あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第4部 生きる世界に微笑んで 立ち止まったら空を見上げて編

7 本格的にオープンしました

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「おかーさーん、おとーさーん。ジラ、薬草つんできたよー」
遠い日の記憶の夢の中の幼い自分を今のジラが見ていた、両親がいて温かい家があってジラは幸せだったと思う。
枯葉色の髪は父から、深い濃い緑の瞳は母からそれぞれ受け継いだ証も今は無い。
「ジラ、1人でとってきたのか?あぶないぞ」
「こらジラ1人で行っちゃだめよ」
「はーい」
両親の声…ああ、そういえばこんな声だったかと思い出す。
「でもすごいぞ、ちゃんと根は残して摘んで来ているな。うちの子は天才か!」
「もぅ、貴方がそうやって甘やかすから…」
薬草を探す、または育てる事を生業としている家族、父親がジラを抱き上げ掲げて笑う、母親も怒りはするが笑っている。
優しい家族…笑い声…笑顔…流行り病で自分達の命よりも他者を助ける事に人生を捧げ、手持ちの薬草全てを使い病に倒れた優しい両親…。
両親が病に倒れた際周囲は救いの手を差し出してはくれなかった、分かっている皆自分を生かす事に精一杯なのだ…。
恨む筋合いはない、それも遠い昔の話し…。
「母さん、父さん…人を止めて長生きしていると面白い事があるね…。退屈も終わるかもしれない」
陽だまりの団らんから背を向け、暗い闇に溶け込むように進んでいく、夢から覚めればきっと今までとは違う面白い事が待っているから…だからさようなら…。

「ん、くぁ…おはよ」
「んん…ああ…」
「ん…」
大河、チグリス、ジラが同時に起き出す、朝食は既に出来ておりナイルと千眼しかテントの中にいなかった。
「おはようございます、皆さんはもうお店に行ってますよ」
「おはよう…、朝食は出来ている」
「ん、いただきます」
「ああ」
「俺、牛乳ちょーだい。んーこのスープ美味しい」
「はい、どうぞ」
「卵焼き醤油…」
「この卵焼き美味いな」
「綴が作った…」
「俺も食べよっと…もぐ…何これ!すごい美味いんだけど!」
「綴さん喜びますよ」
ニコニコとナイルが一気に飲んだ牛乳の追加を注いでくれる、軽めの朝食にデザートのを食べて手早く身支度をして店に向かう。
「お昼も作っておくので取りに来てくださいね」
「行ってらっしゃい…」
『行ってきます』

「あ、大河さん、チグリス、ジラさん、おはようございます!」
「悪いな起きるの遅くて…」
「気にしないで下さい!こっちは準備ばっちりですよ」
「もう、お客様…結構並んでます…ドワーフさんたちもいますよ」
「そうか、なら開けるぞ。今日は初日だ、みんな無理せずに何かあればすぐ報告を…」
『はい』
「ポップコーンも準備出来てます」
「なら、おれはカイネの方に行くよ。よろしくー」
「はい、ジラさんとご一緒出来て嬉しいです!」
「俺は列と入口の案内、カイネ、チグリス、ジラはポップコーン担当。詠斗君はショーケースで他の皆とレジを交代しながら、率くんはパン屋の方でレジのサポート。綴さんは少し大変だが、俺と交代しながら、2階からパティを降ろしたりする係と手伝い。今日も売り切ったら終了で」
『はい!』
皆が散り散りにポジションに着く、大河がドアを開け今から開店ですと伝えると、行列が少し動く。
「ショーケースはパティを3種類と飲み物、外の売店はポップコーンという『アウトランダーズ商会』限定の食べ物です、味は2種類あります。店内のパン屋は小さいので少人数ずつ案内します。外に食べる場所もあるのでご自由にお使い下さい…」
と言っている間に先ずはわれ先にとポップコーンとシューケースに並ぶ、パン屋は狭いから皆後回しにするようだ、順番に案内していく。
「こっちにポップコーンとやらを1つくれ、…塩と香辛料…どっちがいいんだ?」
「ハーフ&ハーフ…半分ずつに出来ますよ、値段はかわりません」
「じゃ、それで!」
「ねぇ、家にいる家族も食べたいだけど持って帰りたいの」
「なら、通常ここで食べる際は500ログ、持ち帰りは800ログです。次回来るときに渡した皿を持って来ると300ログ返します」
「面白いわ!ならそれで…塩と香辛料1皿ずつ頂戴、持って帰るわ」
「はい、ありがとうございます1,600ログです」
4つ用意した竈でチグリスが黙々とポップコーンを作り、ジラが出来たポップコーンに塩と香辛料をそれぞれ振り分け保温ケースに入れていく、カイネが会計と客にポップコーンを渡す係と連携を秒で取りせっせと作って渡していく。

「干した果物を入れたのとお肉のパティと果実水下さい!」
「はい、600ログです!」
「はい、果実水」
「ちょうどね、はいこっちはパティね。気を付けて」
「うん!」
レジ操作を覚えたナティが快活に会計と商品の受け渡しを行う、詠斗が飲みもの準備と次の客の注文を聞いて準備する。
「熱々ーおいしいー」
「この果実水も美味しいねー」
「うん、この干したのが入っているの美味しい」
「肉のも美味いぞ!」
隣の屋外のイスやテーブルで買った客達が嬉しそうに頬張る、既におポップコーンを食べきりお代わりの列に並ぶ客もいる位盛況だ。

「はい、ありがとうございましたー。次2名様どうぞー」
パン屋の中で買い物を済ませた客を見送り次の客を案内する、皆トレイに沢山乗せて買っている。
「はい、追加のパンです。これは干した果物を練り込んだものです」
綴が焼きたてのパンを運んでくる、それが終われば2階に上がり出来たパティを運んでくれる、上へ下へと忙しく動く。
「ねぇ、まだなのかしら?」
少し後ろのきつめな中年女性が列に苛立ちを隠さず大河に文句を付けてくるが、この程度は想定済みなので営業用スマイルを浮かべ軽くいなす。
「申し訳ありません、お客様。本日が初日ですので何卒ご容赦を…お待たせしていますがもうすぐご案内出来ますので…」
「ま、あ、そ、ふ、ふん。良いわ、少し待ってあげても」
顔を赤らめ口ごもる、周囲の老若男女も何故か顔を赤らめてそわそわしていた。
「ありがとうございます、次3名様どうぞ」
顔が良いとクレームも回避できるのである(当社比)この分だと今日も昼前には在庫が尽きるか、ある程度で売り切れにして列を止める算段を始めた…。

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