クラス転移した俺のスキルが【マスター◯―ション】だった件 (新版)

スイーツ阿修羅

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第二膜 異世界ダンジョンハーレム編

四十八射目「VS本体クソジジイ」

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「ギャァァァァァァアアア!!!!??」

 (!!?)


 突然、耳を切り裂く断末魔が、響き渡る。
 俺達の頭上だ。水の中を反響して届いてくる。
 濁点が幾つも付いたような、汚い叫び声だった。
 間違いなく、浅尾あさおさんの声ではない、リリィさんの妹でもない筈だ。

 俺達三人は、唐突の叫び声に、ビクリと身体を震わせた。
 

「み、見つけたっ!!あれが本体っ!!【天ぷらうどん】の本体よ!!」

 新崎にいざきさんが、興奮した様子で叫んだ。
 彼女が指さす先は、声がした場所、俺達の真上である。

「【天ぷらうどん】の本体ほんたいを倒せば、この戦いはすべて終わる!!
 行宗ゆきむね!リリィちゃんっ!私にしっかり掴まっててっ!!」

 そうか、この叫びは、【天ぷらうどん】の正体が出した悲鳴なのか!
 凄いぞ新崎にいざきさん、うどんを焼き消していくだけでなく、本体の位置の特定を済ませるなんて!
 俺には、そんなこと出来なかった。
 

「私から逃げられると思うなっ!」


 ぎゅぅぅん!!!

 新崎にいざきさんは、一気に加速した。
 天使の羽をはためかせ、リリィさんの空気球につつまれながら、うどんの中を駆けまわる。
 俺は左右に振り回されて、重力がめちゃくちゃになり、吐き出しそうになりながら、新崎にいざきさんにしがみついた。



「ひぃぃぃぃっ!!!来るなっ!!来るなァァッ!!」

 進行方向から、男の汚い悲鳴が聞こえた。
 新崎にいざきさんに恐れおののき、逃げ回っているのだろう。

「うどんの中を逃げても無駄だっ、我の光は全てのうどんを焼き尽くすっ!
 【天使の断罪エンジェル・ジャッジメント】!!」

 新崎にいざきさんはノリノリで、聞いたことのない呪文を唱えた。
 まぶたの向こうで、ビカビカと激しい閃光がしたが、俺は目を開けられず、何が起こっているのか分からなかった。

 新崎にいざきさんのジェットコースターは、俺を予測不可能な動きで振り回し、恐怖のどん底へと突き落とす。
 怖すぎるっ。このジェットコースターは、先のコースが見えないのだ。

「ひぃぃいいい!!勘弁をぉぉ!!どうか勘弁をぉぉぉ!!」

 汚い男の叫び声が、大きく聞こえるようになった。
 確実に距離は縮まっている。

 早く、早く本体を倒してくれっ……!!
 もう、吐き出す寸前だっ、し、しぬぅぅぅ!!



「あ、あははははぁあ、ふっ、ふふっ!!フハハハハハハァ!!!
 勝ったっ!!!勝ったぞぉぉぉ!!」

 しわがれた男の声が、嬉しそうに嗤った。
 先ほどの、恐怖に染まった声が嘘のようだ。

 そして、新崎にいざきさんは、急停車した。
 ピタリ、と動きを止めたのだ。

 慣性の法則で、俺は新崎にいざきさんの背中に叩きつけられた。
 新崎にいざきさんの背中は、うどんと汗が浸みこんだ匂いがした。
 生々しかった。

 さらにはずみで、俺の両手が、新崎にいざきさんの膨らみの上に乗っかってしまった。
 服越しに伝わってくる、新崎にいざきさんの胸の感触。
 それを手の平で感じて、俺はさらに興奮してしまう。
 今なら、俺の息子も元気になりそうだった。

「そんなっ……」

 新崎にいざきさんは、絶望に染まった声を漏らした。
 俺に胸を揉まれている事にも、気づかない様子だ。
 何があったんだ?
 俺は顔を上げて、新崎にいざきさんの背中越しに前方を確認した。

 そこには、浅尾あさおさんがいた。
 目を瞑って気絶しているようだ。
 
 浅尾あさおさんの後ろには、しわがれたジジイがいた。
 100才……なんてものじゃない……
 1000才と言われた方がしっくりくる、全身しわに覆われた、うす汚れたお爺さん……
 人とは思えない化け物が、そこにいた。
 コイツが、【天ぷらうどん】の本体か。
 
 そのクソジジイは、眠っている浅尾あさおさんを、背中から抱きしめていた。

 彼らの周りには、大きさの様々な触手が、うねうねと動き回り、浅尾あさおさんの服の中へと忍びこみ、いろんな場所をまさぐっている。
 見える範囲では、鼻の穴や口の中へと、大量の触手が忍び込み、粘液と共にぐちゅぐちゅとうごめいている。

 まるでエロ漫画のような触手凛辱が、目の前で行われていた。

「動くんじゃねぇぞぉ、少しでも動いたらコイツの命はねぇぜェ、さあ手ェあげろぉ……
 三人まとめて、美味しく頂いてやるよぉ……」

 クソジジイが、シワだらけの顔を歪めて、そう嗤った。
 浅尾あさおさんは、その間も大量の触手によって、服をめくられていく……

 肉付きのいい、巨乳健康ボディの浅尾あさおさん、
 俺は、興奮していたのかもしれない。
 しかし、興奮を遥かに上回る絶望によって、俺の脳内は支配された。

「っ………!!」

 新崎にいざきさんの身体に、明らかに力が入る。
 リリィさんも、ガタガタと身体を震わせている。

 俺達の周りには、白い触手が近づいて来ている。
 マズイ、このままでは、皆捕まる。

 そんなことは分かっているが、俺達は身動きがとれなかった。
 もし動けば、浅尾あさおさんが殺されるのだ。
 浅尾あさおさんを犠牲にするなんて選択は、俺たちには、とてもじゃないが選べなかった。

 新崎にいざきさんの胸に重なる俺の腕に、一滴のしづくがこぼれ落ちた。
 新崎にいざきさんの涙である。
 彼女は涙を流し、悔しさのあまりに身体を震わせていた。


 ★★★


「ぎやぁぁぁぁ!!!!」

 突然、女性の絶叫する声が響いた。
 浅尾あさおさんの声だった。
 しかし、俺には信じられなかった。
 こんな、この世の終わりみたいな絶叫が、浅尾あさおさんが出した声だとは……信じたくなかった。

 恐る恐る顔を上げて、浅尾あさおさんの様子を確認しようとするが、ぼやけて上手く見えなかった。
 涙があふれて、前が見えないのだ……
 何とか瞬きを繰り返して、溢れ出す涙を振り払いながら、浅尾あさおさんを確認した。

 浅尾あさおさんの身体からは、真っ赤な血が噴き出していた。
 おへその辺りに、太い触手をねじ込まれて、無理やりこじ開けられながら、胎内をかき回されている。
 こじ開けられたへその穴からは、脱水で死ぬんじゃないかと思う程の、大量の血が噴き出している。
 浅尾あさおさんの頭は、うどんに埋もれて見えないが、首筋は血が零れ落ちながら、死にそうなほどの金切り声が続いている。

 
「おらぁ!!手を上げろって言っただろぉ!!早くしねぇと、お友達が死んじゃうぜェ……」

 クソジジイは、いやらしい顔でわらった。

「いやぁあああぁあああ!!!」

 新崎にいざきさんは、涙をまき散らして悲鳴を上げた。
 そして、身体を震わせながら両手を上げた。

「う、うぅぅ……うぅぅ………」

 リリィさんも、顔を真っ青にして、涙や鼻水をだらだらと垂れ流しながら、恐る恐る両手を上げた。
 俺は、ごめんなさいと思った。
 リリィさんにとって、浅尾あさおさんは他人なのに……
 でも、リリィさんは両手を上げた。
 リリィさんは、他人の浅尾あさおさんの為に、自分の命と、妹の命を諦めてくれたのだ……。

 ありがとう……

 何がありがとうだよ……
 何もありがたくねぇよ……

 そして俺も、両手を上げた。

 降参だ……。
 
 死線を幾つもくぐり抜けて来たが、ようやく詰んだのだ。

 まぁ、新崎にいざきさんとは、想いを伝え会う事が出来たし、
 互いに好きと言い合って、秘密も打ち明け合って、心の底から通じ合った。
 俺は、幸せだった。
 もう、十分なのかもしれない……
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