83 / 203
第3.5膜 フィリアはお医者ちゃん編
八十三射目「父さんとオレ」
しおりを挟む
『それで、父さんの具合はどうなんだ?』
オレのそんな問いかけに対して、ジルクははぁっと一息ついてから、暗い顔で答えた。
『啓介さんは……今日は夜中から、テラードさんの家に行っている。緊急の用事だ。子供が生まれるんだよ』
『そう……か』
父さんや村の人の名前を聞いて、オレはまた現実に引き戻された。
そして、ここは確かに、オレの故郷なのだと実感した。
『あのなフィリア。 啓介さんはな……、お前の事をずっと心配してたんだぞ。……もう、バカな真似はするな。お前は啓介さんの代わりになるんだよフィリア。啓介さんが死んだ後。お前がこの村の医者になるんだ』
『…………バカな真似って、なんだよそれ……』
ジルクは強い口調で、オレの家出を非難してきた。
オレはかなりイラっとした。
バカな真似ってなんだよ。
オレはただ、父さんの病気を治す薬を取りに行くために、独立自治区を出ただけだ。
『頼むフィリア。お前しかいないんだ。俺も頑張ってるつもりだけどよ。悔しいけど、俺よりもお前の方が医者としては優秀だ。だから頼む。お前が啓介さんの後を継いで……』
『いやだっ!!』
オレは大声を上げた。
ジルクはギョッとした顔で硬直をした。
でもオレは、これだけは譲れなかった。
『父さんの命を諦めろっていうのか!? ふざけんなよっ! 治す方法はあるんだぞ! マグダーラ山脈に行けば、拒魔病を治す薬なんて簡単に作れる!! ジルクお前は、治療法があるのに諦めろって言うのかよっ!! オレは医者だぞっ! 可能性がある限り、どんな手を使ってでもっ!!』
バチィィッ!!
頬っぺたを思い切り殴られた。
ジルクはオレを、涙目で睨めつけてくる。
ああもう、痛ぇよクソが……
『フィリアてめぇいい加減にしろ! そう息巻いて村を飛び出した結果が、今のお前だろ!!
マグダーラ山脈にはたどり着けず、王国軍に掴まって、あと少しのところで死にかけていたんだぞ!!
ホントにお前は自分勝手なんだよっ!! お前の父さんと母さんがっ!、そして俺がっ!、どれだけお前の事を心配してたか知ってるか!? 命はもっと大切にしろっ!! お前は医者として、将来この村を支える存在なんだ! 啓介さんや俺にとって、大切な存在なんだよっ!!』
『……………』
何も言い返せなかった。
目の前のジルクは泣いていた。
その涙は、オレの為の涙だった。
ジルクの言っていることは正論だ。
間違っているのはオレだ。
そんな事は分かっていた。
獣族にとって、独立自治区の外の世界は、命が幾つあっても足りないという。
出会う人間すべてが敵なのである。
そして人間の棲む地域の中でも、マグダーラ山脈は、最も危険な場所の一つである。
世界最強クラスの魔獣や神獣も生息し、一流の冒険者でも滅多に近づかない場所である。
オレは父さんに、マグダーラ山脈に連れていって貰った事があるが。
あの父さんですら、魔獣との戦闘は避けていたのだ。
戦闘スキルのないオレには、危険すぎる地域である。
でも……でも……
『……父さんが死ぬのは……ぜったい嫌だっ……嫌なんだよっ……!』
オレは、ボロボロと泣いてしまった。
ジルクの身体を、よわよわしくポカポカと殴る……
ジルクなんかに、泣き顔は見せないつもりだったのに、涙が止まらないや……
まあオレもジルクの泣き顔を見れたから、これは痛み分けだな。
『フィリア……辛いな……お前が一番つらいよな…… ごめんな……俺はなんにも出来なくて……』
ジルクは、そんなオレを優しく抱きしめてきた。
なんでだよっ……
なんでこんな時に限って、優しくするんだよ。
もっと辛くなるだろうが、泣いちゃうだろうがっ……
いつもは捻くれた奴のくせにっ……くそっ……
あぁ……やっぱり嫌だよっ……オレは父さんのことが大好きだ。死んで欲しくないんだ。
もっと医学の事を教えて欲しい。
オレが彼氏を連れて来て、結婚して、子供を作って育つまで……
もっともっと、ずっと未来まで、オレは父さんに見届けてほしいんだ。
ねぇ父さん。オレさ、はじめて好きな人が出来たんだ。
誠也っていう、優しい人なんだ。
誠也は32才だがら、オレとは18才くらい離れてるけど……
でも、恋心に年の差なんて関係ないよな……
父さんは34才だから、誠也とは二才しか変わらないんだよな。
どうかな? オレと誠也はお似合いだと思う?
あぁ……誠也にも早く会いたい。
謝らなきゃいけない。
オレが誠也を巻き込んだせいで、誠也は王国軍に数々の拷問を受けた。
許してくれるだろうか?
きっと、許してくれないだろう。憎まれているかもしれない。
それは本当に辛いな。
でも、精一杯謝ろう……
そんな中でも、ジルクはオレの身体を強く抱きしめて、頭をすりすりと撫でまわしてくる。
『痛いよ……』
そう言って、オレはジルクの身体を、両手で押し返した。
『ごめん……』
ジルクは申し訳なさそうに、固まったままオレを見ていた。
オレは、ちょっと気まずくなって、ジルクから目を逸らした。
『ちょっと、外出てくる……』
オレは涙を隠しながら、一人部屋を出て、随分と懐かしい気のする、家の庭へと出た。
晴れた夏の朝の爽やかな冷気にあたりながら、オレはぼーっと放心していた。
この庭には思い出が詰まっている。
昔のオレは、わがままでヤンチャな女の子だった。
まぁ、それは今も変わらないかもしれないけどな、
オレは、家出してたんだから……
このアルム村は、貧しい村だ。
乾季に入ると多くの死者が出る。
そもそも作物が育ちにくいのだ。
この土地には魔石の成分が多く含まれているから、大気中の魔力濃度は他と変わらないくせに、普通の食物は育たないという特殊な土地だ。
そんなオレは、村で一番裕福な家に育った。
オレの父さんは小桑原啓介。
「生きる救世主」と、崇められている男である。
だけどオレは、父さんの本当の娘ではない。
拾われたのだ。七年前に。
戦争孤児だったオレを、啓介は助けてくれた。
そんなオレは、同年代の子供たちから嫌な顔をされた。
なぜならオレは、他の子達が生きるか死ぬかの瀬戸際で必死に働いている時に、自分の部屋でのんびりと本を読んでいたからだ。
オレは人間語の勉強ができたけれど、他の子達には人間語を勉強する余裕なんてなかった。
オレの家では、お父さんもお母さんも忙しかった。
いつも朝から晩まで家を開けて、医者として働いていたからだ。
オレは寂しくて、連れて行ってくれと何度も頼んだ。
でも「危ないからダメだ」と言われた。
オレはずっと、裕福な大きな家のなかで一人ぼっちだった。
もう我慢できなくて、父さんに尋ねたのだ。
『どうして父さんは、仕事ばっかりするんだよっ。オレともっと遊んでよっ。オレのことが嫌いなのか? オレが本当の娘じゃないからかっ!?』
オレが父さんに泣きつくと、父さんは困った顔をした。
『そうだな、ごめんなフィリア…… 俺はダメな父親かもしれない。でもっ、オレは医者なんだよ。目の前に苦しんでいる人がいれば助けたいんだ。少しでも、誰かの幸せを守りたいんだよ……』
『…………』
なにも言えなかった。
オレだって、父さんに助けられた立場の人間だ。
ズルいよ。大人はずるい。
そんな正論を、苦しそうな顔で言うなんて、反論できないじゃないか……。
『ねぇ……父さんは、どうして医者になったの?』
オレの問いに、父さんは切なそうに、懐かしそうに、にっこりと笑った。
『小さい頃、ずっと昔にな。ある医者さんが、オレのお姉ちゃんの命を救ってくれたんだ。オレはその人に感謝して、憧れて、医者を目指して勉強していたんだ……』
『そうなんだ……』
その時、オレの胸の中がカッと熱くなった。
今まで父さんに抱えていた不満が、嘘のように溶けて行った。
オレは今まで、父さんが理解できなかった。
どうしてそんなに働くのか、なぜオレに構ってくれないのかと。
でも……今、全部理解できた。
『ねぇ父さん。オレも、医者になりたい! 父さんみたいに、カッコいい医者になりたいんだっ!』
気づいたときには、オレは叫んでいた。
オレは父さんに憧れていた。
父さんは、オレと同じく裕福な立場だけど、オレとは違って友達が沢山いる。
多くの人に尊敬されているのだ。嫉妬する人なんて少ない。
部屋の中に、逃げてばっかじゃダメだ。
引きこもって目を背けるのはダメだ。
オレは皆とは違う。
勉強の才能もあって、環境にも恵まれている。
だからオレも、父さんと一緒に働きたい。
この獣族の村から、苦しむ人を減らすために……。
それからオレは医者を目指して、父さんの手伝いをした。
同い年の子供たちに、頑張って話しかけた。
最初は煙たがられたけど、頑張って、頑張って、少しは仲良くなれた。
10才になって、ジルクという男の子が、隣町からやってきて、この家の門を叩いた。
ジルクは激怒していた。
『どうして、オレの母さんを見捨てたんだっ!』
って叫んで、オレの父さんの顔をガンガンと殴りつけた。
父さんは、時折みせる死んだような顔で、すまない、すまないといい続けた。
ジルクのお母さんが死んだあの日、父さんは、他の患者の手術に追われていたのだ。
だから、ジルクのお母さんの容態の急変に、駆けつけられなかった。
その後数日が過ぎて。
ジルクは再びこの家の門を叩くと、オレの父さんに頭を下げた。
「弟子にしてください」
と、土下座して頼んでいた。
オレは、「何があったのだ?」 と衝撃を受けたが、ジルクは、
『医者になりたい……あなたのような立派な医者に……』
と、涙を流して、父さんに「医学を教えてくれ」と、頼み込んでいた。
ジルクは、オレの家で暮らすことになった。
オレやオレの母さんと一緒に、父さんの医者の仕事を手伝うようになった。
ジルクはオレに対して、常にライバル心を燃やしていて、よくオレに嫌がらせをしてきた。
昔はよく、殴り合いの喧嘩に発展していた。
そしていつの間にか、喧嘩は口喧嘩になって、今では冗談で揶揄いあう間柄だ。
長い年月を経て、少しは仲良くなれたと思う。
オレのそんな問いかけに対して、ジルクははぁっと一息ついてから、暗い顔で答えた。
『啓介さんは……今日は夜中から、テラードさんの家に行っている。緊急の用事だ。子供が生まれるんだよ』
『そう……か』
父さんや村の人の名前を聞いて、オレはまた現実に引き戻された。
そして、ここは確かに、オレの故郷なのだと実感した。
『あのなフィリア。 啓介さんはな……、お前の事をずっと心配してたんだぞ。……もう、バカな真似はするな。お前は啓介さんの代わりになるんだよフィリア。啓介さんが死んだ後。お前がこの村の医者になるんだ』
『…………バカな真似って、なんだよそれ……』
ジルクは強い口調で、オレの家出を非難してきた。
オレはかなりイラっとした。
バカな真似ってなんだよ。
オレはただ、父さんの病気を治す薬を取りに行くために、独立自治区を出ただけだ。
『頼むフィリア。お前しかいないんだ。俺も頑張ってるつもりだけどよ。悔しいけど、俺よりもお前の方が医者としては優秀だ。だから頼む。お前が啓介さんの後を継いで……』
『いやだっ!!』
オレは大声を上げた。
ジルクはギョッとした顔で硬直をした。
でもオレは、これだけは譲れなかった。
『父さんの命を諦めろっていうのか!? ふざけんなよっ! 治す方法はあるんだぞ! マグダーラ山脈に行けば、拒魔病を治す薬なんて簡単に作れる!! ジルクお前は、治療法があるのに諦めろって言うのかよっ!! オレは医者だぞっ! 可能性がある限り、どんな手を使ってでもっ!!』
バチィィッ!!
頬っぺたを思い切り殴られた。
ジルクはオレを、涙目で睨めつけてくる。
ああもう、痛ぇよクソが……
『フィリアてめぇいい加減にしろ! そう息巻いて村を飛び出した結果が、今のお前だろ!!
マグダーラ山脈にはたどり着けず、王国軍に掴まって、あと少しのところで死にかけていたんだぞ!!
ホントにお前は自分勝手なんだよっ!! お前の父さんと母さんがっ!、そして俺がっ!、どれだけお前の事を心配してたか知ってるか!? 命はもっと大切にしろっ!! お前は医者として、将来この村を支える存在なんだ! 啓介さんや俺にとって、大切な存在なんだよっ!!』
『……………』
何も言い返せなかった。
目の前のジルクは泣いていた。
その涙は、オレの為の涙だった。
ジルクの言っていることは正論だ。
間違っているのはオレだ。
そんな事は分かっていた。
獣族にとって、独立自治区の外の世界は、命が幾つあっても足りないという。
出会う人間すべてが敵なのである。
そして人間の棲む地域の中でも、マグダーラ山脈は、最も危険な場所の一つである。
世界最強クラスの魔獣や神獣も生息し、一流の冒険者でも滅多に近づかない場所である。
オレは父さんに、マグダーラ山脈に連れていって貰った事があるが。
あの父さんですら、魔獣との戦闘は避けていたのだ。
戦闘スキルのないオレには、危険すぎる地域である。
でも……でも……
『……父さんが死ぬのは……ぜったい嫌だっ……嫌なんだよっ……!』
オレは、ボロボロと泣いてしまった。
ジルクの身体を、よわよわしくポカポカと殴る……
ジルクなんかに、泣き顔は見せないつもりだったのに、涙が止まらないや……
まあオレもジルクの泣き顔を見れたから、これは痛み分けだな。
『フィリア……辛いな……お前が一番つらいよな…… ごめんな……俺はなんにも出来なくて……』
ジルクは、そんなオレを優しく抱きしめてきた。
なんでだよっ……
なんでこんな時に限って、優しくするんだよ。
もっと辛くなるだろうが、泣いちゃうだろうがっ……
いつもは捻くれた奴のくせにっ……くそっ……
あぁ……やっぱり嫌だよっ……オレは父さんのことが大好きだ。死んで欲しくないんだ。
もっと医学の事を教えて欲しい。
オレが彼氏を連れて来て、結婚して、子供を作って育つまで……
もっともっと、ずっと未来まで、オレは父さんに見届けてほしいんだ。
ねぇ父さん。オレさ、はじめて好きな人が出来たんだ。
誠也っていう、優しい人なんだ。
誠也は32才だがら、オレとは18才くらい離れてるけど……
でも、恋心に年の差なんて関係ないよな……
父さんは34才だから、誠也とは二才しか変わらないんだよな。
どうかな? オレと誠也はお似合いだと思う?
あぁ……誠也にも早く会いたい。
謝らなきゃいけない。
オレが誠也を巻き込んだせいで、誠也は王国軍に数々の拷問を受けた。
許してくれるだろうか?
きっと、許してくれないだろう。憎まれているかもしれない。
それは本当に辛いな。
でも、精一杯謝ろう……
そんな中でも、ジルクはオレの身体を強く抱きしめて、頭をすりすりと撫でまわしてくる。
『痛いよ……』
そう言って、オレはジルクの身体を、両手で押し返した。
『ごめん……』
ジルクは申し訳なさそうに、固まったままオレを見ていた。
オレは、ちょっと気まずくなって、ジルクから目を逸らした。
『ちょっと、外出てくる……』
オレは涙を隠しながら、一人部屋を出て、随分と懐かしい気のする、家の庭へと出た。
晴れた夏の朝の爽やかな冷気にあたりながら、オレはぼーっと放心していた。
この庭には思い出が詰まっている。
昔のオレは、わがままでヤンチャな女の子だった。
まぁ、それは今も変わらないかもしれないけどな、
オレは、家出してたんだから……
このアルム村は、貧しい村だ。
乾季に入ると多くの死者が出る。
そもそも作物が育ちにくいのだ。
この土地には魔石の成分が多く含まれているから、大気中の魔力濃度は他と変わらないくせに、普通の食物は育たないという特殊な土地だ。
そんなオレは、村で一番裕福な家に育った。
オレの父さんは小桑原啓介。
「生きる救世主」と、崇められている男である。
だけどオレは、父さんの本当の娘ではない。
拾われたのだ。七年前に。
戦争孤児だったオレを、啓介は助けてくれた。
そんなオレは、同年代の子供たちから嫌な顔をされた。
なぜならオレは、他の子達が生きるか死ぬかの瀬戸際で必死に働いている時に、自分の部屋でのんびりと本を読んでいたからだ。
オレは人間語の勉強ができたけれど、他の子達には人間語を勉強する余裕なんてなかった。
オレの家では、お父さんもお母さんも忙しかった。
いつも朝から晩まで家を開けて、医者として働いていたからだ。
オレは寂しくて、連れて行ってくれと何度も頼んだ。
でも「危ないからダメだ」と言われた。
オレはずっと、裕福な大きな家のなかで一人ぼっちだった。
もう我慢できなくて、父さんに尋ねたのだ。
『どうして父さんは、仕事ばっかりするんだよっ。オレともっと遊んでよっ。オレのことが嫌いなのか? オレが本当の娘じゃないからかっ!?』
オレが父さんに泣きつくと、父さんは困った顔をした。
『そうだな、ごめんなフィリア…… 俺はダメな父親かもしれない。でもっ、オレは医者なんだよ。目の前に苦しんでいる人がいれば助けたいんだ。少しでも、誰かの幸せを守りたいんだよ……』
『…………』
なにも言えなかった。
オレだって、父さんに助けられた立場の人間だ。
ズルいよ。大人はずるい。
そんな正論を、苦しそうな顔で言うなんて、反論できないじゃないか……。
『ねぇ……父さんは、どうして医者になったの?』
オレの問いに、父さんは切なそうに、懐かしそうに、にっこりと笑った。
『小さい頃、ずっと昔にな。ある医者さんが、オレのお姉ちゃんの命を救ってくれたんだ。オレはその人に感謝して、憧れて、医者を目指して勉強していたんだ……』
『そうなんだ……』
その時、オレの胸の中がカッと熱くなった。
今まで父さんに抱えていた不満が、嘘のように溶けて行った。
オレは今まで、父さんが理解できなかった。
どうしてそんなに働くのか、なぜオレに構ってくれないのかと。
でも……今、全部理解できた。
『ねぇ父さん。オレも、医者になりたい! 父さんみたいに、カッコいい医者になりたいんだっ!』
気づいたときには、オレは叫んでいた。
オレは父さんに憧れていた。
父さんは、オレと同じく裕福な立場だけど、オレとは違って友達が沢山いる。
多くの人に尊敬されているのだ。嫉妬する人なんて少ない。
部屋の中に、逃げてばっかじゃダメだ。
引きこもって目を背けるのはダメだ。
オレは皆とは違う。
勉強の才能もあって、環境にも恵まれている。
だからオレも、父さんと一緒に働きたい。
この獣族の村から、苦しむ人を減らすために……。
それからオレは医者を目指して、父さんの手伝いをした。
同い年の子供たちに、頑張って話しかけた。
最初は煙たがられたけど、頑張って、頑張って、少しは仲良くなれた。
10才になって、ジルクという男の子が、隣町からやってきて、この家の門を叩いた。
ジルクは激怒していた。
『どうして、オレの母さんを見捨てたんだっ!』
って叫んで、オレの父さんの顔をガンガンと殴りつけた。
父さんは、時折みせる死んだような顔で、すまない、すまないといい続けた。
ジルクのお母さんが死んだあの日、父さんは、他の患者の手術に追われていたのだ。
だから、ジルクのお母さんの容態の急変に、駆けつけられなかった。
その後数日が過ぎて。
ジルクは再びこの家の門を叩くと、オレの父さんに頭を下げた。
「弟子にしてください」
と、土下座して頼んでいた。
オレは、「何があったのだ?」 と衝撃を受けたが、ジルクは、
『医者になりたい……あなたのような立派な医者に……』
と、涙を流して、父さんに「医学を教えてくれ」と、頼み込んでいた。
ジルクは、オレの家で暮らすことになった。
オレやオレの母さんと一緒に、父さんの医者の仕事を手伝うようになった。
ジルクはオレに対して、常にライバル心を燃やしていて、よくオレに嫌がらせをしてきた。
昔はよく、殴り合いの喧嘩に発展していた。
そしていつの間にか、喧嘩は口喧嘩になって、今では冗談で揶揄いあう間柄だ。
長い年月を経て、少しは仲良くなれたと思う。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに
千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。
ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。
グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
と何とかしようと行動を開始する。
そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。
他の投稿サイトでも掲載してます。
※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる