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第8部 晴れた空の下手を繋いで…

第15話 ゴーレム工房

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「ふぁ、おはよ」
「おとーさんおはよ!皆元気になったよ!良かった」
「ああ、そうだな。今日はどうする?」
「ユーリィ達が教室行きたいんだって!案内するよ」
「そうか、俺は工房に行くけど…」
「うん!明日は一緒ね」
「そうだな、お土産買ってくるよ」
「おみやげ!?わあーい」
朝シアと食堂で会うとすっかり元気になっていた住民達も食事を旺盛に摂り、詠斗達にお礼などをしきりにしている姿に崇幸はシアの頭を撫でながら笑った。
千眼達と遅くまでホテル造りを行い寝不足だが、気分は酷く高揚していた。
本当はシアと一緒に工房に行きたかったがまだまだこの街を一緒に楽しむかと決め込み、《トイタナ》へ舵たちと共に、シアと孤児院の先生の症状が酷かったトーカンも顔色良くなり一緒に挨拶へと向かう事にしそれを見送って、朝食のキノコとカウンの炒め物とパンに果物と果実水を残った住民達と話しをしながら一緒に食べて過ごした。

「ここが工房ばかりを集めた工房エリアですよー」
「へぇ、雰囲気があるな」
「崇幸…パン」
「ほら、ロックスとテトラとフールフとリプ食べるか?」
「良いんですか?ありがとうございます」
「崇幸ありがとぉ」
「旦那、ありがと!」
「ありがとうございますぅ」
街に入街した際はテトラの分だけ支払い、1度支払えば入る際に木札を見せれば入街料は支払わずに済むので、小人のフールフとリプはテトラのショルダーバッグの中に入って工房エリアの前でチグリスにパンをせがまれたのでジャムパンをロックス、チグリス、テトラ、フルーフとリプにはこっそり渡して食べながら周囲をじっくりと見渡す、少し緩やかな坂道は石畳で作られ何処かしこも煙突から煙が流れてはいるが煙臭さは無くゆっくりと空に溶けて消えていった。
建物はどれも岩や石でかまくらの様な形で1軒1軒、広く間隔を開けていて入口には工房の名前らしい看板が立てられていた。
「へぇ、これは迷うな…」
「ええ、道が分かれていて緩やかな坂がある道がいくつもありますからね、元々この《ホウラク》は島だったのでこの辺りが、島の山の頂上付近だそうです」
「へえ、今度上からこの島見てみるか」
「後で見るか?…パン…」
「お、チグリス乗せてくれるのか?メロンパンで良いか?この後詠斗君達と仕入れに行くんだろ?」
「俺でもいいよー」
詠斗達は現在新しい野菜の苗が園芸ショップに追加されたので、畑に戻りハル達やきゅう達と植えに行っている、それが終われば仕入れに《クイナト》や《ヤナシャ》や《クス》に向かう事になっている。
「夜…」
「夜か!いいな。じゃ、先に言ってくれたチグリスの背に乗せて貰うか、ロックスも乗ろうな」
「え、ええ。いいんですか!?」
「ん…いい」
「ありがとうございます!嬉しいなあ…」
「それは後にして早速見ようよー、ゴーレムとか見たいねー人形とかも」
「おすすめはゴーレムなら《ガーガード工房》と《トンドンド工房》ですかね、ドワーフの方が親方ですよ。人形なら、《バタッシュ工房》《ニース工房》ですね」
「お、いいな!酒もあるし気分良くしてゴーレム売って貰おう」
「ゴーレムってすごい高いんですけどね…」
「やっぱり1体は欲しいよな、まあ金は心配御無用だ!」
崇幸がどんと胸を叩く億を越えても問題はない、シアにも良いお土産を買って帰りたいので張り切っていた。
「では、《ガーガード工房》から行きましょう」
テトラやフルーフやリプも、ゴーレムを見たいしなんなら1体欲しいとの事で一緒に来ていた。
「ゴーレム買ったらお兄ちゃんに自慢しよ」
「カジノの景品でもいいよな」
「みんな驚くぜ!だんな」
「す、すごいですぅ」
「中は熱いですよー」
目の前の《ガーガード工房》と看板が立っている工房に早速足を踏み入れれば、むぁと熱気が流れてくる、崇幸は感じないがテトラが結界を張ってくれロックス達も快適に過ごせる。
「ん?客か?珍しいな、此処までわざわざくるとは」
奥からのそのそとずんぐりむっくりなドワーフが出てくる、《トイタナ》のドワーフ達と変わらないなーと崇幸はおもいつつニコリと笑って挨拶をする。
「どうも、ゴーレムを買おうと思いまして。せっかくだから作っている所も見学させていただきたいなと思いまして」
「ほおードラゴン2体と小人族も連れてかい」
「ま、ドワーフだからねぇー2人とも出ていいよ」
「ドワーフの旦那!オイラはフルーフ!」
「ぼ、ぼくぅはリプですぅ」
「ワシはガーガードというこの工房の主だ、見たきゃ見てけ。ゴーレムは受注品しか作っとらん、今作っているのが終わりゃ作る。大体60日で完成だぞ、昨日から商業ギルドで鉱物の大きい取り引きが行われとるから良いゴーレムが出来るぞ」
「あ、それうちの商会だ」
「何!そうか鉱物ダンジョンからの品等滅多に来ないからな、噂で攻略者が出たらしいがお前さんとこか」
「まあ、そうだよ。因みに材料持ち込みで幾らか値引きとかかありなのか?」
「そうじゃな、商業ギルド程ではないが買い取りもしとる。この街にも岩ダンジョンがあるからな」
「じゃ、値引きしてーこの位あればいいのー?」
「カル連れてくればよかったかな?」
「呼ぶか…?」
「ってなんじゃ!この量!?」
「親方なんすか、騒いでってなんだこりゃ!」
「親方ーどうしだです?ヴわ!」
「どじた?なんだこれ!」
値引きありと聞いてテトラが収納袋をひっくり返しカルから貰った鉱物ダンジョンのドロップ品を山の様に出せば、ガーガードが悲鳴を上げ奥にいたドワーフ達が次からやって来ては驚きに目を剥いた。
「これでゴーレム作って貰える?」
「こんだけ買い取る金は無いぞ、こんだけあれば質の良いゴーレム何体できると思っとる!?」
「これ全部渡すからゴーレム3体造ってくれないか?」
『はあ!?』
「いっぱいあるからー」
「そうそう、期限はいつでもいいよ。楽しみだな」
「こんだけありゃあ、そりゃあすごい長く動くゴーレムが出来るぞ!どんなのが良いんだ!?」
「小さくて可愛いので」
「そんなんで良いのか!?」
「ああ、頼むよ」
「よし!前祝いだ!酒飲んで気合いいれるぞ!!」
『おー!!』
「ドワーフはどこでも皆、酒だなー」
「ドリーガン達みたいだ…」
鉱物の山を囲んで踊るドワーフ、仕事してる場合じゃないと酒の準備をしている光景をチグリスが眺め、《トイタナ》のドリーガン達を思い出す。
「そこのドラゴンの旦那!ドリーガンを知っとるのか!?」
「ああ…」
「うちの商会と組んで店を出してるよ」
「おお、そうかそうか!あいつとは同じ工房で修行した仲だ!元気か!?」
「ああ、よく酒ねだっているよ」
「ガハハ!そうか!あいつは俺以上に酒が好きだからな!元気にしとるか!そうかそうか」
「ん?会うか?」
「あいつは今他の大陸にいるだろ…」
「連れて行くよ、せっかくだから酒皆で飲めばいいんじゃないか?」
「ほ、本当にいいのか!?」
「ああ、今連れて行ける」
「こうしちゃおれん!ちと待ってくれ!弟んところに行ってくる!」
ガーガードが急ぎ工房を飛び出して行く、ほんの少し待っていると同じような顔をしたドワーフとその後ろに数人のドワーフ達がやって来て、鉱物の山に驚きつつ事情をガーガードが話した。
「わしはこの隣で《トンドンド工房》の主で、ガーガード兄の弟だ。ドリーガンに会わせてくれるとは本当か?」
「もちろん、今連れて行って良いか?」
「ドラゴンの背にまさか乗るのか!?そんな大それた事出来ん!」
「ま、その目で確かめてくれ。行くぞ」
全員を一旦《アタラクシア号》へ転移させ、そのまま《ガルディア》の商業エリアのドリーガンの店に到着した。
「な、なんだここは!」
「知らん街だ」
「ま、まさかガーガードとトントンドか!?崇幸がちゅれてきちゃのか!?」
「ほ、本当にドリーガンだぞ!」
「おお!古き友!」
ドリーガンの所のドワーフ達も皆で懐かしさで涙ぐみながら、久方ぶりの再会を喜んだ、崇幸はそれを見て笑う、会いたい人に会える喜び、嬉しさは何物も変えられない、崇幸が尊いと思う物だ、そして自分は逢えない虚しさ、侘しさ、寂しさ、悲しみが胸を締め付ける。
「な、なんと礼を言えばいいか」
「崇幸!本当に!」
「会えて良かったな」
「こうしちゃおれん!酒と肉じゃ!ゆくぞ!崇幸!宴じゃ!」
「酒酒!」
「ほれ、崇幸店に戻るじょ!」
「ええ、まだやる事あるから」
「崇幸…俺が行く…」
「チグリス、肉食いたいのか?」
「ん…」
「なら、収納袋に酒と肉とか入れたからこれ持っていけ。この後の詠斗君達との仕入れはパスするんだぞ、後責任持ってガーガードさん達を送り届ける事。転移札はあるな?」
「ある…わかった」
「じゃ、俺達は続きだな。ガーガードさん、ゴーレム楽しみにしてます」
「おう!任せとけ!」
崇幸がテトラ達とロックスを連れてもう一度工房通りに向かう、その後ガーガード達が《ホウラク》へと戻ったのは夜が空けてから記憶を無くすレベルで泥酔していたらしい…上に酔っ払った状態で造ったゴーレムの話しは……また今度…。
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