43 / 45
第43話 本気モードに移行したか
しおりを挟む
〈渾身斬り〉は敵に回避されやすいというデメリットを持つ反面、通常攻撃の二倍のダメージ量を相手に与えるとともに、一定の確率でスタン状態に追い込むことが可能だ。
また、仮にスタン状態にならなかったとしても、敵を弾き飛ばしたり体勢を大きく崩したりすることができる。
「~~~~ッ!?」
〈逆境湧血〉と〈渾身斬り〉の組み合わせで、デスアーマーの巨躯が二、三メートルほど吹き飛ぶ。
残念ながらスタン状態は回避されてしまったものの、背中から勢いよく倒れ込ませることができた。
すぐに身を起こそうと手間取っているところへ、俺は〈アイテムボックス〉から〈ワイズマンロッド〉を取り出し、魔法を放つ。
「〈フリージング〉!」
魔法でHPを削ることはできないのだが、『凍結』によって一時的に動きを封じることは可能だった。
デスアーマーの身体が凍りつく。
ただし大抵のボスボスモンスターは簡単に『凍結』の状態異常から復活してしまう。
それはデスアーマーも例外ではない。
「オオオオオッ!!」
あっさり『凍結』から立ち直るデスアーマー。
だがそのときすでに俺は背後に回っていた。
一瞬こちらの姿を見失い、デスアーマーが混乱する。
すぐに気づいて振り返ろうとしたが、それより俺の攻撃の方が早かった。
「〈二連斬り〉!」
ガガンッ!!
一瞬で通常攻撃を二度、放つことができる攻撃スキルだ。
敵の防御値との兼ね合いで〈渾身斬り〉ほどのダメージにはならないが、それでも〈逆境湧血〉のお陰で同レベル帯の魔物相手なら軽くHPを削り切ってしまうほどの威力がある。
そこで俺は大きく後ろに飛び下がった。
直後にデスアーマーが全身から漆黒の闘気を爆発させる。
実は触れただけでダメージを受けてしまう厄介な攻撃だ。
かなり範囲は狭いものの、ついでに『暗闇』や『混乱』、あるいは『絶命』の状態異常に侵される危険な代物でもある。
まぁ俺は状態異常以前に、HPが1しかないので喰らったらその瞬間にお終いだが。
やがて闘気が収まったそのタイミングで、また一瞬の隙ができる。
俺はすかさず距離を詰めた。
「〈渾身斬り〉!」
二度目の〈渾身斬り〉だ。
ちなみにこのスキルのクールタイムは僅か10秒なので、短いスパンで放つことができる。
再び吹き飛び、倒れ込むデスアーマー。
そこへもう一度〈フリージング〉をお見舞いした。
基本的にはこの繰り返しだ。
一見するとこれで嵌め技が完成するように思えるが、生憎とそこまで簡単な相手ではない。
「〈渾身斬り〉!」
ガキイイインッ!!
「……受け止められたかっ!」
稀にこちらの〈渾身斬り〉に反応し、攻撃を防がれることがあるのだ。
こうなると即座に向こうの連続攻撃が繰り出されてくるため、一転してピンチに陥る。
「〈超集中〉!」
咄嗟に〈超集中〉スキルを発動し、デスアーマーが放つ斬撃をすれすれで回避する。
こちらのHPは1しかないため、少しでも掠めただけで終了である。
時間が引き延ばされる感覚の中、必死に猛攻を躱していく。
一連の攻撃が終わったところで、お返しとばかりにこちらも〈二連斬り〉を叩き込んだ。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
デスアーマーが動きを止め、これまでにない強烈な雄叫びを轟かせる。
と同時に黒い鎧を覆っていた禍々しい赤の文様が蠢き出し、その面積を増していった。
気づけばデスアーマーの全身鎧は赤く染まっていた。
「本気モードに移行したか!」
デスアーマーはHPが3分の1以下になると、このモードに突入するのだ。
〈逆境湧血〉の残り時間はおよそ60秒で、ギリギリ時間内に倒せるペースである。
だが当然ながらここからはさらにシビアな戦いとなる。
〈渾身斬り〉による吹き飛ばしも発生しなくなるし、〈フリージング〉の『凍結』も無効化されてしまうのだ。
デスアーマーが跳躍した。
ドオオオオオオオオンッ!!
空から地面に叩き落される斬撃。
ゼタが使っていた〈ブレイクインパクト〉と同様、当たればダメージを受ける衝撃波が周囲に発生する。
「っ!」
俺は地面を蹴った。
攻撃範囲が半径十メートルを超える凶悪な衝撃波だが、タイミングよく飛び越えれば喰らわなくて済む。
攻撃後の隙を突いての〈渾身斬り〉は、先ほどのように防がれて逆に連撃を受けるかもしれない。
〈渾身斬り〉は威力に優れる分、回避されたり防がれたりする可能性が高いのだ。
すでに〈超集中〉の効果が切れた今、そのリスクは冒せない。
〈二連斬り〉を一発ぶち込み、すぐに飛び下がって距離を取る。
「っ……あの攻撃かっ!」
直後、攻撃後の硬直から解けたデスアーマーが、巨大な剣を横に薙ぐように一閃。
予兆モーションからそれを察していた俺は、その場にしゃがみ込んだ。
放たれたのは「飛ばす斬撃」の水平バージョンだ。
垂直方向のそれと違い、広範囲を一気に薙ぎ払うため、回避は容易ではない。
すぐ頭の上を超高速で通過していき冷や汗を掻く。
しゃがみ込みが最も躱しやすいのだが、発動前から動いていてもギリギリだった。
それだけ攻撃が速すぎるのだ。
だが強力な攻撃は同時にチャンスでもあった。
発動後の硬直がやや長いため、ほぼ確実に攻撃を当てることができる。
「〈渾身斬り〉!!」
「~~~~ッ!」
しかしまだHPは削り切れない。
本気モードに移行してから、ほぼ通常攻撃しか喰らわせられなかったせいだ。
〈逆境湧血〉の残り時間は……マズい、すでに20秒を切っている!?
また、仮にスタン状態にならなかったとしても、敵を弾き飛ばしたり体勢を大きく崩したりすることができる。
「~~~~ッ!?」
〈逆境湧血〉と〈渾身斬り〉の組み合わせで、デスアーマーの巨躯が二、三メートルほど吹き飛ぶ。
残念ながらスタン状態は回避されてしまったものの、背中から勢いよく倒れ込ませることができた。
すぐに身を起こそうと手間取っているところへ、俺は〈アイテムボックス〉から〈ワイズマンロッド〉を取り出し、魔法を放つ。
「〈フリージング〉!」
魔法でHPを削ることはできないのだが、『凍結』によって一時的に動きを封じることは可能だった。
デスアーマーの身体が凍りつく。
ただし大抵のボスボスモンスターは簡単に『凍結』の状態異常から復活してしまう。
それはデスアーマーも例外ではない。
「オオオオオッ!!」
あっさり『凍結』から立ち直るデスアーマー。
だがそのときすでに俺は背後に回っていた。
一瞬こちらの姿を見失い、デスアーマーが混乱する。
すぐに気づいて振り返ろうとしたが、それより俺の攻撃の方が早かった。
「〈二連斬り〉!」
ガガンッ!!
一瞬で通常攻撃を二度、放つことができる攻撃スキルだ。
敵の防御値との兼ね合いで〈渾身斬り〉ほどのダメージにはならないが、それでも〈逆境湧血〉のお陰で同レベル帯の魔物相手なら軽くHPを削り切ってしまうほどの威力がある。
そこで俺は大きく後ろに飛び下がった。
直後にデスアーマーが全身から漆黒の闘気を爆発させる。
実は触れただけでダメージを受けてしまう厄介な攻撃だ。
かなり範囲は狭いものの、ついでに『暗闇』や『混乱』、あるいは『絶命』の状態異常に侵される危険な代物でもある。
まぁ俺は状態異常以前に、HPが1しかないので喰らったらその瞬間にお終いだが。
やがて闘気が収まったそのタイミングで、また一瞬の隙ができる。
俺はすかさず距離を詰めた。
「〈渾身斬り〉!」
二度目の〈渾身斬り〉だ。
ちなみにこのスキルのクールタイムは僅か10秒なので、短いスパンで放つことができる。
再び吹き飛び、倒れ込むデスアーマー。
そこへもう一度〈フリージング〉をお見舞いした。
基本的にはこの繰り返しだ。
一見するとこれで嵌め技が完成するように思えるが、生憎とそこまで簡単な相手ではない。
「〈渾身斬り〉!」
ガキイイインッ!!
「……受け止められたかっ!」
稀にこちらの〈渾身斬り〉に反応し、攻撃を防がれることがあるのだ。
こうなると即座に向こうの連続攻撃が繰り出されてくるため、一転してピンチに陥る。
「〈超集中〉!」
咄嗟に〈超集中〉スキルを発動し、デスアーマーが放つ斬撃をすれすれで回避する。
こちらのHPは1しかないため、少しでも掠めただけで終了である。
時間が引き延ばされる感覚の中、必死に猛攻を躱していく。
一連の攻撃が終わったところで、お返しとばかりにこちらも〈二連斬り〉を叩き込んだ。
「オオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
デスアーマーが動きを止め、これまでにない強烈な雄叫びを轟かせる。
と同時に黒い鎧を覆っていた禍々しい赤の文様が蠢き出し、その面積を増していった。
気づけばデスアーマーの全身鎧は赤く染まっていた。
「本気モードに移行したか!」
デスアーマーはHPが3分の1以下になると、このモードに突入するのだ。
〈逆境湧血〉の残り時間はおよそ60秒で、ギリギリ時間内に倒せるペースである。
だが当然ながらここからはさらにシビアな戦いとなる。
〈渾身斬り〉による吹き飛ばしも発生しなくなるし、〈フリージング〉の『凍結』も無効化されてしまうのだ。
デスアーマーが跳躍した。
ドオオオオオオオオンッ!!
空から地面に叩き落される斬撃。
ゼタが使っていた〈ブレイクインパクト〉と同様、当たればダメージを受ける衝撃波が周囲に発生する。
「っ!」
俺は地面を蹴った。
攻撃範囲が半径十メートルを超える凶悪な衝撃波だが、タイミングよく飛び越えれば喰らわなくて済む。
攻撃後の隙を突いての〈渾身斬り〉は、先ほどのように防がれて逆に連撃を受けるかもしれない。
〈渾身斬り〉は威力に優れる分、回避されたり防がれたりする可能性が高いのだ。
すでに〈超集中〉の効果が切れた今、そのリスクは冒せない。
〈二連斬り〉を一発ぶち込み、すぐに飛び下がって距離を取る。
「っ……あの攻撃かっ!」
直後、攻撃後の硬直から解けたデスアーマーが、巨大な剣を横に薙ぐように一閃。
予兆モーションからそれを察していた俺は、その場にしゃがみ込んだ。
放たれたのは「飛ばす斬撃」の水平バージョンだ。
垂直方向のそれと違い、広範囲を一気に薙ぎ払うため、回避は容易ではない。
すぐ頭の上を超高速で通過していき冷や汗を掻く。
しゃがみ込みが最も躱しやすいのだが、発動前から動いていてもギリギリだった。
それだけ攻撃が速すぎるのだ。
だが強力な攻撃は同時にチャンスでもあった。
発動後の硬直がやや長いため、ほぼ確実に攻撃を当てることができる。
「〈渾身斬り〉!!」
「~~~~ッ!」
しかしまだHPは削り切れない。
本気モードに移行してから、ほぼ通常攻撃しか喰らわせられなかったせいだ。
〈逆境湧血〉の残り時間は……マズい、すでに20秒を切っている!?
16
お気に入りに追加
1,166
あなたにおすすめの小説
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
頭が花畑の女と言われたので、その通り花畑に住むことにしました。
音爽(ネソウ)
ファンタジー
見た目だけはユルフワ女子のハウラナ・ゼベール王女。
その容姿のせいで誤解され、男達には尻軽の都合の良い女と見られ、婦女子たちに嫌われていた。
16歳になったハウラナは大帝国ダネスゲート皇帝の末席側室として娶られた、体の良い人質だった。
後宮内で弱小国の王女は冷遇を受けるが……。
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる