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第7部 異世界帰りの魔王様はチートで無双したりしなかったり~サラリーマンの1から始める異世界ビジネスプラン~

16 傀儡魔法

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「さて、ここには他に捕まっている人はいないようだし」
「冒険者ギルドに引き渡しますか」
「それがいいね、気絶でもさせて…」
千眼の蝶がひらりと目の前を3回舞う、誘拐犯がこちらへ来る合図だ、詠斗と率は頷き合い率が雷魔法で扉を開けた男を痺れさせた。
「う…があ」
男は白目を剥いて倒れ込む、やり過ぎたかなと思いながら男達のいる部屋へと向かう。

「主達が動いた…」
「よし、行こうか」
「雇い主が気になるからな」
「行ってらー」
「気をつけて」
大河、千歳、チグリス、ジラ、ラジカで向かう事にし、転移魔法を使って倉庫に向かった。

「あ、良かった。意識ある」
「すみません、加減が分からなくて…」
誘拐犯達の部屋に突入した途端に率が雷魔法を発動し、男達は皆痺れて行動不能となっていた。
「派手にやったね、2人とも」
「あーいやー」
「ついー」
千歳の言葉に詠斗と率は目を反らして半笑いを浮かべる、呻く男達の元へと千歳が向かい酷く優しげな声で尋ねた。
「貴方達は誰に言われて人攫いをしているんですか?そしてあの赤ちゃんは?」
「あぐぁ、俺達が人拐って売り払ってんだ…あの赤ん坊は捨てられてたのを拾った…」
「嘘ですね、率さん雷魔法もう一度お願いします」
「えと、力加減難しくて」
「大丈夫、どうせ冒険者ギルドに突き出せば強制労働か悪ければ処刑だ。だけど、ここで吐かせれば誰かを救えるかもしれない」
千歳の問いに苦しげに吐き捨てる、ラジカが率に雷魔法の追加を頼みジラが語るその言葉に率は覚悟を決めて雷魔法を発動させようとした。
「ひ、ま、まて、言うから!」
「おい!」
「俺達に人攫いをするように…いっ…」
他の男が余程辛かったのか口を滑らせようとした瞬間、苦しげに呻く、ラジカが異変に気付きジラに合図した。
「いけない!ジラ」
「ちっ、戻るぞ!」
懐から出した晴海の転移札で誘拐犯以外を全員畑へと転移させる、ジラ、ラジカ、チグリスは何の魔法が使われたか把握し眉を歪ませた。

「赤ちゃん、かわいいねー」
「目がぱっちりとしてるー」
晴海がエルダと少年をお風呂に連れて行くと先にいた、カタンとベルンが赤ん坊に会いたいと言うので一緒に連れて畑に戻った。
「ベルン君は赤ちゃんを抱くの上手ですね」
「よく、小さい子の子守りをしてたから」
モギのミルクを飲ませベルンがゲップさせて、懐記のベビーベッドに寝かせようとすると赤ん坊が大泣きするので皆で交代で赤ん坊を抱っこしている。
「おかえりー」
「おかえりなさい!」
「おかえりなさい、皆無事で…」
懐記、晴海、綴が出迎え《ガルディア》の畑仕事から帰ったニアも風呂から戻り魔王も勢揃いはしだが、詠斗達は神妙な面持ちでいた。

「傀儡魔法…」
「魔王の保有魔法…」
「心臓を握り潰してますね」
「ちっ、悪趣味な魔法だな。発動した時全身の毛が逆立った」
誘拐犯達がいた倉庫にチグリス、千眼、ラジカ、ジラが戻り、死んでいる男達の死体を検分していた。
酷い形相で叫び声をあげたまま死んでいる、ラジカが死体の服の上から心臓部に指を当てて心臓が潰れていたのを確認する。
「心臓に刻印し遠い場所からでも操れるようにしている…」
「不完全…魔王の保有魔法に間違いはないが完璧な物ではない…」
「最も怪しいのは《テンランド》ですね、あの国のおぞましい人体実験の為の人集めに、口封じ、魔王の力を奮って手段は選ばず駒は切り捨てといった所ですか。人攫いの捨て駒が余計な情報を漏らす際に発動するよう仕掛けていたようですね」
「あの国はイカれているからな、魔王を囲う位訳ないってとこか」
「……ニアの弱体化が他の魔王にも影響を及ぼしている…あの国に行くなら千華の封印を解くのが先か…」
「あの少年とあの謎の生物、ニアさんも3体に分かれていますから千華の魔王の封印を解いて助力を乞うのが正しいですね」
「ああ…」
「で、ここどうする?」
「ギルドに報告して疑われるのも面倒ですね」
「燃やす…」
「そうですね、周囲に火が燃え広がらないように結界を張りしょう」
「次はもうちょいマシな人生おくれよ」
チグリスが火魔法を発動、ラジカ達も同意し外に出て倉庫が燃え尽きりまで見ていた。

「名前ないと不便だね、君も赤ちゃんも」
「名前ですか?…ならぼくに名前をくれませんか?エルダと旅して名前が無くても困らなかったから…」
「ニアっちが付ければ?魔王の親玉だろ?」
「孤児院の赤ちゃんはレルフィと名付けられたそうです」
綴達はテーブルでラジカ達の帰りを待つ合間そんな話をしている、ベルンとカタンやモギ達に囲まれ赤ん坊はきゃきゃ笑っている。
「ニア…さんは魔王の1番なんですよね?ぼく今日始めて自分が魔王だと知りました!」
「僕もつい最近知ったので魔法とかよく分からなくて…」
「そうなんですか!一緒ですね!」
ネオの背にエルダが乗り、ルオはどこか呆れた顔をしている。
「ニアさん、ぼくに名前を付けてください!」
「分かりました、良い名前を贈ります(千眼さんと千歳さんと一緒に)」
「はい!」
「戻ったぞ~」
「飯…」
「お茶を…」
「濃い目の紅茶でお願いします」
「みんな、おかえり」
千歳がラジカ達を出迎える、他に誘拐された人もいないようなのでギルドに報告(してない)したと伝えて人攫いの事件は終了とする。
「さ、難しい話しはあとあと!鍋できましたよ!肉も沢山ありますから」
「タレも色々あるし、しゃぶしゃぶ風にしてもよし。だし汁と塩でシンプルに味付けしただけだから」
ラウラスと懐記と詠斗が準備をして、千眼がお茶を淹れてくれ湯気立つ鍋を幾つか並べ皆で一斉にに食べる。
『いただきまーす!』
「カタン君、ベルン君熱いですから少し冷まして食べてくださいね」
「はーい」
「はい」
「こんな料理みた事ないです!」
「ポン酢久しぶり!」
「ゴマダレも!」
「肉美味いな」
「またまだ野菜も肉もありますよ!」
わいわいと鍋を食べて、追加をしご飯もお代わりして…夜が更けていった…。
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