あなたは異世界に行ったら何をします?~良いことしてポイント稼いで気ままに生きていこう~

深楽朱夜

文字の大きさ
上 下
18 / 867
第一部 不毛の大地開拓 頑張ろう編

17 テントとエコバッグと買い物

しおりを挟む
「こちらはテントです」

「え?これが…」

「そうなんですが、このテント実はある意味失敗作と言いますか…失敗作をお渡しするのは気が引けるんですが、我が商会で結構な予算をつぎ込んで作った物なのでよければ…」

「はぁ…」

ズィーガーの歯切れの悪い言葉に鑑定をしてみる 大容量テント:この大きさのテントを長時間維持できる魔力を持つ者がいない為 長い間埃を被っていた この機会に是非使ってみては ちなみにすごく高価 とある魔力底なしの自分にとってはかなり便利な代物だが裏を感じずにいられないが流石に何時までも洞窟で暮らし続けるのも…そもそもズィーガーはこの価値も広さも言ってない、彼なりの気遣いなのかもしれない、ならここはありがたく貰っておこうと腹を決めた。

「ありがとうございます、頂きます」

「どうぞどうぞ、テントはこの袋から取り出し魔力を注げば勝手に組み立てられますので。後はこちらを…」

脇に置いてある収納袋を詠斗に渡す、詠斗は首を傾げマジマジと収納袋を眺めた。

「そちらは収納袋に偽装した只の袋です、実際の収納袋は我が商会で貸し出しをしたりもしています。その袋を使って買い物をすればエイトさんが収納魔法を持っているとは思わないでしょう、それに入れた振りをすれば買い物も大分楽になりますな」

「あ…ありがとうございます!」

そこまで考えて提案してくれるとは、流石は商業ギルドのマスターであり商会のトップにいるだけはある、少ない情報で最大限の利益を獲得する姿勢は詠斗にとっても勉強になる。

「それでですね1つお願いが…ありましてな」

「はい、俺に出来ることがあれば」

「エイトさんがお持ちのそのカバンを是非わが商会で売り出したくてですな」

エイトの脇に置かれたオマケで貰った布のエコバッグを手に取り、ズィーガーに渡す。

「これは…軽くて手触りも良くこの絵も神秘的で美しい…」

しげしげとじっくりエコバッグを眺め、感想を伝えるズィーガーの円らな目はまさに歴戦の商人と呼ばれているものだろう。

「型をとって我が商会の職人に作らせても?勿論売れた分の利益は…」

「どうぞー利益は俺はいらないです。充分テントとこの袋で頂きましたから…」

「エイトさんは商売人に向いてないですぞ、もっとガツガツこないといけませんな。では今職人を呼んでも?」

「はい、どうぞ」

「少しお待ちください」

いそいそ場を後にするそれを見送り、今日のこの後の予定を考えているとすぐにノックされズィーガーの後ろに線の細い男が入ってくる。

「彼は我が商会が誇る制作部の主任を任している…」

「ゴーテンと申します、お見知りおきを…エイト殿」

神経質そうの面差しに方眼鏡を掛けたゴーテンが深々と頭を下げる、詠斗も立ち上がり頭を下げた。

ズィーガーがお茶の追加を土の陶器で出来たピッチャーの様な物で注いで、ゴーテンの分まで用意する。

「会長それでは早速…」

「これをどうぞー」

「こ、これは…」

詠斗からエコバッグを受け取り固まってしまう、雷に打たれたようなと言うべき衝撃を受けている感じだった。

「あのー」

「大丈夫ですよ放っておいて。お茶をどうぞ、茶菓子もお持ちしました」

気の皿に置かれたクッキーの様な物を食べてみる、木の実がふんだんに使われざくざくとした食感が詠斗好みの味で何枚も食べてしまう、お茶もさっきとは違う香りがし夢中になってしまう。

「はっ、私とした事が…エイト殿このカバンを我が商会で販売しても良いんですね!」

「ふ、ふぁい…」

ゴーテンの迫力に押され気味になる、紙とペンと平たい木の棒のような定規らしきものを使い物凄い速さでエコバックの図面を描き込んでいく。

「うあ…すご」

「こんな完璧な縫い目など見た事はないですな、人が縫った物とは思えません。ですがこれに近い物でしたら作り上げられます。エイト殿ご意見を頂戴したいですな」

「いや…これでエコバッグ作れるし色々なバッグにも応用が…あ、外や内側にポケットがあれば嬉しいです」

「これは“エコバッグ”というものなのですね、してポケットとは?」

「ポケットは別に布地を用意して、細かい物を分けられるように…」

「なるほど…これは!詠斗殿明日もいらしてください!今日中に試作を作ります!」

「わ、分かりました。楽しみにしてます。俺はそろそろ」

「長い時間お付き合い頂きありがとうございます、見送らせて頂きますので参りましょう」

部屋を出てズィーガーとゴーテンに見送られ、次は市場に向かう、その間際にさっきの茶菓子を葉に包んだものを土産に渡され、頭を下げて商業ギルドを後にした。



「ズィーガー様、彼は神々が遣わした使者なのでしょうか?あの知識は一体…」

「ふふ、かもしれんな。だが過ぎた好奇は時に毒となる、深淵を覗いても1ログの得にもならんだろう。さて、私はギョロリの卸し作業やらで忙しい」

「私も急いで作業場に戻らないとなりません」

「新しい風が吹きそうだ…忙しくなる」

詠斗の姿が見えなくなるまで見送り、それぞれの作業へと戻った…。



「こごが市場かあー活気あるなぁー」

露天と人がひしめき合う様は、東京上野の某横丁を思い出す。

「さて、欲しい物見つかるかな」

お金もしっかり稼いできた、多少の無駄遣いも今日は解禁し、いざ市場へと繰り出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界ソロ暮らし 田舎の家ごと山奥に転生したので、自由気ままなスローライフ始めました。

長尾 隆生
ファンタジー
【書籍情報】書籍3巻発売中ですのでよろしくお願いします。  女神様の手違いにより現世の輪廻転生から外され異世界に転生させられた田中拓海。  お詫びに貰った生産型スキル『緑の手』と『野菜の種』で異世界スローライフを目指したが、お腹が空いて、なにげなく食べた『種』の力によって女神様も予想しなかった力を知らずに手に入れてしまう。  のんびりスローライフを目指していた拓海だったが、『その地には居るはずがない魔物』に襲われた少女を助けた事でその計画の歯車は狂っていく。   ドワーフ、エルフ、獣人、人間族……そして竜族。  拓海は立ちはだかるその壁を拳一つでぶち壊し、理想のスローライフを目指すのだった。  中二心溢れる剣と魔法の世界で、徒手空拳のみで戦う男の成り上がりファンタジー開幕。 旧題:チートの種~知らない間に異世界最強になってスローライフ~

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~

かずきりり
ファンタジー
望んで異世界へと来たわけではない。 望んで召喚などしたわけでもない。 ただ、落ちただけ。 異世界から落ちて来た落ち人。 それは人知を超えた神力を体内に宿し、神からの「贈り人」とされる。 望まれていないけれど、偶々手に入る力を国は欲する。 だからこそ、より強い力を持つ者に聖女という称号を渡すわけだけれど…… 中に男が混じっている!? 帰りたいと、それだけを望む者も居る。 護衛騎士という名の監視もつけられて……  でも、私はもう大切な人は作らない。  どうせ、無くしてしまうのだから。 異世界に落ちた五人。 五人が五人共、色々な思わくもあり…… だけれど、私はただ流れに流され……

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

世界最強で始める異世界生活〜最強とは頼んだけど、災害レベルまでとは言ってない!〜

ワキヤク
ファンタジー
 その日、春埼暁人は死んだ。トラックに轢かれかけた子供を庇ったのが原因だった。  そんな彼の自己犠牲精神は世界を創造し、見守る『創造神』の心を動かす。  創造神の力で剣と魔法の世界へと転生を果たした暁人。本人の『願い』と創造神の『粋な計らい』の影響で凄まじい力を手にしたが、彼の力は世界を救うどころか世界を滅ぼしかねないものだった。  普通に歩いても地割れが起き、彼が戦おうものなら瞬く間にその場所は更地と化す。  魔法もスキルも無効化吸収し、自分のものにもできる。  まさしく『最強』としての力を得た暁人だが、等の本人からすれば手に余る力だった。  制御の難しいその力のせいで、文字通り『歩く災害』となった暁人。彼は平穏な異世界生活を送ることができるのか……。  これは、やがてその世界で最強の英雄と呼ばれる男の物語。

処理中です...