あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

文字の大きさ
上 下
239 / 867
第7部 異世界帰りの魔王様はチートで無双したりしなかったり~サラリーマンの1から始める異世界ビジネスプラン~

STAGE.2-11 魔王なら魔王っぽいビジュアルしとけ

しおりを挟む
「冒険者ギルドはギルドだけどなー」
「中に出ましたね…」
「手前省けたわ、じゃ報告しよ。昨日の依頼とまとめてやっとくわ」
「?ごめんなさい」
「大丈夫です、グローリーさん。連れて来てくれてありがとうございます」
グローリーの転移魔法で出たのは冒険者ギルドの中、いきなり現れた4人にその場にいた冒険者達や依頼主、職員達が凍り付くが懐記は御構い無し窓口に向かい、ライガルもあやまるグローリーを連れていく。
「い、依頼完了お疲れ様です…えと薬草ダンジョンは第2階層までですね、……買い取りはこちらの金額です…」
「グローリー、いたのか戻るぞ」
「キリング…」
『魔王…?』
「ん、魔王?誰?」
懐記が狼狽えている受付嬢に第2階層のドロップ品をショルダーバッグから出して並べ、買い取りしている間に冒険者ギルドの入り口からグローリーを呼ぶ声に、ライガルとティスの呟く声に懐記が振り返るが魔王らしき見た目をしている人物はいない代わりに、濃い蜂蜜色の髪に琥珀色の瞳に結晶を散りばめたような美しい瞳をしたいかにも光属性の塊のような端整な容姿のグローリーとは真逆な青年が立っていた。
「グローリー、帰るぞ」
「キリング…パーティーはクビになった」
「ああ、問題ない、彼女達は勝手な事をしたからクビにした。またすぐにメンバーを揃えるから。ほら、戻るぞ」
「………」
「グローリー?」
キラキラとしたキリングの瞳がゆっくり瞬く、グローリーは何も言わず動かない、ティスとライガルはキリングの様子を伺う、懐記がキリングの前に立ちグローリーをキリングから隠すようにした。
「グリっちは、昨日からこっちのパーティーのメンバーなんだわ。もうそっちには戻らないからグリっちの分のメンバーも探してくんない?」
「そうか、こちらのパーティーで誤解があったんだ。グローリーの面倒を見てくれていたなら感謝する、謝礼も出す」
声も表情も穏やかだがイラつきを隠そうともしないキリングを見ながら懐記が鑑定をする、魔王:危険 撤退推奨 の文字が現れる、懐記も感じる千華の魔王奪還の際に遭った蒐刻魔王よりもヤバい気配がする…が…。
「あのさ、魔王なら魔王らしいヴィジュアルしといてくんない?その外見はどう見ても勇者とか光属性っしょ」
「お、おい懐記!」
「懐記さん、挑発はいけません…」
「魔王?何の話しか分からないが、今はそんな伝説の存在関係ないだろう?すまないが、メンバーを新たに募集しなければならない、グローリー行くぞ」
「それはダメ、今はこちらのパーティーのメンバー」
「ちょっと待て懐記」
「これは…色々と不味い…」
自分を魔王と自覚していない魔王(これから会う魔王全員これか?)周囲はキリングがグローリーを迎えに来た時点で、大半の冒険者や依頼主達は速やかにギルドを出ている。
実はこの2名はこの街《トルゥードン》の地雷とも言える存在、過去散々この街を拠点にする者達が学んで来た事だった。
グローリーに何かをすれば必ずキリングからの報復が待っている、今回グローリーをパーティーに加えたヤツも此処で大人しく引けば安泰だがと周囲は思いながら冒険者ギルドを去る。
「グリっち、どうすんの?戻る?俺は嫌だけど、グリっちの意志は尊重するわ」
「戻らない…キリング…今まで…ありがとう」
懐記の問い掛けに力強くグローリーが首を振る、一歩前に進みしっかりとはっきりキリングの宝石のように美しい瞳に向けて伝える。
「よく言った、さっさと戻ろう。今日は沢山飯作るわ、ティスっちライガルっち帰ろ」
「……認めない、戻れグローリー」
「…戻らない。キリングありがとう…これキリングに…」
キリングがうつむき低い声音でグローリーを呼ぶ、ティスとライガルが警戒態勢に入る、グローリーが懐記から貰った金色のおりがみで折った畳んだ鶴を懐から取り差し出した。
「何故勝手な事をしている?そいつらに唆されたのか?何を言われた?どんな条件を提示された?」
「言わない…」
「は?」
「キリングさんですよね、お話し中に失礼します。現在グローリーさんは我々のパーティー《黄昏の瞳》のリーダーです。リーダーのパーティー移籍は他のメンバーの承認が必要となります、私は承認しません」
「俺もー」
「同じくーじゃ、そういう事でー」
警戒を崩さずライガルが会話に入り相手を伺う、魔王という自覚が無ければまだ打つ手はある。
「………」
グローリーを連れて4人でテントに戻る、残されたキリングの視線は未だに床を見ていた…。

「ん、じゃ、飯作るわ。楽しいから沢山作るか」
「手伝う」
「俺も…やる」
「私は先に詠斗さん達に状況の説明と仕事の確認をします、何故この街に詠斗さん達が入ると著しく体調が崩れるのか、見えて来ました。懐記さんスマホをお借りしても良いですか?」
「ん、後で俺も連絡入れるわ」
「はい」
ライガルが懐記からスマホを受け取る、懐記達は早速準備に取り掛かった。

「商業エリアも順調ですね」
「出店希望も増えていますし、カジノも好調です」
「《トイタナ》の店もすごいね、追加の仕入れをしたけどユナイドさんの所からでも足りないから、他の支店からの仕入れも始めたし」
本日の業務が全て終了し全員畑に引き上げ少し遅めのおやつ休憩となり、おせんべいや羊羹に親子サブレを山積みにして各自お気に入りのお茶や飲み物を楽しんでいた。
「あ、懐記くんから電話だ。はい、ライガルさん……え?ちょっと待ってみんなに聞こえるようにするから」
詠斗がスマホをスピーカーに切り替えテーブルに置く、落ち着いた心地よい品のあるライガルの美声からとんでもない話が出てその場にいた全員が凍り付く。
「はあ、魔王と魔神の共生?どうなってんだ?しかも正真正銘の自然発生した魔神だろ?」
「魔人から魔神に進化…おそらく長く魔王といた為かな…」
「……自覚のない魔王」
「1位の弱体化の影響が此処までとは…」
ジラ、千歳、千眼、千華が各々考え込む、魔王…キリングの確保は難しそうというのは話の中で理解した。
「龍皇の弟…もしその魔王が魔法以外…剣を使うのであれば戦闘はせず撤退しろ」
『懐記さんの鑑定に危険、撤退推奨と出たとの事です』
「不味ね…グローリー君を連れて、兎に角皇国に向かった方が良いね」
『そうします、原因の調査の件は魔王と魔神が長期に渡り共生していた為あの街一帯が特殊な場所に変化したものだと私は考えます』
「《ベストレア山脈》より濃い場所って所か」
『そのようですね』
「ライガルさん、お疲れ様です。引き続き懐記さんをお願いします」
『はい』
綴が締めくくり会話が終了する、何となく全員の気が重い。
「ねえ、千眼さん。剣を使う魔王は危険なの?」
「ああ…私達の持つ情報の中で剣を使う魔王は1名のみ…」
「僕達の中で1位と13位が最も強い存在なのだけど、その次点が武器を使う魔王という認識だね」
「現在1位のニアは弱体化、所在不明の13位を除くとするならば現時点で最強の魔王ですが…此方側に付かなければ弱体化と無自覚で良かったのかもしれません」
千華が紅茶を飲みながらライガルからの話の異常さを噛み締める、他者にそれも魔神に拘る魔王…序列第12位の魔王の人工的に造られた魔神アシュアへの感情を彷彿とさせた。
「神様達に連絡しておかないと」
詠斗がラインを打ち始める、少し休んで夕食の準備でもしようかと…簡単に済ませようと即座に決まった…。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~

裏影P
ファンタジー
【2022/9/1 一章二章大幅改稿しました。三章作成中です】 宝くじで一等十億円に当選した運河京太郎は、突然異世界に召喚されてしまう。 異世界に召喚された京太郎だったが、京太郎は既に百人以上召喚されているテイマーというクラスだったため、不要と判断されてかえされることになる。 元の世界に帰してくれると思っていた京太郎だったが、その先は死の危険が蔓延る異世界の森だった。 そこで出会った瀕死の蜘蛛の魔物と遭遇し、運よくテイムすることに成功する。 大精霊のウンディーネなど、個性溢れすぎる尖った魔物たちをテイムしていく京太郎だが、自分が元の世界に帰るときにテイムした魔物たちのことや、突然降って湧いた様な強大な力や、伝説級のスキルの存在に葛藤していく。 持っている力に振り回されぬよう、京太郎自身も力に負けない精神力を鍛えようと決意していき、絶対に元の世界に帰ることを胸に、テイマーとして異世界を生き延びていく。 ※カクヨム・小説家になろうにて同時掲載中です。

処理中です...