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第四膜 ダンジョン雪山ダブルデート編

九十二射目「俺と直穂の【特殊スキル】」

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「まず聞きたいんだが、お前らの【特殊スキル】って何なんだ?」

 フィリアはまず、そんなことを聞いてきた。
 この場の空気が、一瞬で凍りついた。
 
「フィリアさん……   俺の持ってるスキルは、もう知ってるだろ?」

「え??」

「ほら、【自慰マスター〇ーション】スキルだよ。
 自慰行為のフィニッシュ後、10分間のあいだ。ステータス上昇し、賢者となる。
 浅尾あさおさんを運んだ時に使ったやつだ」

「あぁ……アレか。お前が急に、浅尾さんのおっ〇いを見ながら自〇し始めたのには、流石に驚いたぜ」

 フィリアさんは、空高くとんだ時のトラウマを思い出したのだろうか?
 感情の消えた目で、そんな事を言った。

「しかし使いづらいスキルだな。10分間限定か。 そんな特殊スキル聞いたことがねぇ」

 振り返りながら、渋い声でそう言ったのは、誠也せいやさんである。

「オレも知らないスキルだ。 確かに強力だけど、使いづらいな……」

 フィリアが真剣な目で、あごに手を当てて考え込んでいた。




「……和奈かずなの、おっ〇いって、どういう事……? 見たの? オ〇ズにしたの??」

  

 
 氷のように冷たい直穂なおほの声に、俺は戦慄した。

「いや直穂なおほっ! 違うんだっ!! あの時は緊急事態だったから、仕方なくっ!」

「ふーん」

 直穂なおほは、究極の真顔で、複雑そうな顔で、一歩一歩、俺との距離を詰めてくる。

「ごめんっ!!」

「謝まらなくていいよ、怒ってないから」

「え……?」

 直穂なおほは、俺の身体に抱きついてきた。
 そして、顔を近づけてきて……

 ちゅっ……ちゅっ……れろ……

 俺の唇にキスをしてきた。
 そして、すぐに顔を離して恥ずかしそうに、

「ちょっと嫉妬しちゃっただけ、悪いのは私、ごめんね……」

 と、恥ずかしそうに上目遣いで頭を下げた。
 俺の心臓が、バクンと跳ね上がった。
 なんだこの女の子、可愛すぎるだろう。
 これが、「彼女」という生きものなのか??
 そして、後ろのフィリア方を振り返ると、

「フィリアちゃん、私の特殊スキルは二つだよ。一つは【超回復ハイパヒール】。 二つ目は行宗ゆきむねと同じで【自慰マスター〇ーション】。
 あ、でも行宗ゆきむねとは違って、賢者じゃなくて天使になるんだけどっ!」

 直穂なおほは、オタク特有の早口で、一息にまくし立てた。
 フィリアは目をパチクリとさせて、口をポカンと開けていた。

「まてよ? お前ら二人とも、【自慰マスター〇ーション】スキルってヤツを使うのか?」

「ああ」
「そう、だよ?」

 直穂なおほと俺の声が重なった。

「お前らって、付き合っている恋人同士なんだよな?」

「ああ」
「そうだね……」

 フィリアは少し考えてから、また口を開いた。

「つまり、オ〇ニーし合うカップルっていうことだよな?」

「はぁぁ!!?」
「言い方っ!!」

 思わず二人でツッコんだが、フィリアは真剣な顔を崩さなかった。

「つーことは……二人とも、したことあるのか?」

 フィリアは、頬を赤らめて目線を泳がせながら、
 ナニを? と俺が聞く前に、
 フィリアは具体的尋ねてきた。

「せ……性〇為……二人はした事あるのか!?」

「………!!」

 興味や不安が混じった目で、
 フィリアは、抱き合っている俺と直穂なおほを、交互にうかがってくる。

 慌てた様子で、直穂なおほが俺の背中から、パッと両手を離して、俺から距離をとる。

「今はまだ、してないよ? 私はまだ処○で、行宗ゆきむねは童〇……だよね??」
  
 不安げに見つめてくる直穂なおほに、俺は頷いて肯定した。
 しかし……
 直穂なおほって、処○だったのか??
 俺は安堵のため息を吐いた。
 中学の頃は、直穂なおほは彼氏持ちだったから、もう経験済みなのかと、不安だったのだ。
 真実を知るのが怖くて、訊くにも訊けずにいたのだが……
 良かった……

「二人で約束したの。 仲間を見つけて故郷に戻るまでは、そういう事はしないって……」

「「故郷……??」」

 フィリアと誠也せいやさんの声が重なった。

「うん、私たちは、すごく遠くからここまで来たの。
 ホントは40人くらい仲間がいたんだけど、はぐれちゃって……
 和奈かずな行宗ゆきむねと私の、三人だけになっちゃって……
 そうなっちゃったのは、私にも行宗ゆきむねにも、責任があって……」

 直穂なおほは、悲しそうな顔で話し始めた。
 直穂なおほが「責任」と言ったのは、きっとあのボス戦での事だ。
 あのとき直穂なおほは、【自慰マスター〇ーション】スキルを使わなかったから。
 もしもの話。
 直穂なおほと俺が、最初から全力オ〇ニーで、ラストボス【スイーツ阿修羅】に挑んでいたとしたら……
 楽勝だった筈だ。
 あのクソ仮面どもにも、負ける訳がなかった。
 そしてネザーストーンを2個使って、マルハブシの猛毒の解毒と現実世界への帰還を叶えることが、できたはずだ。
 でも、そんな未来はなかった。
 俺達は、恥ずかしさのあまり、戦えなかった。
 俺は、浅尾あさおさんが死んで、やっとはじめてシ〇りはじめたんだ。

 ……直穂なおほは、言葉を繋いでいく。

「だから、これはケジメなの。
 つぐないや懺悔ざんげ贖罪しょくざいなのかもしれない。 私と行宗ゆきむねは、仲間と故郷に帰るまで、セッ〇スはしないの」

 直穂なおほの意思は固かった。
 俺としては、もう一つの理由がある。
 俺は、不安なのだ。
 もし、二人でする快楽を知ってしまった。
 一人でいけなくなるのではないか? と。

 そこでフィリアが口を開いた。

「大変なんだな、お前ら。仲間とはぐれた上に、浅尾あさおさんが病気ときたもんだ。 踏んだり蹴ったりだな……」

「まあ、ね」

 直穂なおほ自嘲じちょうするように、弱々しく口角を上げた。

「事情は理解した。
 しかし、基礎スキルは身につけた方がいいな。
 【自慰マスター〇ーション】スキルだけでは、急な攻撃や長期戦に、まったく対応できないだろう」

 誠也せいやさんが、真剣な顔でそう言った。
 
「そろそろ日が暮れるな。先を急ごう、川の手前までは辿り着きたい」

 誠也せいやさんに言われて、俺たちは歩くペースを速めた。
 気づけば空は茜色に染まって、上がり下りの激しかった山道は、平らな森へと変わっていった。
 
「王国軍、いねぇよな………」

 フィリアが、不安そうに、目を細めた。
 俺はフィリアの見つめる方を見ると、木々の向こう側に、
 ずっと遠くに洋風の塔が見えた。

 なるほど、そろそろ森を抜けて、人間の棲む町へと近づいているようだった。
 フィリアは、王国軍に対するトラウマが蘇ったのだろうか?
 拳をギュっと握りしめて、強張った顔でプルプルと震えていた。
 
「大丈夫だフィリア。今のお前には、三人の護衛がいる。 
 俺は昨日、強力なモンスターと戦うコイツらを見た。
 基礎スキルが無くても、直穂なおほ行宗ゆきむねは十分に強いし、度胸もある」

 誠也せいやさんは、そんな言葉で、フィリアの心を落ち着かせていた。

 俺は、胸の中が熱くなる感覚があった。
 大人の人に褒められた。認めてもらえたと嬉しくなる。
 それは親に褒められたり、同級生に褒められるのとは、違った嬉しさがあった。
 忖度なしに一人前の大人として、認められたのだ。

「あぁ、大丈夫だフィリアさん! 俺がオ〇ニーで守ってやる! 王国軍なんてボコボコにしてやるよ!」

 俺は堂々と宣言した。
 フィリアと誠也せいやさんに、ドン引きの白い目を向けられる。

 コツン
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