あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第6部 移動は常にマイホームと共に 渡る世間は家さえあればなんとかなる

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「スープと果物とミルクかな」
「食材は沢山ありますし」
千眼とカルが造った水道とコンロでスープを作り、ベルンからヨモのミルクを購入し、用意をしていれば餓えた住民達が押し合い向かって来る。
餓えている…今ここで食べなければ次はいつ腹を満たせるか分からない、老人や子供ばかりがじりじりと近づくそんな彼らに晴海がリンゴに良く似た食べ物を差し出した。
「沢山あるよ、皆が食べきれないくらいあるよ。食べてもまた持ってくるから、ゆっくり食べて」
晴海も餓えは知っている、手伝いで貰える食事や給食が楽しみでいつもお腹を空かせていた。
彼らの苦しみに比べたら遥かにマシだ晴海は真っ直ぐな瞳で人々を見ている、人々はその澄んだ瞳にたじろぎながらもリンゴモドキを受けとり一口齧った、老人は泣きながら食べた、夢中で涙が止まらない、老人は少年晴海に深く深く感謝した。
「あ、ありがどお」
「うん、はい、スープも食べてミルクも!美味しいよ」
その光景を見ていた住人達の気持ちが落ち着き、自然と皆が並んで待っていた。
「はい、リンゴみたいな果物!」
「どうぞ、ミルクも飲んで下さい!」
「ほら、パンも食え!慌てなくてもうちの店のパンは上手いぞ!」
晴海がリンゴモドキを渡し、綴がミルクを配りジラがパンを渡し、千眼がスープをよそい椀わ渡し、懐記がスープを作るとどんどん住人が増えてくる皆大忙しだった。

「流石に怪我が多いな…」
「そう、ですね。適切な処置が出来ていなかったので皆ひどい…」
「でも、皆怪治って良かったよ」
ランダに案内された小屋の中の怪我人は皆酷かった、流石に大河も綴も参るが詠斗は治って良かったと喜んでいる、怪我が治った住人には水を渡して広場に食事の準備があると伝えてランダに案内された十数名程の怪我は欠損も含め完治した。
「しかし、すごいな!アンタら腕やら足まではやしちまうとは!」
「俺たちじゃないし、病は治せないし…」
「いや、食事の世話までしてくれてるしな」
「なら。これはランダさんの目の分だから使って」
「見えてないんだろう?」
「あ…いいのか」
左瞼から頬に掛けてはしる傷、かつて冒険者だった時に仲間に裏切られ付いた傷金があれば治せたがその日暮らしの冒険者稼業諦めていた左目の傷が疼いた。
「もちろん!札を傷の部分にあてて魔力を流せば傷が治るから!」
詠斗が屈託なく笑う、ランダは決意を固めて札を使った。
「あぁ…見える」
ぼやけていた目がはっきりと見える、久し振りの視界に涙が零れた。
「良かったです」
「ランダさん!目みえてるの?」
「やったね!」
付いて来ていた子供達も喜んでいる、これもレグのお陰だと後でお礼をしようと3人は思った。
「決めた!アンタ達についていく!何でもするぞ!」
「ああ、よろしくな」
晴れ晴れとした笑顔で笑う、笑顔の良く似合う快活な男だという印象に変わる。

「スープやらパンやら手持ちは全部なくなったな、シャワーとか浴びて洗濯とかした方がいいかもな」
「石鹸とかシャンプーとかタオルは僕の雑貨屋で購入できますけど…あっ、シャツとスウェットサイズ毎に売られてる!皆さんの分購入できる!良かった」
「へぇ、俺にも売って!」
「異界の服ですか是非私にも」
「シャワー…」
率が雑貨屋のスキルで商品を見ていると、白いTシャツとスウェット上下が追加され喜んで購入している、隣で千眼が何やら鉱物を収納から出して魔力を注ぎ形を変えている。
戻ってきた詠斗達にも伝え、シャツとスウェットの支給を始めた。
「サイズは結構大きい、大きい、普通、小さめがあるから持ってって!着るのはちょっと待ってて」
「主達…シャワーができた…温度調節は出来ないが魔石に魔力を少し込めればが程好い湯出る…」
『すごい!』
「タオルとか石鹸も出しますね、女性の方達に先に使ってないテントで浴びて貰いましょう」
千眼が作ったのは自立式の細長い管の先に円錐の細かい穴を開けた物、丁度手が届く高さの管に水と火魔法を込めた魔法石を付けた即席のシャワーだった。
「今…数を作る」
「すごいですね」
千眼の手元を見ていたニアが抑揚のない声で感嘆している、千眼が鉱物を渡して一緒に作るかと尋ねれば首を縦にして魔石を受け取り魔力を込めると魔石が黒く変色しただけで形を変えられなかった。
「すみません、変えられないようです」
「……そうか」
変色した魔石を受け取り、率に念のため鑑定してもらう事にする。
「わ、この石すごいです!魔結晶石に変わったみたいです…使い方は分からないって出たけどとにかくすごいって出てます」
「そうか…」
鑑定 魔王が魔力を注いだ魔石:んーんー?魔結晶石に変わりました すごいのですが使い途が分からない と出る頑張って鑑定した結果だった。
「シャワーは私が作る…貴方は他の手伝いを…」
「はい、良ければニアと呼んでくれませんか?」
「…ニア」
「はい、千眼さん」
どこか声が弾むニアそれを眺める千眼、穏やかで温厚な最強の魔王…きっと頼めば千華の魔王や《テンランド》にいるらしい他の魔王を救う為に手を貸してくれるだろう…その先に人と戦い死の山に立つことなるかもしれないと知ればどうなるのか…今すぐの話しではない、いつかの話だ。
今は逢えた、それで良い…。
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