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第7部 異世界帰りの魔王様はチートで無双したりしなかったり~サラリーマンの1から始める異世界ビジネスプラン~

STAGE.2-10 ランチタイムはサンドとウサギね

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「キリング殿護衛ありがとうございました、娘もこの通りキリング殿に護衛して頂きとても喜んでいます」
朝、キリングが受けた指名依頼の護衛が完了し、依頼主から感謝とその娘もまた頬を染め頭を下げる、依頼は依頼、仕事は仕事、1泊2日の行商人の護衛…大した事はないキリングは薄く微笑み依頼完了のサインを貰い、食事でもと誘う行商人と娘に早く仲間の元に戻りたいのでと断り別れた。
薬草ダンジョンの第5階層攻略後この手の依頼が増えた、今回受けたのは以前からキリングのパーティーに指名依頼をしてくれている依頼主だからだった。
《トルゥードン》にもある商会から馬を借りようと向かう途中の露店を通る、日持ちする干した果物を入れた焼き菓子を購入する、少しの贅沢だが薬草ダンジョンのお陰で懐は少しだけ暖かい。
いつも何を食べても表情の動かないグローリーの人形めいた容貌を思い出す、たった1日グローリーが近くにいないだけでキリングはイライラしている、居たら居たで邪険にするがグローリーも仲間だ、今回も大した働きはしていないがきちんとグローリーの分も購入して商会へと足を運んだ。

「何、そのキリングってヤツ、グリよりすごいの?」
「はい…魔法も何個も同時に使えるし剣も強い…」
第7階層のラスボスの扉前で周回しながらシートを敷いて、《トイタナ》の店で焼いて貰ったパンを縦に切って懐記が作り置きしているおかずや残り物をバンバンチーズと挟み大皿に盛っていく、ライガルもティスもドラゴンなので旺盛に食べていく、ヒヨコと鳥もサンドイッチをつついたり復活した魔物と遊んだりしている、おりがみの作品達もグローリーのショルダーバッグから出て遊んでいた。
「剣が強い人は大勢いますが…属性複数持ちに同時展開ですか」
「まあ、いなくはないな」
ライガルはギョロリのフライとチーズのサンドイッチとジャムサンドをナイフで切り分け上品に食べ、ティスは唐揚げサンドのマヨネーズソースをむしゃむしゃがつがつ平らげ、グローリーは卵焼きとチーズの甘辛サンドを一口一口丁寧にゆっくり噛んで食べている。
「キリングはすごい…」
「ま、そいつがグリっち取り戻そうとしても渡さないけど」
懐記がリンゴモドキをウサギの形に切って皿に盛る、いつもはきゅう達が皮を食べたがるからあげているが今日はいないのでウサギにしてみれば、3人共興味深く見ていた。
「食い物を可愛いくすると食べづらいんだけど」
「食べるのが勿体無いですね」
「食べたくない…」
「そう?食べ物は食べてこそじゃん、まだまだ剥こか」
懐記が次から次へとリンゴモドキでウサギを量産していく、鳥とヒヨコが突っつき、1部おりがみの作品達が手元を覗き、ティスはいくつかを貰ったタッパに入れて収納袋に入れてライガルは1つ1つを眺めて割り切ってシャクシャク食べ進む、うん、リンゴモドキはリンゴモドキだ美味しい。
グローリーはウサギリンゴと向き合い停止している、懐記は容赦なく食べながらウサギリンゴを生み出す、その間にボスが復活したのでヒヨコと鳥と何故か1部おりがみが突入して?ドカンで終わり懐記が動かずアイテム回収を行った。
「懐記…だめ」
「じゃ、こっち」
「ありがとう…かわいいね」
「食べてもいんだけどー」
「だめ」
懐記が普通に皮付きでくし型にして出してくれたのをコクりと頷きリンゴモドキの味を楽しむ、ウサギはライガルは食べ
ティスは持ち帰る事にする、食後のお茶とナイルのクッキーを食べながら再度ボスが復活…以下略だ。
「楽だな、これ攻略って自己申告?」
「はい…攻略階層のドロップ品を提示し買い取りに出せば良い」
「そ、なら第2階層だけでいいわ」
「ま、それが妥当だな」
「はい、無用な面倒事は避けた方がいいですね」
「?なぜですか?深い所を攻略したと言えばみんなすごいって言うのに?」
「俺らは名声とか必要ないから」
「そ、今回は調べに来たついでにダンジョン攻略しただけ」
「グローリーさん、余り過ぎる力は時に混乱を招きます。我々には人の称賛は必要ありません、貴方が公表したいのであればしても良いですが…」
「いい…俺はただキリング達がそうしてたしみんながそれを期待していたから聞いただけです」
「俺らには必要ないものなんだわ、称賛とか期待とか。今のラスボスの周回で帰るか」
「街の調査もしたいですしね」
「必要ならまた来れば…あーいや…こんだけあればいいな」
グローリーは首を傾げライガルと懐記が説明し、ティスはまた来ようと言い掛けこの街の支配者を思い出して口をつぐむ。
「転移魔法使えたら楽だけど、ま、ボス部屋の転移石から戻るか」
「転移?」
片付けを終えてボス部屋からドロップした転移石で戻る事にすると、グローリーが少し考えボス部屋の中で手を伸ばすと目の前に白と黒の渦巻く空間が現れた。
「お、グリっち転移魔法使えるじゃん。どこに出んの?」
「冒険者ギルドでいい?」
「いいね」
『……』
「おい、転移魔法って」
「懐記さん達の他には魔王と神々しか使えませんよ、やはり魔人ではなく正真正銘の魔神…」
「……さっさとこの街を1度出るぞ、皇国にグリを連れて戻ってくればいい」
「それが良さそうですね、皇国側からも調査団をだしましょう。彼の側にいたキリングという人物が気になります」
「ああ…嫌な予感がするな」
ライガルとティスがグローリーを見つめ話しをする、他のドラゴンが見たらぎょっとする光景だがそうも言ってられない、懐記に呼ばれ転移魔法の空間に移動した。

「おかえりなさい、キリング!」
「おかえり」
「おかえりなさいですぅ」
馬を《ガルディア》の商会に返しパーティーが停泊している宿に帰ってくればユリーシュとミーハとネーシアが熱烈に出迎えてくれた。
手土産の焼き菓子を手渡しパーティーが話し合いに集まる居間の固いソファに座れば、3人がグローリーの悪口を言い始め追放した事を嬉しそうに報告した。
「………」
キリングは何も言わない、3人の言い分を黙って聞いている。
「分かった、君達はこのパーティーからクビだ。グローリーを連れて来る間に荷物を纏めて出て行け」
「なっ」
「どうして!?」
「い、いやですぅ」
「俺がこのパーティーのリーダーだからだ」
キリングが立ち上がりまだいい募る彼女達を無視し、冒険者ギルドに向かう、グローリーがパーティーをクビになるのは何度もある、気味が悪い、生きている感じがしない、何を考えているか分からないと、グローリーはいつも反論もせずクビを受け入れその度他のメンバーを追放している。
どうせ誰もグローリーに仲間になろうなどと言うヤツなどいないと高を括り、足を冒険者ギルドへと向けた…。
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