あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第4部 生きる世界に微笑んで 立ち止まったら空を見上げて編

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「ただいま」
『おかえりなさいー』
『すみませんでしたぁー!!』
帰りを待っていたアルケール達が一斉に頭を下げる、ジラは苦笑いと溜息で頷いた。
「終わった事だし、いいよ」
「本当に申し訳ない、我の愚弟が…」
「あの時は誠に…申し訳ない事を…」
「ジラ!お久しぶり!」
「レグか!久しぶりだ!結婚したんだって?おめでとう!そう、レグがドラゴンと結婚したんだ!俺の腕を治してくれた恩人の祝いに水に流す、だからそっちももう気にするな」
晴れやかなレグとジラの笑顔にドラゴン達は胸を撫で下ろす、レグが来る迄割りと緊迫した空気が流れていたのは黙っておくかとチグリスは胸にしまう。
「ただいまー、カイネと戻ったよー。みんな、お風呂行かない?」
呑気な詠斗の声にみんな笑顔を浮かべ、詠斗は首を傾げたが
笑っているみんなの表情を見て更に笑みを深めた。

「アンタ、魔王か?また美人な魔王だなー」
「序列第2位千眼魔王だ…傭兵王…」
特に自己紹介はしていない、千眼とジラが風呂場で並んで湯船に浸かってそんな話を始めた。
「ふぅん、今まで偽魔王とかいたがこの目で見たのはアンタで本物の魔王は2人目だ」
「何処にいる?」
「ん?魔王は群れないと聞いているが、行くつもりか?止めとけ」
「……」
「《テンランド》にいるぞ?しかもあれは自分の意志でいるようだった」
「やはり…あの国か…」
「ジラさん…魔王の偽物って?」
「《テンランド》に魔王がいると言うことは、その国に協力しているのか?
「さあ?俺が分かるのはあの国と関わらない方が良いってことと、魔王が少なくとも俺が見た魔王と気配を感じる魔王で、2体はいるということだ」
ナイルと詠斗に洗うのを手伝って貰った長い髪を貰った髪紐で率に団子にして貰い、気持ち良さそうに入っている姿はとても傭兵王やら物騒な2つ名が付くような男には見えなかった。
「……!……そうか…」
「止めとけよ、魔王1体じゃ勝ち目はないぞ?」
「千眼、その件は後で神々にも聞く。それで魔王の偽物とは?」
「ああ…」
「まんまだよ。各地に偽の魔王を騙って脅して金品を奪う。盗賊だ…」
大河の言葉に何かを思案する千眼、その横顔に薄紫の瞳の赤紫色の瞳孔が細まる。
「なんですか!それ!」
「詠斗さん…千華の魔王が封印された後にそういう類いの輩が現れたんです。今に始まった事でもありません」
「魔王ってのは得体が知れない、ただ13体出現すると謂われている存在だ。何をする…何が起きるかも分からんって事で人が勝手に恐怖し怯えているだけだ」
憤る詠斗をナイルが宥めジラが続ける、周りも静かにその遣り取りを見ていた。
「主…私はこの世界の人間を好きにはなれないが嫌いでもない、彼らが私達を敵とみなしている…相容れるつもりはない。千華の魔王の時に思い知った…」
「千眼さん…」
「この話しは一旦止めて酒飲んでいい?牛乳?ミルクってものも飲んでみたい」
「そうだな、すぐにどうこうなる話しでもないからな」
「ああ…」
「はい」
詠斗が千眼の方をちらと見る、千眼は何を考えているか分からない読めない無表情だった…。

「んー!久しぶりのコロッケ!はぁ、おいしいです!詠斗君」
「2種類…どちらもおいしいですね」
「何も付けなくても味があって何個でも…いけます!」
「マヨネーズ…合うな」
「おかわり…醤油も合う」
「きゅう達やチグリスと千眼さんとドラゴンさんやみんなでたっくさん作ったよ!サラダも食べてね!バランス良く食べてー」
『はーい』
ドラゴン達やジラも交えての食事、酒も大量コロッケも大量に消えていく。
サラダやスープやパンも程好く減っていく、明日またハル達が畑に芋やトウモロコシやダイコンを植えたいとの事なので後で苗を渡す。
「良いとこ来れたわ、牛乳ってのも美味いしいくらでも飲める!飯も食べた事ない物が出て来て、風呂も最高」
「なら、良かった」
「仕事するぞ、護衛とか出来る!傭兵だしな」
「うちは『アウトランダーズ商会』だからな。明日店の初日だから明日一緒に来てくれ」
「やりたい事見つけてください」
「俺とポップコーン作りますか?」
大河、詠斗、カイネがこれからの話をしてくれる、ジラに人を殺せ、戦え、勝て以外の道を見出だしてくれた人達に逢ったのは初めてだった。
「うん!宜しく!」
食事はまだ続く目新しい物、面白い物が《不毛の地》には沢山あった。

「これが、すまほ!これで会話とかできるの!?すごいじゃん!」
テントの中に入りテトラがくれた寝間着代わりの服を着て、ジラが受け取ったスマホを大河からレクチャーを受けてすぐ使える様になり、早速きゅう達の写真を撮って遊んでいた。
「このラインのユナイドって、《クイナト》商業ギルドのマスター?」
「そうだ」
「へぇ、アイツか…」
「知り合いなんですか?」
「俺、顔は広いから」
「それはいいな、俺達は立ち上げたばかりの商会だから顔の広いヤツがいると交渉がスムーズだ」
「そんなんなくても、すぐ有名になるし向こうから取り引き持ち掛けてくる」
スマホを弄りながら、こんなすごい物、食事、衣服どれをとっても初めて見る物ばかり大陸中が『アウトランダーズ商会』と取り引きしたいだろう。
「ん?あっちは本?」
「ああ、俺の私物の本だ。読みたかったら読んでいいぞ」
千眼やナイデルやきゅう達が座って本を読んでいるスペースに赴く、棚に入った本、テーブルや千眼が用意している茶器どれもジラには目新しい物ばかりだった。
「あ、ちょうど良いものがある」
自分の収納袋からジラの長身に合わせた4人掛け程の長さがあるソファと、1人掛けソファを3店舗出して図書スペースに並べた。
「いいな、このソファ。こういうの欲しかった」
「素敵なソファですね」
「だろ、エルフとドワーフを助けた時に礼に作らせた。中々の座り心地だよ。座ってみて」
「わ、見た目より座り心地は柔らかいです」
「気持ち良いな」
「だろー、本…これ借りるわ」
男性向けファッション誌を手に取り、ソファでくつろぎながら眺めついると、ハル達も一緒になってジラに身体を預け座ってスマホを弄っている。
「そろそろ、寝るよー。皆明日早いから程ほどにね。おやすみ~」
『はーい』
詠斗、カイネ、チグリス、率、綴が先に布団に入る、後は各々夜を満喫して就寝に就いた…。
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