クラス転移した俺のスキルが【マスター◯―ション】だった件 (新版)

スイーツ阿修羅

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第一膜 クラス転移した俺のスキルが【マスター◯ーション】だった件 編

一九射目「残酷なオカズ選択」

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「ねぇ、起きて…起きてよ……」

 真っ暗な闇の中、新崎にいざきさんの声がした気がした。

「あ……」

 俺は、ゆっくりと目を開けた。
 どうやら俺は仰向けで床に寝ていて、二人欠けたクラスの皆に、ぐるりと囲まれていていた。
 

(ああ、斎藤さいとうさん、パンツ見えそうだよ…)

 最初に思い浮かんだことは、そんな下らない事だった。

「あ、起きたか、行宗ゆきむね

 素っ気なく、そう声をかけてきたのは、竹田慎吾たけだしんごだった。
 俺の友達だった人。俺を無茶苦茶に蹴りつけて、「〇ね」とまで言った人である。
 
 同時に、クラスメイトの安堵のため息がした。


「すまなかった!行宗ゆきむね!!、俺はお前を疑ったっ!!酷い事を言ったし、やった!!
 蹴ってくれ!!俺を好きなだけ蹴ってくれ!!」

 竹田慎吾たけだしんごは、ギュッと目を瞑りながら、俺に謝ってきた。
 ああ、やっぱりコイツ、無茶苦茶いい奴だな。
 俺の友達には勿体ないくらいの。

「蹴ってくれって、ドМかよ。
 竹田たけだは悪くない。悪いのは俺だよ…。
 俺のスキルはさ、【自慰マスター〇ーション】なんだ…
 行為をしたら、賢者になれるスキル…。だから、使えなくて、戦えなくて…」

「そっか、そうだったのか、それは同情するよ」

「…………」

 女子達が、気まずそうに目を逸らした。
 この場の空気と、俺の心が、キンキンに冷えてしまった。

 
「いいから早く、死んだ二人の蘇生と元の世界への帰還を、神様に願えよ!」

 そんな中、岡野大吾が、イライラした声でそう言った。
 そうだな。
 あの仮面どもが俺達を、元の世界に返してくれる保証はないし…
 あれ、あいつらはどうなったんだ…?

「なあ、あの仮面の奴等はどうなった??」

 俺は、疑問を口にした。
 
「ああ。背の高い方が、血まみれで死にそうな小さい方を背負って、どこかへ消えて行ったよ。」

「そうか、良かった。」

 最後の一撃が効いたのだろう。ギリギリだったが、なんとかなったな。


 ◆◆◆


 さあ、二人を生き変えらせてから、元の世界へ帰ろう。

 俺は、二つの【ネザーストーン願いを叶える石】を両手にもち、二つの願いを口に出す。

「神様どうか、新崎直穂にいざきなおほさんと、朝尾和奈あさおかずなさんを生き返らせて下さい。
 そして俺達を、元の世界へ戻して下さい。」

 俺は、神に願った。


 ◆◆◆


『残念ながら、それは無理だ。
 死者の蘇生は、世界を飛び越えるより遥かに難しい。
 新崎直穂にいざきなおほの蘇生で一つ。朝尾和奈あさおかずなの蘇生で一つ。クラス全員のネラ―世界への帰還で一つ。
 これは三つの願いである。
 私が貴様に叶えてやれるのは二つまでだ。』


「は??」

 俺は、混乱した…
 ええと、つまり、二人の復活は、二つの願いとして、カウントされるということだ。
 つまり、二人を復活させれば、元の世界への帰還は叶わない、という事だ。

 でも、だからって、二人を見捨てる選択肢なんてない。
 つまり、俺達は元の世界に帰れない??

 クラスの皆が唖然とする中…


「なぁ、お前ら。どっちを選ぶ?朝尾あさお新崎にいざきか?」

 岡野大吾おかのだいごが、そう言った。


「は、はぁ…?。今、なんつった?」
「二人のどっちかを、見殺しにしろって事??」
「てめぇ、大吾だいご!!
 元の世界に戻る方法ぐらい、他に見つかるだろ!
 どっちか見捨てるなんて選択肢ねぇよ!!」


 どちらか選べ、という、岡野大吾おかのだいごの残酷な提案に、クラスメイトは騒然とし、一斉に大吾だいごを非難する。


「はぁ!? きっと帰る方法が他に見つかるって!?、夢見てんじゃねぇよ!!
 こんなクソみたいな世界でまだ生きろってか!?、家族も野球もない世界でよ!
 俺はプロ野球選手になりてぇんだよ!!
 考えてみろよ、クラスメイトなんて所詮他人だろ。卒業すれば終わりの、今だけの関係なんだよ。
 大切な家族や将来の夢と、ただの高校のクラスメイト、どっちが大事だよ!?」

 
 岡野大吾おかのだいごは、もの凄い剣幕で、そう主張した。
 その言葉は、驚くほど俺に刺さった。
 確かに、大切な両親や妹と、朝尾あさおさん、どちらか選べと言われたら、俺は絶対家族を選ぶ。
 もし、新崎にいざきさんとなら、すごく迷う、けど…

 
「でも、それでもっ!!」

「じゃあ。グダグダしない内に、多数決とるぞ。
 新崎にいざきを見捨てて、朝尾あさおを復活させたい奴、手を上げろ。」

 岡野大吾おかのだいごは、冷たい声で残酷な多数決を取り始めた。

「ねぇちょっと待ってよ!!」
「考え…させてよ…」

「考えたって辛くなるだけだ。どうせ心の中では最初から決まってんだろ?ほら!締め切るぞ。」

「ううっ……」


 クラスメイトは、ある者は叫びなながら。ある者は泣き崩れながら、パラパラパラ、と手を上げた。
 10人くらい…

「はぁっ!なんで!?あんた直穂なおほの友達でしょっ!!」
「そっ、そうだよっ!そうだけどっ!!」
「くそっ、ヤダよっ…クソっ…」
「ねぇっ!手、上げてよっ!!友達でしょっ!」

 クラスは地獄絵図であった。

 
「13人か、じゃあ次。朝尾あさおを見捨てて、新崎にいざきを復活させたい奴、手を上げろ。」

 俺は手を上げた…。
 俺以外には、彼女の親友と…
 彼女に恋する、竹田慎吾たけだしんご…………は、
 手を上げていなかった。
 
(は?なんで??)


「おい竹田たけだ!お前、なんで!?」

 俺は思わず、竹田の肩を強く掴み、怒鳴り声で問い詰めた。

「うるせぇ黙れよ!選べねぇよ。選びたくねぇ…。
 新崎にいざきの事は好きだけど。朝尾あさおは部活の友達なんだ!選べねぇよ…」

「はぁっ!でも!だって…」

 
 クラスの中で新崎にいざきさんを選ぶ人は、明らかに少ない。
 知ってた、知ってたけどさ…
 新崎にいざきさんの友達は、あまり多くない。
 数人の親友がいるだけだ。
 対して朝尾あさおさんはクラスの陽キャである、人気投票で勝てる訳がない。

「6人か。決まりだな。ほら、おっぱいクン、『朝尾あさおを復活させて、全員を元の世界に帰して下さい』、って、神様に願え。これがクラスの総意だ。」

 岡野大吾おかのだいごは、俺にそう言ってくる。


「いやっ!!ふざけんなっ!お前が〇ね大吾だいご!!
 ねぇ行宗ゆきむね君!中学の頃、なーちゃんの事が好きだったんでしょ!?なーちゃんを選んでよ!!」
「てめぇそれ、和奈に〇ねって言ってんだぞ!!」
「そうだよっ!そっちだって同じじゃん!!」
「なぁ、やっぱ選べねぇよ。元の世界に帰る方法は絶対、他にあるって!だって来れたんだから…」


 新崎にいざきさんの親友が、俺に詰め寄ってくる。
 それにつられて、クラスの皆が、俺に詰めより。
 俺の胸倉を掴み。各々の主張をしてくる。

 俺は、俺はどうすればいい?…
 何を願えばいい?
 クラスメイトは、罵倒や乱闘を始める。
 くそぉ、くそぉ…

 俺はっ、俺は……

 
 ◆◆◆


 ※以下、三つにルート分岐します。

 朝尾和奈《あさおかずな》と現世帰還 (次話完結)

 新崎直穂《にいざきなおほ》と現世帰還 (次話完結)

 新崎直穂《にいざきなおほ》と朝尾和奈あさおかずな (次章に続く)
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