あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第8部 晴れた空の下手を繋いで…

第17話 棄てられたゴーレム

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どうか愛して下さい…愛して貰えるように頑張ります、努力します…棄てないで…棄てないで…私は生きています…。
『飽きたーいらなーい新しいのがほしいー』
『仕方ないなぁ』
『わあい、次は鳴く動物のやつねー』
『ああ、良いさそいつは売って新しいのを買おう』
『早く行こう!』
ごめんなさい…ごめんなさい…棄てないで…独りは嫌なんです…どうかどうか…頑張って愛される様に努力します、だから私を離さないで…。
『コイツつかえねーなー』
『トロいし』
『結構な金払ったんだぞ、おらっ』
お願いです…蹴らないで痛い…痛い…どうして痛いの…私の身体は岩で出来ているのに…どうして、どうして痛いの…?
『あーあ、こんなになったし。もうダメだなー』
『ま、この魔石は良いやつだし取り出して棄てるか』
『この魔石質が良いからな』
やめてやめて痛い…いたい…イタイ…大事な物…盗らないで…奪わないで…頑張りますから…努力しますから…だから…だから…。

「おとーさん、この子痛いよ、かわいそう」
「ああ、そうだな。今から治すからな」
「う、うん。大丈夫だからねきっとすぐ治るよー」
「細かい部分の修復は任せて下さいぃ」
「俺の腕も旦那達に治して貰ってまた服作れるているんだ、コイツも綺麗に治してやるぞ!」
優しい声…私を心配してくれている…暖かい声、私まだ…生きているんですか?
「ゴーレムって飯とかは食べないのか?」
「魔力と核の魔石か鉱物が稼働している限りは動くみたいです」
「ニアの魔鉄と神鋼を入れて調整しよう…」
「そうか!働いてくれるなら飯とか給料とか楽しみって必要だよな」
楽しみ…?そんなもの知らない…飯…生物が必要とする物?私はゴーレム…岩人形…誰もそんな事求めてないのに?
何かが入ってくる…私の内に…なあにそれ…2つ…なあにそれ?
「上手く混じりあって…溶けない…2つ…そのまま…お前の中に…ゆき…名を贈れ…」
「名前か、タイタンはどうだ?俺がいた世界の他の国神々の一族の総称かな。1番最初に治したから始まりを込めて」
優しい声…それとか名前なんか無い私に名前をくれた人…優しい人…私はタイタン、私の名前…。
「タイタン…馴染んだ…目覚める」
「綺麗になりましたぁ」
「ひび割れは全部埋めたぞ!」
「カルナラー石も馴染んだねー」
私の意識…私の心…魂が…今、産まれた…。

「起きたのか?」
『はい』
「喋るゴーレム!?今までそんなゴーレムいませんでしたよ!?」
崇幸が身体をゆっくり起こすゴーレムタイタンに話しかければ、タイタンが頷いて声を出す。
口はないが小さくなった顔の窪みに嵌め込まれた無色のカルナー石が周囲を映し、そこから声を出しているようだった。
『ご主人様…皆さん、私の身体を直して頂きありがとうございます』
「そんな固い挨拶ははいいからさ、せっかくだ皆に紹介しにいこう」
『はい』
自分の声…不思議な気分だ、以前の主人たちにどんなのに声を上げて訴えても伝わらない言葉が感嘆に伝わる。
崇幸がタイタンをそっと優しい手つきで抱き上げ抱えてやる、シアやテトラ達も嬉しそうにしていた。

「へえ、これがゴーレム」
「崇幸さん俺にも抱っこさせて」
「良いか?タイタン」
『はい』
船の大食堂で仕入れを終えた詠斗達と休憩している晴海達がタイタンを見て、晴海が抱っこさせて欲しいと頼んでタイタンを受け取った。
「わ、軽いね。あったかいなー」
『晴海様も暖かいです』
「晴海で良いよ、タイタン」
『晴海』
「俺は詠斗ね」
『詠斗』
「うん」
「そう」
「タイタンは食べるし眠るし喋るんだぞ」
「じゃ、今日はベルンの所に行って皆で寝ようよ!きっとみんなびっくりするよ!」
『崇幸様…』
「もちろんいいぞ!シアもベルンや舵達と寝るか?」
「うん!」
晴海は嬉しそうにしタイタンも崇幸に伺い、シアも嬉しそうにしていた。
「じゃ、最初の飯はこれにする?」
「お、オムライスじゃないか!最高だ懐記君!」
厨房からトレイを持って出て来た懐記が湯気立つ、黄金色のオムライスにケチャップを掛け、野菜がとろとろになるまで煮込んだスープ、果物も入ったさっぱりドレッシングのサラダをテーブルに置いてくれた。
「デザートは俺が作ったアイスだよ」
「さあ、どうぞタイタン」
タイタンを晴海がテーブルに乗せて行儀は悪いかもしれないが幼児サイズのイスが無いのでご愛敬という事にし、フルーフとリプもタイタンの隣に並び、テトラ達にもアイスを振る舞った。
『いただきまーす』
『…いただきます』
タイタンも遅れて皆に倣い丸い何も掴めない手にスプーンを吸着させて、カルナラー石の眼の下にポカリと空洞を開けオムライスを入れた。
『味…色々な味これが…味…』
「美味いか?タイタン」
『はい』
「そうか…またゆっくりお前の兄弟を直してくからな」
『きょうだい…』
「お前が最初な…兄ちゃんかな?」
『…私に性別はありません』
「そうか、兄弟が出来るからお前が最初だ」
『はい』
「テトラとフルーフとリプはどうする?明日人形工房にまた一緒に行くか?」
「そうするー今日は戻るよー」
「旦那達また明日!」
「また明日ですぅ」
「おう!」
テトラ達が懐記からオムライスとスープとサラダの皿を貰い収納カバンにしまい、転移札でテントに戻って行った。
千眼と崇幸は夕食までホテル造りの続きを行い、晴海とシアとタイタンはベルン達の所へ向かった。

「屋台、良い感じですね」
「10台用意出来ましたね、魔鉄を使うと簡単に出来ますね」
「お、出来たか?これが射的ってやつか?へえ」
「あ、ジラさんやってみます?」
「いいぜ、大河を迎えに行ったらドワーフのおっさん達が酒集って離してくれないから置いてきた」
「迎えに行った意味ないですね」
綴と千華とヒュール達にクラークラック達も集まり屋台を造り終え、ジラが会議室にやってくる。
一番大きな屋台の射的に目を向け不適な笑みを浮かべた。
「俺も酒飲んで来たからな外しちゃうかもなー弓は得意じゃないし」
「千華さん、ちょうどいいですね。一番難しいランクにしましょうか」
「ええ」
「おお、こわ」
千華がジラに弓と矢を渡す、先端が吸盤になっており屋台の射的台は全部で5段、一番上が小さい的、そこから下に向けて的が大きくなる、全部でチャンスは5回得点に応じて貰える景品が変わる遊戯だ。
千華が手を翳せば的たちが宙に浮き逃げて行く、射的では無く纏当てゲームに遊戯が変わった。
「おーい…これも射的なのか?」
「ジラさん達上級者用です」
「そーかい、よっ」
矢を5本持ち大して的も見もせずパパパと的を撃ちぬいていく、小さい的から順に5射的確に全てど真ん中で的は全て落ちていく。
「お見事!」
「すごいですねー」
「結構楽しめるな」
「景品は何にします?」
「そりゃあ、ミルクで」
綴が笑って尋ねる、ジラは子供じみた笑顔でニカっと笑った。

「この子がゴーレムなんですか?暖かいね」
『タイタンです』
「おはなしできるごーれむだ」
「ほぉ、中々だな」
ベルン達のテントの中でおやつを食べながら子供達と舵に囲まれているタイタン、モギ達も数頭興味深そうに覗き、ベルン達に懐いたヒュール1匹とクラークラック数頭も匂いを嗅いだりしていた。
「タイタン、クッキー食べる?」
『先ほどオムライスを頂きました』
「これはおやつだよーどうぞ」
『いただきます』
舵から受け取り口に運ぶ、サク…甘い味とサクサクした食感が面白い。
「今日は皆で一緒に寝て、明日はミルク売って船に行こう」
『マスター崇幸の命令にはないです』
「崇幸兄はマスターじゃなくて家族だ、タイタン自由にしていいんだよ」
舵がタイタンの頭を撫でながら笑う、無邪気な笑顔、ベルン達も笑っていた。
『自由…』
「このゴーレムは主人のいない命令をしても背く事が出来る…本当の意味で自由な思考で動けるゴーレムだな。魔王…とんでもない代物を造ったな」
ラピスが関心したようにタイタンを見分する、関心と共に魔王の能力の高さにも改めて驚かされたがラピスにはそれよりも今夜の夕食の方のメニューの方が気になる。
「おやつ食べたら夜ご飯の支度しよ、トイさんとニト達が野菜を採ってくるからミルクシチューと、ナイルさんのパンと…」
「肉とキノコのソテーと蒸野菜のチーズ掛けだね」
皆の大好きな献立に更にテントが賑やかになる、タイタンはなんだかくすぐったくて心地よい気分になった…。
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