上 下
140 / 807
第5部 ここで生きていく 晴れた日は海を見て編

第1幕 第7話 見世物

しおりを挟む
「トッルにいちゃん、アゼにいちゃん!」
「近づくな、毒に侵されている」
「みんなはこちらへ、大丈夫ですよ」
転移魔法を使い瓦礫の廃墟に戻って来た大河達、すぐさまジラが解毒薬を《不毛の地》の側の森で採取していた薬草を調合し飲ませて毒自体は解毒を済ませる。
「流石はあの森の薬草、万能だな。これで毒は抜いたが後は本人次第だな、悪いが今から冒険者ギルドに報告にいくから大河運んでくれ」
「そうだな、綴さんたち後は頼む。水分を取らせてやってくれ」
「分かりました」

「戻りましたー、無事見つかったんですね!」
「良かった!ケガとかは?」
「おかえりなさい、アゼ君が毒状態でしたがジラさんがすぐに解毒薬を作ってくれたので無事です。2人とも衰弱はしていますが無事です」
「あー良かった!」「あ、あの、ありがとうございました」
トッルが何度も頭を下げる、話しは先に綴から聞いていたようでここにいても碌な生活の糧も得られないというのと、ラジカの説得もあり《クイナト》の孤児院に皆で行く事を選んだ。
「では、皆を孤児院に連れていきましょう。大河さん達にはラインして、まだ夜まで時間はありますし」
「なら、ラジカさんも。一緒に《クイナト》で休みませんか?」
「そうですね、お邪魔します」
転移魔法が使える事や普通は疑問に思う事だらけだが、商売の秘訣は好奇心を殺す事それに尽きる。

「まあまあ、良く来てくれたわ」
院長や職員、モッカ達が出迎え先程完成した風呂場へ案内してくれアゼはベッドで寝かせ、子供達は皆男女分かれて入浴を楽しむ。
「ふぉふぉ、お前様も魅了されたのかの?」
「さあ?」
モッカとラジカの目が合うとモッカがニコニコと少し意地悪気に囁く、ラジカはそれに曖昧な返事を返す。
「ここは良い良い」
「そうですか」
「ラジカさんも、お風呂どうです?洗濯も出来ますよ!服もすぐ乾きますから」
「良いのですか?」
「はい」
綴がニコリと微笑むが周りのドラゴン、アルケールやナイデルがこちらの様子を伺っていたがモッカが2人に何か耳打ちし2人が警戒を緩めたのを確認し風呂に入って見ることにした。

「ふう、ギルドにダンジョンを封鎖するように行ってきたぞー」
「流石は傭兵王、余計な詮索されずに済んだな」
「まあ、向こうは色々聞きたがっていたけどな。ミルクくれ」
風呂から出た詠斗達と大河達が合流し、全員で早目の夕食を取る。
ミルクのスープや魚を蒸した物に、チーズを贅沢に使ったピザやサラダに良く冷えた果物の盛り合わせ、子供達が旺盛な食欲で平らげ、カイネやバルタル達が次々お代わりを出してくれる。
「美味しいですね、まさかモギのミルクをここで飲めるとは」
ラジカがモギのミルクや、薄く切ったチーズに木の実を乗せた物を食べ感嘆する。
「ふぉふぉ、良い良い」
食後にお茶や果実水を飲みそれぞれの食事が終わる頃には、夜になりまた《ロクロル》へ向かった。

「さあさ、ゲシュレン自慢の見世物小屋!お1人老いも若きも男も女も皆1,000ログ!さあさいらっしゃい、いらっしゃい」
転移魔法で、詠斗、大河、率、綴、晴海、チグリス、ジラ、ラジカの面子で見世物小屋のテントに向かう、ゲシュレンの声、がやがやとその周辺には食べ物の屋台、1,000ログコインん支払い中に入る、安くはない入場料娯楽の少ない街では数少ない楽しみのようだった。
中に入れば空間魔法が維持され見た目よりも広い。木の簡素なベンチに座り目の前の広場のような場所でどうやらショーをするようだ。
「大河…ジラ…いる」
「そうか」
「ああ」
チグリスから両隣のジラと大河に耳打ちが入る、何処かに合成獣獣が潜んでいる事を告げた。
今日は様子見無難にやりすごす、今の所ここで殺人は起きているが誘拐などはない、前回逃げられてから向こうも警戒しているのだろう、そう考えているとショーの幕が上がった。

「さあさみなさん、余計な話しは無用始めましょう!」
明るいテント内が暗転そしてすぐに明かりが付けばまずは、タヌキのような動物2頭なボールを4個数投げ合い、ゲシュレンかボールの玉を増やしていく計10個を投げ合い、最後は肩車でそれぞれボールを高く投げて1回転してキャッチしてまずは子供達の心を掴む、拍手が沸いて続いては…。
様々なショーが行われる中に大河の正面に座るラジカから、大河は目を反らさなかった、何処か退屈げなラジカの視線は広場の1番端の見物客、コーカスの方に向けられていた。
詠斗達は純粋にショーを楽しみ、ジラは周囲の警戒、チグリスもラジカからを注意深く見ていた。
「さあさ次はすこぉし危険!うちの花形双子のメルリ、メルナのナイフ投げー」
広場正面から露出の高い双子の少女が手を振りながら両手にはナイフを持ち出てくる、一際歓声の声が高くなるどうやら
かなりの人気のようだった。
1番最初のタヌキのような動物のボール投げを今度は、ナイフしかも少女たちが達が行う、観客達は皆固唾を飲んでの光景を見ていた。
ゲシュレンが当然のようにナイフを増やしているが、少女達の顔は笑顔を張り付けたままナイフを投げ合う。
「さあさ、盛大な拍手を!」
無事にナイフをそれぞれ5本ずつ指に挟み、挨拶をして裏へと下がった。
「サーカスみたいですね」
「すごいですね」
「でもナイフ投げはちょっと怖いよ」
等々感想を言いながらも純粋にショーを楽しみ何事も無く、終了した。
「さあさ、皆様今宵は楽しんで頂きありがとうございます。ここから先はお一人様10,,000ログが必要となります、これでお帰りになるお客様はまたのお越しを、続きをご覧になりないお客様さまは、他のお客様がお帰りになられた後前の椅子へどうぞ」
「ここからが、見世物小屋の本領だ。客が引いたら前に行くぞ」
ジラが呟き大半の客は引いていく、残ったのはいかにも金がある身なりの良い客と、大河達に《ラグライック商会》の面々だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。 今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが…… (タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

今日も聖女は拳をふるう

こう7
ファンタジー
この世界オーロラルでは、12歳になると各国の各町にある教会で洗礼式が行われる。 その際、神様から聖女の称号を承ると、どんな傷も病気もあっという間に直す回復魔法を習得出来る。 そんな称号を手に入れたのは、小さな小さな村に住んでいる1人の女の子だった。 女の子はふと思う、「どんだけ怪我しても治るなら、いくらでも強い敵に突貫出来る!」。 これは、男勝りの脳筋少女アリスの物語。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

処理中です...