クラス転移した俺のスキルが【マスター◯―ション】だった件 (新版)

スイーツ阿修羅

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第F膜 フィリア外伝(番外編)

七十二射目「二人きりの冒険へ」

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 無我夢中で、すずとフィリアを背負いながら、草木の根をかき分けて走る。
 王国軍が追ってくる気配はないが、安心はできない。
 王国軍にいた私だから分かる、彼らはしつこく追いかけてくる筈だ。
 さらに森の奥へ、グチグチと不満を漏らすフィリアを背負って走る。
 若々しい五月の葉っぱが、ふくらはぎを切り刻む。
 地面のデコボコが、足首を痛めつける。
 それでも前へ、前へ、
 足跡を魔法でけしながら、必死に走っている。

「ちょっ……へんなトコロを触んなっ!! くすぐったいだろうがっ!!」

 フィリアは腰を抱えられて、前にお尻、後ろに頭の状態であった。
 すごく不満なようで、地面に降ろせ、自分で走ると言ってくるのだ。
 私は説明した。私は土魔法が得意だから、足跡を全て消して走る事が出来るのだと。
 しかしフィリアは怒ったような声で、

「獣族を舐めんなよ!? 木の上を走れば足跡なんかつかないだろう!」

 と、主張するのである。
 フィリアは下着姿でほとんど裸である。
 私が腕をまわしている腰やおへその辺りも、完全に露出している。
 その素肌には柔らかな毛がわがあって、汗でびしょびしょに濡れている。
 腕を伝わって、首や胸の中へと、フィリアの汗が流れて来た。
 逆に左肩からは、真っ赤な血が流れてくる。
 すずの死体からである。
 すずの身体は、早く埋葬しないといけないな。 

「分かったよフィリア。木の上を走れるというなら見せてみろ」

 私はとうとう観念して、フィリアの足を地面に着かせた。

「マジか!? ありがとう。なら見せてやるよ!」

 フィリアは勢いよく地面を蹴った。
 柔らかな地面には大きな足跡がついた。

「おいっ、足跡を残すなと言っただろう!! 戻って来いっ!」

 と私が言うと。

「嫌だねー」

 という声が、真上からした。
 天を見上げると、フィリアが、木の枝に掴まってぶらぶらと浮いていた。
 そして身体を前後に振ると、前の木へ、さらに前の木へと飛び移っていく。
 なるほど、これなら足跡が残らないな。

 フィリアは下着姿で、激しく森林を駆ける。
 その度に、膨れた乳房やハリのあるお尻が、ぶるんぶるんと上下に揺れる。
 フィリアのくせ毛がヒラヒラと風になびいて、露出されたお腹や脇からにじんだ汗が、空へと飛び出し宙を舞う。
 まさに野生、そしてエロス。
 私は下半身が膨れ上がるのを感じた。
 これは驚いた。この私が獣族に発情するなんて、あり得ないと思っていた。
 私は獣族を、人とは思っていなかったからだ。イヌやネコとけものだと思っていた。
 でも、フィリアは違う。
 彼女は人間の言葉が話せるのだ。
 そして私は、フィリアをけものではなく女だと認識した。
 だから私は、フィリアの半裸姿に興奮していた。

 するとここで、何を思ったのだろうか、フィリアが木の上で動きを止めたのだ。
 そして太い木の枝の上に立ち、無表情でコチラを振り返ってきた。
 どうしたのだろうか?

 するとフィリアは、少し頬を赤らめて、胸をプルンと震わせると。

「もう出血も止まってるよな? そろそろオレの服を、返してもらってもいいか?」

 と言った。

「は、なんのことだ?」

 と返事しながら、私は自身の胴体を見下ろした。
 そこには確かにフィリアの服があった。
 フィリアの薄茶色のTシャツが、私のお腹の中心、ギルアに槍を刺された部分を覆っていた。
 そして背中を振り返ると、反対側には同じ色のズボンがあった。
 フィリアの服は、下着を含めて全て薄茶色だったようだ。
 それはおそらく、森の中で目立たないためだと考えられる。
 私が今着ている王国軍の軍服も、迷彩服という、森の色を模した彩色になっているからな。似たようなものだろう。
 そしてフィリアの服を、私の傷口に固定していたのは、同じく茶色のカバンの紐だ。
 私の腰を締めつけるように、カバンの紐がぐるりと一周していた。
 
「フィリア!? お前はまさか、自分の服を包帯がわりに使ったのか!?」
「あぁ、そうだ。感謝しろよな?」

 フィリアはそう言って、私の方に戻ってきて、木の上から手を伸ばしてきた。
 下着姿で、唇をかたく結び、頬を赤らめてはじらいながら、「早くしろ」と目で訴えかけてくる。
 私は慌てて腰についたカバンの紐をほどき、血まみれになったTシャツとズボンを手渡した。
 私の腹の傷は、跡は残っているものの、完全に塞がっていた。

「ありがとうフィリア。お前は命の恩人だ。しかし、大切な服を血まみれにしてしまってすまない」
「心配すんな、オレは医者だぞ? 手術には清潔さが命。これぐらい一瞬で綺麗にできるさ」

 フィリアはそう言うと、【浄化クリーニング】という名のスキルを唱えた。
 聞いたことのないスキルだった。
 黄色く輝く光が宙を舞い、フィリアの服から私の血が、みるみるうちに消滅していく。
 私が見惚れていると、フィリアはそれをみて、満足そうにニヤリと笑った。

「フィリア、お前の服がちゃんとあって良かった。てっきり私はフィリアの事を、露出が好きな変態娘か、下着以外を全て無くしたバカな娘のどちらかだと思っていた。」

 私がほっと息をつくと。
 フィリアはズボンにつま先を通しながら、私をギョッと見つめてきた。

「はぁ!!? だれが変態娘だ!!? お前の方が変態だろうがっ! オレの唇に二回もキスしやがって、はじめてだったんだぞっ!?」

 フィリアは顔を真っ赤にして怒った。
 大きな猫耳が、ピンと立ち上がった。

「それは……すまない。一回目は寝ぼけてたんだ…… 二回目は泣き止ませるためだったし…… すでに一回してるからな、一回増えても変わらないかと……」
「はぁ!? ひっでぇ! もっと大切にしてくれよっ! オレのセカンドキスだぞっ!?」

 フィリアは、拳をわなわなと握りしめながら、悔しそうに私を睨んでいた。
 
「本当にすまなかった。フィリアには誰か、好きな人がいるのか?」
「別にいねえよ…… そもそもオレには、スキって気持ちがよく分からねぇ…… でもだからといって、ファーストキスはいちおう大事にしてたんだからなっ!」

 フィリアは顔を真っ赤にしていたが、表情を隠すように私を睨んでいた。
 どうやら私がどれだけ謝っても、許してくれそうな気配はない。
 私は話題を変える事にした。
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