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第2部 スタートはゴール地点から 本が読みたければ稼がねば編
プロローグ 始まりは再び異世界から
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「では、これより、再び我々の世界アタラクシアの病を治癒する為の異界人を召喚する」
『異議なし』
「召喚する異界人は、計8人。《アタラクシア》の治癒の状態により順次行う、担う者 導く者 手を差し出す者 掬う者 与える者 変革する者 もたらす者 そして最後は…××××××を持って召喚を完了とする」
「召喚する異世界は地球」
「召喚する者は日本という場所に生きる者」
「今を生きる世界に未練がない者」
「《アタラクシア》で生きていける者」
「我々の勝手な都合で呼ぶには誠意を持って」
「誓いを」
「心と魂と肉体に」
「我らの出来る限りを以て」
「祈りと願いを」
「ここに示す」
「我ら13の神の誓いを契約とする」
最初に手を挙げた者から時計回りに、1人づつ右手を挙げ誓いを立て一周すると、中央の《アタラクシア》の雲の穴が1つゆっくりと塞がっていく。
「では、招こうこの《神ノ庭》に2番目の異界人 導く者を…」
神々の頭上に渦巻く雲、ゆっくりと白い空間を侵食し広がっていく。
カツカツ…深夜の高層ビルの人気のない廊下、警備員の男が1人懐中電灯を片手に持ち、見回りを行う。
決まった時間、決まった場所を見回る、予定調和の勤務、飽きが来ないのかと聞かれれば飽きたと答える位には勤務年数は長いが、旨味もある。
「ふぅ、後は納品だな」
待機場所兼事務所のソファに座り、腕時計の時刻は午前3時を指していた。
この仕事の旨味は、待機時間が多くその間も給金が発生し、建物から出なければ常識の範囲内で自由行動が許されている。
出勤前に購入した本の続きを読み始める、静かな空間自分以外誰もいないこの仕事は峯尾 大河みねお たいがにとっては最高の職場と言える。
納品が来る時間までの1時間、静かにページを捲る音がかすかに聞こえる。
「おはようございます」
「おはよう、ギリギリだぞ」
「すみません」
朝6時早番の上司と後輩が出社し、大河の勤務時間が終了する。
「お疲れ様です。先、失礼します」
「お疲れさん」
「峯尾さん、今度合コンあるんで来ませんか?」
「行くと思うか?」
「っすよねーすみません」
「お疲れ」
制服から私服に着替え、事務所から出ようとする所を後輩に絡まれ一蹴し職場を後にする。
「もったいないっすね。おれが峯尾さんの顔だったらモデルとか俳優とか顔で仕事するけどなー」
「何度も聞いた」
事務所の裏側の社員窓口の受付がもう間も無く始まる、それまでの時間上司は新聞紙を眺めながらいつもの後輩の話を聞き流す。
「しかし、この建物夜こわいっすよね。研修の時、夜勤峯尾さんとやった時おれずっと鳥肌立ちっぱなしだったっす。なんかこのビルいるんですよね」
「…無駄口は良いから、もうじき職員の方々が来るからしゃんとしろ」
この職場の夜勤は長く続かない、明確な理由はないが大河以外は皆すぐに辞めてしまう、本当は2~3人態勢で回すのが基本だが人がいない為、見回りと納品以外は自由にしてて良いからと無理して貰っている。
この上司もここの深夜勤務は勘弁して欲しい、何かいるのだ。
一度大河にそれを聞いたら『いますね、でも本は読めるから気にしないです』と心臓に毛が生えた答えが返って来て以降深夜は大河に任せている、変わった男だが仕事は出来る。
「はい」
人がゾロゾロやってくる、挨拶をしながら入館証の確認に追われた…。
「いらっしゃいませー」
自宅最寄り駅のコンビニに入る、疲れ切った中年の店員が出迎えてくれる、ここ最近馴染みの顔だった。
仕事終わりにいつも買う缶ビール2本と、切らしていた味噌ときゅうり(今のコンビニは生鮮野菜も売っていて便利)、3パック入りの豆腐を購入しレジに向かう。
「お釣りのお返しと、いまうちの店限定でくじやってます、1枚どうぞ」
目の下の隈が濃い店員が福引の箱を大河の前に出す、別に引かなくても良かったが1枚引いて中を開くと…。
「おめでとうございます、アメ1袋どうぞ」
果物のアメ大玉を1袋渡され店を出る食べないから明日職場にもっていこうかと考える、大して欲しくも無い物が当たる家族がいたら渡せる相手もいたのかもしれない、くじ運は良くも悪くも無い、恋人や家族もいない。
両親は5年前に交通事故で亡くなり兄弟もいない、ボロい築50年の一軒家を借りて大量の本と暮らしている。
唯一の楽しみは読書、仕事帰りの日にシャワーを浴びた後1時間程ランニングをこなし後は読書に費やしている。
晴耕雨読とまではいかないが、本と必要最低限の金と住処があれば良いと思う、本があればそう何処でもいいのだ。
駅から徒歩30分築50年木造一軒家、本を大量に置きたいが為に借りた家、斜めになっている郵便受けから注文した本を取り出し、引き戸のカギを回し建付けの悪い戸を引いて中に入る。
薄暗い家北向きの庭、この家を借りるときに何度も不動産屋が確認する位だ、一軒家を借りるにしてはかなり安い家賃に文句はない。
靴を脱ごうと足元を見ると霧とももやとも言えない物が広がり宇宙空間のような穴が開いている、何だと思うとそのまま穴に吸い込まれゆっくり霧の様な靄が消えていった…。
『異議なし』
「召喚する異界人は、計8人。《アタラクシア》の治癒の状態により順次行う、担う者 導く者 手を差し出す者 掬う者 与える者 変革する者 もたらす者 そして最後は…××××××を持って召喚を完了とする」
「召喚する異世界は地球」
「召喚する者は日本という場所に生きる者」
「今を生きる世界に未練がない者」
「《アタラクシア》で生きていける者」
「我々の勝手な都合で呼ぶには誠意を持って」
「誓いを」
「心と魂と肉体に」
「我らの出来る限りを以て」
「祈りと願いを」
「ここに示す」
「我ら13の神の誓いを契約とする」
最初に手を挙げた者から時計回りに、1人づつ右手を挙げ誓いを立て一周すると、中央の《アタラクシア》の雲の穴が1つゆっくりと塞がっていく。
「では、招こうこの《神ノ庭》に2番目の異界人 導く者を…」
神々の頭上に渦巻く雲、ゆっくりと白い空間を侵食し広がっていく。
カツカツ…深夜の高層ビルの人気のない廊下、警備員の男が1人懐中電灯を片手に持ち、見回りを行う。
決まった時間、決まった場所を見回る、予定調和の勤務、飽きが来ないのかと聞かれれば飽きたと答える位には勤務年数は長いが、旨味もある。
「ふぅ、後は納品だな」
待機場所兼事務所のソファに座り、腕時計の時刻は午前3時を指していた。
この仕事の旨味は、待機時間が多くその間も給金が発生し、建物から出なければ常識の範囲内で自由行動が許されている。
出勤前に購入した本の続きを読み始める、静かな空間自分以外誰もいないこの仕事は峯尾 大河みねお たいがにとっては最高の職場と言える。
納品が来る時間までの1時間、静かにページを捲る音がかすかに聞こえる。
「おはようございます」
「おはよう、ギリギリだぞ」
「すみません」
朝6時早番の上司と後輩が出社し、大河の勤務時間が終了する。
「お疲れ様です。先、失礼します」
「お疲れさん」
「峯尾さん、今度合コンあるんで来ませんか?」
「行くと思うか?」
「っすよねーすみません」
「お疲れ」
制服から私服に着替え、事務所から出ようとする所を後輩に絡まれ一蹴し職場を後にする。
「もったいないっすね。おれが峯尾さんの顔だったらモデルとか俳優とか顔で仕事するけどなー」
「何度も聞いた」
事務所の裏側の社員窓口の受付がもう間も無く始まる、それまでの時間上司は新聞紙を眺めながらいつもの後輩の話を聞き流す。
「しかし、この建物夜こわいっすよね。研修の時、夜勤峯尾さんとやった時おれずっと鳥肌立ちっぱなしだったっす。なんかこのビルいるんですよね」
「…無駄口は良いから、もうじき職員の方々が来るからしゃんとしろ」
この職場の夜勤は長く続かない、明確な理由はないが大河以外は皆すぐに辞めてしまう、本当は2~3人態勢で回すのが基本だが人がいない為、見回りと納品以外は自由にしてて良いからと無理して貰っている。
この上司もここの深夜勤務は勘弁して欲しい、何かいるのだ。
一度大河にそれを聞いたら『いますね、でも本は読めるから気にしないです』と心臓に毛が生えた答えが返って来て以降深夜は大河に任せている、変わった男だが仕事は出来る。
「はい」
人がゾロゾロやってくる、挨拶をしながら入館証の確認に追われた…。
「いらっしゃいませー」
自宅最寄り駅のコンビニに入る、疲れ切った中年の店員が出迎えてくれる、ここ最近馴染みの顔だった。
仕事終わりにいつも買う缶ビール2本と、切らしていた味噌ときゅうり(今のコンビニは生鮮野菜も売っていて便利)、3パック入りの豆腐を購入しレジに向かう。
「お釣りのお返しと、いまうちの店限定でくじやってます、1枚どうぞ」
目の下の隈が濃い店員が福引の箱を大河の前に出す、別に引かなくても良かったが1枚引いて中を開くと…。
「おめでとうございます、アメ1袋どうぞ」
果物のアメ大玉を1袋渡され店を出る食べないから明日職場にもっていこうかと考える、大して欲しくも無い物が当たる家族がいたら渡せる相手もいたのかもしれない、くじ運は良くも悪くも無い、恋人や家族もいない。
両親は5年前に交通事故で亡くなり兄弟もいない、ボロい築50年の一軒家を借りて大量の本と暮らしている。
唯一の楽しみは読書、仕事帰りの日にシャワーを浴びた後1時間程ランニングをこなし後は読書に費やしている。
晴耕雨読とまではいかないが、本と必要最低限の金と住処があれば良いと思う、本があればそう何処でもいいのだ。
駅から徒歩30分築50年木造一軒家、本を大量に置きたいが為に借りた家、斜めになっている郵便受けから注文した本を取り出し、引き戸のカギを回し建付けの悪い戸を引いて中に入る。
薄暗い家北向きの庭、この家を借りるときに何度も不動産屋が確認する位だ、一軒家を借りるにしてはかなり安い家賃に文句はない。
靴を脱ごうと足元を見ると霧とももやとも言えない物が広がり宇宙空間のような穴が開いている、何だと思うとそのまま穴に吸い込まれゆっくり霧の様な靄が消えていった…。
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