あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第6部 移動は常にマイホームと共に 渡る世間は家さえあればなんとかなる

22 ささやかなお返し

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「うーおはよ」
「あふ、おはようございます」
「おはようございます…」
「ふあ、おはよ」
「おはよー」
懐記と千眼とラジカ、ナイル、ラウラスが朝食の準備をしていると、詠斗達が起きてきた。
「おはよ、今日は簡単な物だから、座ってな。もう出来る」
「うーありがと」
「すみません」
「………」
「ふあ」
「ねむ…」
「…お茶でも飲むと良い」
千眼が温かいほうじ茶を淹れて出してくれる、ラジカが箸を用意しラウラスが大皿に肉炒めと目玉焼きを盛って出す。
「今日はきゅうが捕って来た魚とかの漬け丼と貝の味噌汁な。おかわりはあるから沢山食べれば。ナイルっちはサラダボールにしたから」
「綺麗ですよねー写真撮っちゃいます」
透明なガラスボールにサラダとご飯を交互に重ねた華やかなサラダボールに、ナイルは嬉しそうにスマホで写真を撮っている。
「懐記っちから、教えて貰って俺が目玉焼きと肉炒めつくりましたー。沢山食べて下さい!」
「漬け丼はお茶漬けにも出来るから、食べたければ言って」
『はーい、いただきまーす!』
「くぅーうまい!この茶漬けってのもうまいわ!」
「漬ける事により臭みなどもなく、お茶を入れて更に食べやすくて沢山食べられますね」
ラウラスがまだまだ目玉焼きと肉炒めを作り、ジラとラジカにも漬け丼と茶漬けは好評だった。
「懐記さん、このサラダボール嵌まりそうです!美味しい」
「見た目も華やかなだよね、んー今晩はカレーにする?」
『カレー!?!』
詠斗達が立ち上がる椅子が引っくり返える程の勢いに、来たばかりの大河とチグリスの目がぱちくりとしている。
「カレー…まさか食べられる日がくるとは…」
「おかわり」
「ルーはあるし、人参と玉ねぎはうちにあったから。芋と肉…トウモロコシもあるからそんな感じで」
チグリスはさっそくお代わりを希望し、大河は漬け丼を味わいながらしみじみと本当に食生活が充実していると思う。
「では、行こうか」
『はい!』
昨日と同じように孤児院から炊き出しの手伝いを連れ、組分けを行って皆を運ぶ手筈を整えた。

「では、《トイタナ》のお店に行人はこちらへ」
「《トイタナ》の《ズィーガー商会》に行く人はこっちー」
「《エットナ》の《ズィーガー商会》はこっちです」
朝も早く《ガルディア》の貧民街の集合住宅前、炊き出しの準備はラウラスと住人と孤児院の手伝いに任せてテキパキと組分けして連れて行く。
「渡した収納袋に食料品や育てた野菜なんかを保管しておけば良い」
「お、おう。こんなすげーもん貰って悪いな」
「まだあるし、そのうち数を増やすから」
「本当にすげーな」
「周りの反応はどうだ?仕事などの意見とかは?」
「ん、ああ。今の所はケガした連中は喜んで仕事してるしな、それ以外も今のところ大して不満はない、ここを出ればまた貧しい暮らしに戻っちまうからな」
「今の所はか…」
大河とランダに畑チームが準備をしながらランダから様子を伺う、何せこの人数不満なんかは出て当たり前だろうしかも治安の悪い貧民街という場所に勝手に乗り込んで来たのはこちらだ。
「あ、あの!」
「ん?」
「あ、アシューさんサウさん。おはようございます」
そんな中声を掛けて来たのに反応したのはニアだった、彼はこの貧民街の住人の顔と名前を全て把握している。
「お、おはようございます」
「おはようございます」
「おはよう、どうした?何かあったか?」
2人が言いづらそうに互いの顔を見ている、後ろに何かを持って恥ずかしそうにしているのを大河は何事かと首を傾げた。
「あの、これ家をくれたお礼!」
「お、俺も!」
大河の前に2人から差し出された物を受け取る、1つは丸められた黄ばんだ質の良くない紙ともう1つはハル達とウィンを掘った丸太だった。
「すごいな、この紙も広げてみても良いか?」
「は、はひぃ」
広げた用紙には昨日の大河がランダ、ニアと他の面々が炭で緻密に描かれていた。
服装、髪型、表情等、昨日の光景を切り取ったような絵に芸術性は皆無な大河も感嘆する、惜しむらくは紙の質の悪さと炭で描かれ陰影にメリハリはあるが色が無いこと位だった。
丸太の細工もしっかりとハル達の特徴を捉えていて、触り心地も滑らかな仕上がりで良く出来ていた。
「貰っても良いのか?」
「は、はい。こんなお返ししかできないけど」
「お、俺も…」
「いや、すごい良い出来だと思う。他に作品はないのか?見てみたいな」
「俺はいつも地面に描いたりしてる…」
「俺は家にあるけど」
「そうか、この2つは俺達の家に飾ろう。次作品を持って来てくれたら是非買い取らせて欲しい、店に飾ろう」
『え?』
「2人共…素敵な絵と木彫りですね。ハルさん達が見たら大喜びしますよ」
「そうだな、さっそく畑で見せようか」
ニアも作品をじっくり見て抑揚も感情も薄い声で伝える、アシューとサウはまだ驚いたままだ。
「ほら、行くぞ」
『はい!』

『もぐ!』『もぐぅ!』『もぉぐ』『ぴぃ』
既に楽しく畑仕事を先にしていたハル達に、サウの作品を見せると嬉しそうにハルとナツは周りを回って喜んでいた。
アキとウィンは何故かじっくりと木彫りを見て、頷いたり色々な角度から見ている。
「喜んでいるな、ハル、ナツ、アキ、ウィン。それはテントの図書スペースに飾るからな」
『もぐ!』『もぐっ』『もぐ』『ぴぃ』
「そうだニア、ランダ先に初めていてくれ。少し戻る」
「はい」
「おー」

「ん?大河っち早いね」
人参、じゃがいもをの皮(きゅうが皮を食べている)大量に剥いている懐記、ナイルに玉ねぎを真剣な表情で炒めているラウラスがいた。(千眼は小豆畑で収穫中)
「ああ、懐記くんに聞きたい事があって戻って来た。これを見てくれ、《ガルディア》の青年2人が描いた物と彫った物だ」
「へぇーうまいわ」
「見事ですね」
「皇国の細工師と画家達みたいすねー」
玉ねぎを飴色に炒めながらラウラスが作品を見てそう評す、大河は懐記に絵を描く道具と小刀とかがないか聞くと、色々な物を出してくれた。
「スケッチブックと画板と鉛筆と色鉛筆に鉛筆削り消しゴム、水彩絵の具に彫刻と小刀と粘土でどう?おばあちゃんが何でも取っとく人だったから、それと紙は晴海っちが無限に作れるから貰ってけば?」
「すごいな、そういえば紙魔法か…分かったありがとう。晴海くんの所にも言ってくる。カレー楽しみにしている」
「おけおけ、食いきれない位作っとく」 
大河は道具を収納に入れて、次は晴海の所へむかった。
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