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第一部 不毛の大地開拓 頑張ろう編
24 住人が増えました
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「いいんですか?」
臆病でいつも同種から馬鹿にされ除け者にされてきた、まさか自分の口からここにいさせて欲しいなど言葉が出た事に驚き、更にそれをすんなり受け入れた詠斗にも驚いた。
いつも怯えては泣いてばかりのナイルにとっては、驚くという事は滅多にない、今日はきっと…いや間違いなく忘れられない日になる。
「もちろん、神様達からもらった場所だけど、住みたい人がいるなら歓迎する!」
焚き火を囲い丸太の椅子と丸太のテーブル、まだまだ最低限以下な状態だが住人が増えた事は嬉しい。
「わ、私も畑とかが、頑張ります!」
「美味しい芋沢山作ろう!他にもね」
「はい!」
楽しいご飯、こんなに嬉しかったのは何時振りだろうか、日本にいた時は半額の弁当や惣菜やパンばかり食べていた。
明日はもっとご飯も、日常も楽しいだろう…。
一方…詠斗からの供え物が届いた《神の庭》はというと…、
食事があっというまになくなり、好みの話しになっていた。
「芋にはまよねーず!」
「いや、醤油一択ですね、万能ですこの調味料は」
「ふむ、塩だな」
「この葉がはいっている塩美味しいなのです」
「この果物の塩も刺し身に合います、完璧な調和がとれています」
「あー、もう、なくなっちまったー。美味い!」
あっという間に芋も、魚もなくなり、今キノコと果物を楽しんでいる。
「エビ…貝…焼き魚…食べたい…」
『………』
「道具がないですし、ないなかでも我々を想い用意してくれているんです、感謝せねば」
食後のチョコレートを追加し、余韻に皆で浸る。
「今回はあの臆病者のドラゴン、ナイルが住人になった事も祝わねば」
「そして人々に知恵を授けた事も」
「全く欲がないやつだよなぁ」
「彼の良い所です」
「では、今回はポイントとなべという調理道具を祝いとして贈る事にする」
『異議なし』
それからまだまだ、話しは尽きない、美味しい物は人に幸福をもたらす、それは神々も変わらないのかもしれない…。
「ここがテントというものの中ですか…」
食事の後片付けを済ませ、転移魔法でテントの中へと2人で転移行う。
2人も転移出来るかどうか試したら上手くいったが、本来1人でも転移するのに相当な魔力が必要らしい、2人なら尚魔法使いを何人も用意してそれも短い距離しか転移出来ないらしい、魔力を無限に使える詠斗だからこそ出来るものらしい。
「私達ドラゴンは翼を持ち、空の支配者とも謂われています。転移など移動する魔法を持たない代わりに早空駆ける事が出来ます」
ナイルが転移魔法を体験し、詠斗の膨大な魔力に驚くが異界人ならと納得する。
「へぇーカッコいいー」
「え、い、いやぁそんなぁ」
褒められたりなど滅多にないナイルが、照れ臭そうに笑う。
「ナイルさんも、この中に魔力を流して下さい、俺がいない時も入れるように」
「はい、分かりました」
「じゃ、シャワー浴びて寝る準備をしよう服脱いで」
「しゃわぁ?服を脱ぐ?」
「一緒にやりながら説明しますね。ついでにおれも洗濯するから一緒にナイルさんの服も洗濯しよう」
「…」
「これがしゃわぁというものなんですね、気持ちいいです、この泡も匂いが凄くいい」
お互い産まれたままの姿になり、シャワーの説明とシャンプーリンス石鹸の使い方もレクチャーする。
「浄化魔法でもいんだけど、さっぱりすっきりしないから…」
頭上にお湯の塊を浮かばせ必要な時に降り注ぐように調整する、ナイルも詠斗の見様見真似で髪や体を洗っていく。
「私達は水浴び位しかしないので新鮮です、気持ちいい」
「でしょう」
体を風魔法で乾かし、濡れた地面は自動清掃で綺麗にしたらパジャマ代わりのシャツと替えのズボンを渡す。
洗濯して乾かした物を着てもいいのかもしれないが、寝る時はラフな姿の方が楽。
「この服変わってますが、とても楽です」
詠斗もナイルも体型はそんなに変わらない、シャツもスボンも大きめ位がちょうど良かった。
因みにシャツは2枚千円のニートばんざい(ナイル着用)と書かれているものとしゃちく(詠斗着用)と書かれたワゴンの投げ売りのものだった。
スボンはナイルにあげたので、増えた分を詠斗が履いている。
「じゃ、布団を敷くね。明日ナイルさんの分を買うから今は一緒でいいよね?大きめだから2人いけると思う」
「ふとん?」
収納から敷布と掛布を出して敷いて、寝床を整える。
「わあ、ふかふかしてます!」
「これ、気持ちいいんですよ」
早速中に潜り込むとナイルも真似をして潜り込む、気持ちのよい寝心地にゆっくりと目を閉じていく。
「おやすみ、ナイルさん」
「おやすみなさい、詠斗さん…」
おやすみなんて最後に言ったのはいつだったか思い出せない、言うのも言われるのも嬉しかった…。
悲しい夢を見た、悲しくて辛くてでももう夢でしか会えない者の夢を見る。
父に連れられ行っていた、あの沢山の花が咲く場所。
行くと優しく向かえてくれるあの方の、儚げな微笑み。
そこに行くのが嬉しくて、こっそりと独りで行っていた。
弱虫だから独りでどこかへ行ったりはしない、でもあの場所は特別だった。
だってちっとも怖くない、行けば手を広げて待っていてくれる。
そんな、そんな幸福な場所を奪っていった人間は怖い。
あの方は何もしてない、人間に何もしていない、けれど人間はあの方を奪っていった。
あの方だけでなく、あの方の花を蹂躙し根こそぎ奪っていった。
赦せないのは、何も出来ず怯えていた自分。
そして、凍え凍てつく瞳をしたあの男。
忘れない忘れられる訳がない、だから人が怖い…。
「はっ…」
息が詰まる悪夢で目が醒めた、ナイルはそっと隣で寝息をたてる青年の横顔を眺めた。
「貴方は怖くない…」
優しい人…分かっている優しい人達だっている事を、彼らの時間は短く、あの男ももう何処にもいない。
「……」
もう1度目を閉じる、また悪夢を見てもいいと思う。
あの方に逢える、起きたら詠斗がいる、だから悪夢を見ても怖くなかった。
臆病でいつも同種から馬鹿にされ除け者にされてきた、まさか自分の口からここにいさせて欲しいなど言葉が出た事に驚き、更にそれをすんなり受け入れた詠斗にも驚いた。
いつも怯えては泣いてばかりのナイルにとっては、驚くという事は滅多にない、今日はきっと…いや間違いなく忘れられない日になる。
「もちろん、神様達からもらった場所だけど、住みたい人がいるなら歓迎する!」
焚き火を囲い丸太の椅子と丸太のテーブル、まだまだ最低限以下な状態だが住人が増えた事は嬉しい。
「わ、私も畑とかが、頑張ります!」
「美味しい芋沢山作ろう!他にもね」
「はい!」
楽しいご飯、こんなに嬉しかったのは何時振りだろうか、日本にいた時は半額の弁当や惣菜やパンばかり食べていた。
明日はもっとご飯も、日常も楽しいだろう…。
一方…詠斗からの供え物が届いた《神の庭》はというと…、
食事があっというまになくなり、好みの話しになっていた。
「芋にはまよねーず!」
「いや、醤油一択ですね、万能ですこの調味料は」
「ふむ、塩だな」
「この葉がはいっている塩美味しいなのです」
「この果物の塩も刺し身に合います、完璧な調和がとれています」
「あー、もう、なくなっちまったー。美味い!」
あっという間に芋も、魚もなくなり、今キノコと果物を楽しんでいる。
「エビ…貝…焼き魚…食べたい…」
『………』
「道具がないですし、ないなかでも我々を想い用意してくれているんです、感謝せねば」
食後のチョコレートを追加し、余韻に皆で浸る。
「今回はあの臆病者のドラゴン、ナイルが住人になった事も祝わねば」
「そして人々に知恵を授けた事も」
「全く欲がないやつだよなぁ」
「彼の良い所です」
「では、今回はポイントとなべという調理道具を祝いとして贈る事にする」
『異議なし』
それからまだまだ、話しは尽きない、美味しい物は人に幸福をもたらす、それは神々も変わらないのかもしれない…。
「ここがテントというものの中ですか…」
食事の後片付けを済ませ、転移魔法でテントの中へと2人で転移行う。
2人も転移出来るかどうか試したら上手くいったが、本来1人でも転移するのに相当な魔力が必要らしい、2人なら尚魔法使いを何人も用意してそれも短い距離しか転移出来ないらしい、魔力を無限に使える詠斗だからこそ出来るものらしい。
「私達ドラゴンは翼を持ち、空の支配者とも謂われています。転移など移動する魔法を持たない代わりに早空駆ける事が出来ます」
ナイルが転移魔法を体験し、詠斗の膨大な魔力に驚くが異界人ならと納得する。
「へぇーカッコいいー」
「え、い、いやぁそんなぁ」
褒められたりなど滅多にないナイルが、照れ臭そうに笑う。
「ナイルさんも、この中に魔力を流して下さい、俺がいない時も入れるように」
「はい、分かりました」
「じゃ、シャワー浴びて寝る準備をしよう服脱いで」
「しゃわぁ?服を脱ぐ?」
「一緒にやりながら説明しますね。ついでにおれも洗濯するから一緒にナイルさんの服も洗濯しよう」
「…」
「これがしゃわぁというものなんですね、気持ちいいです、この泡も匂いが凄くいい」
お互い産まれたままの姿になり、シャワーの説明とシャンプーリンス石鹸の使い方もレクチャーする。
「浄化魔法でもいんだけど、さっぱりすっきりしないから…」
頭上にお湯の塊を浮かばせ必要な時に降り注ぐように調整する、ナイルも詠斗の見様見真似で髪や体を洗っていく。
「私達は水浴び位しかしないので新鮮です、気持ちいい」
「でしょう」
体を風魔法で乾かし、濡れた地面は自動清掃で綺麗にしたらパジャマ代わりのシャツと替えのズボンを渡す。
洗濯して乾かした物を着てもいいのかもしれないが、寝る時はラフな姿の方が楽。
「この服変わってますが、とても楽です」
詠斗もナイルも体型はそんなに変わらない、シャツもスボンも大きめ位がちょうど良かった。
因みにシャツは2枚千円のニートばんざい(ナイル着用)と書かれているものとしゃちく(詠斗着用)と書かれたワゴンの投げ売りのものだった。
スボンはナイルにあげたので、増えた分を詠斗が履いている。
「じゃ、布団を敷くね。明日ナイルさんの分を買うから今は一緒でいいよね?大きめだから2人いけると思う」
「ふとん?」
収納から敷布と掛布を出して敷いて、寝床を整える。
「わあ、ふかふかしてます!」
「これ、気持ちいいんですよ」
早速中に潜り込むとナイルも真似をして潜り込む、気持ちのよい寝心地にゆっくりと目を閉じていく。
「おやすみ、ナイルさん」
「おやすみなさい、詠斗さん…」
おやすみなんて最後に言ったのはいつだったか思い出せない、言うのも言われるのも嬉しかった…。
悲しい夢を見た、悲しくて辛くてでももう夢でしか会えない者の夢を見る。
父に連れられ行っていた、あの沢山の花が咲く場所。
行くと優しく向かえてくれるあの方の、儚げな微笑み。
そこに行くのが嬉しくて、こっそりと独りで行っていた。
弱虫だから独りでどこかへ行ったりはしない、でもあの場所は特別だった。
だってちっとも怖くない、行けば手を広げて待っていてくれる。
そんな、そんな幸福な場所を奪っていった人間は怖い。
あの方は何もしてない、人間に何もしていない、けれど人間はあの方を奪っていった。
あの方だけでなく、あの方の花を蹂躙し根こそぎ奪っていった。
赦せないのは、何も出来ず怯えていた自分。
そして、凍え凍てつく瞳をしたあの男。
忘れない忘れられる訳がない、だから人が怖い…。
「はっ…」
息が詰まる悪夢で目が醒めた、ナイルはそっと隣で寝息をたてる青年の横顔を眺めた。
「貴方は怖くない…」
優しい人…分かっている優しい人達だっている事を、彼らの時間は短く、あの男ももう何処にもいない。
「……」
もう1度目を閉じる、また悪夢を見てもいいと思う。
あの方に逢える、起きたら詠斗がいる、だから悪夢を見ても怖くなかった。
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