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第六膜 見抜きと血煙の仮面舞踏会編
百七十九射目「浅尾和奈とストレッチ」
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ー万波行宗視点ー
「いてっ」
雷に打たれたような痛みが、右の太ももを突然襲った。
「いたたたたぁぁ……!」
肉が引き裂かれるような痛みに、俺は前方に倒れ込み、太ももを押さえて悶え苦む。
「えっ? 行宗! どうしたの?」
「太ももが……! 割れるようにッ……! いたいっ……!」
「それ、たぶん足攣ってるよ。えっと……まっ、ちょっとまってて……」
浅尾和奈が、俺の両肩を咄嗟に支えて、栗色のショートカットを揺らしながらあたふたしていた。
「【回復】……」
和奈の唇から唱えられる回復魔法、淡い光をまとった手のひらが患部の太ももへと重ねられ、
割れるような痛みはたちまちに癒やされ引いていった。
「どう? 治った」
「あぁバッチリだ。ありがとう和奈」
「あー良かったぁぁ。突然倒れちゃうから超焦ったよぉぉ」
和奈は安心した様子でため息を吐いた。
「それにしても、足を攣ったんか…… 毎朝トレーニングとランニングをしてるハズなのに、自信無くなるな……」
「まぁまぁ、ランニングとサッカーって全然動かす筋肉違うし ……特に初心者は力が入りすぎて、怪我しがちだから、そんなに落ち込むこともないと思うけど?」
和奈は清々しい表情で、倒れた俺に手を差し伸べてきた。
「和奈は元気そうだな。退院したばっかりなのに、疲れてないのか?」
「まさか! 疲れてるに決まってるじゃん。ほら見てよ。こんなに汗かいたの久しぶりだよ」
和奈は手に持ったサッカーボールを置くと、大げさに両腕を広げて、汗の染みたTシャツをくるりと回って見せてきた。
少し遅れて、彼女の大きなおっぱいが元気に暴れながらついてくる。
獣族独立自治区で出回る服は、現実世界のものに比べると全体的に生地が厚く、汗をかいてもシャツが透けるということはなかったが、
そのぶん内側で汗が蒸れやすく、全身汗まみれであろう和奈の内側を想像してしまった俺は、思わず目線を足元に落とした。
「……行宗はさ。毎朝ランニング頑張ってるけど、筋肉痛になったりはしないの?」
「ないな。確かに毎日くたくたに疲れるけど、毎回フィリアに回復魔法をかけてもらってるから、疲れは取れるんだ」
「え……それって……」
俺の答えを聞いた途端、和奈は眉を顰めて訝しげに何かを考えはじめた。
「ねぇ行宗、ストレッチってしってる?」
…………
「いたたたたたたぁ!!!」
崖の上の広場にて、俺は再び割れるような痛みに悲鳴を上げることになった。
「え? 硬っ、嘘でしょう?」
俺は背中から浅尾和奈に拘束されて、左右に太ももを開かれていた。
立場が逆ならセクハラで訴えられなねない絵面だが、足を開くと言っても全くエロい意図はない。
「45°……いかないくらい?
推しても全然動かないよ。股関節も太ももも硬いなぁ、よくこれで毎朝ランニング走れてたね」
「痛いっ、痛いよ和奈……もうギブ、ギブだからぁぁ」
涙目で訴えた俺は、和奈の開脚地獄から解放してもらった。
「どう? 痛いけど気持ちいいでしょ?」
和奈がニッと白い歯を見せながら尋ねてくる。
「たしかに、回復魔法をかけられてないのに、身体が軽くなった気がするな……」
「でしょー! 行宗はさ。回復魔法ばっかりに頼っちゃダメだよ。回復魔法は筋肉を柔らかくしてくれるわけじゃないっぽいし。
もちろん筋肉を鍛える事は大切だけどさ。体の柔軟性とか関節の連動とか、筋肉量以外にも鍛えるべき所はたくさんあるんだよ」
そうなのか……!
俺は和奈の話に真剣に耳を傾けていた。
たしかに俺は、この三ヶ月間、圧倒的なパワーを求めてトレーニングに勤しんできた。
ステータスオープンと心の中で唱えて、自分のパラメータを確認してみても、俺のレベルは現在67である。
この世界にきたばかりの頃の27レベルと比べたら、かなり強くなれたと思っていたが。
「回復魔法に頼りすぎて、筋肉のこわばりに気づけなくなってたんだよ。
本来なら行宗は常時全身筋肉痛で、毎朝ランニングするのが結構辛いんじゃないかな?」
「なるほど、詳しいんだな」
「うん。私本気でスポーツやって来たし。
あと私の将来の夢が、スポーツトレーナーだから……大学では運動生理学とか学びたいし、興味あるんだよね」
「運動、せ、生理? なんだそれ?」
生理、という言葉が和奈の口から飛び出して、俺が露骨に動揺すると、
和奈ははぁ呆れたとため息をついて言った。
「運動生理学、分かりやすく言えばスポーツ科学よ。……下ネタっぽいワードが出たら過剰に反応しちゃって、ふふ、行宗って本当童貞っぽい」
「はぁっ、違うし、童貞じゃないし」
俺が必死に反論するも、和奈は口を押さえながらクスクスと笑った。
「とにかく、しばらく回復魔法はおあずけね。変わりにストレッチをすること! 私がレクチャーしてあげるから。柔軟で疲れにくい身体を作ってこそ、本当のトレーニングというものよ!」
「そうか。ありがたい話だ」
「まずは開脚、ちょっとお手本見せてあげるねー 久しぶりだけど、胸つくかな?」
和奈は呟きながら、両足をガバリと180度開脚して、パタンと前方に上半身を倒した。
「うおっ!」
その柔らかさに、思わず俺は変な声を上げた。
「うー、硬っ……胸まで付かないや…… すっごく硬くなってる。私もストレッチしないとなー」
苦しそうに悶えながらの「すごく硬くなってる」という台詞、
邪な想像が起こりそうになったのを頭を振って蹴散らしながら、
「いや、胸までついてるじゃん。地面に」
そう突っ込む俺だったが。
「え? ついてないよ」
「ほら、胸の先が地面に」
「これはおっぱいが垂れてるだけだから、本来なら潰れるくらいべったりと地面に……って、何言わせてんのよっ!」
怒られた。理不尽だ。
そもそも浅尾和奈という生き物そのものがエロすぎるのがいけないのだ。
どこをどう突っ込んでも性的な感じになってしまう。本人は半ば無自覚なようだが、近くにいる男からしたら大変な事この上ない。
「ねぇ行宗、ちょっと背中押してくれない?」
「ん? 分かった」
和奈に言われて、俺は和奈の背中に回って両手でグググと前へ押してやった。
「ええと、そうじゃなくて。ちゃんと骨盤から押して欲しいんだよね。上の方を押しても猫背になっていくだけだから。さっき私がやったみたいに、身体全体を密着させて体重をかけていく感じで」
「お、おう。了解」
変に動揺するのもおかしいので、俺は素直に従った。
上半身を和奈の背中に密着させて、斜め前に体重をあずけていった。
「んんっ、そうっ、気持ちいい……」
和奈の甘ったるい声が、やけに耳に近かった。
女の子の汗のしょっぱい香りがふわりと鼻腔をくすぐってくる。
「なぁ、これ、いつまでやれば良いんだ?」
「私が、満足するまで。ふぅーーー」
和奈は深く息を吐いて目を瞑り、自分の体の感覚に集中しているようだった。
耐えられない。
和奈の太ももの内側を掴みながら、体重を和奈にあずけて、こんなのほとんど……ッじゃないか!
これは浮気に入るのだろうか?
直穂という愛する存在がいながら、他の女の子とこんなに密着をするなんて。
でも不思議と、不快感や拒絶感はなかった。
むしろ、和奈と触れ合うのは心地よくて、それは直穂に対する恋愛感情とはまったく違っていた。
和奈は俺にとって、妹とか後輩の女の子みたいな認識なのかもしれない。
可愛らしいペット。いや、それはちょっと違うし和奈に失礼だ。
浅尾和奈は本来、紅一点でありスポーツ万能、クラス一番のモテ女子だ。
陰キャな俺なんかは目が合うたびに息がつまって、まともに話せる自信がない部類の人間なんだ。
でもこうやって、屋根の下で三ヶ月と少し、彼女の弱い部分や可愛らしい部分を見て来たから、
俺は家族に接するみたく、彼女と普通に会話ができている。
あぁ、そうか。家族だ。
恋人でもただの友達でもない、同じ屋根の下に暮らす家族。
お互いの事が大切で、理解し合っていて、でも恋愛感情の繋がりはなくて。
だから、だから……
おさまってくれ、頼む……
「ん……?」
和奈の何かに気づいたような声に、俺は心臓が凍りつきそうになった。
逃げるか?
いや、いま動揺すれば、正解だと白状するようなものだ。
そして俺は、そっと和奈に股間が当たらないように、下に身体をずらしていた。
「ねぇ? 行宗」
「ん? なんだ? どうした?」
「ほら右の山の向こう。すごい煙があがってる、まさか火事じゃないよね?」
言われて俺は、右手の山の方を見た。
山というより丘に近い。ぽつぽつと木の生えた岩山である。
その向こうから、数十本の煙が登って、北西の空を覆い尽くしていた。
「嫌な予感がする」
「私も同感」
「診療所の様子を見に行こう。フィリア達に伝えるべきだ」
「そうだよね。伝えないと。反乱軍に気づかれないように……」
俺と和奈は慌てて立ち上がり、フィリアのいる診療所に降りていくという事で話がまとまった。
「じゃあ行こうぜ」
「あのさ行宗」
声が重なった。
俺は斜め後ろを振り向いた。
俺を見つめる浅尾和奈の表情は、眉を引き締めた真剣そのものだったが、瞳はどこか不安そうな色彩を含んでいる。
「いや、やっぱなんでもない。行こっ!」
和奈はきゅっと目を細めて、何かを振り払うようにパァッと笑顔になった。
スキップするような軽やかなステップに、俺も慌てて後を追う。
「いてっ」
雷に打たれたような痛みが、右の太ももを突然襲った。
「いたたたたぁぁ……!」
肉が引き裂かれるような痛みに、俺は前方に倒れ込み、太ももを押さえて悶え苦む。
「えっ? 行宗! どうしたの?」
「太ももが……! 割れるようにッ……! いたいっ……!」
「それ、たぶん足攣ってるよ。えっと……まっ、ちょっとまってて……」
浅尾和奈が、俺の両肩を咄嗟に支えて、栗色のショートカットを揺らしながらあたふたしていた。
「【回復】……」
和奈の唇から唱えられる回復魔法、淡い光をまとった手のひらが患部の太ももへと重ねられ、
割れるような痛みはたちまちに癒やされ引いていった。
「どう? 治った」
「あぁバッチリだ。ありがとう和奈」
「あー良かったぁぁ。突然倒れちゃうから超焦ったよぉぉ」
和奈は安心した様子でため息を吐いた。
「それにしても、足を攣ったんか…… 毎朝トレーニングとランニングをしてるハズなのに、自信無くなるな……」
「まぁまぁ、ランニングとサッカーって全然動かす筋肉違うし ……特に初心者は力が入りすぎて、怪我しがちだから、そんなに落ち込むこともないと思うけど?」
和奈は清々しい表情で、倒れた俺に手を差し伸べてきた。
「和奈は元気そうだな。退院したばっかりなのに、疲れてないのか?」
「まさか! 疲れてるに決まってるじゃん。ほら見てよ。こんなに汗かいたの久しぶりだよ」
和奈は手に持ったサッカーボールを置くと、大げさに両腕を広げて、汗の染みたTシャツをくるりと回って見せてきた。
少し遅れて、彼女の大きなおっぱいが元気に暴れながらついてくる。
獣族独立自治区で出回る服は、現実世界のものに比べると全体的に生地が厚く、汗をかいてもシャツが透けるということはなかったが、
そのぶん内側で汗が蒸れやすく、全身汗まみれであろう和奈の内側を想像してしまった俺は、思わず目線を足元に落とした。
「……行宗はさ。毎朝ランニング頑張ってるけど、筋肉痛になったりはしないの?」
「ないな。確かに毎日くたくたに疲れるけど、毎回フィリアに回復魔法をかけてもらってるから、疲れは取れるんだ」
「え……それって……」
俺の答えを聞いた途端、和奈は眉を顰めて訝しげに何かを考えはじめた。
「ねぇ行宗、ストレッチってしってる?」
…………
「いたたたたたたぁ!!!」
崖の上の広場にて、俺は再び割れるような痛みに悲鳴を上げることになった。
「え? 硬っ、嘘でしょう?」
俺は背中から浅尾和奈に拘束されて、左右に太ももを開かれていた。
立場が逆ならセクハラで訴えられなねない絵面だが、足を開くと言っても全くエロい意図はない。
「45°……いかないくらい?
推しても全然動かないよ。股関節も太ももも硬いなぁ、よくこれで毎朝ランニング走れてたね」
「痛いっ、痛いよ和奈……もうギブ、ギブだからぁぁ」
涙目で訴えた俺は、和奈の開脚地獄から解放してもらった。
「どう? 痛いけど気持ちいいでしょ?」
和奈がニッと白い歯を見せながら尋ねてくる。
「たしかに、回復魔法をかけられてないのに、身体が軽くなった気がするな……」
「でしょー! 行宗はさ。回復魔法ばっかりに頼っちゃダメだよ。回復魔法は筋肉を柔らかくしてくれるわけじゃないっぽいし。
もちろん筋肉を鍛える事は大切だけどさ。体の柔軟性とか関節の連動とか、筋肉量以外にも鍛えるべき所はたくさんあるんだよ」
そうなのか……!
俺は和奈の話に真剣に耳を傾けていた。
たしかに俺は、この三ヶ月間、圧倒的なパワーを求めてトレーニングに勤しんできた。
ステータスオープンと心の中で唱えて、自分のパラメータを確認してみても、俺のレベルは現在67である。
この世界にきたばかりの頃の27レベルと比べたら、かなり強くなれたと思っていたが。
「回復魔法に頼りすぎて、筋肉のこわばりに気づけなくなってたんだよ。
本来なら行宗は常時全身筋肉痛で、毎朝ランニングするのが結構辛いんじゃないかな?」
「なるほど、詳しいんだな」
「うん。私本気でスポーツやって来たし。
あと私の将来の夢が、スポーツトレーナーだから……大学では運動生理学とか学びたいし、興味あるんだよね」
「運動、せ、生理? なんだそれ?」
生理、という言葉が和奈の口から飛び出して、俺が露骨に動揺すると、
和奈ははぁ呆れたとため息をついて言った。
「運動生理学、分かりやすく言えばスポーツ科学よ。……下ネタっぽいワードが出たら過剰に反応しちゃって、ふふ、行宗って本当童貞っぽい」
「はぁっ、違うし、童貞じゃないし」
俺が必死に反論するも、和奈は口を押さえながらクスクスと笑った。
「とにかく、しばらく回復魔法はおあずけね。変わりにストレッチをすること! 私がレクチャーしてあげるから。柔軟で疲れにくい身体を作ってこそ、本当のトレーニングというものよ!」
「そうか。ありがたい話だ」
「まずは開脚、ちょっとお手本見せてあげるねー 久しぶりだけど、胸つくかな?」
和奈は呟きながら、両足をガバリと180度開脚して、パタンと前方に上半身を倒した。
「うおっ!」
その柔らかさに、思わず俺は変な声を上げた。
「うー、硬っ……胸まで付かないや…… すっごく硬くなってる。私もストレッチしないとなー」
苦しそうに悶えながらの「すごく硬くなってる」という台詞、
邪な想像が起こりそうになったのを頭を振って蹴散らしながら、
「いや、胸までついてるじゃん。地面に」
そう突っ込む俺だったが。
「え? ついてないよ」
「ほら、胸の先が地面に」
「これはおっぱいが垂れてるだけだから、本来なら潰れるくらいべったりと地面に……って、何言わせてんのよっ!」
怒られた。理不尽だ。
そもそも浅尾和奈という生き物そのものがエロすぎるのがいけないのだ。
どこをどう突っ込んでも性的な感じになってしまう。本人は半ば無自覚なようだが、近くにいる男からしたら大変な事この上ない。
「ねぇ行宗、ちょっと背中押してくれない?」
「ん? 分かった」
和奈に言われて、俺は和奈の背中に回って両手でグググと前へ押してやった。
「ええと、そうじゃなくて。ちゃんと骨盤から押して欲しいんだよね。上の方を押しても猫背になっていくだけだから。さっき私がやったみたいに、身体全体を密着させて体重をかけていく感じで」
「お、おう。了解」
変に動揺するのもおかしいので、俺は素直に従った。
上半身を和奈の背中に密着させて、斜め前に体重をあずけていった。
「んんっ、そうっ、気持ちいい……」
和奈の甘ったるい声が、やけに耳に近かった。
女の子の汗のしょっぱい香りがふわりと鼻腔をくすぐってくる。
「なぁ、これ、いつまでやれば良いんだ?」
「私が、満足するまで。ふぅーーー」
和奈は深く息を吐いて目を瞑り、自分の体の感覚に集中しているようだった。
耐えられない。
和奈の太ももの内側を掴みながら、体重を和奈にあずけて、こんなのほとんど……ッじゃないか!
これは浮気に入るのだろうか?
直穂という愛する存在がいながら、他の女の子とこんなに密着をするなんて。
でも不思議と、不快感や拒絶感はなかった。
むしろ、和奈と触れ合うのは心地よくて、それは直穂に対する恋愛感情とはまったく違っていた。
和奈は俺にとって、妹とか後輩の女の子みたいな認識なのかもしれない。
可愛らしいペット。いや、それはちょっと違うし和奈に失礼だ。
浅尾和奈は本来、紅一点でありスポーツ万能、クラス一番のモテ女子だ。
陰キャな俺なんかは目が合うたびに息がつまって、まともに話せる自信がない部類の人間なんだ。
でもこうやって、屋根の下で三ヶ月と少し、彼女の弱い部分や可愛らしい部分を見て来たから、
俺は家族に接するみたく、彼女と普通に会話ができている。
あぁ、そうか。家族だ。
恋人でもただの友達でもない、同じ屋根の下に暮らす家族。
お互いの事が大切で、理解し合っていて、でも恋愛感情の繋がりはなくて。
だから、だから……
おさまってくれ、頼む……
「ん……?」
和奈の何かに気づいたような声に、俺は心臓が凍りつきそうになった。
逃げるか?
いや、いま動揺すれば、正解だと白状するようなものだ。
そして俺は、そっと和奈に股間が当たらないように、下に身体をずらしていた。
「ねぇ? 行宗」
「ん? なんだ? どうした?」
「ほら右の山の向こう。すごい煙があがってる、まさか火事じゃないよね?」
言われて俺は、右手の山の方を見た。
山というより丘に近い。ぽつぽつと木の生えた岩山である。
その向こうから、数十本の煙が登って、北西の空を覆い尽くしていた。
「嫌な予感がする」
「私も同感」
「診療所の様子を見に行こう。フィリア達に伝えるべきだ」
「そうだよね。伝えないと。反乱軍に気づかれないように……」
俺と和奈は慌てて立ち上がり、フィリアのいる診療所に降りていくという事で話がまとまった。
「じゃあ行こうぜ」
「あのさ行宗」
声が重なった。
俺は斜め後ろを振り向いた。
俺を見つめる浅尾和奈の表情は、眉を引き締めた真剣そのものだったが、瞳はどこか不安そうな色彩を含んでいる。
「いや、やっぱなんでもない。行こっ!」
和奈はきゅっと目を細めて、何かを振り払うようにパァッと笑顔になった。
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