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第2部 スタートはゴール地点から 本が読みたければ稼がねば編
19 喰えない男
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時永 詠斗 : 不老不死 肉体年齢 21歳 担う者
所持魔法
土魔法 水魔法 火魔法 風魔法 浄化魔法 転移魔法
スキル
状態異常無効 無限収納(時間停止) ステータス隠蔽 攻撃無効※ 自動マッピング 身体強化 回収(主にドロップ品の回収) 通知機能
固有スキル
園芸ショップ
善行ポイント
9,950pt
現在交換可能
魔法
水魔法(水弾:50pt)
火魔法(火矢:50pt) 風魔法(竜巻:60pt)
スキル
深眼(600pt)
「今日はダンジョン行くから攻撃魔法全部交換しよう、あ、おはようございます。朝飯出来てますよ!ダンジョンいくから張り切って肉多くしちゃいました」
「おはよう、助かる。スタミナつけていこう」
「ん…肉」
「おはよう…」
「おはようございます。大河さん、チグリス」
卓に並ぶ朝食メニューは、サラダと肉とポテトサラダを挟んだサンドイッチと腸詰と焼いた肉を所狭しと並べて、『いただきます』ありつく。
「今日予定は詠斗さん達が迎えにくるまで、婚礼の食事の準備するので…」
「器具や食材や調味料は置いとくね」
「はい」
「俺たちはまず《トタラナ》商業ギルドで物件の手続きその後は…」
「蜂蜜屋で蜂蜜酒を買います、入荷していると思うので」
「その後、《クイナト》の商業ギルドで手続きしてダンジョン攻略だな。その後買い取りか。時間に余裕があるならドワーフの工房にも行くか」
食後のお茶を飲み今日の予定を立てる、きゅう達は今日は1日休みということで食後は畑で料理しているナイル達の側でスマホを弄って過ごすように決めたらしい。
「私が皆を連れて畑に行こう」
「じゃ、また後で」
予定も決まりそれぞれの場所に別れ、詠斗、大河、チグリスはテントから出て商業ギルドへ向かった。
「お待ちしていました。さ、こっちへ」
商業ギルドに入ればすぐにズィーガーが出迎え応接間に通され、お茶を出され…大分疲労が溜まったズィーガーがどかりとソファに座り、書類を一式用意して後は目を通し署名してもらうだけにしてある。
「昨日頂いたパンとパティありがとうございました。ゴーテン一同大変喜んでいました。特にパティはどこで買った物なのか仕切りに聞いてきましてね…」
「話して貰っても構わない、宣伝になるからな」
「それは嬉しいですね、私も店が始まったら通いますよ。では、これに目を通して貰い了承して頂ければ支払いは《アウトランダーズ商会》の口座から頂きたいと思います」
「分かった、それと今日はこの後クイナトの鉱物ダンジョンと肉ダンジョンに向かう」
「昨日会ったユナイドさん、とても親切でダンジョンの事も教えてくれたんですよ」
大河が速読で書類に目を通し納得いったので、書類数枚に署名しズィーガーに返す。
「ユナイドは喰えない男なんですよ、まだうちの商会が小さかった時にフラッと現れて金が無いから雇ってくれって言われてそこから手腕を発揮し、この商会をここまで大きく出来たのはあの男のお陰ですね。王都のギルドを任せてここに私がいるのもあの男に全て任せて……良かった……からですね!では、この書類全てに魔力を注いで下さい、破損や複製が出来なくなりますので……少しだけ…本当に少しの魔力を注いで頂ければ大丈夫ですので…」
徐々に歯切れが悪くなっていくズィーガーに言われ、紙に大河が魔力を少し注ぐと紙が全て硬質な板へと変わる。
「これは?魔力を注ぐと金属みたいになるんだな」
「……ならないです、これは…世に出せませんね…。私の金庫に厳重に保管しておきます…」
歯切れも悪い上に顔色も悪いズィーガー、試しに紙を鑑定してみると 契約書(異界鉄):魔力を注ぐと複製や破損を防ぐ特殊な材料で作れています あーこれ魔力注いだせいで変質しました 名前は一応《異界鉄》にしときますねー 『これで武器とか作れるのか?』 難しいですよ これを加工する道具が無いですね これをそのまま投げた方が早いです 『分かった』
「では、土地と建物は《アウトランダーズ商会》及び大河さんの物となります。こちらは鍵ですね、今日からお使い頂けます。それとですね…もしよければ鉱物ダンジョンと肉ダンジョンのドロップ品をこちらでもお売り頂けないですか?」
「構わない、定期的に行くつもりだ。金になりそうなダンジョンがあれば教えて欲しい、今攻略が難航している《トタラナ》ダンジョン以外で、それと昨日最初に行った貴族の屋敷も抑えて欲しい、購入するつもりだ」
「承知しました。ユナイドは喰えない男ではありますが、有能な男ですからご安心を…」
「分かった、行ってくる」
「行ってきます」
「ん…」
3人がそのまま転移したのを見送り…この後急に消えた3人についてどう良い訳しようか、ズィーガーは悩んで頭を抱えた…。
「こんにちは、お待ちしていました。商品も入ってきていますよ」
蜂蜜屋にほど近い人気のない場所に転移し蜂蜜屋に立ち寄る、蜂蜜の瓶が並ぶ露店で店主はにこやかに迎えてくれた。
「ありがとうございます」
「裏手にありますから、今日はもう1人連れの方がいるんですね」
「どうも」
「詠斗、パン」
「はい、これ食べて」
大河が軽く挨拶しチグリスが詠斗からパンを貰いかぶりつきながら、裏手に案内された。
「これに蜂蜜酒が入っているんですねー」
目の前の木の樽、テレビなどで見るワインが入った樽より小さめの物が4つほど置かれ、1樽300,000ログとの事4樽全て買う事に決めた。
「これは入ったばかりの蜂蜜です良ければ少しどうぞ」
木匙に垂らした蜂蜜を試食する、粘度がたかく喉にくる甘さは何かに付けたり酒で割ったりするのに向いていた。
「飴とかにすると喉に良さそうですね」
「確かにこのままだと濃すぎる」
「酒やお茶や料理に入れたりしますね、飴とは何ですか?」
「そうだ、水飴を使ったお菓子を考えたんで…チグリス氷出来る?」
「…ん」
台を借りチグリスに氷を長方形にしたものを魔法で出して作って貰い、火魔法で窪みを空ける。
「氷ですか贅沢な使い方ですね…、私も氷魔法は使えますがこういう使い方は初めてです」
店主が関心したように2人の工程を見つめる、大河は露店の商品を眺めて気になった物を後でまとめて買う事にした。
「この窪みに切った果物を置いて…太めの串を置いて水飴を注いで固めれば完成です」
「こ、これは美しい!宝石のようですね!」
「これを私の故郷に伝えても良いですか!?」
「いいですよー」
「この水飴、俺達も店をやるとき商品に取り入れるつもりだがそれでも良ければ…その代わり」
「はい!何でしょう!?」
「水飴を定期的にこちらに卸して欲しい、多少は値引きも…」
大河がニヤリと笑う、店主が一歩下がるが分かりましたと了承する。
「どうも、ならもう1つサービスで教える」
手のひらサイズの魔石の上に陶器の取ってが付いた小鍋を置き、水飴を入れ焦がさないようにヘラでかき混ぜる、沸騰手前で蜂蜜を入れ更に焦がさないように混ぜていく。
「とにかく焦がさないようにするのが大事だ、この変わった道具何処で売っているんだ?」
「私は薬草も簡単な物ですが煎じたりしますので、この道具は全て商業ギルドか薬屋などで売っています」
「そうか、こんなものかな。混ざったら清潔な板…でいいかの上に匙ですくって置いていく。固めたら完成だが、風魔法で乾燥させるか。できたぞ」
「た、食べてみても良いですか?」
美形な店主の眼がギラギラしている、さっさとチグリスが何個も食べているので慌てて口に放り込んだ。
「んぅー蜂蜜の風味がまろやかになって…口の中で少しずつ溶けていきますぅ」
美形な冷静そうな人物が崩れる、顔もついでに崩れていた。
「風邪とか喉がイガイガするとき舐めるといいですよねー」
「初めて作ったが、こんな感じか」
「私の国でこれもいいですか!?もし店をやる場合はこれも作りますか!?」
「まだ分からないがな」
「素晴らしい!水飴と蜂蜜も特別に卸値で売りますから!」
「へぇ、それは良いな」
「これからもよろしくお願いします!申し遅れましたが私は、クローダーと申します」
「大河だ、また来る」
「俺は詠斗といいます」
「チグリス」
「お店出来たら教えて下さい!行きますから」
「ありがとうございます」
酒と蜂蜜の代金を支払い収納袋(偽装)に入れて、店主に見送られ店を後にし人気のない場所で転移魔法を使って《クイナト》へ。
「お待ちしていました、どうぞこちらへ」
商業ギルドの区画に置いたテントから出てギルドの中に入れば正面に狐目の男、《クイナト》商業ギルドマスター兼ズィーガー商会副支配人ユナイドがニコニコしながら出迎えてくれた。
2階最奥の応接室に案内され、ソファに座る。
「今から鉱物ダンジョンと肉ダンジョンに向かう」
「承知しました、今鉱物ダンジョンの3階層まで冒険者がおります。肉ダンジョンは4階層まで冒険者がおります、それ以降は無人ですので存分にドロップ品が取り放題ですね」
「わかった、売りにくる」
「それとですね、もしお知り合いに魔王クラス・・・・・以上のお知り合いがいましたら、渡したい物があるのですが…」
「分かった」
「チグリス?」
その言葉に最初に反応したのは意外な事にチグリスだった、チグリスがショルダーバッグからスマホを取り出し電話をかける。
「俺…渡したい物があるらしい来てくれ…」
「おや、変わった物をお持ちで…」
スマホに反応するユナイドにどう言うべきか大河が迷う前に、黒い蝶の群れが床から現れ人の形…千眼魔王に成る。
「何かあったのか?」
現れた千眼魔王は詠斗のパーカーとジーンズに三つ編みという姿だが、人離れした容姿は何一つ損なわれていなかった。
「これはこれは、わたしは狐人族のユナイドと申します…失礼ですが序列をお聞きしても?」
「序列第3位千眼魔王…王族か…」
「…その通りで、大分昔に追われた身です」
千眼もソファに座る、4席しかないので詠斗と一緒に座った。
「もし…魔王に会う機会があればこれを渡そうと思いまして…」
ニコニコとした表情が真剣な面差しに代わり、懐から白い布に包まれた物を2つテーブルに置いた。
「こちらはかつて千華の魔王様から頂いた種と歌を入れたウルクラ貝です…お持ちください」
ナイルが持っていた種と同じ物が数粒と、真珠の様な光沢を放つ巻貝を千眼が受け取りの先を捩じると声…歌が流れて来た、心地の良い優しく和らかな声、聞いたこともないメロディーに乗せた歌はいつまでも聞いていたい気持ちにさせた。
「初めて聞いた…」
千眼がそう囁く少し口元が緩む、チグリスは無表情にその光景を眺めていた。
「国を追われた暫く放浪していた時に逢いました、あの白い花の化身の様に美しい方でたしたね。貴方も夜の闇の化身のように美しいですが…」
「千華の方が美人だな」
思い出に浸って気障ったらしい事を言うユナイドに、さらりとチグリスが水を差す。
「確かに…花と貝の礼がしたい」
特に怒りもせず同意する千眼に黙って話を聞いていた大河と詠斗は、どれほどの美形なのか気なった。
「では、良ければ友人になってくれませんか?」
「分かった、スマホを1台欲しい。良いか?」
「ああ…」
大河に確認を取り増えたスマホを初期化して渡すと、千眼が蝶を入れて手渡す。
「これは先ほどの…」
「使い方の説明をする…」
ユナイドが受け取り、使い方を説明するとすんなり受け入れ、使い方もすぐにマスターすることが出来た。
「これはすごい…こんな物を頂いても?」
「千眼の友人なら良いだろう、何かあれば俺達の連絡先も入っているから連絡すればいい。
「承知しました、皆様に全面的に協力させて頂きます」
「ありがとうございます」
「では、ダンジョンへ行こうか」
「行ってらっしゃいませ、お帰りをお待ちしております」
「行ってきます」
詠斗が応えその場のマッピングで位置を確認し、鉱物ダンジョンへと転移する。
「種と歌…ようやく渡す事が出来ましたね。教えてくれるとは思いませんでしたが思い切って聞いて正解…。生きているうちにもう一度貴方に会うことが出来ますかね…」
まだ仕事は残っている、業務が終われば少しこのスマートフォンなる物を試してみようかと思う、そう何も起こらなければ…。
所持魔法
土魔法 水魔法 火魔法 風魔法 浄化魔法 転移魔法
スキル
状態異常無効 無限収納(時間停止) ステータス隠蔽 攻撃無効※ 自動マッピング 身体強化 回収(主にドロップ品の回収) 通知機能
固有スキル
園芸ショップ
善行ポイント
9,950pt
現在交換可能
魔法
水魔法(水弾:50pt)
火魔法(火矢:50pt) 風魔法(竜巻:60pt)
スキル
深眼(600pt)
「今日はダンジョン行くから攻撃魔法全部交換しよう、あ、おはようございます。朝飯出来てますよ!ダンジョンいくから張り切って肉多くしちゃいました」
「おはよう、助かる。スタミナつけていこう」
「ん…肉」
「おはよう…」
「おはようございます。大河さん、チグリス」
卓に並ぶ朝食メニューは、サラダと肉とポテトサラダを挟んだサンドイッチと腸詰と焼いた肉を所狭しと並べて、『いただきます』ありつく。
「今日予定は詠斗さん達が迎えにくるまで、婚礼の食事の準備するので…」
「器具や食材や調味料は置いとくね」
「はい」
「俺たちはまず《トタラナ》商業ギルドで物件の手続きその後は…」
「蜂蜜屋で蜂蜜酒を買います、入荷していると思うので」
「その後、《クイナト》の商業ギルドで手続きしてダンジョン攻略だな。その後買い取りか。時間に余裕があるならドワーフの工房にも行くか」
食後のお茶を飲み今日の予定を立てる、きゅう達は今日は1日休みということで食後は畑で料理しているナイル達の側でスマホを弄って過ごすように決めたらしい。
「私が皆を連れて畑に行こう」
「じゃ、また後で」
予定も決まりそれぞれの場所に別れ、詠斗、大河、チグリスはテントから出て商業ギルドへ向かった。
「お待ちしていました。さ、こっちへ」
商業ギルドに入ればすぐにズィーガーが出迎え応接間に通され、お茶を出され…大分疲労が溜まったズィーガーがどかりとソファに座り、書類を一式用意して後は目を通し署名してもらうだけにしてある。
「昨日頂いたパンとパティありがとうございました。ゴーテン一同大変喜んでいました。特にパティはどこで買った物なのか仕切りに聞いてきましてね…」
「話して貰っても構わない、宣伝になるからな」
「それは嬉しいですね、私も店が始まったら通いますよ。では、これに目を通して貰い了承して頂ければ支払いは《アウトランダーズ商会》の口座から頂きたいと思います」
「分かった、それと今日はこの後クイナトの鉱物ダンジョンと肉ダンジョンに向かう」
「昨日会ったユナイドさん、とても親切でダンジョンの事も教えてくれたんですよ」
大河が速読で書類に目を通し納得いったので、書類数枚に署名しズィーガーに返す。
「ユナイドは喰えない男なんですよ、まだうちの商会が小さかった時にフラッと現れて金が無いから雇ってくれって言われてそこから手腕を発揮し、この商会をここまで大きく出来たのはあの男のお陰ですね。王都のギルドを任せてここに私がいるのもあの男に全て任せて……良かった……からですね!では、この書類全てに魔力を注いで下さい、破損や複製が出来なくなりますので……少しだけ…本当に少しの魔力を注いで頂ければ大丈夫ですので…」
徐々に歯切れが悪くなっていくズィーガーに言われ、紙に大河が魔力を少し注ぐと紙が全て硬質な板へと変わる。
「これは?魔力を注ぐと金属みたいになるんだな」
「……ならないです、これは…世に出せませんね…。私の金庫に厳重に保管しておきます…」
歯切れも悪い上に顔色も悪いズィーガー、試しに紙を鑑定してみると 契約書(異界鉄):魔力を注ぐと複製や破損を防ぐ特殊な材料で作れています あーこれ魔力注いだせいで変質しました 名前は一応《異界鉄》にしときますねー 『これで武器とか作れるのか?』 難しいですよ これを加工する道具が無いですね これをそのまま投げた方が早いです 『分かった』
「では、土地と建物は《アウトランダーズ商会》及び大河さんの物となります。こちらは鍵ですね、今日からお使い頂けます。それとですね…もしよければ鉱物ダンジョンと肉ダンジョンのドロップ品をこちらでもお売り頂けないですか?」
「構わない、定期的に行くつもりだ。金になりそうなダンジョンがあれば教えて欲しい、今攻略が難航している《トタラナ》ダンジョン以外で、それと昨日最初に行った貴族の屋敷も抑えて欲しい、購入するつもりだ」
「承知しました。ユナイドは喰えない男ではありますが、有能な男ですからご安心を…」
「分かった、行ってくる」
「行ってきます」
「ん…」
3人がそのまま転移したのを見送り…この後急に消えた3人についてどう良い訳しようか、ズィーガーは悩んで頭を抱えた…。
「こんにちは、お待ちしていました。商品も入ってきていますよ」
蜂蜜屋にほど近い人気のない場所に転移し蜂蜜屋に立ち寄る、蜂蜜の瓶が並ぶ露店で店主はにこやかに迎えてくれた。
「ありがとうございます」
「裏手にありますから、今日はもう1人連れの方がいるんですね」
「どうも」
「詠斗、パン」
「はい、これ食べて」
大河が軽く挨拶しチグリスが詠斗からパンを貰いかぶりつきながら、裏手に案内された。
「これに蜂蜜酒が入っているんですねー」
目の前の木の樽、テレビなどで見るワインが入った樽より小さめの物が4つほど置かれ、1樽300,000ログとの事4樽全て買う事に決めた。
「これは入ったばかりの蜂蜜です良ければ少しどうぞ」
木匙に垂らした蜂蜜を試食する、粘度がたかく喉にくる甘さは何かに付けたり酒で割ったりするのに向いていた。
「飴とかにすると喉に良さそうですね」
「確かにこのままだと濃すぎる」
「酒やお茶や料理に入れたりしますね、飴とは何ですか?」
「そうだ、水飴を使ったお菓子を考えたんで…チグリス氷出来る?」
「…ん」
台を借りチグリスに氷を長方形にしたものを魔法で出して作って貰い、火魔法で窪みを空ける。
「氷ですか贅沢な使い方ですね…、私も氷魔法は使えますがこういう使い方は初めてです」
店主が関心したように2人の工程を見つめる、大河は露店の商品を眺めて気になった物を後でまとめて買う事にした。
「この窪みに切った果物を置いて…太めの串を置いて水飴を注いで固めれば完成です」
「こ、これは美しい!宝石のようですね!」
「これを私の故郷に伝えても良いですか!?」
「いいですよー」
「この水飴、俺達も店をやるとき商品に取り入れるつもりだがそれでも良ければ…その代わり」
「はい!何でしょう!?」
「水飴を定期的にこちらに卸して欲しい、多少は値引きも…」
大河がニヤリと笑う、店主が一歩下がるが分かりましたと了承する。
「どうも、ならもう1つサービスで教える」
手のひらサイズの魔石の上に陶器の取ってが付いた小鍋を置き、水飴を入れ焦がさないようにヘラでかき混ぜる、沸騰手前で蜂蜜を入れ更に焦がさないように混ぜていく。
「とにかく焦がさないようにするのが大事だ、この変わった道具何処で売っているんだ?」
「私は薬草も簡単な物ですが煎じたりしますので、この道具は全て商業ギルドか薬屋などで売っています」
「そうか、こんなものかな。混ざったら清潔な板…でいいかの上に匙ですくって置いていく。固めたら完成だが、風魔法で乾燥させるか。できたぞ」
「た、食べてみても良いですか?」
美形な店主の眼がギラギラしている、さっさとチグリスが何個も食べているので慌てて口に放り込んだ。
「んぅー蜂蜜の風味がまろやかになって…口の中で少しずつ溶けていきますぅ」
美形な冷静そうな人物が崩れる、顔もついでに崩れていた。
「風邪とか喉がイガイガするとき舐めるといいですよねー」
「初めて作ったが、こんな感じか」
「私の国でこれもいいですか!?もし店をやる場合はこれも作りますか!?」
「まだ分からないがな」
「素晴らしい!水飴と蜂蜜も特別に卸値で売りますから!」
「へぇ、それは良いな」
「これからもよろしくお願いします!申し遅れましたが私は、クローダーと申します」
「大河だ、また来る」
「俺は詠斗といいます」
「チグリス」
「お店出来たら教えて下さい!行きますから」
「ありがとうございます」
酒と蜂蜜の代金を支払い収納袋(偽装)に入れて、店主に見送られ店を後にし人気のない場所で転移魔法を使って《クイナト》へ。
「お待ちしていました、どうぞこちらへ」
商業ギルドの区画に置いたテントから出てギルドの中に入れば正面に狐目の男、《クイナト》商業ギルドマスター兼ズィーガー商会副支配人ユナイドがニコニコしながら出迎えてくれた。
2階最奥の応接室に案内され、ソファに座る。
「今から鉱物ダンジョンと肉ダンジョンに向かう」
「承知しました、今鉱物ダンジョンの3階層まで冒険者がおります。肉ダンジョンは4階層まで冒険者がおります、それ以降は無人ですので存分にドロップ品が取り放題ですね」
「わかった、売りにくる」
「それとですね、もしお知り合いに魔王クラス・・・・・以上のお知り合いがいましたら、渡したい物があるのですが…」
「分かった」
「チグリス?」
その言葉に最初に反応したのは意外な事にチグリスだった、チグリスがショルダーバッグからスマホを取り出し電話をかける。
「俺…渡したい物があるらしい来てくれ…」
「おや、変わった物をお持ちで…」
スマホに反応するユナイドにどう言うべきか大河が迷う前に、黒い蝶の群れが床から現れ人の形…千眼魔王に成る。
「何かあったのか?」
現れた千眼魔王は詠斗のパーカーとジーンズに三つ編みという姿だが、人離れした容姿は何一つ損なわれていなかった。
「これはこれは、わたしは狐人族のユナイドと申します…失礼ですが序列をお聞きしても?」
「序列第3位千眼魔王…王族か…」
「…その通りで、大分昔に追われた身です」
千眼もソファに座る、4席しかないので詠斗と一緒に座った。
「もし…魔王に会う機会があればこれを渡そうと思いまして…」
ニコニコとした表情が真剣な面差しに代わり、懐から白い布に包まれた物を2つテーブルに置いた。
「こちらはかつて千華の魔王様から頂いた種と歌を入れたウルクラ貝です…お持ちください」
ナイルが持っていた種と同じ物が数粒と、真珠の様な光沢を放つ巻貝を千眼が受け取りの先を捩じると声…歌が流れて来た、心地の良い優しく和らかな声、聞いたこともないメロディーに乗せた歌はいつまでも聞いていたい気持ちにさせた。
「初めて聞いた…」
千眼がそう囁く少し口元が緩む、チグリスは無表情にその光景を眺めていた。
「国を追われた暫く放浪していた時に逢いました、あの白い花の化身の様に美しい方でたしたね。貴方も夜の闇の化身のように美しいですが…」
「千華の方が美人だな」
思い出に浸って気障ったらしい事を言うユナイドに、さらりとチグリスが水を差す。
「確かに…花と貝の礼がしたい」
特に怒りもせず同意する千眼に黙って話を聞いていた大河と詠斗は、どれほどの美形なのか気なった。
「では、良ければ友人になってくれませんか?」
「分かった、スマホを1台欲しい。良いか?」
「ああ…」
大河に確認を取り増えたスマホを初期化して渡すと、千眼が蝶を入れて手渡す。
「これは先ほどの…」
「使い方の説明をする…」
ユナイドが受け取り、使い方を説明するとすんなり受け入れ、使い方もすぐにマスターすることが出来た。
「これはすごい…こんな物を頂いても?」
「千眼の友人なら良いだろう、何かあれば俺達の連絡先も入っているから連絡すればいい。
「承知しました、皆様に全面的に協力させて頂きます」
「ありがとうございます」
「では、ダンジョンへ行こうか」
「行ってらっしゃいませ、お帰りをお待ちしております」
「行ってきます」
詠斗が応えその場のマッピングで位置を確認し、鉱物ダンジョンへと転移する。
「種と歌…ようやく渡す事が出来ましたね。教えてくれるとは思いませんでしたが思い切って聞いて正解…。生きているうちにもう一度貴方に会うことが出来ますかね…」
まだ仕事は残っている、業務が終われば少しこのスマートフォンなる物を試してみようかと思う、そう何も起こらなければ…。
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元の世界に帰してくれると思っていた京太郎だったが、その先は死の危険が蔓延る異世界の森だった。
そこで出会った瀕死の蜘蛛の魔物と遭遇し、運よくテイムすることに成功する。
大精霊のウンディーネなど、個性溢れすぎる尖った魔物たちをテイムしていく京太郎だが、自分が元の世界に帰るときにテイムした魔物たちのことや、突然降って湧いた様な強大な力や、伝説級のスキルの存在に葛藤していく。
持っている力に振り回されぬよう、京太郎自身も力に負けない精神力を鍛えようと決意していき、絶対に元の世界に帰ることを胸に、テイマーとして異世界を生き延びていく。
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