えている。封印の影響だが俺達は気にならないがグローリー達はどうだ?」
「平気…」
「うん」
扉の隙間から冷気の様な物が流れてくる、詠斗と綴が首を傾げるが特に気にならない程度でグローリーとイザラも気にしないようなので、ラファラルが魔力を注ぎ扉を開ければ暗かった室内が一気に明るくなり、封印された剣の全貌が見えた。
「なんかカタカタしているね?」
「封印が解け掛けているんだよ、妖精王と木の精霊と古代種様の封印結界なんだけどね。もし君が主に選ばれなければ再度結界の強化を行うかなー」
ラファラルがイザラの方を見る、イザラは宙に浮かぶカタカタと今にでも暴れ出しそうな剣に釘付けだった。
「イザラ…封印を解く事は出来ない、このまま剣を鞘から抜くことが出来れば君の物だ」
「分かった…」
「イザラ…無理はしちゃダメ」
「うん…行く」
イザラが壁を蹴り天井まで一気に飛んで封印の赤い紐に片足で着地し剣に触れられそうな距離まで近づく、鮮やかな神々しい深紅に橙を混ぜた鞘、炎のような色の柄、柄頭には緋色のドラゴンの翼の意匠…見惚れ溜息が付くほどに美しいが狂暴性の強い剣だという事が分かる。
「抜く…」
お前の様な小物に扱えるか…剣が挑発する、千年以上昔に打たれ1度も主を持った事のない剣。
「抜く…お前は俺の剣だ…」
今のお前に相応しくない…剣がイザラを愚弄する、イザラは少し笑う、何故現在だけで判断するのかと、未来の俺は今の俺よりももっと強い…。
「俺にお前を賭けろ」
その言葉思い…気に入った…剣が未来を見据えるイザラの思考を気に入り、柄に指を添えたイザラがするりと剣を鞘から抜いた。
『おお…』
全員その場にいた者達から安堵の声が漏れる、剣で鞘を縛る封印を切り落とし鞘に剣を戻し地面に着地した。
「おめでとう…イザラ」
「うん…」
グローリーから祝われイザラが嬉しそうにする、剣がイザラの左手首に緋色の腕輪として収まった。
「イザラ…その剣…俺の父上の鱗で出来ている…炎に強い剣…」
「ありがとう…大事にする」
「しなくてもいい…剣は使う物だ」
「でも大事にするから…一緒に未来に進む」
「そうか…ありがとう」
チグリスがイザラに礼を言う、ようやく剣が主を選んだのだ若き魔人を…。
何頭ものドラゴンが挑み相手にされなかった剣だ、気難しいだろうがきっとこの少年なら上手く付き合っていけるとチグリスは思った。
「さ、外に出よう」
「このまま、墓参りに行こうぜ」
「なら、場所は俺が分かるから。俺が転移札を使おう」
ゴーシュが転移札を使い、そのまま古代龍の墓標へと向かった…。
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