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第8部 晴れた空の下手を繋いで…
第3幕 第38話 終幕
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「シアを養子にですか?」
「ええ」
「そうですか、シアをよろしくお願いします」
「はい、この子の父親として恥じない生き方をします」
一晩経ち大分体調も回復した孤児院の先生トーカンが崇幸の目を見つめ握手を交わす、握った手は厚みがあり力強かった。
「本当になんとお礼を言えば…」
「いえ、俺の方こそシアを優しい子に育ててくれてありがとうございます」
「シア、お父さんと幸せになりなさい。君は思い遣りに満ちた優しい子です」
「はい!」
「シア…遠くに行っちゃうの?」
「ユーリィル…」
「大丈夫だよ、いつでも会えるよ」
「本当?」
トーカンの後ろでユーリィル達が不安そうにしている、赤ちゃんは懐記のベビーベットでぐっすり眠っていた。
崇幸の優しい声にユーリィル達はほっとする、シアもにこりと笑う。
「まずはみんな、身体を治して元気にならないとな」
『はーい!』
まだ子供達の顔は赤みを帯びている、おりがみの子達やヒヨコ達や《ガルディア》の住民達が看病や世話をし、皆明るさや元気を取り戻していた。
「よし、おやつだけど。《トイタナ》のベルン君達と一緒に食べるか。店の手伝いも少しするか」
「?はい!」
《トイタナ》の店に崇幸と転移し向かえば、人々が賑やかに買い物を行っていた。
「あ、崇幸兄!シアちゃんこっち!」
ミルク屋の手伝いをしている舵が2人を呼び寄せる、行列をカタンやニトが裁きラピスが会計をしトイとベルンがミルクを絞り、舵がそれを運んでいた。
「わぁ、モギだ!」
「ミルクどうぞ!崇幸さんも!」
「ありがとう!」
「貰おう、飲んだら手伝うからな」
「はい!」
ベルンからミルクの入ったコップを受け取り飲んで店の手伝いをする、最近では店の外に長テーブルを置き商品を売るスタイルにし、従業員が中で広く作業出来るように改築している。
「モギが転移して交代してる!すごい!」
「最近出来るようになったんだよ!」
「あう、あうあ」
「ミルク飲む?」
「あうぅ」
「俺が飲ませよう」
「お願いします」
ベルン達が世話をしている元奴隷の青年もミルクを欲しがり崇幸がコップを支え飲ませてやる、美味しそうに飲んでいる姿にモギが身体を擦り寄せてくる。
「ぼ、僕もお手伝いします」
「ありがとう!」
ミルクを飲み終わり崇幸とシアも手伝いを行い、世話しなく時間が過ぎていった。
「あ、千眼さーん」
「ああ…」
「最近カジノの客が増えてさ~メダルゲーム増やせないー
?」
「ああ…用意する」
「後、メダルも足りないわ」
『トラング様、メダルは此方で増産します』
「オッケ、風早ちゃんお願い」
魚ダンジョンで食料の調達から戻ったトラングとカトゥーシュカの2人が診療所で手伝いをしていた千眼を捕まえ、メダルゲームの追加を頼むと、千眼が自分の収納から射的台と試しに作った先端が吸盤に付いた物をトラングに渡す。
「これでこの棚に並べた物を当てれば貰える…」
「へ~面白そ~でも簡単じゃない?」
「的でも良い…景品はそちらに任せる」
「あ~オケオケ」
「後で置きに行こう…それと生簀の準備は出来ている」
「釣ってその場で捌いて食えるやつねーそれもまとめてやりに行くわ~風呂入って食事したらまた来る」
「ああ…」
「失礼する」
トラングとカトゥーシュカは風呂に向かい汗を流し、後程カジノタワーに向かうことにしカトゥーシュカはトラングに尋ねた。
「あの方は魔王だろう?」
「そうね~何、好み?」
「いや、美しい方だとは思うが…私の故郷の夜の海に降る雪の様だと思った」
「へぇーじゃ、綺麗なんだろうねぇ~」
「そうだな、もう見ることもないだろうが…」
「そうやって自分から希望を手離せば絶望しかないだろ」「あ…そうだな、いつか、もう一度…」
「どうぞご勝手に~」
つまらない表情を浮かべトラングは歩く、カトゥーシュカはその後ろを黙ってついて行った。
「大多数の人々はこのまま《ガルディア》や《トイタナ》に移住希望ですね、後は町の様子次第とは言っていましたが現状領主がいないので戻っても混乱するでしょうね」
「どうしてもと言うならこちらは止められないからね」
「暫くは《アタラクシア号》と島船を拠点に暮らして貰い、準備が出来次第移動という事で」
「《トイタナ》の貴族屋敷のフードコートも進めるか、魔鉄や神鋼で上に居住区を作るか」
「マンションみたいなやつ?皆元気になったら一度家に戻って必要な物を持って来て貰おう」
「そうだな、崇幸さんのスキルで不必要な物も処分出来る」
《アタラクシア号》の会議室、ラジカ、綴、千歳、大河、詠斗が住民達の件の話し合いを行っていた。
「《ガルディア》には土地がありますからね、懐記さんの空き家を広げて…カジノタワーにも…希望者がいれば」
「あそこ、いまいち人気ないよねー」
「きっと気に入ってくれる人もいますよ、間も無く《ホウラク》に到着しますし、我々も暫くの間は船を拠点にしていきましょう」
「そうしよう、それと《ホウラク》観光とかあるし従業員の皆にボーナスを支給するのはどうかな?観光に行かなくてもせっかくだから」
「賛成です、良いですね」
「幾らにしたらいいかな」
「今回は全員一律の金額でどうだ?」
『皆様、それならば1人10万ログではどうでしょうか?』
「良いと思います、《ガルディア》《トイタナ》や孤児院の皆さんに連絡と船にいない皆さんには先に支給して下さい」
「あ、子供達は保護者の人に渡してね。大金をいきなり子供に渡すのは良くないしね」
『承知しました。それと神々からダンジョンの着手に入るそうです、階層をどれ程にするか決めて欲しいとの事です、先程懐記様が50~60階層で子供達も気軽に保護者同伴で入れるアスレチック風なダンジョンとドロップ品は便利品等をと希望されています』
「良いですね!」
「あ、アスレチック!面白そー」
「その位が妥当だな、後でも弄れるんだろう?」
『はい、完全攻略後に改良出来るとの事です。希望のドロップ品等があれば神々の出来る範囲で用意するとの事です』
「それは最高だね、ダンジョンで遊べて自分達でカスタムが出来るとはね」
『コンセプトは魔王が遊べるダンジョンですから』
「世界最高峰のダンジョン、楽しみですね」
「ああ、船が着くまで話を詰めて行くぞ。風早、ダンジョンの伝言とボーナスの支給は任せる」
『承知しました』
ふっと風早の気配が遠のく、住居の準備と等を話し合い夕食の時間までそうして時間を過ごした。
それからはバタバタと時間が過ぎていき、隊長が回復した順に村や破壊されなかった町に戻り荷物を詠斗達の収納に運び、不必要な物は崇幸のスキルで処分していった。
「兵士たちがいないな…」
「それ所じゃないのかもな」
「この混乱に乗じて…ね」
「それもそうだ」
崇幸が収納と似たような空間を開き収納袋を渡した住民達が不用品をそこに入れていく、大河が周囲を確認するも住民達以外はいない静かな物だった。
「なあ、俺達もやっぱりアンタたちについて行ってもいいか?長く住んでいた場所だし愛着もあるが…あの船の暮らしは良い…頼む連れて行ってくれ」
「私も!」
「おれも!」
「ああ、構わない」
「歓迎する」
街に戻ると言っていた住民達も崇幸と大河に頼み、全員が荷物を運びこみが済んで空っぽの町が出来上がった。
「立て看板を置いておけば良いか、後は千歳君に頼んでこちら側からしか来れないように空間を繋げて貰って…」
「帰るか」
『この町の住民は全員他の町に移動しました』と入口に立て看板を置いて去る、住民達も親戚や知り合いなどは一緒に船に来た村人達なので後は 商人や旅人位しか来ない町との事なのでこの程度で十分だろう。
「おかえりなさい!おとうさん!」
「シア、ただいま」
「今日はベルン君達と教室に行ってきたよ!楽しかった!みんなも元気になったら一緒に行きたい」
「そうか、すぐに行けるさ。おやつは食べたか?」
「うん、今日は教室でクッキーを作って食べたよーみんなの分も貰って来たからおとうさん、いっしょに行こう」
「ああ、行こう。きっとみんな喜ぶぞ」
船に戻ると晴海と綴と一緒に教室から戻って来たシアが駆け寄ってくる、崇幸がしゃがんで受け止め頭を撫でてやる。
「崇幸兄、大河くんおかえりー。お疲れ様ー明日の朝には《ホウラク》到着するって」」
「ただいま、そうか。風呂入ってくる」
「行ってらっしゃいー」
「あ、大河さん俺も行くよー」
晴海が後を付いて行き、見晴らしの良い大浴場へ向かった。
「みんな、大分回復してきたすね」
「んーそうね、今日は肉とかも出しとくわ」
「そうすね、煮込みとかにします?」
「いんじゃない」
大食堂の厨房には懐記、ラウラスや《ガルディア》の住民に元奴隷達、おりがみの子達がせっせと料理をしていた。
「カジノの生け簀楽しみですねークーランタークの皆さんが管理して捌いて調理とかもするって」
「魚も自分たちで調達するから、楽しいんじゃない。今日は夜カジノに行ってくるわ」
「了解す」
「そうですか、皆さん移住を決めたんですね。それが良いと思います」
シアが作ったクッキーをラジカが受け取りそれを摘まみながら、崇幸から報告を受け頷く。
「美味しいです、ありがとうござます」
「よ、良かった!」
少し緊張気味だったシアの表情がぱあと明るくなる、崇幸はそんな2人を眺めこれから少しづつ歩よって行けばいいと思った。
「ゆき…」
「千眼さん」
「あ、あのクッキー作ったのでどうぞ!」
「ああ…頂こう」
「えへへ」
「どうかしたのか?」
「今日の夜カジノでメダルゲームの設置と射的の設置を行う…手伝って欲しい…生け簀も千歳に海を運んで貰う」
「もちろん、行くさ。シア今日は帰り遅いから先生達と寝てくれるか?」
「うん!」
「私もカジノへ行きます」
「ああ…」
「明日は《ホウラク》だから早めに戻ってくるとしよう」
「それが良いですね」
「《ホウラク》人形と人の街ですよ!楽しみだなー」
「そうだな、風呂に行って飯食って向かうか」
シアと手を繋ぎ風呂場へ千眼とラジカも向かう、夜は長いが時間は限られている…。
「戻りましたか?ワガママを聞いてあげた結果がこれですか?」
「あう~だって~」
「まあ、良いですよ?私はね」
「まって~ごめんなさい~許してママ~」
「甘えてもダメですよ」
「え~」
「結果はともかくとしておやつがありますよ」
「わ~い」
「それで?どうでしたか?」
「ん~綺麗だったよ~みんな~」
「……そうですか」
「あへへ~あへへ~またあそぼっと」
「次はもっと強いペットを連れて行きなさい」
「は~い」
第3幕 終幕
ーいつかの過去ー
「ねえ、ラジカ…君と私の約束…遥か未来で叶うかも…しれませんね」
「出来れば叶わないで欲しいのですが」
「ふふ…その嫌な顔大好きです心底…」
「私は貴方が嫌いですよ、心の底から」
「知っています…」
「ラジカ…」
「父上…」
「終わりにしてあげて…」
「そうですね」
「楽しい時間だけはいつも早くいってしまう…それだけがいつも悲しいのです…」
「眠りなさい…死ねない君へ永劫の眠りを…」
「いつかはまた還ってきます…ラジカ…大好き…君を欠片も残さず喰って喰って…」
「僕の息子は随分と頭のイカれた存在に愛されたようだね」
「迷惑ですよ」
「そう…」
「いつかの約束…叶わぬ事をねがいます…」
「ええ」
「そうですか、シアをよろしくお願いします」
「はい、この子の父親として恥じない生き方をします」
一晩経ち大分体調も回復した孤児院の先生トーカンが崇幸の目を見つめ握手を交わす、握った手は厚みがあり力強かった。
「本当になんとお礼を言えば…」
「いえ、俺の方こそシアを優しい子に育ててくれてありがとうございます」
「シア、お父さんと幸せになりなさい。君は思い遣りに満ちた優しい子です」
「はい!」
「シア…遠くに行っちゃうの?」
「ユーリィル…」
「大丈夫だよ、いつでも会えるよ」
「本当?」
トーカンの後ろでユーリィル達が不安そうにしている、赤ちゃんは懐記のベビーベットでぐっすり眠っていた。
崇幸の優しい声にユーリィル達はほっとする、シアもにこりと笑う。
「まずはみんな、身体を治して元気にならないとな」
『はーい!』
まだ子供達の顔は赤みを帯びている、おりがみの子達やヒヨコ達や《ガルディア》の住民達が看病や世話をし、皆明るさや元気を取り戻していた。
「よし、おやつだけど。《トイタナ》のベルン君達と一緒に食べるか。店の手伝いも少しするか」
「?はい!」
《トイタナ》の店に崇幸と転移し向かえば、人々が賑やかに買い物を行っていた。
「あ、崇幸兄!シアちゃんこっち!」
ミルク屋の手伝いをしている舵が2人を呼び寄せる、行列をカタンやニトが裁きラピスが会計をしトイとベルンがミルクを絞り、舵がそれを運んでいた。
「わぁ、モギだ!」
「ミルクどうぞ!崇幸さんも!」
「ありがとう!」
「貰おう、飲んだら手伝うからな」
「はい!」
ベルンからミルクの入ったコップを受け取り飲んで店の手伝いをする、最近では店の外に長テーブルを置き商品を売るスタイルにし、従業員が中で広く作業出来るように改築している。
「モギが転移して交代してる!すごい!」
「最近出来るようになったんだよ!」
「あう、あうあ」
「ミルク飲む?」
「あうぅ」
「俺が飲ませよう」
「お願いします」
ベルン達が世話をしている元奴隷の青年もミルクを欲しがり崇幸がコップを支え飲ませてやる、美味しそうに飲んでいる姿にモギが身体を擦り寄せてくる。
「ぼ、僕もお手伝いします」
「ありがとう!」
ミルクを飲み終わり崇幸とシアも手伝いを行い、世話しなく時間が過ぎていった。
「あ、千眼さーん」
「ああ…」
「最近カジノの客が増えてさ~メダルゲーム増やせないー
?」
「ああ…用意する」
「後、メダルも足りないわ」
『トラング様、メダルは此方で増産します』
「オッケ、風早ちゃんお願い」
魚ダンジョンで食料の調達から戻ったトラングとカトゥーシュカの2人が診療所で手伝いをしていた千眼を捕まえ、メダルゲームの追加を頼むと、千眼が自分の収納から射的台と試しに作った先端が吸盤に付いた物をトラングに渡す。
「これでこの棚に並べた物を当てれば貰える…」
「へ~面白そ~でも簡単じゃない?」
「的でも良い…景品はそちらに任せる」
「あ~オケオケ」
「後で置きに行こう…それと生簀の準備は出来ている」
「釣ってその場で捌いて食えるやつねーそれもまとめてやりに行くわ~風呂入って食事したらまた来る」
「ああ…」
「失礼する」
トラングとカトゥーシュカは風呂に向かい汗を流し、後程カジノタワーに向かうことにしカトゥーシュカはトラングに尋ねた。
「あの方は魔王だろう?」
「そうね~何、好み?」
「いや、美しい方だとは思うが…私の故郷の夜の海に降る雪の様だと思った」
「へぇーじゃ、綺麗なんだろうねぇ~」
「そうだな、もう見ることもないだろうが…」
「そうやって自分から希望を手離せば絶望しかないだろ」「あ…そうだな、いつか、もう一度…」
「どうぞご勝手に~」
つまらない表情を浮かべトラングは歩く、カトゥーシュカはその後ろを黙ってついて行った。
「大多数の人々はこのまま《ガルディア》や《トイタナ》に移住希望ですね、後は町の様子次第とは言っていましたが現状領主がいないので戻っても混乱するでしょうね」
「どうしてもと言うならこちらは止められないからね」
「暫くは《アタラクシア号》と島船を拠点に暮らして貰い、準備が出来次第移動という事で」
「《トイタナ》の貴族屋敷のフードコートも進めるか、魔鉄や神鋼で上に居住区を作るか」
「マンションみたいなやつ?皆元気になったら一度家に戻って必要な物を持って来て貰おう」
「そうだな、崇幸さんのスキルで不必要な物も処分出来る」
《アタラクシア号》の会議室、ラジカ、綴、千歳、大河、詠斗が住民達の件の話し合いを行っていた。
「《ガルディア》には土地がありますからね、懐記さんの空き家を広げて…カジノタワーにも…希望者がいれば」
「あそこ、いまいち人気ないよねー」
「きっと気に入ってくれる人もいますよ、間も無く《ホウラク》に到着しますし、我々も暫くの間は船を拠点にしていきましょう」
「そうしよう、それと《ホウラク》観光とかあるし従業員の皆にボーナスを支給するのはどうかな?観光に行かなくてもせっかくだから」
「賛成です、良いですね」
「幾らにしたらいいかな」
「今回は全員一律の金額でどうだ?」
『皆様、それならば1人10万ログではどうでしょうか?』
「良いと思います、《ガルディア》《トイタナ》や孤児院の皆さんに連絡と船にいない皆さんには先に支給して下さい」
「あ、子供達は保護者の人に渡してね。大金をいきなり子供に渡すのは良くないしね」
『承知しました。それと神々からダンジョンの着手に入るそうです、階層をどれ程にするか決めて欲しいとの事です、先程懐記様が50~60階層で子供達も気軽に保護者同伴で入れるアスレチック風なダンジョンとドロップ品は便利品等をと希望されています』
「良いですね!」
「あ、アスレチック!面白そー」
「その位が妥当だな、後でも弄れるんだろう?」
『はい、完全攻略後に改良出来るとの事です。希望のドロップ品等があれば神々の出来る範囲で用意するとの事です』
「それは最高だね、ダンジョンで遊べて自分達でカスタムが出来るとはね」
『コンセプトは魔王が遊べるダンジョンですから』
「世界最高峰のダンジョン、楽しみですね」
「ああ、船が着くまで話を詰めて行くぞ。風早、ダンジョンの伝言とボーナスの支給は任せる」
『承知しました』
ふっと風早の気配が遠のく、住居の準備と等を話し合い夕食の時間までそうして時間を過ごした。
それからはバタバタと時間が過ぎていき、隊長が回復した順に村や破壊されなかった町に戻り荷物を詠斗達の収納に運び、不必要な物は崇幸のスキルで処分していった。
「兵士たちがいないな…」
「それ所じゃないのかもな」
「この混乱に乗じて…ね」
「それもそうだ」
崇幸が収納と似たような空間を開き収納袋を渡した住民達が不用品をそこに入れていく、大河が周囲を確認するも住民達以外はいない静かな物だった。
「なあ、俺達もやっぱりアンタたちについて行ってもいいか?長く住んでいた場所だし愛着もあるが…あの船の暮らしは良い…頼む連れて行ってくれ」
「私も!」
「おれも!」
「ああ、構わない」
「歓迎する」
街に戻ると言っていた住民達も崇幸と大河に頼み、全員が荷物を運びこみが済んで空っぽの町が出来上がった。
「立て看板を置いておけば良いか、後は千歳君に頼んでこちら側からしか来れないように空間を繋げて貰って…」
「帰るか」
『この町の住民は全員他の町に移動しました』と入口に立て看板を置いて去る、住民達も親戚や知り合いなどは一緒に船に来た村人達なので後は 商人や旅人位しか来ない町との事なのでこの程度で十分だろう。
「おかえりなさい!おとうさん!」
「シア、ただいま」
「今日はベルン君達と教室に行ってきたよ!楽しかった!みんなも元気になったら一緒に行きたい」
「そうか、すぐに行けるさ。おやつは食べたか?」
「うん、今日は教室でクッキーを作って食べたよーみんなの分も貰って来たからおとうさん、いっしょに行こう」
「ああ、行こう。きっとみんな喜ぶぞ」
船に戻ると晴海と綴と一緒に教室から戻って来たシアが駆け寄ってくる、崇幸がしゃがんで受け止め頭を撫でてやる。
「崇幸兄、大河くんおかえりー。お疲れ様ー明日の朝には《ホウラク》到着するって」」
「ただいま、そうか。風呂入ってくる」
「行ってらっしゃいー」
「あ、大河さん俺も行くよー」
晴海が後を付いて行き、見晴らしの良い大浴場へ向かった。
「みんな、大分回復してきたすね」
「んーそうね、今日は肉とかも出しとくわ」
「そうすね、煮込みとかにします?」
「いんじゃない」
大食堂の厨房には懐記、ラウラスや《ガルディア》の住民に元奴隷達、おりがみの子達がせっせと料理をしていた。
「カジノの生け簀楽しみですねークーランタークの皆さんが管理して捌いて調理とかもするって」
「魚も自分たちで調達するから、楽しいんじゃない。今日は夜カジノに行ってくるわ」
「了解す」
「そうですか、皆さん移住を決めたんですね。それが良いと思います」
シアが作ったクッキーをラジカが受け取りそれを摘まみながら、崇幸から報告を受け頷く。
「美味しいです、ありがとうござます」
「よ、良かった!」
少し緊張気味だったシアの表情がぱあと明るくなる、崇幸はそんな2人を眺めこれから少しづつ歩よって行けばいいと思った。
「ゆき…」
「千眼さん」
「あ、あのクッキー作ったのでどうぞ!」
「ああ…頂こう」
「えへへ」
「どうかしたのか?」
「今日の夜カジノでメダルゲームの設置と射的の設置を行う…手伝って欲しい…生け簀も千歳に海を運んで貰う」
「もちろん、行くさ。シア今日は帰り遅いから先生達と寝てくれるか?」
「うん!」
「私もカジノへ行きます」
「ああ…」
「明日は《ホウラク》だから早めに戻ってくるとしよう」
「それが良いですね」
「《ホウラク》人形と人の街ですよ!楽しみだなー」
「そうだな、風呂に行って飯食って向かうか」
シアと手を繋ぎ風呂場へ千眼とラジカも向かう、夜は長いが時間は限られている…。
「戻りましたか?ワガママを聞いてあげた結果がこれですか?」
「あう~だって~」
「まあ、良いですよ?私はね」
「まって~ごめんなさい~許してママ~」
「甘えてもダメですよ」
「え~」
「結果はともかくとしておやつがありますよ」
「わ~い」
「それで?どうでしたか?」
「ん~綺麗だったよ~みんな~」
「……そうですか」
「あへへ~あへへ~またあそぼっと」
「次はもっと強いペットを連れて行きなさい」
「は~い」
第3幕 終幕
ーいつかの過去ー
「ねえ、ラジカ…君と私の約束…遥か未来で叶うかも…しれませんね」
「出来れば叶わないで欲しいのですが」
「ふふ…その嫌な顔大好きです心底…」
「私は貴方が嫌いですよ、心の底から」
「知っています…」
「ラジカ…」
「父上…」
「終わりにしてあげて…」
「そうですね」
「楽しい時間だけはいつも早くいってしまう…それだけがいつも悲しいのです…」
「眠りなさい…死ねない君へ永劫の眠りを…」
「いつかはまた還ってきます…ラジカ…大好き…君を欠片も残さず喰って喰って…」
「僕の息子は随分と頭のイカれた存在に愛されたようだね」
「迷惑ですよ」
「そう…」
「いつかの約束…叶わぬ事をねがいます…」
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普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。
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