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第5部 ここで生きていく 晴れた日は海を見て編
第1幕 第3話 邂逅
しおりを挟む「おはよう…」
「ん…」
「おはようございます」
「ふぉふぉ、お寝坊じゃの」
「おはよう…」
いつもの如く起きれば隣のチグリス、大河、朝食の準備が終わったナイルと千眼に茶を飲んでいるモッカがいた。
「今日は朝から肉だな」
「昨日の残りですよ、焼きすぎましたね。スープは野菜たっぷりですよ」
「ふぉふぉ、美味しかったぞ。さて今日は店が終わったらワシを孤児院に連れて行っておくれ、その後《ロクロル》に向かえば丁度良い良い」
「ああ、そうだな」
「おかわり…」
「お昼も準備しとくので取りに来て下さいね」
「ああ、助かる」
「ふぉふぉ、ワシは読書の続きでもしとるよ」
肉を挟んだパンと蒸した肉と芋、サラダに具沢山スープ、ミルクを流し込み店へと向かった。
「ふいー」
本日も即完売、トウモロコシは畑で育てた物に変えたら甘味と大きさが増し食べ応えも更にアップし孤児院の子供達、先生にも好評、本日から商品も畑のトウモロコシに変え客からの評判も良く…沢山売れて大忙しだった。
「お疲れさまー」
「カタン!立派だったぞ!うう…パパは嬉しい」
「カタン、がんばったよー」
「見ていたぞ!大河殿から頂戴したこのすまほ!カタンとベルンの姿をパパは沢山撮った…」
「だから、もう皇国に戻りなさい…」
背後から呆れた声でナイデルがカラクを見ている、どうしてもカタンが手伝う姿が見たいと言うカラクに折れた結果が今だった。
「晴海殿から転移魔法の札を頂いたのでしょう?すぐに来れるのだから今日は戻りなさい」
「パパーカタンいいこにしてるからだいしょうぶ」
「カラクさん、俺もカタンと一緒に待ってます」
「うう、2人とも…」
項垂れながら泣く泣く龍皇国に戻るカラク、カタンとベルンを抱きしめた後札に魔力を込めて戻っていった。
「ベルンーこんどカタンとこーこくに行こうねー」
「そうだね、会いに行こう」
手を繋ぎカラクを見送る2人の手は固く結ばれ、そして…転移魔法に味をしめた父親は毎晩家に帰るようになります。
「今日は肉づくし!しかもダンジョン肉!」
店の従業員達も外で孤児院の子供達と軽めの昼食を取る、ナイルから昼食を受け取りモッカを連れて、すっかり打ち解けわいわい、がやがやと賑やかに食事が始まった。
「あらぁ、ナーナちゃんたちナティの小さい頃の服似合うわぁ。とっといて良かった」
「後で遊ぼー」
「本当に似合う!」
「母さんの貧乏性も役にたつなぁ」
「本当に!」
「まったく!アンタ達は!」
「お洋服ありがとう!」
「ありがとー」
「いいのよー」
「ふぉふぉ、良い良い。良い子たちじゃの」
朗らかな昼下がりの光景、大河が立ち詠斗達も続く。
「バルタル、カイネ。後頼む」
「はい!」
「分かりました」
『行ってきます!』
「何か騒々しい街?ですね」
「おい、聞いたか?」
「ああ、街長が殺されたって…」
「ああ、後娼婦も…この街ヤバいな」
「俺、この街出るわ」
「俺も」
ジラに教えられた路地裏から、詠斗、大河、率グループと綴、晴海、チグリス、ジラグループに分かれて出てくれば街はざわざわとしていた。
「歓楽街だしな、殺人も起こるよ」
「確かにな、今の話しだと街長が殺されたようだが見世物小屋はやるのか?」
「やるだろうさ、昨日の酒場の話しだと街長は評判がよくないようだしな。市場があるからそこを通って行けば外れにあるから向かおう」
「賑わってますね」
「ここは行商の中継地でもあるから、昼は色んな国の品物が並ぶぞ。屋台もあるから少し見ていくか?」
「みる…」
「少しだけならいんじゃない?」
「そうですね」
「なら2時間後に見世物小屋の前で集まるのは?遅くなるならラインを」
『賛成』
詠斗、チグリスで屋台、綴、率、晴海で買い物、大河、ジラで周辺の情報収集に分かれる事にした。
「変わった柄の布ですね」
「これはうちの町の女性達が折った布だよ、吸水性が良くて子供の服とかにいいよ」
「へぇ、じゃこれを」
「毎度ー」
「この砂糖可愛いですね」
「これはちょっと高いんだがお茶に溶かすと花弁が浮かんで女性に人気だよー」
「これをー30個下さい」
「どうもまけとくね」
「これオモチャ?」
「そうそう、気を削った人形の中を開けると…中にほらまた小さい人形と木に数字を削った玉が入っているんだ。人形で遊んで数を学ぶのさ」
「へぇーこれ5個下さい」
「あいよー」
晴海が巾着袋からコインを出して支払う、木の人形を受け取りナップサック(収納)に仕舞い隣の店で熱心に布を見ている綴と合流しようとすると、晴海よりと同じ年程の少年とぶつかる。
「あっ!」
巾着袋を奪われあっという間に走り去ろうとする、少年の足に1人の男が足を掛けて転ばせ足を止めさせた。
「晴海くん!大丈夫ですか?」
「ごめん、僕が目を離したから…ケガはない?」
綴と率がすぐに駆け寄る、晴海は首を振り逆に転ばされた少年の身を案じた。
「やれやれ、大人ならまだしも自分位の子供相手にスリをするとは…」
「うるせぇ!弱そうだし身なりも良いし、良いことのぼっちゃんだろうからちょっとばかりと思ったんだ!」
「嫉妬か?それで捕まれば元も子もないでしょう?盗った物は返しますから、どうします?彼を役人に付き出しますか?」
少年の襟首を掴み晴海に巾着袋を返し、晴海は少年の顔と男の顔を交互に見つめる。
少年は痩せて服もボロボロ穴が空いている上に裸足、男は身なり良く質の良い黒い細身の服に身を包み、灰青の髪と同じ色の瞳その外周は金色、左眼に片眼鏡を掛けた綴よりも少し年上位の男だった。
「いい、平気。お金取り戻してくれてありがとう」
「この街は治安が悪いので気を付けて下さい、君みたいに身なりの良い子供は特に、ね。ほら、良かったですね」
男は少年にコインを握らせ手を離せば、少年は脱兎の如く走り去る。
「すみません、ありがとうございました。今の少年は?」
綴が男に頭を下げスリの少年について聞き、何かできる事があるならばと所在も確認する事にした。
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