クラス転移した俺のスキルが【マスター◯―ション】だった件 (新版)

スイーツ阿修羅

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第六膜 見抜きと血煙の仮面舞踏会編

二百三射目「雨雲の彼方へ願う」

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「うるさいっ!!」

 ボクは、ありったけの声で叫んだ。
 喉に、小さな違和感がある。かすれた声しか出せかなった。

「……どいつもこいつも、勝手に上から決めつけんじゃねぇっ!
 ボクのことは、ボクが決めるっ……!」

 全身が熱かった。
 父さんが死んで、母さんが死んで、それでやっと、
 ボクはボクのすべきことがあるって、分かった気がするんだ。

「ボクの歌声には、人間の殺せる力がある……」

「アイリスっ……!」

「うるさいっ、いいから最後まで聞けっ!」

 歪んだ顔をしたフィリアに、またボクは怒鳴った。

「分かったよ!
 フィリアの言う通り、しばらく歌うのは我慢するさ、
 でも……!
 人間がまた攻めてきたら、その時は、みんなを守るためにボクは歌うよ。
 ボクの歌で、人間を殺して、
 ボクが獣族独立自治区を守る……」

 ボクは、フィリアを睨みつけた。

「……父さんと母さんが愛した、この土地を守れるなら、ボクは死んだって構わない……
 文句あるかよっ……」

「……分かった。……オレの負けだ。
 それがアイリスの意思なら、オレには止める資格はねぇよ……
 ……応急処置の方法と、【特殊スキル】を無くす方法……
 そして、【特殊スキル】を無くさずに症状を解決する方法……
 全部、研究しておいてやる」

 フィリアさんは、不本意そうにも、そう言った。
 
「そうか、ハハッ! フィリアも理解してくれたか!
 アイリスの歌声は、人間どもに報いる力になるんだっ!」

 獣族反乱軍の男が、険しい顔を解いて、はしゃいでいた。

 ★★★

 フィリアさんが、疲れたため息を吐きながら、部屋の外へと出ていった。
 反乱軍の男も、満足したように部屋をあとにする。
 
 レニ厶母さんと、ビアンカ母さん。
 ボクの血の繋がっていない母親が、心配そうにボクを見ていた。
 そして、もう一人、男の子が。

「アイリス……君は強いんだな。もう前を向いてる。
 ……父さんと母さんが死んだっていうのに」

 ボクと同い年くらいの男の子が、涙を流しながら、ボクを眺めていた。

「なんだよ。ぶっとばされたいのか? 何で泣いてんだよ!」

 馬鹿にしてるのか?
 
「少なくとも、俺には無理だった。
 俺のお父さんとお母さんが死んだとき、続いてお姉ちゃん二人が死んで一人になったとき、
 俺は生きることに絶望した。もう死にたいと思った……」

 男の子は、ボロボロと涙を流しながら、言葉を吐き出していた。
 それはもう、呆れるほどに号泣していた。
 
 あぁ、そうか、思い出した。
 こいつは、あのとき、ボクが歌うのを止めやがった野郎。
 いや、止めてくれたんだ。
 お陰でボクはまだ生きている。
 これから歌うことができる。
 
「……あ、ありがとうな。お前。
 ボクが歌うのを止めてくれただろ?
 あとごめん、同情するなとか言って、あのときは心のなかがぐちゃぐちゃだったんだ。
 お前は、ボクと境遇が似てる。家族がみんな死んじゃったから。
 ……ボクは、お前と仲良くなりたい……
 お前の名前、何ていうんだ?」

「マナトだ。俺はマナトだ」

 男の子は、マナトと名乗った。

「そっか、マナト」

「……俺はなぁ、アイリス。君の歌に感激したんだよ。
 あのとき、まるで、女神さまが歌っているみたいだった。
 俺のお姉ちゃんが、よく歌を歌っていたのを、思い出したんだ……」

「お前のお姉ちゃんと、一緒にするなよ……」

「あぁ! 君の歌はほんとうに綺麗だ。……透き通るような、心に染み渡るような、もう、何て言ったらいいんだろうな。言葉にならねぇよ……とにかく、この世のものとは思えないぐらい……」

「…………」

「……曇り空からは光がかかっているようで、ホントに天使が舞い降りたみたいな。周りのひとたちも涙を流して、君の姿を崇めていた……

「あぁもう、いいっ、分かった。分かったからっ!
 ……ありがとうっ! 嬉しいからっ……」

 あまりに褒められるものだから、ボクは恥ずかしくなった。
 ベットの向こう側に寝返りをうって、マナトの顔が見えない位置にいく。

「とにかく、俺はな。アイリスが誰かのために、歌っている歌が好きなんだよ。
 ……でも、誰かを呪う歌は、好きじゃない…… 痛々しくて、君が苦しそうで、
 とてもじゃないけど、二度と聞きたくない……」

「…………」

「……歌の力がなくても、アイリスの歌は素敵だよ。世界一の歌姫だ。
 だから、さ。自分勝手な願いだって、分かってるけど。
 俺は君に、誰かを殺す歌なんて、歌ってほしくない。
 アイリスは、優しい声の女の子だから……」

「……うるさい、分かってる。分かってるから……」

 ボクは、布団のなかにくるまった。

「眠れないから、一人きりにさせて」

 そんなお願いをした。

 ★★★

 マナトも、二人のお母さんも部屋を出ていって、ボク一人きりになる。
 部屋のランプも消えてしまって、窓の外はドス黒い空、
 薄暗い、寂しい部屋になってしまった。

 部屋の外から、小さな話し声や、物音が聞こえていた。
 そして、ザアザアとしたどしゃぶりの雨音が、絶えず耳に届いていた。

「……父さん、母さん……安らかにお眠りください。……白菊ともか様の元へ、帰りたまえ……」

 ボクは、小さな声で祈りをあげて、

「……二人の願いは、ボクが受け継ぐよ……
 獣族独立自地区は、ボクが守るから。
 ボクの歌で、獣族のみんなを、幸せにするんだ……」

 そう、静かに誓うのだった。




【第六膜 見抜きと血煙の仮面舞踏会編 完】

 ───────────

【あとがき】
 第二部の序章にあたる、第六膜。
 いかがだったでしょうか?
 お察しの通り、第二部はガロン王国が舞台です!
 「人質のクラスメイトを助けに行く旅!」
 「獣族のみんなの運命は如何に?」
 次回から、波乱の第七膜に突入です!
 万波行宗と浅尾和奈、そして〇〇の冒険をお楽しみに!

【【※※重要※※】】

 しばらく休載

 アルファポリス版は、しばらく『休載』となります!
 カクヨムとハーメルンで『先行投稿』をしているので、
 早く続きが読みたい方は、カクヨムかハーメルンに来てください!
 そちらで第七膜が完結し次第、また毎日更新をスタートします!
 更新通知を見逃さないよう、作品フォローを忘れずに!
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