あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

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第一部 不毛の大地開拓 頑張ろう編

23 ドラゴンさんいらっしゃーい

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先ほど神々から《アタラクシア》に異界人を召喚したと、神々からの神託が聖獣、神獣、ドラゴン等高位生物に降りた。

『神々も重い腰を漸く上げたか…』

全てのドラゴンの頂点に立つ白銀のドラゴンの黄金の眼が細く鋭く輝く、空を仰げば薄い雲の先に輝く白い月と13の星々。

『神々からの神託によると《アタラクシア》の治癒の為に召喚した者、敬意と誠意を持つようにとの事…』

『挨拶位はせねばならんな』

口々にドラゴン達が言葉を交わす、長く生き過ぎた者達娯楽も少ないこの世界に異界人というのは興味の尽きない対象でもある。

『我が息子の婚礼も控えておる…うむ歓迎の証として婚礼に招待をすれば神々への顔も立つ』

『成程、長よ良きお考えにございますな』

つまりは異界人を見てみたいという好奇心を、我が子の結婚にかこつけて満たそうとしているのが伝わってくる。

『では、ナイルお前が挨拶をしに《不毛の地》へ向かい婚礼に招待せよ』

『ぇぇ何で私が…』

隅の方で小さく目立たないようにしていた、藍色のドラゴンが名指しされ身を竦ませる。

『息子よ、行ってこい。お前は誇り高きドラゴンのくせに軟弱過ぎるのだ!長からの名指しの命しかと受け止めぃ』

『ひぃ!や、やです!人間怖いい!』

翼で顔を覆いガクブルと震える様は、最強種のドラゴンには到底思えない姿だった。

『…~ッ!この馬鹿者ォ!さっさといけ!』

『ひぃ~』

ナイルの父親のドラゴンが口からブレスを発動させる前に、半泣きで飛び出していく。

『長、申し訳ございませぬ…』

『構わん。しかし惜しいのぉ、ナイルの性格がもう少し勇敢であれば、群れの1つも任せられるのだが』

『恐れ多い事です、甘やかしすぎてしまいました』

弱虫なドラゴンで臆病者のナイルと呼ばれている我が子、異界人との関りで少しは変化が起こるといいと願う。



『ふぐ…もう家出しよう…でも行くとこないし…パパひどいよぉ』

空を高速で飛びながら、《不毛の地》に向かっている。

風で涙が流れていく、《不毛の地》は命が芽吹かない土地とされ恐れられ忌み嫌われていた。

そんな場所を異界人が生き返らせようとしている、《アタラクシア》の治癒の為に召喚した人間がそこまでしてくれる、神々は深く感謝し敬意を払っている、ナイルには理解出来ない、見知らぬ場所でたった1人で枯れた大地を生き返らせようとする等臆病者なナイルには…。

『《不毛の為》…本当着いちゃった…あれ、なんかとても美味しそうな匂い…』

ドラゴンの翼ならあっという間に着いた《不毛の地》から、とても似つかわしくない食欲をそそる匂いが漂ってくる。

『…ゴク、ちょ、ちょっとだけ見に行って帰ろう、だって怖いし…』

煙が見え人影が見えてくると、一旦大地に降り立ち目立たないように人影の所へ向かった。



「よし、即席のテーブルと椅子完成!テーブルに料理をならべていこう」

丸太のテーブルは武骨だが味があり、完成度に満足感が湧く。

「芋や、キノコも良さそうだし、木皿に盛り付けて…ん?」

木の陰から何やら人が動いてこちらに少しずつ近づいてきている…、恐る恐るこちらの様子を伺いながら、敵意などは感じない。

「…人?鑑定してみようか」

鑑定:ドラゴン:…強い…? 臆病者 という鑑定のなんとも言えない表示がでる。

「え!?ドラゴン!ファンタジー!えっ、人になれるの?」

ファンタジーの定番といえばドラゴン、知識の中にドラゴンが存在しているのは把握しているが、まさか来てくれる…?とは思ってなかった。

大きい声に相手が驚き後ほの木の陰に下がってしまうが、チラチラこちらを見ている。

「あのぉードラゴン…さん…ですよね?これから飯にするんですけどよければ…」

「えっ…」

木の陰から恐る恐る出て来るのは、藍色の髪と眼をした整った容貌の青年だった。

「こんにちわー」

「ひっ、ど、どうも」

「魚とかキノコとか芋有りますけど、食べますか?」

「い、いも…。この匂いって」

グルルルーナイルのお腹の音が盛大に聞こえる、顔を真っ赤にして蹲るナイルに詠斗は笑顔になる、ドラゴンも人も一緒かと。

「俺、時永 詠斗っていいます」

「わ、私はナイルといいます」

「よろしく、ナイルさん」

詠斗が手を差し出すナイルが手を取る、《不毛の地》で人とドラゴンが手を取り合った歴史的瞬間だが、今まだ2人とも知らない。



「この、芋を焼くとこんなに美味しくなるんですね…」

ナイルもテーブルに出来た料理を並べて、神々に供える手伝いをする。

何せ13名分、お皿もやコップや何かでテーブルが隙間なく埋まる、マヨネーズを一個と買った塩を小皿に起き、足りないだろうがほうじ茶も1本載せ海老と貝は次回に回し、「神様達どうぞ、あ、お皿とコップは返して下さい」と祈りを込めると目の前から無くなる。

今度は自分達の番、ナイルは肉、魚は食べないと言うので芋やキノコと果物を多めに出す。

「このまよねーずもコクがあってすごく美味しい、いつもは生で食べてました、塩もこの醤油も美味しい!」

ナイルが目を輝かせ、購入して焼いた残りの芋を全て平らげた。

「気にいって貰えて良かった、《不毛の地》でも芋を植え始めたんだ」

「すごい、あの大地で…決めました!詠斗さん私をここへ置いて下さい!」

「ん?いいよ」

食事を囲みすっかり意気投合した2人、ナイルの一世一代の決心はあっさり受け入れられ、こうして入居者が1名増えたのであった。
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