あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第7部 異世界帰りの魔王様はチートで無双したりしなかったり~サラリーマンの1から始める異世界ビジネスプラン~

第2幕 第3話 呪いという名の愛 愛という名の呪い

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「ラージュさん、来たよ!」
「はじめまして、お会い出来て光栄です陛下。僕は序列第二4位禍喰の魔王、穂高 千歳と申します」
「ああ…その衣装いいな…良く似合っている。私はラージュ·デイル·アストリガー·ロメンスギルだ。ラージュと呼んで欲しい…」
「どうかしましたか?元気ないようですね」
人払いした執務室を詠斗達が訪れる、綴がラージュの顔色を見て顔色が紙の様に白いのが気になった。
「ほら、飯食え食え。食いながら話ししよ」
懐記がスープとサンドイッチと果物を出して食べるよう言うとゆるゆるとラージュが食べ物を口に運んで1冊の本を大河に渡す、綴が顔をしかめ千歳が眉根を寄せる、その本には赤い砂…呪いが取り巻いている。
「大河君、その本をこちらに」
「…何かあるんですか?」
「この本…呪いが掛けられてるね、僕の破壊魔法で呪いを破壊してみても良いかな?」
「危険ですよ」
「そうだね、だけれどやってみる価値はある。僕を信じて欲しい大河君」
「分かりましたよ。だが、もし何か危険な事が起きた際は手段は選ばない、それでもというなら」
「怖いな、でもやるよ」
千歳が大河に笑みを向けそして本に手を伸ばす、赤い砂がまとわり絡み付くその本に千歳は破壊魔法を発動させた。
「うっ…これは…」
『千歳さん!』

赤い砂を掴んだ感触は確かにした、だが自分達はそれを勝手に砂だと勘違いしていた。
これは砂ではない、人1人分以上(・・・・・・)の血の文字を結晶化させた呪い…景色が変わっていく。

質素な最低限の古びた家具しかない部屋だが暖かみがあるそこで、少女とも言える年齢の少女がおそらく我が子だろうか、腕に大事そうに赤ん坊を抱え子守唄を歌っていた。
優しいがどこか物哀しい旋律に千歳は冷静な頭で思考する、恐らく呪い…が見せている過去、この呪いを産み出した内の1人魔神の母親と赤ん坊の魔神、この光景を観察し千歳は呪いの解呪の糸口を探そうとする。
呪いを解けば封印された魔神が弱体化する可能性も視野に入れているだけであり、呪いを解いて《ロメンスギル》の王族を救いたいという気持ちは無い。
呪いを受けるような事をしたのだ、呪いが解けないのは掛けた本人が赦していないからだと千歳は思う、そして景色は変わる。

少女のような母親が大人になり寝床で辛そうにしている、部屋は変わらず赤ん坊は少女が母親になった位に成長していた。
晴海位の背丈にその辺りの年齢、赤ん坊は少年へと成長し寝床に伏した母親にすがっている。
死なないで欲しい置いていかないでと泣いて母親の枯れ木の様な手を握る、母親は優しく少年の手を弱々しく握り微笑む、その背後には侍女らしき女性が涙を浮かべ成り行きを見守っている。
扉が開き純白の衣装に身を包んだ人間が数名勝手に部屋へ入り、少年を唆す私達に協力をすれば母親を助けると、母親は首を振る話しに乗ってはいけないと、だが少年は純白の衣装に身を包んだ人間の手を取り連れていかれる、力のない体を無理矢理起こして母親は行かないでと叫ぶ、侍女がその身体を支え閉まるドアを泣きながら見ていた…。

「《テンランド》の使者だね、ここから始まったのか…」
また景色が変わる、母親は身体を治し変わらぬ部屋で我が子を侍女と共に待っている。
騎士が部屋を訪れ1枚の紙を渡す、その紙を見た母親は大きく目を剥き泣き狂い叫ぶ。
侍女は母親を抑え抱き締める、よく見るとこの2人は似ている姉妹なのかもしれない。
「彼女が呪いを産み出す…あの先に続きがあるという事か」
そこで母親と侍女の時間が止まり赤黒い血色の扉が現れる、千歳はその扉のドアノブに触れようとした所で背後からそっと白い手が目隠しをする。
「ダメ…そこから先は行かないで下さい」
「千華さん…」
穏やかな柔らかい声音、夢で聞いた声は今は酷く哀しげだった。
「お願いです…行かないで千歳…貴方に見て欲しくない」
「なら教えて下さい、魔神を倒し貴方を救う方法を」
「…あの子は私の力を吸い上げ回復速度が速く心臓が魔石…いえ魔神石と呼べる物へと変化しています回復不可能まで心臓の魔神石を砕けば…」
「なるほど、出来れば倒したくはないのだけど」
「………」
「無理……か」
「皆が待っています…」
千華の魔王の気配が遠ざかる、千歳は皆の声がする方へ引き寄せられ血色の扉から遠ざかった。

「せさん…千歳さん!」
「どの位気を失っていたのかな?」
「3分程です」
綴の腕に抱えられ目が覚めれば、心配そうに皆が様子を伺っていた。
「これは呪いでもあり…母親達の愛だ。僕の破壊魔法では愛は破壊出来ない…けれど魔神を倒す一手は手に入れたよ」
「無茶しないで下さい!」
「うん、ごめんね」
詠斗が千歳の手を取る、千歳が詠斗の肩を叩いた。
「私も…魔神…いや、アシュア・デイル・ロメンスギルを討つ手助けをさせてくれ!私の時代でこの呪いを終わらせたい!どうか頼む!ライルに穏やかな未来を贈りたい!」
ラージュが頭を下げる、一国の王が頭を下げるなどあってはならないが彼もまた200年続く呪いの連鎖を断ち切りたかった。
「…始まりはこの国の王子と神聖王国…」
「終わらせるなら、この国の王に終わらせて貰おうか」
「それが良いと思います」
「なら、手を貸してくれラージュ」
「ああ!」
千眼と千歳、綴と大河が頷くラージュは覚悟を決め、『妖精化実験の果て』という本について話し合う事にした。
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