あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第5部 ここで生きていく 晴れた日は海を見て編

プロローグ 始まりはやっぱり異世界から

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「では、これより、再び我々の世界アタラクシアの病を治癒する為の異界人を召喚する」
『異議なし』
「召喚する異界人は、計8人。《アタラクシア》の治癒の状態により順次行う、担う者 導く者 手を差し出す者 掬う者 与える者 変革する者 もたらす者 そして最後は…××××××を持って召喚を完了とする」
「召喚する異世界は地球」
「召喚する者は日本という場所に生きる者」
「今を生きる世界に未練がない者」
「《アタラクシア》で生きていける者」
「我々の勝手な都合で呼ぶには誠意を持って」
「誓いを」
「心と魂と肉体に」
「我らの出来る限りを以て」
「祈りと願いを」
「ここに示す」
「我ら13の神の誓いを契約とする」
最初に手を挙げた者から時計回りに、1人づつ右手を挙げ誓いを立て一周すると、中央の《アタラクシア》の雲の穴が1つゆっくりと塞がっていく。
「では、招こうこの《神ノ庭》に5番目の異界人 与える者を…」
神々の頭上に渦巻く雲、ゆっくりと白い空間を侵食し広がっていく。

「あー雪だー」
教室の外からちらつき舞い散る雪、この辺りでは雪など珍しくもないが子供はやはり雪が嬉しいものなのだろう、ホームルームが終わり帰路に着く生徒達がはしゃぐ。
「有守ー今日は?」
「あーごめん、手伝い」
「…そっか、あこれホッカイロ!はい!使って、今日は寒いもん」
帰り支度をしたクラスメイトの遊びを断り、くれたホッカイロをが学ランのポケットに入れた。
「ありがと」
「うん!」
クラスメイトに手を振り教室を後にする、通学用の自転車のヘルメットを被りちらつく雪の中有守 晴海アリス ハルミはまだ14歳の背の低い痩せた身体で港に向かった。

「お疲れさま、今日もありがとうね!これと後今日の残り食べてね!」
「ありがとうございます!」
中学生の晴海はアルバイトは勿論出来ないが、港の市場周辺の雑用を行いちょっとした小遣いと売れ残った魚や食べ物を貰い大事そうに抱えて夜の港を後にした。
皆彼の事情は分かっている、児童相談所に相談しても保護されたとしても彼には父親以外の親族はいない、後1年…せめて中学を卒業出来れば選択の視野が広がる、晴海はそれを待っているのを皆知っていた。

「…お金稼ぐのも大変…え?どうして?」
家の外の裏手、シャベルを握って向かった場所に土が掘り起こされお菓子の缶が転がっていっるのを見た晴海が駆け寄って確認する。
何もない…小学生の頃から港の雑用で稼いできた金が掘り起こされている、誰がやったのかは一目瞭然…家の中に金なんか置けないだからここに隠した、まさか土を掘り起こしてまでとは思わなかった。
「アイツ!!」
晴海の父親は晴海が産まれる前からどうしようもない男だった、金はギャンブルや酒につぎ込み晴海の母親のヒモをしていた。
滅多に家に帰ってなど来ない、いつもどこかでフラフラして帰ってくれば晴海にあたり時には暴力を振るう父親だった。
なら何故生活が成り立つのか、晴海の父親が働く職場の社長が晴海の祖父に恩があり父親の給料の半分から1/3をを晴海に渡しているからだった。
勿論そんな事は法律が許すわけもない上に、勤務態度も真面目とは言えない晴海の父親に支払う給料にしては高いが社長が情に厚く恩が義理堅い為、なんとか晴海の生活が成り立っている状態だった。
晴海はそんな人達になんとか支えて貰って立っている状態だった、晴海は缶が掘り起こされた少し先、土が掘り返されているもう一か所を見つめシャベルで土を掘っていく。
雪が大きく重く晴海の身体に積もっていく、手はあかぎれだれけ血は滲み苦労の跡が伺えた。
吐く息が荒く、目の前が赤く染まる怒り…憎しみ…そして殺意…目じりに涙が溜まる。
「もういいんだ…」
掘り起こした地面に見えた木箱長方形の薄い箱の蓋を開ける、布に包まれた鈍色に輝く包丁…もうどうなってもいいと思った。
それを持ち殺意を抱いて家の中に入る、古い家の木の軋むドアを開けて中へ入る、後ろ手に包丁を持って中に入る住み慣れた家はどこかいつもと違った。
ゴミが散乱し奥から鼾が聞こえる、その音を聞けば更に晴海の憎悪と怒りが膨れていく。
「起きろ」
居間に散乱したビール瓶と缶、腹を出して寝る無精ひげの晴海の父親に足元に転がる缶を掴んで投げた。
「んぁ…」
「俺の金どうしたんだ!」
のそりと起き出した父親に向かって語気を荒げる、父親はでかい欠伸をし晴海を一瞥しにやりと笑う。
「んぁ、大した金じゃねーだろう!そもそも俺の金だぞ!ぜーんぶ使ったぞほら」
千円札1枚が晴海の向かって投げられる、必死に貯めた約10万…大人ならば大した額でないのかもしれない、晴海にとっては何年もかけて貯めた10万だった。
「パチンコ出ると思ったんだがなぁー馬にも賭けたがあーはっは!負けちまった」
もうダメだ…ダメなんだ…空いている赤切れで血が滲む手で拳を握る、背に隠した包丁を構えた。
「んだぁ。殺すか?お前なんかにそんな度胸はねぇ。俺のサンドバッグ位がお似合いだ!」
笑う不快な声、血が上る、父親に向かって一歩踏み出そうと足を動かすと…足元に霧とももやとも言えない物が広がり宇宙空間のような穴が開いている、そのまま落とし穴に落ちるように滑るように落ちていった…。
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