あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第5部 ここで生きていく 晴れた日は海を見て編

第1幕 第4話 瓦礫の子供たち

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「彼らはこの街の森の奥の廃墟に住む浮浪児たちです」
「貴方は彼らと知り合い?なんですか」
「ああ、失礼しました。私はラジカと申します。《ラズライール商会》と言っても私1人で経営している商会の支配人なんんですが、彼らにはたまに仕事の手伝いを頼む関係です」
「そうなんですね、僕は《アウトラウンダーズ商会》綴と言います」
「《アウトラウンダーズ商会》の方ですか?最近よく耳にしますよ。お会いできて光栄ですね」
人当たりの良い笑みをラジカが浮かべる、冷たい印象の持ち主だが笑うと柔和な印象を受けた。
「そうですか…教えて頂いてありがとうございます」
「彼らの所へ行くんですか?」
「はい」
「そうですか分かりました。私も行きましょう、顔見知りがいれば多少彼らの警戒心も緩むかもしれません。あくまでも多少です、彼らはこの治安の良くない街を拠点にしている者達ですから」
「…いいんですか?なら…おねがいします。今他で用を済ませている商会の仲間を呼びますから」
「分かりました」
率、晴海も自己紹介をしている間に率が詠斗、大河にラインを送りすぐ様集合して貰った。

「浮浪児ねぇ…」
「おや、もしかしてそちらは傭兵王殿ですか?」
街を出て全員で森の中を進む中、イマイチ気が乗らないジラにラジカが声を掛ける。
「そうそう、元な」
「先々代の仕事の依頼を受けて頂いたようで」
「ん、ああ。《ラズライール商会》ってあの山にどこまで行けるかって変わった依頼をギルド経由でしてきた所だな」
「そうです。あ、見えてきましたあれが浮浪児たちの住処です」
「これは…」
「廃墟というよりかは…」
「瓦礫の山…」
「危ない…ですよね」
「子供が住める場所なの?」
詠斗達が呆然とし、ジラ、チグリスは平然としている、チグリスはラジカを警戒しいつでもドラゴンの姿に戻れるようにしていた。
「住めるさ、どこだって。そこしか場所が無ければ、なんかここ結界があるな」
ジラが呟く、ラジカが頷き一歩前へ出る。
「ええ、ここは嘗て盗賊の根城で手順を踏んで来ないと来れないんです。浮浪児の子供達が生き延びるにはこのような場所しかないですから」
「アンタ随分詳しいな…」
大河が目の前の不可思議な青年の鑑定をしてみる、ラジカ:27歳 風魔法 《ラズライール商会支配人》???? 無難な鑑定だが…含みを持たさせる表記に眉根を寄せた。
「この場所をこの街の浮浪児達に教えたのが《ラズライール商会》の先代です、うちの商会のモットーは『儲け過ぎるな 儲け過ぎたら減らせ 施しはするな』でして」
「……変わった商会だな」
「はい、そうなんです」
「では、誰かを呼んでくれますか?」
「そうですね、少し待っていて下さい」
ラジカが一歩前へ進むと拳大の石が飛んでくる、ジラが前に出てその石を易々受け止め砕く。
「おい!裏切ったのか」
「違います、話しをしに来たんですよ。こちらのみなさんが」
驚きもせずラジカが前へ進む、先ほど晴海の巾着袋をスッた少年が怒りを露わにまだ石を左手に握り立っている。
「話しを聞いて欲しいんです、僕たちに話しをする時間をくれませんか?」
綴もラジカの隣に並び両手を挙げて何も無い、敵意が無い事を示した。
こういうのは綴が適任だと大河は見守る事にし背後で腕を組み、ジラも瓦礫の奥にいる複数の気配を伺い、チグリスはやはりラジカから目を逸らさず、詠斗、率、晴海はチグリスの隣で成り行きを見ていた。
「そんな事を言って、俺達を売ったり役人に突き出すんじゃないのか!?」
「しません、私が保障します。ところでトッルとアゼはまだ戻って来ないんですか?」
「…戻ってこない」
「ラジカさん、その2人というのは?」
「今彼らのリーダーのような子達です。冒険者パーティの荷運び役で雇われ、この街のダンジョンに行っているんですが、時間がかかり過ぎている」
「気になりますね…」
「あんちゃん!この子やっぱりダメかもよ!」
「シナ!出てくんな!」
「で、でもこの子…ねぇ、ラジカさん!この子助けて!」
「やはりだめですか」
骨が浮いてガリガリだが露出の高い服を着た少女が布に包まれた小さな赤子を抱えて少年の元に駆け寄る、靴も履き身なりはましだが栄養は行き届いていないシナという少女からラジカに赤子を渡され受け取る。
「もう泣く気力も無いのか、この子は諦めたほうがいい」
「そんな!」
「言った筈、君たちが働いた分の対価で出来るだけの事はした。それでもダメならば諦めるようにと」
「シナ、よせ…にいちゃん達も戻って来ない。俺達も生きているので精一杯なんだ」
「うう…」
シナがその場で泣き崩れる、綴も布の中の赤子を見てみる顔色が悪く呼吸も微かにしかしていない生きる気力が伝わらない鑑定に掛けてみる 赤子:肉体が魔力に耐えられない状態 転生されし者 とあるなんとか出来ないものなのかラジカに尋ねた。
「手は他にないんですか?」
「ありますよ、ですが助けてもこの子は生きるのが大変ですよ。生まれ持った魔力が器を超えているんです。こういう場合は転生している魂それも何かがあった者です、ここを生き残ってもこの赤子には酷な生が待ち受けているかもしれません」
「僕は《クイナト》で子供達に教育を場を与える教室を開こうと思っています、僕が…いいえ僕たちがこの子を導きます。この子を助ける手段を教えて下さい」
「そうですか、なら彼らも説得するべきかと。この赤子の魔力をこの石に吸収させます、この石を赤子に呑み込ませます。この石は特殊な魔石です、時価1,000,000ログです」
「無理だ…」
少年が目を逸らす、シナは嘆き、綴は大河に視線を向け大河はそれに頷く。
「いいだろう、その金は俺達がだす」
「僕たちの話しを聞いて貰えますか?」
「……トッルにいちゃんとアゼにいちゃんがいないと決められない…」
「分かりました、彼らも僕が探してきます。ラジカさんその石をこの子の体内に、責任は僕が取ります」
「私は商人ですから、商売が成立するのであればかまいません」
ラジカが赤子の色の無い唇に平たい石を当てる、赤子の口には大きすぎる石だが力を振り絞り口を開けてそれを受け入れた。
「入った…」
「これで体内の魔力を吸収し循環してくれます」
「ありがとうございます、これが代金です」
「はい、確かに」
顔を上げたシナに赤子を返す、綴から1,000,000ログ分のコインを受け取り服の内側にしまう。
「俺とジラとチグリスでダンジョンに行く、詠斗くんは孤児院で部屋の確保を頼む。ここに子供は何人いる?」
「…にいちゃん達入れて12人…」
「分かった、綴さん達は俺達が戻って来るまでここで…頼む」
「はい」
「俺、行ってくる」
「で、アンタは?皆さんが戻ってくるまでいますよ。トッルとアゼが気になるので」
「そうか」
大河はジラとチグリスを連れてダンジョンに向かい、綴たちはさっそく子供達の状況を確認する事にした。
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