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第7部 異世界帰りの魔王様はチートで無双したりしなかったり~サラリーマンの1から始める異世界ビジネスプラン~

第2幕 第9話 2日目 買い物休憩

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「ここが《カントン》か賑わっているな」
「ここが《ベストレア山脈》の道程にある唯一の町ですね、市場に行きましょう。仕入れもしたいですし」
ラジカが人が多い方に向かう、大河、詠斗、率、晴海、懐記とチグリス、ジラで散策を始めた。

「この布素敵!」
「本当だ絵みたいだね」
「これはタペストリーっていうのさ、壁に掛けて飾る物だよ」
「へえ、何枚か買おうかな」
「そうですねーこの花のデザインの素敵」
「大きいのは1年掛けて作ったりするんだ、この大きさのはお手頃だし、花とかは女性に人気だよ」
色白のふくよかな女性が色々とお勧めしてくる、テーブルに何枚も積まれた凝った刺繍のタペストリーの中で懐記が一枚手に取って見ていた。
「お兄さんお目が高いね、それは傭兵王が昔ガーライルドコンを倒した時の場面を刺繍した物さ。人気だよ」
『へえー』
幅40cm高さ60cm程のタペストリー、中心に紫色の糸を使い分けた人が剣を持ち足元には翼が4枚ある異形の生き物が倒された場面の物、縁取りに葉を細かく刺繍し糸も惜しみ無く使い正に飾る物として存在感があった。
「いいねえ、お姉さん。俺、傭兵王のファンなんだよねー。傭兵王モチーフのタペストリーぜーんぶちょうだい」
「おや、いいのかい?沢山あるのよ!人気だから」
「ぜーんぶ買います!」
「見せて下さい!」
懐記、率、詠斗がにやりとジラのモチーフタペストリーを買い漁る、当の本人は屋台でチグリスと肉串を食べていた。
「ありがとうねー」
大量に購入した為に盛大に見送られる、流石は傭兵王とも英雄王とも呼ばれるジラ…後で見せてみようと3人は思った。

「悪いな付き合わせて」
「いえ、私もこちらに用がありましたので」
ラジカと大河は奥の小さな本を置いている店に入る、古い本の匂い、客は大河達以外いないラジカは店主と話しをしているようで大河は適当に本を手に取る、『傭兵王と黄金の鳥』というタイトル…中は子供向けの内容で大河は笑いを堪える。
「大河さん、どうかしましたか?」
「あ、ああいや…。用は済んだのか?」
「はい、欲しい物はありましたので」
「そうか、店主この傭兵王の本をあるだけ欲しいんだが」
「おや、英雄王がお好きかい?それならこの辺りだね」
「ああ、なるほど」
「全部貰おう」
「おやあー、いいのかい?結構良い値段するよ?」
「問題ない」
「そうかいそうかい」
腰が曲がった老人が杖を付いて本を用意している、大河は口元を押さえて笑っている。
「傭兵王の話しなら劇にもなってますし、吟遊詩人が歌にしていますよ」
「それは興味ある」
「良くも悪くも有名人ですから、その分恨みもかってますね」
「だろうな、戦場で生きていれば…」
「これで全部だよ、125万ログだよ」
「ああ」
コインを収納から出す、店主は目をぱちくりとさせたがコインを受け取りにこりと笑って大河達を見送った。
「やあ、皆。賑わっている町だね」
「僕達も見て回りましょう」
千歳と綴も合流し工芸品の露天を見て周る事にする、家具屋に服屋、干した肉を売る店で大量に買い漁り、野菜や果物も目新しい物を購入、石を掘り出した彫刻も購入(高い)、子供向けの木の玩具や可愛い人形も買い込み町を後にした。

「新しい先生を千歳さんが家族の皆さんと一緒にスカウトしたんですよ」
「懐記君から貰った家をプレゼントしたら喜んでくれたよ。現在住んでいる家も《》」
「んー、じゃ追加渡しとくわ」
「助かるよ、とても有能な青年とそのご家族が手伝ってくれるから仕事も捗るよ」
にこやかに爽やかな笑みを浮かべ満足げに笑う、ここで……時間は千歳がここに来る前に遡る…。

「ここがケークスさんの家ですか」
「はい、小さい家ですが…」
「暖かい家ですね」
「はい」
《エットナ》の中心地に構える小さいが暖かみのある平屋、瞬時に故郷に帰ったのには驚いたが懐かしい実家の姿に込み上げてくるものがある。
「あ、ケークスお兄ちゃん!」
「クシュー!メレン!」
道を歩いてう小さい男の子と女の子がケークスの姿を見て駆け寄る、家からも子供の声を聞いたケークスに良く似た母親と祖母も出て来る、腕には2歳程の女の子を抱いている。
「ケークス!まあまあどうしたの?」
「久しぶりですね、元気そうで良かった。話しがあるので、中に入りましょうか」
「なんだよーケークス兄ちゃんよそよそしいなあ」
「そーよー!」
「とにかく話しをしたいので、父さんは?」
「もうじき帰ってくるわ、そちらは?」
「初めまして、千歳ともうします。ケークスさんとお仕事の話と今後の事でお話しをしにこちらを伺いました」
「家庭教師のお仕事かい?」
「それについても話しますから…」
ケークスが家族を促し中へと千歳を招く、中も家族が多いせいか雑然とているが散らかっている訳でも無く使いやすく工夫されている。
奥の居間らしい部屋に案内されると、刺繍をしていたケークスより少し年下の女性が目をばちくりさせていた。
「お兄ちゃん!仕事クビになったの!?」
「違います」
「ケークス兄さんどうしたの?」
別の部屋から騒ぎを聞き付けたケークスのすぐ下の弟、総勢7名にケークスと父親の9人家族という構成だった。

「《アウトランダーズ商会》ですか…」
帰って来たケークスの父親も交え千歳が話しを始める4人テーブルを2つ用意し家族全員座り父親が考え込む、父親は貴 族といえど末端中の末端領地も無く財になる物もない、今現在は家族で細々と雑貨屋というか所謂日本でいう、リサイクルショップのような物を営んでいた。
壊れた物や服等を修復し売る、手先が器用な為に評判も良い。
「ええ、私は収納持ちで転移魔法も使えます。《トタラナ》に家も用意しますしこの家もそのまま移動出来ますよ、給料面や勤務形態も自由にして頂いて構いません。ケークスさんには孤児院の教師兼生徒として勤めて頂きたいので孤児院の隣に住居を構えて貰いたいと思います」
「父さん!私は生涯の学舎に出逢えました!ユラヴィレオ様、ユラヴィカ様から許可は頂いています!こうして千歳さんも我が家事情を知ってこうして来てくるました」
「う、うむ。だが急な話だからな」
「なら、今から是非《トタラナ》に行きませんか?様子を見るだけでもいかがですか?」
「それなら…」
「そうねぇ」
『いきたーい』
子供達からの希望に折れて両親と祖母が折れて、千歳が《トタラナ》の孤児院と店を見に行く為に転移魔法を発動させた…。
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