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外伝・出来損ないの魔人カロとロカの旅 Ⅱ味のないスープと固いパン

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「……さ、出来たよ。今日も森のスープと固いパン…はスープに浸して…木の実と果物…はぁ」
「あーい」
家…洞窟に戻り外で熾した火の上に置いた手製の台に鍋を置いて味がほぼ無いスープを掻き混ぜた。
カロは火魔法が使えないので乾燥した枯葉と木を纏め火打ち石を使う、火魔法があれば良かったと思うが水魔法があるだけマシと言い聞かせ、出来たスープを木の椀に注いで冷まして固いパンを千切って柔らかく…はあまりなっていないので匙で潰してロカが食べやすくする。
「うん、なんとか柔らかくなった、どうぞ」
「あい!」
ロカは賢い子どもだった、1度教えれば大抵の身の回りの事は自分で出来る覚ましたスープの椀を受け取り嬉しそうに食べている、いつもと同じ食事もっと美味しい物を食べさせてやりたいが金は余りない…というか全然無い、その日暮らしだしこの街の依頼は報酬が安い。
塩も高い香辛料も高い、今迄味など気にした事も無かったが小さな子供には酷だ。
「あい」
「うん、おかわりだね」
完食した椀をカロに見せお代わりを追加で注いで冷まして渡し、ロカもスープを飲んで身体を満たす、食べなくても良いのだ、魔人の身体は便利だと思う。
そうして物寂しい夕食が終わり片づけを行う、ロカも洗った椀を拭いてくれそれが終わったら身体を拭いて洞窟の中の寝床でロカを寝かせる、夜は長い。

「…まずは大陸を出る為に海に向かう…馬と馬車…そして船…」
ロカが簡素な木を組んで作ったベッドで気持ちよさそうに寝ている、洞窟は暗いがカロはどんな闇の中でも見える眼を持つのでロカを起こさないように少し離れた場所でこれからの事をまた考える。
必要な物は必要な物を買う為の金、それと船を造る為の資材、海を越える程の物を作るには鉱物ダンジョンに向かい自分で材料を調達するのが良いだろう。
「船を買うなら造る方が早いと思う…、丁度海に行く手前に鉱物ダンジョンがある、その手前で馬車と馬を買ってその方が早く行けるから…それで良い明日はギルドへ行って薬草を売って保存食を買おう…」
これからの流れと明日やる事を頭の中で纏めて、明日の朝食の木の実や果物を探しに外へと出る、此処は静かな森だ、ロカを1人にしても魔獣も動物も人も此処には来ない、それに1度ロカは寝てしまうと起きない、カロはこの静寂を、此処を気に入り住んでいたのだ…。

「おはよう…朝ごはんにしようね」
「あい」
朝になりロカが起き出せば既に朝食を…と言っても昨日と同じようなスープ、パンは無いので果物と木の実だけだ。
「……はい」
冷ましたスープを渡す美味しそうに食べるロカ、もう少し料理が出来るようにならないとと思いつつ味の薄いスープを飲み干した。

「あのぉ本当にこの街でちゃうんですかぁ?」
「うん」
冒険者ギルドに昨日採取した薬草を買い取りに出す、昨日の受付嬢が今朝も恨めしそカロを見つめるがもう決めた事だ此処を明日出る、昨日はロカも手伝ってくれたので多めに薬草を出せば思ったよりも報酬が出て嬉しい。
背負子の中のロカはじっとしている、本当に良い子だ。
「はぁ、カロさん。採取は丁寧だしダンジョンに荷運びで行っても必ず全員連れて帰って来てくれるし…」
「どうも」
受付嬢はカウンターで溜息を吐く、カロは仕事だから当たり前の事をしているだけだ、採取は丁寧に採ればその分報酬を上乗せしてくれる、その逆ももちろん有る状態が良く無ければ減額もある、せっかく採ったのだちゃんとお金は貰いたい。
ダンジョンだってそうだこの街の奥にある何の特徴もないダンジョン、ドロップ品は魔石や武器等で全13階層、難易度もそこまで高くもない攻略者も多くいるダンジョンだ、荷運びの依頼でよく冒険者パーティと入るが誰か欠けたり全滅したら報酬は減額または支払われない、行くならちゃんとお金を支払って欲しいので、預かった荷物は収納袋(の振りをした収納空間)にしまいすぐに出す必要がある物は背負って入るし、要らない物や壊れた物はカロが引き取ったりもするそれも旨味だしきちんとこなせば報酬を上乗せしてくるのだだから仕事はきちんと行うのがカロのモットーだった。
冒険者ギルドを出て今日は買い物など回る所が多いので、少し急ぎ足で市場に向かった。

日持ちのする干し肉と野菜を悩んで買い、露店で値段交渉を行う、少しでも安く買いたい所だ。
「これとこれを買うから安くして欲しい」
「ったく仕方ねぇな、これとこれで400ログそれ以上はまけられない」
これが日常だ提示された金額ではまず絶対買わない、カロもそれに納得し代金を支払って他へ行く。
カロの収納空間には時間停止は無い、なので鮮度のある野菜や肉等は長時間入れておけないので、保存食を作る事も考える、長い旅になるので街や村に行けない間の食事も考える。
「よ、カロ」
「……芋…」
「お、どうだ今日はあんまり売れ行きが良くないからなまけるぞ」
「買う」
「じゃ、これでこの金額で」
「これが売れないと困るのはそっち、これ全部買うからこれで」
「う……う…よ、よしいいぞ」
「ありがとう」
朝が過ぎれば市場は閑散としてくるこの時間に来ると売れ残った物が安く買えるので、いつもカロはこの時間に来て値段交渉を行う、ねらい目は重い物や持ち帰りが面倒な物だ。
値段交渉が上手く行き日持ちのする芋を多めに安く買えて嬉しい。
少し先屋台のいつも買うパン屋の前に立ち止まる、固くて酸っぱいが安いパン今日はほぼ売り切れていてあまりない。
「丁度良いわ!カロさんパン買っていかない?もう今日の分これだけ、売れたら帰るからさ」
「分かった」
「今日はまけないよ!でも、今朝旦那が焼き加減間違えて少し焦げたパンも付けるよ、どう?」
この店の元気な女将と目が合う、買うつもりはなかったがそう言われてしまえばつい立ちどまった、女将が焦げたパンというのを見せて貰うと表面が少し焦げているばかりだ、少し取れば十分だろうと露店の売れ残りのパンを交渉して少し値引きして貰い、焦げたパンも葉に包んで貰った。
「へいらっしゃいって、あんたか。今日も小汚いカッコだな」
「この街の住民も同じようなもの」
「ま、言えてるわ、で今日は?」
「干し肉」
「あーいやぁ、干し肉は売り切れちまったんだが…」
「何かあった?」
「うちの息子に初めて干し肉作りをやらせたら失敗しちまってな、それならただでやるけどどうだ?」
「食べられるなら…」
「んーこれなんだよ試しに食べてみてくれ」
その先の露店の肉屋にも顔を出し軽口を叩く愛想の良い店主から出された息子が作った売り物にならない干し肉を見つめる普段の干し肉よりも濃い色、齧るとかなり塩辛い。
「濃い固い」
「そうなんだよ、タレの分量間違えてこんな辛くなっちまったんだ。スープに入れてって煮て食う位だからな。でもこの肉すごく固くてな、だからやるよ」
「ありがとう」
馴染の肉屋が葉に包んだ干し肉をくれる、今日はなんだか運が良い礼を言って店を後にした。
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