あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

文字の大きさ
上 下
104 / 867
第4部 生きる世界に微笑んで 立ち止まったら空を見上げて編

21 邪魔者きましたー

しおりを挟む
「ベルン、カタン、お疲れさまだね。片付けしようか」
「はい、カタンもありがとう!」
「たのしいよー」
ポップコーンも完売しジラとチグリスが片づけを行い、カイネは店内の片づけの手伝いに行っている、ベルンとカタンのフォローをしていた率もミルク屋の片づけを行っていると不躾な声が聞こえてくる、正直相手にしたくはない感じだった。
「おい、そのモギ幾らだ?メスとオスで買い上げてやる。幾らだ?」
「誰ですか?いきなり?」
横柄な物言いに率が声を強く出す、目の前にいたのは身なりは言いが悪趣味な服装に腹の出た男とその両脇に部下らしき男2名を従え偉そうに振る舞っていた。
「どうやって運んだかは知らんがモギは繊細で馬車移動等でここ迄来る前に弱って死ぬ、この『ガルバ商会』が買い取ってやろう」
「売りません、お引き取り下さい」
「おいおい、そんな口聞いていいのかぁ。少し痛い目見せれば売る気になるかぁ?オイ、お嬢ちゃん?」
「へぇ、痛い目ねぇ。こういうの?」
率がベルン達を庇うように前にでる、両脇にいた男達はチンピラらしく指をコキコキ鳴らす前にジラに片足を引っ掛けられ、スッ転んだ。
「率くんすまない遅くなった、みんなを中に避難させた。ジラ、チグリス暴れても良いぞ」
大河がジラの背後から現れ、スッ転んだチンピラを見下ろし他の2人にも冷えた目線を向けた。
「いえ、ジラさんとチグリスさんもいますし。僕は平気です」
「ん…」
「お前ら盗賊だな」
「無礼だぞ!俺は『ガルバ商会』の会頭だぞ!」
ジラは小馬鹿にした笑みを浮かべ腹の出た悪趣味な服装の男に指さす、男は怒りを露わにし唾を飛ばして喚いている。
「ま、冒険者ギルドに引き渡せば分かる」
「お、おい、こいつをやっちまえ」
「ドラマの三下が言うセリフをこうして聞くとは…」
大河がこうもお約束な事を言ってる商人モドキ盗賊に呆れ返る内に、ジラが足で蹴りを1発ずつ入れて地べたに伸びていた。
「1発で終わりかー、よし冒険者ギルドに…」
「その必要はねぇぞ傭兵王」
現れたのは《トイタナ村》冒険者ギルドのマスターダンダだった、ムキムキの筋肉にピカッと光る頭が腕を組んで立っていた。
「あーアンタか、老けたなー」
「そっちは変わらずだな…まあな」
「そいつらは貰ってくぞ」
冒険者ギルドの職員数名が偽商人達を捕縛した、ジラは制服の帽子を取り薄い菫色の率に結って貰った髪が零れ落ちる、詠斗達に煽てられて掛けた眼鏡も外せば薄い紫色の瞳に赤紫の瞳孔が鮮やかな端整な容姿の青年が皮肉な笑みを浮かべた格好となった。
「まさか、本物?傭兵王?」
「ば、化け物!俺はそいつを戦場で見た!笑いながら敵陣地のど真ん中に1人で行って敵将の首をを獲るようなヤツだ!化け物!」
「おい、人の商会の従業員を化け物とか言うな。おいギルドマスター金は幾らでも払う、こいつ等は一生牢から出すな」
「そいつ等は商会の支配人達を殺して成りすましている、余罪盛り沢山で極刑だ」
「そうか…」
「連れて行け」
大河がダンダに注文を付ければ、ギルドの従業員達を顎で動かし商人改め盗賊達を連れて行かせた。
「あいつ等は商人になりすまし、タダ同然で金品を無理矢理買い取るヤツらだ。村に来た情報が入って来たから追っていたらここでひと悶着起こしてくれた訳だな」
「へぇ」
「で、用はこれだけじゃない」
客を避難させ店に近づけさせないようにしていた詠斗と、店の中で様子を伺っていた綴も出て来て話しを皆で聞く事にした。
「傭兵王アンタに各国から所属要請やら、剣帝または剣聖への称号授与、そして神聖国《テンランド》から騎士団団長への誘致、鬼人族剣鬼からの決闘依頼…中々に熱い恋文が来ているんだが?」
「ふぅん、全然興味無い。俺は《アウトランダーズ商会》の従業員なんで、傭兵も冒険者も辞めるわー」
「良いの?」
「良いのか?」
「ジラさんすごい!色々な国に必要とされていて!」
「剣聖ってすごいんじゃないですか?」
特に興味も湧かないジラに詠斗、大河、率、綴が尋ねるが、ジラはニカっと笑った。
「こっちの方が楽しいし、飯が美味いし、戦わなくても生きていけるならそれでいい」
これしかなかった、これしか生きる術が分からなかった、両親を失い…本当は両親の跡を継いで薬師になりたかったが身寄りのない子供を養い教えてくれる薬師はいなかった。
でもこれがしたかった訳ではない、今は別の道をくれた友…家族がいるだから傭兵でもなく冒険者でもないジラとして過ごせるここが良い。
「傭兵ジラはもういない、そういう事でギルドマスター」
「…そうかと引き下がりたいとこだがなー本部からS級冒険者への昇格の話しもあるんだが…」
「ははっ、ぜーんぜん興味ないわー」
ジラの言葉にダンダがツルツルの頭を掻く、本人の意思を無視して強制は出来ない。
これからの断りの文をやら、各国に返す返事に頭を抱えるがこれも冒険者ギルドのマスターの仕事だと思い諦めて受け入れる。
「依頼は受けなきゃその内失効されるが、アンタは特別だ死ぬまで冒険者資格が失効はされない」
「あーなんかそんな話しだったか、都合良く出来ているよな」
「まあな、俺は行くアイツ等の懸賞金はどうする?口座に入れとくか?」
「ん、あ、あの泥棒の懸賞金に上乗せしといて」
「アンタも物好きだな、じゃ俺は行く」
「あ、ダンダさん、これ」
ダンダが去ろうとするのをエイトが引き留め、葉に包んだパティやパンの包みを手渡した。
「差し入れです、食べて下さい」
「良いのか?気になってたんだぞ、お前たちの店。噂になっていからな、ありがたく頂戴する」
「はい、どうぞー」
詠斗達がダンダを見送り、片づけの残りを済ませ店の2階休憩室に向かった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~

裏影P
ファンタジー
【2022/9/1 一章二章大幅改稿しました。三章作成中です】 宝くじで一等十億円に当選した運河京太郎は、突然異世界に召喚されてしまう。 異世界に召喚された京太郎だったが、京太郎は既に百人以上召喚されているテイマーというクラスだったため、不要と判断されてかえされることになる。 元の世界に帰してくれると思っていた京太郎だったが、その先は死の危険が蔓延る異世界の森だった。 そこで出会った瀕死の蜘蛛の魔物と遭遇し、運よくテイムすることに成功する。 大精霊のウンディーネなど、個性溢れすぎる尖った魔物たちをテイムしていく京太郎だが、自分が元の世界に帰るときにテイムした魔物たちのことや、突然降って湧いた様な強大な力や、伝説級のスキルの存在に葛藤していく。 持っている力に振り回されぬよう、京太郎自身も力に負けない精神力を鍛えようと決意していき、絶対に元の世界に帰ることを胸に、テイマーとして異世界を生き延びていく。 ※カクヨム・小説家になろうにて同時掲載中です。

処理中です...