284 / 867
第8部 晴れた空の下手を繋いで…
第3幕 第29話 島船
しおりを挟む
「んーいやぁ、穏やかだねー」
「そうですねー」
昼食を食べ終わり、非常事態も無事解除され子供達や《ガルディア》の住人達も船の中で自由に過ごしていた。
元奴隷の面々も料理の手伝いや、他の乗客達から話を聞いたり懐記の手伝いをしたりと各々過ごしている、そんな中詠斗と率はプールサイドのイスに座りジュースを飲んでまったりと過ごしていた。
「2人ともここにいたの?」
「あ、舵さんおかえりなさい。お疲れー一緒にどう?」
「ジュース飲みますか?ひと段落着いたから一休みですー」
「いいねぇ、そっちもお疲れさまー」
「なんとか無事に終わったよ、ベルン達は?」
「大食堂で皆が作ったカルメ焼き食べたり作ったりしながらパズルで遊んでるよ」
モギ1頭を傍らに連れ撫でながら椅子に座って舵が寛ぐ、率が氷とグラスを出してくれカノリジュースを注いでくれる、モギには収納からカウンを詠斗が出してやった。
「カルメ焼き奴隷の人達で上手に出来る人がいて、店をやってみたいってさ」
「重曹、この世界に無いから商業エリアでの販売か…」
「龍皇国ならいいかもしれないですね」
「そうだねー」
明るい陽射しの下3人とモギ1頭、なんとも穏やかな昼下がりだった。
「やっと読書タイムだな」
大部屋でベットの上で寝そべり読書を楽しむ大河、手に持っているのはこの世界で買い込んだ本だった。
「大分昔の英雄の話しか…チグリスなら分かるか?」
『英雄』という2文字の本、とある昔の英雄の生涯とそれを支えた友の物語を読み進めていく。
「……」
静かな時間が過ぎていく、ページを捲る音だけが聞こえた…。
「シャワーを浴びて着替えて来ますね」
「はい、お疲れ様でしたねラジカさん」
「ゆっくり休むといいよ」
「はい」
所々切れ血が付いた服を着替えに部屋に戻るラジカを綴と千歳が見送る、カトゥーシュカが心配そうにチラリとラジカを見るが傷自体はもう癒えている軽く手を振り大食堂を後にした。
適当に空き室に入りベッドに上着を放りスマホを取り出し、電話を掛ける。
「はい、私です。ええ、そうですか見つかりましたか、明日会いに行きます」
手短に通話を切りベッドに腰かけ、ふーと深い息を吐きだした。
「返事ね、はぁ」
頭を乱雑に搔き上げ上着や服を脱ぎ血が付いたので火魔法で跡形もなく燃やしシャワーを浴びに行く、正直付き合うというのも分からない、しかも魔王からとは…シャワーの蛇口を捻り冷えた水を浴びて思考をクリアにしていく、今日は残りの仕事を片付け明日のやるべき事は決まった。
「仕事なら迷わなくても考えなくても済みますが」
冷たいシャワーを浴びていると不意に昔の事を思い出す、儚げな笑み、触れれば壊れそうな華奢な肢体、甘い声…いつかまたと動く淡い唇…。
「約束がありますから…」
遠き日に交わした蜜言とは程遠い破綻した約束、ラジカはその約束を成就させたい訳ではなかったが約束が叶ったその先に何が待ち受けているのかラジカには分からなかったがその約束が仕事と趣味以外に最優先されるべきものだった。
「明日、返事を返すとしましょう」
軽く髪と身体を洗い身体を拭き、風魔法で髪を乾かし手早くテトラが制作してくれたスーツに身を包み部屋を出た。
「このカルメ焼きおいしい!」
「ミルクとあうー」
「コツをつかんだからよく膨らむ」
「上手ですね」
奴隷だった人々《ガルディア》の住人達に、カトゥーシュカもカルメ焼きを作っていた、最初はしぼんでいたが何度か作ると上手にお玉の中で膨らませる事が出来、子供達がわいわいと囲んでいる。
「懐かしいですよね、学校でやりました」
「俺は上手く膨らまなかったなー」
「シンプルだけど美味しいよね、久しぶりに食べるよ」
「甘い香りがしますね」
「あ、ラジカさん!俺が作ったカルメ焼き!食べて」
「晴海さん、ありがとうございます。いただきますね」
「ラジカさん、紅茶で良いですか?ミルクも合いますよ」
「では、ミルクで」
シャワーから戻ったラジカが晴海から出来立てのカルメ焼きが入った器を受け取り、綴からミルクを貰って席に着く、サクホロとした食感に口に広がる甘さがすぐに溶けて美味しく感じられた。
「美味しいですね」
「シンプルだけどね!俺好きだよこれ」
「あ、カルメ焼きだー俺にもちょうだい」
「僕は作りたいです」
「これ結構難しいでしょー」
詠斗達も日光浴から戻りカルメ焼き作りに混じる、ニジェルガとライガルも作りお土産として持って帰るとの事で沢山作っていた。
「これ…よければ…」
「んー貰う~」
躊躇いがちにカトゥーシュカがトラングに上手く出来たカルメ焼きを渡す、トラングも受け取り口に入れてサクサクと食べ進むが一欠けらも零さず綺麗に食べ、カトゥーシュカがほっとした表情を浮かべた。
「崇幸さんや千眼さん達にカルメ焼きとお茶を持って行きましょう、船も見たいですし」
「俺も行く!」
「俺もー」
「俺も」
綴がおやつを収納にしまい、詠斗、晴海、舵を連れて会議室へ移動した。
「お、良い感じに出来たな」
「ああ…海に出して実際の大きさで中をみたい…」
「ああ、これが我々の…いえこの海の船…」
崇幸と千眼とフユーゲルにヒュール達が完成した船模型の様な船を見てキラキラした目をしていた、プールの代わりに養殖が出来る生け簀に、生い茂る森林(千歳の収納の《名もなき島》からの提供)カノリとカウンやトウモロコシ畑に果物の果樹園を船内に置き、陽の光を大きく取り入れた屋根は全面ガラス張りにし、客室は最小限に大食堂、大浴場を大きくし、厨房もより大きな魚を捌くスペースと焼き場を大きく取った形となっている。
「お、すごい!」
「わ、船の島みたい」
「それをイメージして作ったからね!」
崇幸が得意げに笑う、少年のような瞳をしている様に晴海も満面の笑みを浮かべた。
「早く《アタラクシア号》と並んで並走しようよ!」
「ああ…」
「風早、準備は問題ないですか?」
『はい、マスター綴。そちらの船にも私のデータを入れてあります』
「ありがとう、それではみなさん船の前におやつをどうぞ」
『はい』
綴が出来立てのカルメ焼きを収納から出してくれる、一旦席に着いて皆でカルメ焼きを食べた。
「トイさん達、おやつにしましょう」
「ナイルさん、ありがとうございます」
一方こちらはベルン達のテント付近、トイやベルン達にハル達、青年やラドウやオリガもカノリとカウンの収穫や、詠斗が新しくスキルで出した巨峰の為の支柱や網状の屋根も用意していた。
『もぐ!』『もぐぅ』『もぐ』『ぴぃ』
「はい、今日はパウンドケーキですよ。干したカノリを沢山入れましたからね」
神々からも催促がラインに来たので沢山焼いていたら時間が少し遅くなってしまった、シートを敷いて皿に切り分けみんなで食べる、ジュースやお茶を用意してナイルはテトラ達の元へとおやつを届けにいく。
今夜は皆で船で串揚げパーティなので、おやつは少なめにした。
「このブドウも酒の材料になるんですよ!きっときれいな酒ができます!」
「いやぁそれも楽しみだけど、畑仕事手伝うだけで酒貰って悪いな」
「いいんです!皆に飲んで欲しいので!」
「じゅーすもおいしいよー」
「あう、ああうぅ」
「はい、どうぞゆっくり食べて下さい」
「ああぅ」
ベルンがフォークでちょっとずつ青年の口に入れて、ジュースを飲ませてやる。
「名前ないと不便だよなー」
「そうですね」
ラドゥとオリガがパウンドケーキの欠片を零しながら笑う青年の無邪気な顔をしている横目で見つめる、奴隷で精神を壊されてしまっていると教えられた、惨い事をする…が正気だと耐えられないような目に遭っているのかもしれないと思うと子供の様に無邪気なままの方が良いのかもしれないと思う。
「良い名前を贈るぞー」
「妖精王からの贈り物なんてすごいですね」
「そうだな」
ラピスが張り切ればオリガが感嘆しラドゥが笑う、ニトはカルンを腕に抱きモギ達が周辺で葉っぱを食べてのんびりと過ごす。
「ああぅうう」
「はい、口開けて下さい」
お代わりを催促されベルンが口にパウンドケーキを運ぶ、トイがそれを微笑ましく眺めた。
「ま、だんまりだよなー。でも飯は食えよ、大河達から絶対に簡単には死なせないと言われているしなー」
「ミルクとパン粥を用意していますし。何か好きな物はありますか?」
「ゴーシュ、父さん回復札があるし薬草もあるからそんなに構うなよ」
「お、ティス妬いているのかー」
「アホか」
龍皇国の下街のグローリーの家でゴーシュと、ティータ、ティスが奴隷商人に食事を用意し出していた。
「ここにいるだけでは退屈でしょうし、何か本や暇を潰せる物を用意しましょうか」
「なんでそんな気を遣うんだよ…」
「グリがいれば退屈しないだろうけどなー」
「……」
「あいつ最近料理もするしな、後はおりがみしてるけど…」
「可愛いですよね、グリちゃん」
ティータが退屈を紛らわせる為に何か用意しようかと提案するが奴隷商人はだんまりとしている、やけに気に掛けるティータとゴーシュに呆れた。
「ま、何してもこの部屋からは出られないしなー流石、懐記。なんか暇潰しは必要かもな」
「そうだな、飯は食え食え」
「……」
ずっと見られているのもと仕方なしにパン粥を口に運ぶ、甘みと塩味が程よく効いていて美味は美味、果物も出されそれも食べた。
「あ、人生ゲーム懐記から貰ったんだわ。眼鏡もあるし、やるか」
「何それ」
「やりましょう」
「……」
奴隷商人は放って置いてくれと心の底から願うが、収納ショルダーバッグから人生ゲームを取り出す、後々この4人はこれをやらなければ良かったと後悔するような泥仕合で夜を明かす事になるが、後日これのコンシューマーゲームを舵から貰い受けこの面子にグローリーを入れ再び泥仕合を
やる事になるとは彼らはまだ知らなかった…。
「そうですねー」
昼食を食べ終わり、非常事態も無事解除され子供達や《ガルディア》の住人達も船の中で自由に過ごしていた。
元奴隷の面々も料理の手伝いや、他の乗客達から話を聞いたり懐記の手伝いをしたりと各々過ごしている、そんな中詠斗と率はプールサイドのイスに座りジュースを飲んでまったりと過ごしていた。
「2人ともここにいたの?」
「あ、舵さんおかえりなさい。お疲れー一緒にどう?」
「ジュース飲みますか?ひと段落着いたから一休みですー」
「いいねぇ、そっちもお疲れさまー」
「なんとか無事に終わったよ、ベルン達は?」
「大食堂で皆が作ったカルメ焼き食べたり作ったりしながらパズルで遊んでるよ」
モギ1頭を傍らに連れ撫でながら椅子に座って舵が寛ぐ、率が氷とグラスを出してくれカノリジュースを注いでくれる、モギには収納からカウンを詠斗が出してやった。
「カルメ焼き奴隷の人達で上手に出来る人がいて、店をやってみたいってさ」
「重曹、この世界に無いから商業エリアでの販売か…」
「龍皇国ならいいかもしれないですね」
「そうだねー」
明るい陽射しの下3人とモギ1頭、なんとも穏やかな昼下がりだった。
「やっと読書タイムだな」
大部屋でベットの上で寝そべり読書を楽しむ大河、手に持っているのはこの世界で買い込んだ本だった。
「大分昔の英雄の話しか…チグリスなら分かるか?」
『英雄』という2文字の本、とある昔の英雄の生涯とそれを支えた友の物語を読み進めていく。
「……」
静かな時間が過ぎていく、ページを捲る音だけが聞こえた…。
「シャワーを浴びて着替えて来ますね」
「はい、お疲れ様でしたねラジカさん」
「ゆっくり休むといいよ」
「はい」
所々切れ血が付いた服を着替えに部屋に戻るラジカを綴と千歳が見送る、カトゥーシュカが心配そうにチラリとラジカを見るが傷自体はもう癒えている軽く手を振り大食堂を後にした。
適当に空き室に入りベッドに上着を放りスマホを取り出し、電話を掛ける。
「はい、私です。ええ、そうですか見つかりましたか、明日会いに行きます」
手短に通話を切りベッドに腰かけ、ふーと深い息を吐きだした。
「返事ね、はぁ」
頭を乱雑に搔き上げ上着や服を脱ぎ血が付いたので火魔法で跡形もなく燃やしシャワーを浴びに行く、正直付き合うというのも分からない、しかも魔王からとは…シャワーの蛇口を捻り冷えた水を浴びて思考をクリアにしていく、今日は残りの仕事を片付け明日のやるべき事は決まった。
「仕事なら迷わなくても考えなくても済みますが」
冷たいシャワーを浴びていると不意に昔の事を思い出す、儚げな笑み、触れれば壊れそうな華奢な肢体、甘い声…いつかまたと動く淡い唇…。
「約束がありますから…」
遠き日に交わした蜜言とは程遠い破綻した約束、ラジカはその約束を成就させたい訳ではなかったが約束が叶ったその先に何が待ち受けているのかラジカには分からなかったがその約束が仕事と趣味以外に最優先されるべきものだった。
「明日、返事を返すとしましょう」
軽く髪と身体を洗い身体を拭き、風魔法で髪を乾かし手早くテトラが制作してくれたスーツに身を包み部屋を出た。
「このカルメ焼きおいしい!」
「ミルクとあうー」
「コツをつかんだからよく膨らむ」
「上手ですね」
奴隷だった人々《ガルディア》の住人達に、カトゥーシュカもカルメ焼きを作っていた、最初はしぼんでいたが何度か作ると上手にお玉の中で膨らませる事が出来、子供達がわいわいと囲んでいる。
「懐かしいですよね、学校でやりました」
「俺は上手く膨らまなかったなー」
「シンプルだけど美味しいよね、久しぶりに食べるよ」
「甘い香りがしますね」
「あ、ラジカさん!俺が作ったカルメ焼き!食べて」
「晴海さん、ありがとうございます。いただきますね」
「ラジカさん、紅茶で良いですか?ミルクも合いますよ」
「では、ミルクで」
シャワーから戻ったラジカが晴海から出来立てのカルメ焼きが入った器を受け取り、綴からミルクを貰って席に着く、サクホロとした食感に口に広がる甘さがすぐに溶けて美味しく感じられた。
「美味しいですね」
「シンプルだけどね!俺好きだよこれ」
「あ、カルメ焼きだー俺にもちょうだい」
「僕は作りたいです」
「これ結構難しいでしょー」
詠斗達も日光浴から戻りカルメ焼き作りに混じる、ニジェルガとライガルも作りお土産として持って帰るとの事で沢山作っていた。
「これ…よければ…」
「んー貰う~」
躊躇いがちにカトゥーシュカがトラングに上手く出来たカルメ焼きを渡す、トラングも受け取り口に入れてサクサクと食べ進むが一欠けらも零さず綺麗に食べ、カトゥーシュカがほっとした表情を浮かべた。
「崇幸さんや千眼さん達にカルメ焼きとお茶を持って行きましょう、船も見たいですし」
「俺も行く!」
「俺もー」
「俺も」
綴がおやつを収納にしまい、詠斗、晴海、舵を連れて会議室へ移動した。
「お、良い感じに出来たな」
「ああ…海に出して実際の大きさで中をみたい…」
「ああ、これが我々の…いえこの海の船…」
崇幸と千眼とフユーゲルにヒュール達が完成した船模型の様な船を見てキラキラした目をしていた、プールの代わりに養殖が出来る生け簀に、生い茂る森林(千歳の収納の《名もなき島》からの提供)カノリとカウンやトウモロコシ畑に果物の果樹園を船内に置き、陽の光を大きく取り入れた屋根は全面ガラス張りにし、客室は最小限に大食堂、大浴場を大きくし、厨房もより大きな魚を捌くスペースと焼き場を大きく取った形となっている。
「お、すごい!」
「わ、船の島みたい」
「それをイメージして作ったからね!」
崇幸が得意げに笑う、少年のような瞳をしている様に晴海も満面の笑みを浮かべた。
「早く《アタラクシア号》と並んで並走しようよ!」
「ああ…」
「風早、準備は問題ないですか?」
『はい、マスター綴。そちらの船にも私のデータを入れてあります』
「ありがとう、それではみなさん船の前におやつをどうぞ」
『はい』
綴が出来立てのカルメ焼きを収納から出してくれる、一旦席に着いて皆でカルメ焼きを食べた。
「トイさん達、おやつにしましょう」
「ナイルさん、ありがとうございます」
一方こちらはベルン達のテント付近、トイやベルン達にハル達、青年やラドウやオリガもカノリとカウンの収穫や、詠斗が新しくスキルで出した巨峰の為の支柱や網状の屋根も用意していた。
『もぐ!』『もぐぅ』『もぐ』『ぴぃ』
「はい、今日はパウンドケーキですよ。干したカノリを沢山入れましたからね」
神々からも催促がラインに来たので沢山焼いていたら時間が少し遅くなってしまった、シートを敷いて皿に切り分けみんなで食べる、ジュースやお茶を用意してナイルはテトラ達の元へとおやつを届けにいく。
今夜は皆で船で串揚げパーティなので、おやつは少なめにした。
「このブドウも酒の材料になるんですよ!きっときれいな酒ができます!」
「いやぁそれも楽しみだけど、畑仕事手伝うだけで酒貰って悪いな」
「いいんです!皆に飲んで欲しいので!」
「じゅーすもおいしいよー」
「あう、ああうぅ」
「はい、どうぞゆっくり食べて下さい」
「ああぅ」
ベルンがフォークでちょっとずつ青年の口に入れて、ジュースを飲ませてやる。
「名前ないと不便だよなー」
「そうですね」
ラドゥとオリガがパウンドケーキの欠片を零しながら笑う青年の無邪気な顔をしている横目で見つめる、奴隷で精神を壊されてしまっていると教えられた、惨い事をする…が正気だと耐えられないような目に遭っているのかもしれないと思うと子供の様に無邪気なままの方が良いのかもしれないと思う。
「良い名前を贈るぞー」
「妖精王からの贈り物なんてすごいですね」
「そうだな」
ラピスが張り切ればオリガが感嘆しラドゥが笑う、ニトはカルンを腕に抱きモギ達が周辺で葉っぱを食べてのんびりと過ごす。
「ああぅうう」
「はい、口開けて下さい」
お代わりを催促されベルンが口にパウンドケーキを運ぶ、トイがそれを微笑ましく眺めた。
「ま、だんまりだよなー。でも飯は食えよ、大河達から絶対に簡単には死なせないと言われているしなー」
「ミルクとパン粥を用意していますし。何か好きな物はありますか?」
「ゴーシュ、父さん回復札があるし薬草もあるからそんなに構うなよ」
「お、ティス妬いているのかー」
「アホか」
龍皇国の下街のグローリーの家でゴーシュと、ティータ、ティスが奴隷商人に食事を用意し出していた。
「ここにいるだけでは退屈でしょうし、何か本や暇を潰せる物を用意しましょうか」
「なんでそんな気を遣うんだよ…」
「グリがいれば退屈しないだろうけどなー」
「……」
「あいつ最近料理もするしな、後はおりがみしてるけど…」
「可愛いですよね、グリちゃん」
ティータが退屈を紛らわせる為に何か用意しようかと提案するが奴隷商人はだんまりとしている、やけに気に掛けるティータとゴーシュに呆れた。
「ま、何してもこの部屋からは出られないしなー流石、懐記。なんか暇潰しは必要かもな」
「そうだな、飯は食え食え」
「……」
ずっと見られているのもと仕方なしにパン粥を口に運ぶ、甘みと塩味が程よく効いていて美味は美味、果物も出されそれも食べた。
「あ、人生ゲーム懐記から貰ったんだわ。眼鏡もあるし、やるか」
「何それ」
「やりましょう」
「……」
奴隷商人は放って置いてくれと心の底から願うが、収納ショルダーバッグから人生ゲームを取り出す、後々この4人はこれをやらなければ良かったと後悔するような泥仕合で夜を明かす事になるが、後日これのコンシューマーゲームを舵から貰い受けこの面子にグローリーを入れ再び泥仕合を
やる事になるとは彼らはまだ知らなかった…。
1
お気に入りに追加
355
あなたにおすすめの小説
異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。
長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。
女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。
お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。
のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。
ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。
拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。
中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。
旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜
ワキヤク
ファンタジー
その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。
そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。
創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。
普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。
魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。
まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。
制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。
これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~
裏影P
ファンタジー
【2022/9/1 一章二章大幅改稿しました。三章作成中です】
宝くじで一等十億円に当選した運河京太郎は、突然異世界に召喚されてしまう。
異世界に召喚された京太郎だったが、京太郎は既に百人以上召喚されているテイマーというクラスだったため、不要と判断されてかえされることになる。
元の世界に帰してくれると思っていた京太郎だったが、その先は死の危険が蔓延る異世界の森だった。
そこで出会った瀕死の蜘蛛の魔物と遭遇し、運よくテイムすることに成功する。
大精霊のウンディーネなど、個性溢れすぎる尖った魔物たちをテイムしていく京太郎だが、自分が元の世界に帰るときにテイムした魔物たちのことや、突然降って湧いた様な強大な力や、伝説級のスキルの存在に葛藤していく。
持っている力に振り回されぬよう、京太郎自身も力に負けない精神力を鍛えようと決意していき、絶対に元の世界に帰ることを胸に、テイマーとして異世界を生き延びていく。
※カクヨム・小説家になろうにて同時掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる