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第五膜 零れた朝露、蜜の残り香編
百三十八射目「覚悟の剣」
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―誠也視点―
「フィリア、頼む、私の剣を、取ってきてくれないか?」
私は、血を吐きながら言葉を繋ぐ……
「剣……って……!
まさか誠也、戦う気か!?
そんな、無理だっ!
そんな身体で、立ち上がることすら出来ないくせにっ!!」
あぁそうさ、フィリアの言う通りだ。
だが……
「お願いだフィリア……剣を……」
戦わなければいけない、私が。
「っ……! 分かったっ!」
フィリアは立ち上がり、私の剣を探しに駆け出した。
そうだ、そのまま遠くへ、
もっと遠くへ行ってくれ、
フィリアが離れているうちに、私は……
「……う……ぐぅぅ……」
雑草を掴み、引っ張り、
身体を手繰り寄せて、
私は地面を這いずった。
早く、早く、あの場所まで、
ボロボロの手足を引きずりながら、まっすぐ前へ……
フィリアに、気づかれないように……
ズズ、ズズ、
と、
前へ、前へ……
「……あははぁ、惨めですねぇ誠也さーん。
まだ諦めないつもりですかー? きっしょ。
……その大怪我で、その出血で、いったい何が出来るって言うんですか~~??
いい加減気づいてくださいよ、あなたじゃ誰も守れないんです。
鈴ちゃんも、フィリアちゃんも、
それからええっと……響香ちゃんでしたっけ―? あの女の子。
誠也さんの初恋の女の子。
ぷふ、まあ良いでしょう。
……地獄ってモノが何なのか、とことん教えてあげますよォォ!!」
そうだな。
私は、大切な人を失ってばっかりだ。
獣族を殺しまくり、復讐に燃え、多くの命を奪ってきた存在だ……
でも……
……フィリアだけは、必ず私が……
私は、誓ったんだ。
フィリアだけは、必ず私が、幸せにすると。
地面の草むらの向こうに手を伸ばす。
あぁ、駄目だ……
掴んだガラスのなかに、液体は残っていなかった。
「うぐぅっ……」
私は、もう一つ、前へ。
身体を手繰り寄せた。
そして、その地面の土を掘って……
「……せいや??」
あぁ、フィリアの声がする。
フィリアは私を許してくれるだろうか?
……きっと、一生許してくれないだろうな……
私は、マグダーラ山脈の上で誓った約束を、半分破ってしまったのだから……
両手で土を掬って、そのまま口元へ……
「は??」
ギルアが声を上げた。
「は? はぁぁ?
誠也さん……ついに頭がおかしくなったのかぁ!?
土を食ってやがるぜ! 嘘だろおいおい……!
ぶはは、ははははぁ!! 笑わせないでくださいよぉぉお!!
ははははははぁ……はは……」
ギルアはゲラゲラと笑い転げた。
そしてフィリアは……
「……せいや……お前……まさか……」
あぁ。
やはり私は最低な男だ。
フィリアを、こんなにも、悲しませてしまう。
「せいやっ!?
いやだいやだいやだぁぁっ!!
やめろぉおっ!
その土を吐けっ!! その土の中には!!」
フィリアが血相を変えて、私の方へと走ってくる。
はは、もう遅い。
もう手遅れだ。
この土の中には……
「……まさか…… その場所はっ! あの時のッ!!」
ギルアも気づいたようだが、もう遅い。
もう飲み込んだ。
あぁそうさ。
ここにあるのは、割れたガラス瓶と、湿った地面。
ここは、行宗くんが割ったポーションの落下地点。
マナトくんが、ギルアに飲まされそうになったという、【マルハブシの猛毒】。
行宗くんが右腕を犠牲にして、それを阻止した。
ポーション瓶を割り、地面に叩きつけた。
それがこの場所だ。
《この場所の地面には、マナトくんが飲むはずだった【マルハブシの猛毒】の液体が染み込んでいる》
【マルハブシの猛毒】
一時間後の死と引き換えに、戦う力を得る猛毒らしい。
つまり、約1時間後、私は死ぬ。
この力で、ギルアを倒した後でな。
全身から、力が漲る。
信じられない。これが力か……
出血の痛みも、身体のだるさも、何も感じない。
立ちあがれる……
「くたばれぇぇ!! 死にぞこないがぁぁ!!!」
ギルアが迫ってくる。
地面に手を突き、立ち上がる。
そして私は、フィリアの胸に抱えられた剣を握りしめた。
「いやっ……!」
フィリアの絶望顔が目に入る。
心が、ズキリと痛む。
…………。
ギルアに剣を構える。
もう、後ろは振り返らない。
もう、フィリアの傍には居れないから……
私の、最後の戦いだ。
あとは、前だけ見て、進むだけ。
「……ギルア、お前を、ぶち殺す……!!!」
さぁ走れ。
今の私は、まるで神にでもなったかのように強い。
負ける気がしないな。
「……ちっ! くそがッ! この野郎っ!!」
ギルアが私から逃げるように距離を取る。
逃さない。
叩き潰す。
「いやぁあぁあぁあぁあぁあああああああああ!!」
私の後ろで、フィリアが声を上げて泣いていた。
ごめん……
ごめんなフィリア……
つい昨日、将来を誓ったばっかりなのになぁ……
幸せな結婚生活を送りたかったなぁ。
子供も沢山産んで、お爺ちゃんお婆ちゃんになるまでずっと寄り添って……
……でも、そんな未来はもう無い。
私は、愛するフィリアに未来を託す。
私はここで死に……
宿敵ギルアを、ここで倒す!!
「……うあぁああああああぁぁぁああああっ!!」
叫べ!
大地を蹴れ!
剣を振れ!
私は誠也だ!
フィリアの旦那だっ!
フィリアを守る男の名前だっ!!
バギィィィィ!!!
耳障りな金属音が響く。
目の前には半透明の赤い壁。
赤色のバリアが、ギルアの周りを覆うように、球状に作られていた。
硬い……
「うらぁあああっ!!」
力を精一杯込める。
バリリリン!!
と無理やり、赤色の結界が割れた。
「……なっ!?」
目を見開くギルア。
そこに振り下ろす、渾身の一撃!
ビュッ!!!
私の剣は空を切った。
ギルアに後ろ飛ばれ、躱された。
「ぐぅぅ、舐めるんじゃねーぞ!
俺を誰だと思ってやがるっ!!
いいぜぇ! ぐははぁ!
とことん付き合ってやるよぉぉ!!」
ギルアは、ポケットに手を突っ込み、ポーションの瓶を掴み出した。
その中には、赤色の液体。
「こちとら仕事で来てんだよぉぉ!
テメェとは格が違うっ!
覚悟が違うんだよぉぉ!!」
ギルアはそれを飲んだ。
【マルハブシの猛毒】を、ごくりと飲み込んだ。
「……へぇ?
やっとお前の真剣な顔が見れた気がするよ、ギルア……」
ギルアがぐんぐんと強くなるのを肌で感じた。
恐怖、寒気、そして震え。
目の前のギルアは、一秒前とは桁違いの強さになった。
「さぁてぇ!
なかなか美味いじゃねぇかコレぇ……
これで同条件だぜ誠也さーん!
こちとら命賭けてんだよぉぉ!
女にかまけてる誠也さんとじゃ、覚悟の重さが違うんだァァ!!
戦闘技術!
経験!覚悟!力!心!
全てにおいて俺の方が上なんだよぉ!」
ギルアの動きが、見違えるほど早くなる。
今まで戦ってきた敵のなかで、間違いなく最強の敵。
ギルアの言う事は真実だろう。
この男は戦闘のプロだ。
そして今、私とギルアの両方が【マルハブシの猛毒】を飲んだ状態。
ハンデはない、力と力の勝負だ。
そして素の実力において、私とギルアの間には、月とすっぽん以上の差が存在している。
王国軍にいた時は、手を抜いていたんだな。ギルア……
ガロン王国軍に入って、スパイ活動でもしてたのか?
マナ騎士団って、何なんだよ?
とっくの昔に滅んだ、王国の名前じゃないか……
……でも、不思議だな。
力の差は見えるのに、勝てるビジョンなんて見えないのに、
なぜだか負ける気がしなかった。
ギィィィ!!
ギルアが投げたナイフを弾き、剣を受け止める。
ズブゥ!!
腹部に剣を刺された。
でも大丈夫。
もともと穴だらけの腹だ。
血も止まらない。
しかしなぜだろう? 痛みはほとんど感じない。
毒のお陰だろうか?
集中力の成せる業だろうか?
「トドメだぁぁ!!死にぞこないがぁぁあああっ!!
この俺はぁ!! マナ騎士団、剣聖第四位!!
使役のギルアだぁぁぁ!!
お前みたいな雑魚とはなァ! 強さの次元が違うんだよぉぉぉ!!!」
ギルアの剣が、鋭い速さで、
私の首元めがけて振り下ろされる。
……今だッ!!
私もタイミングを合わせて、剣を下から振り上げた。
「……なっ!!?」
ギルアが驚愕した。
ふふ、ようやく気付いたか? 間抜けめ。
私は最初から、これを狙っていたんだよ!
防御すると思っただろう?
ざんねん大ハズレだ間抜け。
死を覚悟した私には、もう、防御なんて要らないんだよ。
……いいぜ。
望み通り、私の首は斬らせてやる。
ただし、お前も道連れだギルア!!!
「………せいやっ…!!」
フィリアの言葉が、胸に届く。
「せいや頑張れっ!!!」
臆病な私に力をくれる。
「せいやっ! 負けるなっ! 頑張れっ!! 頑張れぇぇっ!!!」
あぁ、頑張るさ。
負けないさ!
負けられないんだッ!!
退くな、ビビるな、前へ前へ。
私のすぐ後ろには、守るべき存在……私の愛する女がっ!
フィリアがいるんだぞっ!!!
「うらぁあああぁぁぁぁぁっ!!!」
私は、力の限りを振り絞り、
ただまっすぐ、綺麗な直線を斬り抜いた。
………ザシュゥゥゥゥッッ!!!
「フィリア、頼む、私の剣を、取ってきてくれないか?」
私は、血を吐きながら言葉を繋ぐ……
「剣……って……!
まさか誠也、戦う気か!?
そんな、無理だっ!
そんな身体で、立ち上がることすら出来ないくせにっ!!」
あぁそうさ、フィリアの言う通りだ。
だが……
「お願いだフィリア……剣を……」
戦わなければいけない、私が。
「っ……! 分かったっ!」
フィリアは立ち上がり、私の剣を探しに駆け出した。
そうだ、そのまま遠くへ、
もっと遠くへ行ってくれ、
フィリアが離れているうちに、私は……
「……う……ぐぅぅ……」
雑草を掴み、引っ張り、
身体を手繰り寄せて、
私は地面を這いずった。
早く、早く、あの場所まで、
ボロボロの手足を引きずりながら、まっすぐ前へ……
フィリアに、気づかれないように……
ズズ、ズズ、
と、
前へ、前へ……
「……あははぁ、惨めですねぇ誠也さーん。
まだ諦めないつもりですかー? きっしょ。
……その大怪我で、その出血で、いったい何が出来るって言うんですか~~??
いい加減気づいてくださいよ、あなたじゃ誰も守れないんです。
鈴ちゃんも、フィリアちゃんも、
それからええっと……響香ちゃんでしたっけ―? あの女の子。
誠也さんの初恋の女の子。
ぷふ、まあ良いでしょう。
……地獄ってモノが何なのか、とことん教えてあげますよォォ!!」
そうだな。
私は、大切な人を失ってばっかりだ。
獣族を殺しまくり、復讐に燃え、多くの命を奪ってきた存在だ……
でも……
……フィリアだけは、必ず私が……
私は、誓ったんだ。
フィリアだけは、必ず私が、幸せにすると。
地面の草むらの向こうに手を伸ばす。
あぁ、駄目だ……
掴んだガラスのなかに、液体は残っていなかった。
「うぐぅっ……」
私は、もう一つ、前へ。
身体を手繰り寄せた。
そして、その地面の土を掘って……
「……せいや??」
あぁ、フィリアの声がする。
フィリアは私を許してくれるだろうか?
……きっと、一生許してくれないだろうな……
私は、マグダーラ山脈の上で誓った約束を、半分破ってしまったのだから……
両手で土を掬って、そのまま口元へ……
「は??」
ギルアが声を上げた。
「は? はぁぁ?
誠也さん……ついに頭がおかしくなったのかぁ!?
土を食ってやがるぜ! 嘘だろおいおい……!
ぶはは、ははははぁ!! 笑わせないでくださいよぉぉお!!
ははははははぁ……はは……」
ギルアはゲラゲラと笑い転げた。
そしてフィリアは……
「……せいや……お前……まさか……」
あぁ。
やはり私は最低な男だ。
フィリアを、こんなにも、悲しませてしまう。
「せいやっ!?
いやだいやだいやだぁぁっ!!
やめろぉおっ!
その土を吐けっ!! その土の中には!!」
フィリアが血相を変えて、私の方へと走ってくる。
はは、もう遅い。
もう手遅れだ。
この土の中には……
「……まさか…… その場所はっ! あの時のッ!!」
ギルアも気づいたようだが、もう遅い。
もう飲み込んだ。
あぁそうさ。
ここにあるのは、割れたガラス瓶と、湿った地面。
ここは、行宗くんが割ったポーションの落下地点。
マナトくんが、ギルアに飲まされそうになったという、【マルハブシの猛毒】。
行宗くんが右腕を犠牲にして、それを阻止した。
ポーション瓶を割り、地面に叩きつけた。
それがこの場所だ。
《この場所の地面には、マナトくんが飲むはずだった【マルハブシの猛毒】の液体が染み込んでいる》
【マルハブシの猛毒】
一時間後の死と引き換えに、戦う力を得る猛毒らしい。
つまり、約1時間後、私は死ぬ。
この力で、ギルアを倒した後でな。
全身から、力が漲る。
信じられない。これが力か……
出血の痛みも、身体のだるさも、何も感じない。
立ちあがれる……
「くたばれぇぇ!! 死にぞこないがぁぁ!!!」
ギルアが迫ってくる。
地面に手を突き、立ち上がる。
そして私は、フィリアの胸に抱えられた剣を握りしめた。
「いやっ……!」
フィリアの絶望顔が目に入る。
心が、ズキリと痛む。
…………。
ギルアに剣を構える。
もう、後ろは振り返らない。
もう、フィリアの傍には居れないから……
私の、最後の戦いだ。
あとは、前だけ見て、進むだけ。
「……ギルア、お前を、ぶち殺す……!!!」
さぁ走れ。
今の私は、まるで神にでもなったかのように強い。
負ける気がしないな。
「……ちっ! くそがッ! この野郎っ!!」
ギルアが私から逃げるように距離を取る。
逃さない。
叩き潰す。
「いやぁあぁあぁあぁあぁあああああああああ!!」
私の後ろで、フィリアが声を上げて泣いていた。
ごめん……
ごめんなフィリア……
つい昨日、将来を誓ったばっかりなのになぁ……
幸せな結婚生活を送りたかったなぁ。
子供も沢山産んで、お爺ちゃんお婆ちゃんになるまでずっと寄り添って……
……でも、そんな未来はもう無い。
私は、愛するフィリアに未来を託す。
私はここで死に……
宿敵ギルアを、ここで倒す!!
「……うあぁああああああぁぁぁああああっ!!」
叫べ!
大地を蹴れ!
剣を振れ!
私は誠也だ!
フィリアの旦那だっ!
フィリアを守る男の名前だっ!!
バギィィィィ!!!
耳障りな金属音が響く。
目の前には半透明の赤い壁。
赤色のバリアが、ギルアの周りを覆うように、球状に作られていた。
硬い……
「うらぁあああっ!!」
力を精一杯込める。
バリリリン!!
と無理やり、赤色の結界が割れた。
「……なっ!?」
目を見開くギルア。
そこに振り下ろす、渾身の一撃!
ビュッ!!!
私の剣は空を切った。
ギルアに後ろ飛ばれ、躱された。
「ぐぅぅ、舐めるんじゃねーぞ!
俺を誰だと思ってやがるっ!!
いいぜぇ! ぐははぁ!
とことん付き合ってやるよぉぉ!!」
ギルアは、ポケットに手を突っ込み、ポーションの瓶を掴み出した。
その中には、赤色の液体。
「こちとら仕事で来てんだよぉぉ!
テメェとは格が違うっ!
覚悟が違うんだよぉぉ!!」
ギルアはそれを飲んだ。
【マルハブシの猛毒】を、ごくりと飲み込んだ。
「……へぇ?
やっとお前の真剣な顔が見れた気がするよ、ギルア……」
ギルアがぐんぐんと強くなるのを肌で感じた。
恐怖、寒気、そして震え。
目の前のギルアは、一秒前とは桁違いの強さになった。
「さぁてぇ!
なかなか美味いじゃねぇかコレぇ……
これで同条件だぜ誠也さーん!
こちとら命賭けてんだよぉぉ!
女にかまけてる誠也さんとじゃ、覚悟の重さが違うんだァァ!!
戦闘技術!
経験!覚悟!力!心!
全てにおいて俺の方が上なんだよぉ!」
ギルアの動きが、見違えるほど早くなる。
今まで戦ってきた敵のなかで、間違いなく最強の敵。
ギルアの言う事は真実だろう。
この男は戦闘のプロだ。
そして今、私とギルアの両方が【マルハブシの猛毒】を飲んだ状態。
ハンデはない、力と力の勝負だ。
そして素の実力において、私とギルアの間には、月とすっぽん以上の差が存在している。
王国軍にいた時は、手を抜いていたんだな。ギルア……
ガロン王国軍に入って、スパイ活動でもしてたのか?
マナ騎士団って、何なんだよ?
とっくの昔に滅んだ、王国の名前じゃないか……
……でも、不思議だな。
力の差は見えるのに、勝てるビジョンなんて見えないのに、
なぜだか負ける気がしなかった。
ギィィィ!!
ギルアが投げたナイフを弾き、剣を受け止める。
ズブゥ!!
腹部に剣を刺された。
でも大丈夫。
もともと穴だらけの腹だ。
血も止まらない。
しかしなぜだろう? 痛みはほとんど感じない。
毒のお陰だろうか?
集中力の成せる業だろうか?
「トドメだぁぁ!!死にぞこないがぁぁあああっ!!
この俺はぁ!! マナ騎士団、剣聖第四位!!
使役のギルアだぁぁぁ!!
お前みたいな雑魚とはなァ! 強さの次元が違うんだよぉぉぉ!!!」
ギルアの剣が、鋭い速さで、
私の首元めがけて振り下ろされる。
……今だッ!!
私もタイミングを合わせて、剣を下から振り上げた。
「……なっ!!?」
ギルアが驚愕した。
ふふ、ようやく気付いたか? 間抜けめ。
私は最初から、これを狙っていたんだよ!
防御すると思っただろう?
ざんねん大ハズレだ間抜け。
死を覚悟した私には、もう、防御なんて要らないんだよ。
……いいぜ。
望み通り、私の首は斬らせてやる。
ただし、お前も道連れだギルア!!!
「………せいやっ…!!」
フィリアの言葉が、胸に届く。
「せいや頑張れっ!!!」
臆病な私に力をくれる。
「せいやっ! 負けるなっ! 頑張れっ!! 頑張れぇぇっ!!!」
あぁ、頑張るさ。
負けないさ!
負けられないんだッ!!
退くな、ビビるな、前へ前へ。
私のすぐ後ろには、守るべき存在……私の愛する女がっ!
フィリアがいるんだぞっ!!!
「うらぁあああぁぁぁぁぁっ!!!」
私は、力の限りを振り絞り、
ただまっすぐ、綺麗な直線を斬り抜いた。
………ザシュゥゥゥゥッッ!!!
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