あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第4部 生きる世界に微笑んで 立ち止まったら空を見上げて編

プロローグ 始まりはもう1度異世界から

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「では、これより、再び我々の世界アタラクシアの病を治癒する為の異界人を召喚する」
『異議なし』
「召喚する異界人は、計8人。《アタラクシア》の治癒の状態により順次行う、担う者 導く者 手を差し出す者 掬う者 与える者 変革する者 もたらす者 そして最後は…××××××を持って召喚を完了とする」
「召喚する異世界は地球」
「召喚する者は日本という場所に生きる者」
「今を生きる世界に未練がない者」
「《アタラクシア》で生きていける者」
「我々の勝手な都合で呼ぶには誠意を持って」
「誓いを」
「心と魂と肉体に」
「我らの出来る限りを以て」
「祈りと願いを」
「ここに示す」
「我ら13の神の誓いを契約とする」
最初に手を挙げた者から時計回りに、1人づつ右手を挙げ誓いを立て一周すると、中央の《アタラクシア》の雲の穴が1つゆっくりと塞がっていく。
「では、招こうこの《神ノ庭》に4番目の異界人 導く者を…」
神々の頭上に渦巻く雲、ゆっくりと白い空間を侵食し広がっていく。

「綴君…本当に良いのかい?」
「良いんです、先生使って下さい。これ位しか僕には出来ないので…」
「本当にありがとう…」
綴が退職金として貰ったお金を綴がいた施設の恩師である施設長に渡した、以前よりも小さくなった身体に鞭打ち仕事をしていたが、とうとう身体が限界を迎え近々入院する事が決まっている。
経営難だが国の補助でなんとかやりくりをしていたが、後継者もいない施設は閉所が決まってしまっている。
綴から受け取った封筒を握り深々頭を下げる、施設の錆びた遊具古く改修も出来ない今は昼を過ぎたばかり子供達は学校に行き酷く静かだった。
「これからハローワークへ行って手続きをしたら、ここのお手伝いをしに来ますから…」
「悪いね…この不景気じゃ会社はどこも…」
本当の事は言えないこの恩師にこれ以上の心労はかけたくない、閉所は決まっているが最後の日まで自分が暮らした場所を見守ろうと決心した。
「またすぐ来ますね」
「ああ、宜しく頼むね…」
もうじき別れる愛用の車に乗り込み、施設長と『星の子』と文字が掠れた看板に見送られハローワークよりも先に車を引きとってくれる店に向かった。

「これで、お前とも最後だね…。寂しいなぁ…」
更科 綴という青年は酷く人との繋がりが薄い存在だった、赤子の時に施設の前に置き去りにされ名前も施設長が付けてくれたもので、恋人も無くひたすら仕事と『星の子』でのボランティアに明け暮れ、寮に戻れば騒々しい先輩の存在で落ち着けず、唯一の安心出来る場所はこの車の中だった。
仕事も探さなけれならない、愛車とも別れなければならない、施設の散り散りになる子供達…。
「はぁ…でも僕に出来る事なんて…。ダメだ気分が滅入ってしまう…少し車を止めて外の空気を吸おうか…」
コンビニの小さい駐車場に止まり中に入る、「いらっしゃいませー」目の下の隈が酷い中年の店員に迎えられた。
気晴らしに入っただけのコンビニだ、買う目的もなく店を回ると小腹が減ったので鮭とツナマヨネーズのおにぎりとお茶を買って会計をしてもらう。
「これ、うちの店で今やってるくじです。良ければどうぞ」
「ありがとうございます…」
「おめでとうございます、あたりの卵10個パック2つと牛乳瓶1L1本です。この牛乳数量限定でちょっとお高めです」
箱の中からくじ1枚を取り出し開くと特賞と書いてある、レジの後ろから既に用意されていた卵と冷蔵ケースから持って来た牛乳瓶を袋に入れて渡された。
「……えと、ありがとうございます…」
「ありがとうございましたー」
何故特賞がこれなのか良く分からないが卵も牛乳も好きなので嬉しい、一度寮に戻って冷蔵庫に入れた方が良いのか考えて…いやな事を思い出すとういか考えることを放棄していた事を思い出して、車の運転席でハンドルに顔を伏せた。
「会社クビになったけど、寮にはしばらくいていいって…先輩が一緒だからきっと毎日いつ出るんだって言われるよ。今度も寮がある所を探さないと…」
毎日後輩の綴がいてもお構いなしに友人を呼んで騒いで部屋を汚す、片づけもしないし人の物を勝手に使う冷蔵庫に入れてある物も勝手に食べたりする…辞められて良かった…のかもしれないと少しだけ前向きに考えられる、他の社員は見て見ぬ振りその先輩に目を付けられると会社でいびられるからだった。
社長のお気に入り…媚びを売って人の仕事を横取りしたりするので、仕事は出来るという上からの印象だった。
「はぁ…帰りたくないなー」
実家…とういう物があれば、こういう時帰れたのだろうか…両親がいたら…考えた事…夢見た事は何度もある、棄てられた事を恨むより、何故棄てたのかという理由が知りたかった。
納得できる理由があれば…むしろあって欲しいと思う、産みの親を恨みたくはないから…。
「あれ?これ?」
物思いに耽っていると足元に霧とももやとも言えない物が広がり宇宙空間のような穴が開いている、車の中なのに何故という疑問が生まれ、慌ててドアを開けようとしたがそのまま車毎滑るように落ちていった…。
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